リーダーシップは後天的なトレーニングで学ぶことができます。リーダーシップトレーニング(リーダーシップ研修)を取り入れ、リーダーの役割やコミュニケーション能力、仕事の進め方、部下の育成方法などを学びましょう。
先行きが不透明なVUCA(ブーカ)時代を生き延びるには、社員一人ひとりがリーダーシップを身に付けることが大切です。
本記事では、リーダーシップトレーニングの必要性や具体的な方法を分かりやすく解説します。
目次
リーダーシップトレーニングの必要性
リーダーシップトレーニングはリーダーシップ研修とも呼ばれ、リーダーに求められるさまざまなスキルを学ぶ方法を指します。従来はリーダーというと、組織のトップに立つ人物を指すことが一般的でした。
しかし、オーストリア人経営学者のピーター・ドラッカーが提唱したリーダーシップ論のように、現代ではリーダーシップは一人が発揮すべきものではなく、全員が発揮すべきものという認識が広まりつつあり、リーダーシップトレーニングの重要性も増しています。
ここでは、リーダーシップトレーニングを取り入れるメリットについて解説します。
1. VUCA時代に対応するため
VUCA時代に対応するためにリーダーシップトレーニングは必要です。VUCA時代とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとった略語です。
予測困難で、先行きが不透明な時代をビジネス用語でVUCA時代と呼びます。
インターネットの発達により、地球上のあらゆる場所がネットワークで結ばれた結果、一部の地域で起きた出来事が瞬時に広がり、世界中に影響を及ぼすようになりました。
また、昨今の生活様式の変化のように働き方や日常の過ごし方、顧客のニーズもどんどん変わっていくことが当たり前になりつつあります。
そのため、市場を始めとしたビジネス環境の不安定さや不確実さが増しており、より一層複雑な経営判断が求められる時代になりました。
そんなVUCA時代を生き延びるために必要なのが、ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)です。
ダイナミック・ケイパビリティは、環境変化を感知し(sensing)、そこに機会を捕捉し(seizing)、既存の資源を再構成して自己変容(transforming)する能力で、その実現にはリーダーシップが必要だとされています。
ビジネス環境の目まぐるしい変化を感知し、すばやく機会を捉えて対応するには、迅速な意思決定が求められます。そのため、社員一人ひとりのリーダーシップを強化し、現場レベルで自律的な判断を下すことができる組織づくりが必要です。
リーダーシップトレーニングの導入により、VUCA時代に対応可能なダイナミック・ケイパビリティを身に付けられるでしょう。
2. 労働力不足を解決するため
労働力不足を解決するためにも、リーダーシップトレーニングは必要です。
厚生労働省によると、令和4年2月の時点で企業の未充足求人(仕事があるにもかかわらず、その仕事に従事する人がいない状態を補充するために行っている求人)がある事業所の割合は調査産業計で53%となっており、労働力不足が深刻化していることが分かります。(※)
特に労働力不足が顕著なのは、医療・福祉、サービス業(他に分類されないもの)、宿泊業・飲食サービス業、運輸業・郵便業です。労働力不足に対応するには、人材採用に力を入れるとともに、既存のメンバーの能力を活かすための人材教育が必要です。
その一環として、リーダーシップトレーニングが注目を集めています。リーダーシップトレーニングの狙いは、社員一人ひとりが自分の役割や行動を理解し、自律的・主体的に行動できるようにすることです。
リーダーシップを強化すれば、結果的に社員のパフォーマンスも上昇し、組織の生産性も高まります。限られた人材を活かし、企業力を高められる点でも、リーダーシップトレーニングには大きなメリットがあります。
※参考:厚生労働省. 「労働経済動向調査(令和4年2月)の概況」
3. 年功序列制から脱却するため
リーダーシップトレーニングの導入は、年功序列制から脱却して健全な成果主義へと移行するきっかけにもなります。年功序列制は、仕事の成果が報酬に反映されにくい側面があります。
年功序列制を継続すると、優秀な若手社員の離職率を上げてしまう原因になる恐れがあるため、段階的に成果主義へ転換していく必要があります。その取り組みの一環として、社員にリーダーとしての自覚を持たせるリーダーシップトレーニングが有効です。
成果主義の組織は、社員一人ひとりが目標の達成に向けて主体的に行動し、業務を遂行することで成り立ちます。社員の主体性を高めるリーダーシップトレーニングは、成果主義の導入を予定している企業にとっても効果的です。
リーダーシップをトレーニングする方法
リーダーシップをトレーニングする方法は、大きく分けて4つあります。
- どのようなスキルを身に付けるべきか考える
- 社内研修に参加する
- OJTを受ける
- 外部のリーダーシップ研修を受講する
リーダーシップのトレーニングに当たって、まずは組織内の自分の役割を認識し、どのようなスキルが必要かを考えることが大切です。また、社内研修や外部のリーダーシップ研修の他にも、普段の仕事を通じてOJT形式で実践的なリーダーシップを学ぶ方法もあります。
すでに中間管理職、マネージャー、中堅社員、チームリーダーなどの役割を持つ人はもちろん、これからリーダーとして活躍したい人は、積極的にリーダーシップのトレーニングを行いましょう。
1. どのようなスキルを身に付けるべきか考える
リーダーシップトレーニングを始める前に、どのようなスキルを身に付けるべきか考える必要があります。
一言でリーダーシップ研修といっても、さまざまな研修カリキュラムが存在します。また、リーダーシップ研修は、管理者向けのマネジメント研修や、中堅社員リーダーシップ研修など、対象者によってカリキュラムが異なるのが特徴です。
そのため、身に付けたいスキルを考えた上で、社内研修やOJT、外部のリーダーシップ研修などの選択肢を選ぶことになります。
2. 社内研修に参加する
リーダーシップトレーニングは、社内研修を通して高めることも可能です。社内研修を実施する場合は、社内のリーダーやハイパフォーマー(高い成果や業績を残す人材)を講師とするか、研修を外部委託して講師を招きます。
社内研修は通常、複数名の社員が参加してグループワークをするか、集合研修の形式で座学を行うのが一般的です。
3. OJTを受ける
若手社員の場合、座学よりもOJT(On the Job Training)でリーダーシップを学ぶのがおすすめです。先輩社員や管理者など、組織内のリーダーとして活躍している社員と一緒に仕事すれば、リーダーシップを直接見て学ぶことができます。
4. 外部のリーダーシップ研修を受講する
自社でリーダーシップ研修を行っていない、あるいは研修の予定がない場合は外部のリーダーシップ研修を受講することもできます。
外部機関によっては、オンライン研修を実施している場合もあります。Web会議システムなどを使って、手軽にリーダーシップ研修を受けることが可能です。
一般的なリーダーシップ研修の内容
一言でリーダーシップ研修といっても、さまざまな研修カリキュラムが存在します。またリーダーシップ研修は、管理者向けのマネジメント研修や、中堅層向けの中堅社員リーダーシップ研修など、対象者によってカリキュラムが異なるのが特徴です。
一般的なリーダーシップ研修の場合は、以下の分野について学ぶことになります。
- リーダーの役割を学ぶ
- コミュニケーション能力を学ぶ
- 仕事の進め方を学ぶ
- 部下の育成方法を学ぶ
リーダーシップ研修の主なカリキュラムを知り、研修期間を通じて自分に足りないスキルを学びましょう。
1. リーダーの役割を学ぶ
リーダーシップを発揮するには、まずリーダーの役割(リーダーとはどのような存在であるべきか)を学ぶことが重要です。リーダーの役割は以下のようなものがあります。
- チームの目標やビジョンを設定する
- チームメンバーの動機付けをする
- 自分の頭で考えて意思決定をする
管理職やマネージャーなどの役職者から、小規模なチームのリーダーまで、組織内のリーダーはチームの目標やビジョンを設定する必要があります。
チーム共通の目的を生み出すことで、一体感を育むことが可能です。そのため、リーダーシップ研修では、まず目標づくりや課題設定のスキルを学びます。
次に必要なのが、チームメンバーの動機付けをする能力です。動機付けとは、部下の心を動かし、やる気やモチベーションを引き出すことを指します。
動機付けのスキルを習得すれば、社員一人ひとりが意欲的に行動するようになり、組織の生産性が高まりやすくなります。
また、優秀なリーダーは高い意思決定能力がなくてはなりません。そのため、リーダーシップ研修を通じて、問題を多角的に分析するスキルや、プロジェクトを推進するスキルを学びます。
2. コミュニケーション能力を学ぶ
リーダーシップを身に付ける過程で、コミュニケーション能力を学ぶ必要があります。リーダーは、チームメンバーはもちろん、他のリーダーや上層部と深く関わるポジションです。
リーダーには、1対1のコミュニケーションより、組織やチームを動かすコミュニケーション能力が求められます。グループワークやチームワーキングを通じて、リーダーという立場ならではのコミュニケーション術を学びます。
3. 仕事の進め方を学ぶ
リーダーは管理者としてチームづくりに貢献しながら、プレイヤーとして業務を遂行します。リーダーとして信頼を集めるには、高い業務遂行能力やビジネススキルを示す必要があります。
リーダーシップ研修には、業務遂行能力を向上させるためのカリキュラムもたくさん用意されているため、自分の伸ばしたいスキルを選択しましょう。
例えば、問題解決に役立つデータ分析のスキルや、意思決定に役立つ数字・数値化のスキルなどを学ぶことが可能です。
4. 部下の育成方法を学ぶ
リーダーシップ研修として学べる4つ目の内容は、部下の育成方法です。特に課長や部長などの管理職や、中堅・チームリーダーの階層の人が受講します。
部下の育成で大切なのが、一人ひとりの話に耳を傾ける傾聴力です。部下の特徴を把握することで、一人ひとりに合った褒め方や叱り方を選択し、チームを成長に導けるでしょう。
自分のリーダーシップに課題を感じたら、さまざまなトレーニングを実践しよう
近年、リーダーシップについての考え方が大きく変わり、リーダーシップ研修の重要性も増しています。不確実性の高いVUCA時代に対応し、労働力不足や年功序列制の弊害といった課題を克服するには、全員がリーダーシップを発揮できる組織づくりが必要です。
リーダーシップを強化するには、まず社員一人ひとりが自分に必要なスキルを模索し、その上で社内研修、外部のリーダーシップ研修、OJTを通じた実践など、自分に合ったトレーニング方法を選ぶ必要があります。
株式会社識学は、生産性が高い組織づくりや、リーダーシップ・マネジメントについて学ぶホワイトペーパーを公開しています。
リーダーシップ研修を取り入れたが、社員が思ったように成長しない、優秀なリーダー候補が次々と離職してしまうなどの課題を感じている企業は、ぜひダウンロードしてください。