AARRRは、Webマーケティング戦略の思考モデルの一つで、製品やサービスの成長段階や課題を明確化するためのフレームワークとして活用されています。新しい製品のリリース時やスタートアップ企業がまず取り掛かる手法として、注目が集まっています。
AARRRはマーケティングの手法だけでなく自社の製品をより深く理解することもできるので、製品やサービスをリリースしたもののなかなかユーザーが増えないとお悩みの方にもおすすめの手法であるといえます。
本記事では、AARRRの概要とAARRRで提唱されるプロダクトの成長階層について解説します。
目次
AARRR(アー)とはプロダクトの成長過程を5階層に分けて分析する思考モデル
AARRRとは、ビジネスにおいてプロダクト(製品やサービスなど)の成長過程を5つの階層ごとに分解し、分析する思考モデルのことです。AARRRの名称は5つの階層を表わす単語の頭文字をつなげた造語であり、一般的には「アー」と読みます。
AARRRモデルが提唱するプロダクトの成長過程は、以下の5段階層です。
- Acquisition(獲得)
- Activation(活性化)
- Retention(継続)
- Referral(紹介)
- Revenue(収益)
AARRRの目的は、新規ユーザーの獲得から収益化までの各階層でマーケティング活動の最適化を図ることです。
従来のロイヤルカスタマー戦略は一般顧客を優良顧客に昇華させることに重点を置いていたのに対し、AARRRでは効率的な新規ユーザーの獲得や、プロダクト情報の拡散にも重点が置かれています。
AARRRにおけるプロダクトの成長階層モデル
先述したように、AARRRとはプロダクトの成長過程を5つの階層に分解し、各段階における顧客行動を分析して成果につなげる思考モデルです。ここでは、AARRRにおける5つの階層について、各階層で実施される代表的なマーケティング施策を交えて解説します。
1. Acquisition(獲得)
Acquisition(獲得)は、プロダクトの新規ユーザー獲得を目指す階層です。どれほど優れたプロダクトであっても、それを実際に利用する人がいなければ、成長はできません。
そのため、まずはプロダクトの存在を人々に認知してもらい、実際に製品やサービスに触れてもらうことを目的としたマーケティング戦略が必要です。
新規ユーザーを獲得するための施策として、以下のような手法が挙げられます。
- 各種メディアに広告を掲載する
- メールマガジン等でクーポンを配布する
- ホームページのSEOに注力する
なおプロダクトのプロモーションでは、ユーザーに対して製品やサービスを利用するメリットをしっかり伝えることが重要です。
製品やサービスの特徴を細かく説明するよりも、それを利用することによって得られるメリットを具体的に示した方が人々の興味を引きやすくなります。
2. Activation(活性化)
Activation(活性化)は、ユーザーがプロダクトを実際に使用し、その価値を実感する階層です。
この階層では、プロダクトに対するユーザーのエンゲージメント(信頼関係)を高めるとともに、ユーザーが積極的に製品やサービスを利用するよう促すことに焦点を当てます。
活性化の目標は、初めて製品やサービスに触れたユーザーの満足度を高め、プロダクトや企業に対する関心を持ってもらうことです。具体的な施策としては以下のような手法が挙げられます。
- アプリのUIを改善して使いやすくする
- 操作や利用方法のチュートリアルを作成する
- 解析ツール等を活用し、ホームページの問題点の洗い出しと改善を行う
3. Retention(継続)
Retention(継続)は、顧客ロイヤルティを高め、既存ユーザーに対してプロダクトの継続利用を促す階層です。
一度定着したユーザーであっても、サービスへの飽きや競合サービスの登場などにより離反してしまう場合が考えられます。プロダクトの収益性を高めるためには、製品やサービスのファンを育てていくことも大切です。
プロダクトのファンを育て、継続利用者を増やすための施策には以下のような手法があります。
- 継続利用特典の配布
- メールマガジンやプッシュ通知による情報発信
- 定期的なキャンペーンの実施
近年では、ビッグデータの活用や顧客情報のパーソナライズ化を通じて、個々のユーザーに合わせた情報を発信することも可能となりました。
顧客満足度の上昇による収益の増加はビジネスの基本戦略でもあるため、ITツールを活用して従来のマーケティング手法をアップデートしましょう。
4. Referral(紹介)
Referral(紹介)は、既存ユーザーが他の人々にプロダクトを紹介することによって、新たなユーザーの獲得につなげる階層です。
製品やサービスの魅力を知ってもらう上で、既存ユーザーによる口コミは信頼性が高い貴重な情報となります。企業側も、プロダクトに対してユーザーが知人や家族に紹介しやすい仕組みを設けることが重要です。
ユーザーによるプロダクトの紹介を促す手法には以下のような例があります。
- アプリやホームページにSNSのシェアボタンを配置する
- SNS上での情報拡散に特典や報酬を用意する
- お友達紹介キャンペーンを実施する
情報を拡散するという点ではSNSの活用は欠かせません。現代はSNSの普及により、誰でも情報の発信者になれる時代です。積極的にSNS戦略を展開し、ユーザーの拡大を狙っていきましょう。
5. Revenue(収益)
Revenue(収益)は、プロダクトの収益性の向上を狙う階層です。ここでは、いかにユーザーに製品やサービスを購入してもらえるかに焦点を当てます。収益を最大化するためには、ユーザーの行動や嗜好を分析し、購入プロセスにつなげることが必要です。
プロダクトの収益性を向上させるためのアプローチは多岐に渡ります。以下はプロダクトの収益性を最適化させるために行われる分析の一例です。
- 1ユーザーあたりの収益性を分析する
- サービスの利用者数(訪問者数)が多い時間帯を分析する
- どのような経路で製品が売れているか、ダウンロードされているかを分析する
AARRRを実践するメリット
AARRRは、企業が製品やサービスの成長につながるデータ分析や実験的なアプローチを検証・改善するマーケティング手法であるグロースハックを実現するための有効な手段の一つです。
ここでは、ビジネスにおいてAARRRを活用するメリットを解説します。
1. 低コストで事業を成長させることができる
AARRRでは、インターネットを介して自社の事業やプロダクトを認知してもらう仕組みを取り入れることが一般的です。自社サイトやメールマガジン、SNSなどを積極的に活用すれば、低コストで効果的なプロモーション活動を行うことができるでしょう。
2. データに基づいた計画的なマーケティング戦略を策定できる
AARRRモデルで分析を行うことにより、データに基づいた論理的なマーケティング戦略を策定できるようになります。企業のマーケティング活動は、担当者の過去の経験や直感に頼って属人化されているケースも少なくありません。
データに基づくマーケティング戦略が策定できるようになれば、担当者が代わっても一定の成果を出す仕組みを残すことができます。
3. 製品・サービスの品質向上が図れる
自社の製品・サービスの品質向上が図れることもAARRRに基づくグロースハックのメリットです。AARRRでは5つの段階それぞれでユーザーの動向を細かく分析するため、小さな課題や潜在的な課題にも気付きやすくなります。
これらが見える化された課題を整理し、一つひとつ解決していくことで、よりユーザーに寄り添ったプロダクトが提供できます。
AARRRを活用してマーケティングをアップデートしよう
AARRRとは、以前より広く実施されていたロイヤルカスタマー戦略を現代の環境に合わせてアップデートさせたマーケティング手法です。
プロダクトの成長過程を分割してマーケティング戦略を最適化することにより、低コストかつ効率的にユーザーへ製品やサービスを届けることができます。AARRRを効果的に実践し、マーケティング力の強化、グロースハックの実現を目指しましょう。