評価制度は多くの会社で導入されていますが、具体的にどのような取り組みがなされているのかをよくわかっていない従業員は多いのではないでしょうか。
実際その多くはブラックボックスです。何をしているのかが不明瞭なことが多く、なかには社長の一存。
その日の気分で評価制度がきまる…なんてこともあるのも事実です。
ですが、そのような評価制度では、多くの社員は離れて行ってしまうことでしょう。
本記事では、会社における評価制度のやり方について解説していきます。
目次
会社における評価制度とは?
会社における評価制度とは、従業員を評価する仕組みのことを指します。
企業によって異なりますが、一般的には1年に1回の頻度で実施されます。
弊社では1年に4回評価制度を見直していますが、多くの場合は手間になると考えられているのも原因でしょう。
また、評価制度の目的も様々で、目的によって評価基準も異なってきます。
評価制度は企業の利益に直結する取り組みではないものの、従業員のパフォーマンスを大きく左右するポテンシャルを秘めています。
評価制度を活用することで、間接的に企業の利益を高めることが可能です。
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会社に評価制度を導入する目的
会社に評価制度を導入する一般的な目的は以下の3つです。
- 報酬を決定するため
- 人材配置で活用するため
- 人材育成に活用するため
それぞれ詳しく解説していきます。
目的①:報酬を決定するため
評価制度を導入する目的として最も多く考えられているのが「報酬の決定」です。
評価が高ければ高いほど、給与、賞与、退職金を多くします。
このように、評価制度と報酬を結びつけることで、従業員は高報酬を得るために高いパフォーマンスを発揮すると考えられています。
逆に、評価制度と報酬を結びつけないと、業績を出せる優秀な人材に見返りを提供できず、企業から離れてしまう可能性があります。
報酬を決定する材料として、評価制度は非常に優れた要素だと言えるでしょう。
目的②:人材配置で活用するため
評価制度を導入する目的として考えられるのが「人材配置での活用」です。
評価制度では、従業員を正しく評価するために、様々な評価項目を設けています。
- コミュニケーションが取れているかどうか
- 勤務態度はいいか
- 仕事でミスが少ないか
- 結果を出すために試行錯誤を繰り返しているか
例えば、仕事でミスが少ないけどコミュニケーションがあまり得意ではない人材は、一般的にはバックオフィス職の方が向いていると言えます。
また、何度も試行錯誤を繰り返して数字を追求するのが得意な人材は、営業職やマーケティング職が向いていると言えるでしょう。
このように、評価制度は従業員の分析も兼ねているため、人材配置に応用させることができるのです。
関連記事:適材適所とは?ビジネスで重要な理由や実現する方法を解説
目的③:人材育成に活用するため
評価制度の目的として「人材育成への活用」も挙げられるでしょう。
まず、先ほど述べた通り、評価内容と報酬を連動させることで、従業員は結果を出すために、自発的に自らを成長させようとします。
また、評価制度の際に従業員の特性を分析できるので、それぞれの従業員にあったキャリアプランを提供できることも考えられます。
特にマネージャー人材やスペシャリスト人材は、早い段階でキャリアプランを構築して、時間をかけて育成する必要があります。
その際に、評価制度が活躍するでしょう。
それに加えて、一般的な評価制度は、定期的に面談やフィードバックを行います。
そこで従業員のキャリア関連でアドバイスしたり軌道修正したりすることが可能です。
関連記事:人材育成のマネジメントとは?重要性や課題、部下育成のポイントと併せて人材育成に活用できる資格を5つ紹介!
会社の評価制度で注目する3つの評価要素
会社の評価制度で用いられる評価要素は以下の3つです。
- 業績評価
- 能力評価
- 情意評価
それぞれ詳しく解説していきます。
関連記事:中小企業が導入するべき人事評価制度とは?活用ポイントを解説
①:業績評価
業績評価は、会社への貢献度で評価する要素を指します。
営業職であれば営業成績に応じて評価され、マーケティング職であればコンバージョンなどの指標に応じて評価されます。
業績評価は、従業員の業績を評価する要素なので、数字を追求する必要のある役職と相性がいいです。
一方で、事務職やエンジニア職のように、数字で業績が見える化しづらい職種とは相性があまり良くありません。
業績評価で従業員を評価する際は、定性的な業績を可能な限り定量的な要素に変換することが求められます。
②:能力評価
能力評価は、従業員の能力で評価する要素を指します。
エンジニア職であればプログラミングスキルが該当しますし、他の職種でも、業界特有の専門的な知識を有しているかどうかが評価されます。
能力評価の項目は大きく2つに分けられるでしょう。
1つは会社員における普遍的な能力。
もう1つは職種ごとに求められる専門的な能力です。
能力評価に関しては、厚生労働省が職業能力評価シートを公開しています。
このシートでは人事、営業、マーケティング、バックオフィス職はもちろんのこと、外食産業、フィットネス産業、旅館業など、実に様々な業種の評価シートが公開されているので、参考にしてみるといいかもしれません。
関連記事:能力評価とは?評価項目やメリット、導入・運用時の注意点などを解説
③:情意評価
情意評価は、従業員の仕事に対する取り組みを評価する要素を指します。
具体的な評価項目は以下の通りです。
- 積極的にチャレンジしたか
- 出退勤状況が優れているか
- チーム全体の雰囲気を良くしているか
情意評価は業績評価や能力評価に比べて明確な評価項目を構築しづらい傾向があります。
しかし、チームへの雰囲気への関与など、情意評価で評価される要素はどれも重要なものです。
また、まだ業績も能力も未熟な新入社員に対しては、情意評価の割合を強めることが多いようです。
その一方で、情意評価は時に他の優秀な社員の離脱を早める行為になりうることは、おさえておいた方がよいでしょう。
会社に評価制度を導入する手順
会社に評価制度を導入する手順は以下の通りです。
- 評価制度の目標を決める
- 評価項目を決定する
- 評価方法をマニュアル化する
- 従業員に周知する
- 評価制度を導入する
それぞれの手順を詳しく見てみましょう。
手順①:評価制度の目標を決める
評価制度の目標は「上長が目標を達成するために必要なもの」とするのがおすすめです。
管理職の評価制度は、その評価制度を達成すれば基本的に会社の業績・利益が改善するものを設定されるのが基本だからです。
もし「やる気」などの定性的な目標を組み込む場合には、組織の成長と部下の評価が連動せず、給与に評価制度を反映させられない。といった懸念が発生することに留意しましょう。
手順②:評価項目を決定する
評価制度の目標を決めた後は、評価項目を決定していきます。
評価項目は企業によって異なりますが、先ほど紹介した3つの評価要素を基準にするのが一般的です。
それと、評価制度を人材育成に活用する場合は「自社が求める人物像」に沿って評価項目を決定するアプローチも考えられます。
ただし定性的な評価項目は、管理者によって判断が異なるため不公平感が増しやすいことにも注意が必要です。
手順③:評価方法をマニュアル化する
評価項目を決定した後は、評価方法をマニュアル化しましょう。
これは、評価者による差異を可能な限り小さくすることを目的としています。
評価制度の課題は、評価者によって差があるということです。
特に定性的な評価要素の場合、評価者の主観で評価が決定されるため、従業員に不満が出てくる可能性があります。
それを防ぐためにも、評価方法を可能な限りマニュアル化するのがベターです。
手順④:従業員に周知する
評価制度を構築した後は、従業員に周知しましょう。
評価制度がどのように構築され、何をもたらすのかを、説明会などで従業員に伝えます。
特に、評価内容と報酬が直結する場合は、しっかり説明する必要があるでしょう。
また、評価者の差を無くすためにも、評価者に対して研修を実施するのも手です。
手順⑤:評価制度を導入する
評価制度を構築したあとは、評価制度の導入を進めていきます。
実際に運用してからでないと見えない課題もあるので、まずは試験的に導入するのが良さそうです。
また、評価制度では従業員へのフィードバックも欠かせません。
従業員にアドバイスしながら、従業員が評価制度に満足しているかどうかを確認して、少しずつ評価制度を良いものにしていきましょう。
評価制度の代表的な手法5選
評価制度の代表的な手法は以下の5つです。
- 目標管理制度
- コンピテンシー評価
- 360度評価
- ノーレイティング
- ミッショングレード制度
それぞれ詳しく解説していきます。
手法①:目標管理制度(MBO)
目標管理制度(MBO)は従業員が自分自身で目標を設定し、その目標達成度に応じて評価する手法です。
MBOであれば、従業員の頑張りを一目で確認することができるので、評価が容易です。
また、従業員が自分で目標を立てるので、モチベーションを上げやすいのもメリットとなっています。
一方で、目標が不適切なものになると効果が薄いのがデメリットです。
そのためMBOでは、先輩社員がアドバイスしながら目標を決定するのが一般的だとされています。
手法②:コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、優秀な社員の行動特性(コンピテンシー)を基準に評価する手法です。
コンピテンシー評価は「行動特性」という極めて明確な基準があるため、評価でブレが生じづらいのがメリットです。
一方で「優秀な社員」の定義が不明瞭で、役職や業務内容によって行動特性が大きく変わる可能性がある点には注意が必要です。
各役職ごとにロールモデルを設定するのがいいでしょう。
手法③:360度評価
360度評価は、先輩社員だけでなく、同僚や後輩社員も評価者に加わる手法を指します。
360度評価であれば、先輩社員やマネージャーが気付きづらい細かい取り組みを発見できる可能性があるのがメリットです。
また、評価者が複数いるため、評価者によるバラつきを防ぎやすくなります。
その代わり、多くの従業員が評価者として参加するために、相応のリソースが必要になる点がデメリットです。
手法④:ノーレイティング
ノーレイティングは、従業員のランクづけを行わない手法です。
一般的なノーレイティングは、面談頻度がほとんどリアルタイムなので、変化の激しい現代社会で対応しやすいのが特徴です。
また、社内での無駄な争いを避けやすくなり、競合他社との競争に集中できるのもメリットとなっています。
一方で、面談頻度が多いので、評価者の負担が大きくなるのがデメリットです。
手法⑤:ミッショングレード制度
ミッショングレード制度は、役割単位で等級を決定していく手法です。
1つの職種の中でレベル差に応じた役割があり、その役割の中での業務達成度などで評価されます。
細かくセグメントされた中で業績に応じて評価されていくので、貢献度の高い従業員を確実に評価できるのがメリットです。
一方で、自社にマッチしたセグメント分けを実施する必要があり、その際の評価基準が不明瞭になりがちなのがデメリットだと言えます。
また、業績に特化している傾向があるため、能力の乏しいシニア人材から不満が出る可能性があります。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- 評価制度は従業員を評価する仕組みのことを指す
- 評価制度の目的としては①報酬の決定、②人材配置への活用、③人材育成への活用の3つが挙げられる
- 評価制度は目的と手段を混同してしまうことがあるので、あらかじめ明確な目的・目標を設定しておく必要がある
評価制度は企業の利益に直結するわけではありませんが、間接的に、大きな影響を及ぼすポテンシャルがあります。
従業員のパフォーマンスを高めるための積極的な評価制度を構築するのが良さそうです。