スタートアップ企業は資金調達やマーケティング、ブランディング、組織づくりなど、さまざまな問題を抱えていることだと思います。
今回はその中でも組織づくりの方法についてお伝えします。
スタートアップ企業だからこそ、事業拡大に不可欠な「組織づくりの大前提」を学んでください。
目次
一人ひとりの当たり前は違う
世の中には、自分と考え方や価値観が近い人はいても、全く同じ人は誰一人としていません。
この前提を押さえておかなければ組織づくりに苦戦するでしょう。
例えば、上司が使ってしまいがちな「○○は当たり前だ」「一般的には○○だ」のような言葉も人によって捉え方が異なります。
少し細かいと思われる方もいるでしょうが、当たり前の基準が違うことによって起きるトラブルは後を絶ちません。
よく経営者から「大企業のようにルールがない方がよい」や「弊社は自由な風潮を売りにしたい」という声を聞きます。
もちろんそれは否定しません。しかし、「自由」という言葉の一人歩きがいかに怖いかをご存じでしょうか。
ここ数年、自由な働き方を推奨する声が高まっています。
働き方自体を柔軟にすることはよいことですが、何もかも自由というわけにはいきませんし、自由という言葉も人によって捉え方が異なります。
筆者は、従業員一人ひとりの意見やモチベーションに会社側が合わせた結果、まとまりがなくなり組織全体のパフォーマンスが上がらない会社を数多く見てきました。
組織の一体感を生むためには
当たり前の基準を合わせ、組織の一体感を生むために必要なものはルールです。
ルールに対してマイナスのイメージを持つ方は多いかもしれませんが、ルールがない会社では一人ひとりが自分の価値観で勝手に行動するようになってしまいます。
スタートアップ企業は限られた人材で最大限の成果を上げなければなりません。
そのために、まずは会社のルールを決めて、皆がそれに沿って行動することが求められます。
まさに今、従業員数を増やしたいと考えている方は、すぐにルール作りに取り組んでください。
ルールがある会社とない会社、どちらがスムーズに組織の一体感をつくれるでしょうか。
「自由な風潮を売りにしたルールがない会社に入社したけれど、入ってみたら明文化されていないルールがたくさんあった」という話は珍しくありません。
それよりも、最低限の明文化されたルールはあり、従業員が当たり前のようにルールを守りながら仕事をしている会社の方が働きやすいはずです。
当たり前の基準をルール化し、その中に人を招く、つまりルールを守れる社員を採用する方が組織運営はやりやすくなります。
組織の人数が少ないうちにルールを作ることを強くお勧めします。
早期に決めるべきルールとは
ルールを決める際には、個人の能力に関係なく守れるものにすること、そして、守っているかどうかが誰の目から分かる形にすることが大事です。
例えば、出社時には「おはようございます」、帰社時には「お先に失礼いたします」とフロア全体に聞こえる声であいさつをする。
帰宅時には自分のロッカー以外に私物を置かない。
お客さまをお見送りする際にはエレベーターが締まるまで頭を下げる。などです。
これらは、働く姿勢やスタンスを見るためのルールですから、我々は「姿勢のルール」と呼んでいます。
従業員は会社の一員である以上、誰もが理由なく姿勢のルールを守らなければなりません。
誰でも守れるルールであるがゆえに、守らない方は意思をもって会社のルールに反発していると捉えてもよいくらいです。
全員が姿勢のルールを守ることによって会社に一体感が生まれてくるのです。
自由にさせること、させてはいけないこと
自由な社風が売りであっても、自由にすべきこととそうではないことを区別しなければいけません。
自由の範囲を決めるのもルールです。
まず、自由にさせてはいけないことは社員の目標です。
従業員はお給料をもらっているわけですので、給料に見合う働きはしてもらわないと困りますから、社員に求める目標は会社側で決めるべきです。
また、確実に目標を達成してもらうためにも、「社長や上司に向けた定期的な報告」や「ミーティングに出席する」などはルールに従わせましょう。
一方で、目標に到達するまでの進め方(プロセス)は自由にさせてよい範囲です。
極端な例かもしれませんが、定時報告とミーティングには参加し、目標を達成しているのであればどこで業務をしても自由である、などです。
ルールの必要性と捉え方
従業員と会社が共にWin‐Winになるためには会社が利益を出さなければいけません。
会社に利益があるからこそ、そこにいる従業員にも還元されるわけです。
会社として一体感を持ち全員で戦う必要があります。
会社が大きくなることが、将来の自分たちにとってプラスであるという捉え方ができている人は、会社の一員として決められたルールもしっかり守るでしょう。
しかし、決められたルールを平気で破る人は自分が会社の中心だと意識している可能性が高いです。
「このくらい守らなくてもよいだろう」と自分の判断基準で物事を捉えて行動している人です。
自己中心的な考えが強い人は組織の一体感を乱す原因にもなります。
そのような方の居心地が悪くなるような組織をつくるためにも、ルールは不可欠です。
ルールを形骸化させないためには
最後に、ルールを形骸化させない方法をいくつかご紹介します。
ルールはあれど知っている人と知らない人がいる状態でではだめです。
まず、作成したルールを明文化し、誰でも常に見られる状態をつくってください。
社内の共有フォルダに格納する、LINEグループに張り付けるなどでも大丈夫です。
そして「皆で会社をよくするために全員の当たり前基準を合わせ、一体感を持って仕事をしていこう」とルールを広報します。
新入社員には入社当日にルールを広報します。
さらに「もしルール違反者を見つけた際には、誰であっても報告してよい」と話をして、従業員同士も双方でチェックをする体制を築きます。
その上で、定期的なルール見直し会を開いてください。
例えば四半期に1度今あるルールの読み合わせを行い、ルールの追加、不要なルールの削除をするだけでも効果はあります。
また、従業員を巻き込んで定期的なアンケートを行うことも有効です。
例として、「追加したほうがよいルールは」「業務に支障が出ているルールは」「違反者が多いと思うルールは」などを問います。
これらはいずれもルールに対して定期的に目を通す習慣を設けることが目的です。
今回の内容は組織づくりにおける大前提の話ではあるものの、大企業であれ徹底できていない会社も多く見受けられます。
これから会社を拡大していくにあたり、当たり前の基準の違いによる衝突やトラブルは起こしたくないものです。
そのためにも、ルールに目を向けて従業員が仕事に集中できる状態、つまり、会社が一体感を持って世の中にサービスを提供できる状態を整えてください。