一口にマネジメントと言っても、シチュエーションによって求められるマネジメントは大きく異なります。
実際、マネジメントにはたくさんの種類があるので、その全てを一度に理解するのは難しいでしょう。
そこでおすすめなのが、マネジメントを分類するということです。
本記事ではマネジメントを分類した方がいい理由を紹介するとともに、実際にマネジメントをわかりやすく分類し、解説していきます。
マネジメントの理解を深めたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
そもそもマネジメントとは
マネジメントは、会社における組織やチームを「管理」することを指します。
マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカーは著書『マネジメント』にて、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関」と定義しました。
つまり、組織の成果を最大化させるために用いられるのがマネジメントです。
「組織に成果を上げさせる方法」となると、様々なアプローチが考えられるはずです。
人材配置を最適化するのか、それとも業務効率性を高めるのか。
また、組織形態によってもアプローチは変動するでしょう。
以上のことからも、マネジメントには実に様々な種類があることが何となくわかると思います。
そこで役立つのがマネジメントの分類です。
関連記事:マネジメントの仕事とは?主な種類や内容、効果を高める手法も解説
マネジメントを分類した方がいい理由
マネジメントを分類した方がいい理由としては以下が挙げられます。
- マネジメントの理解が深まるから
- 適切な手法を選択できるから
- 管理職研修で活用できるから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由①:マネジメントの理解が深まるから
マネジメントを分類した方がいい理由として、まず挙げられるのが「マネジメントの理解が深まる」というものです。
先ほども述べた通り、組織の成果を最大化するためには、様々なアプローチが考えられます。
例えば、プロジェクト進行を効率化する「プロジェクトマネジメント」と、従業員のモチベーションを向上させる「モチベーションマネジメント」は、アプローチが全く異なるものです。
マネジメントを体系的に理解するためにも、まずはマネジメントをそれぞれの要素に分解することが必要不可欠だと言えます。
理由②:適切な手法を選択できるから
個別のマネジメントを複数理解することができれば、それぞれの状況にマッチしたマネジメント手法を選択できるようになります。
マネージャーには様々な問題が立ちはだかるので、マネジメント手法を柔軟に選択できるのは大きなメリットです。
また、マネジメントは組織構成によっても適切な手法が変動します。
マネジメントの分類で様々な手法を理解できていれば、人事異動の際でも、問題なく力を発揮できるようになるでしょう。
理由③:管理職研修で活用できるから
マネジメントを分類することは、管理職研修の効率化にも繋がります。
一口に管理職研修と言っても、現場を主体としたマネジメントなのか、将来的に経営層になる前提なのかで、求められるスキルが大きく変わります。
この際、マネジメントを分類しておけば、それぞれの人材に適した管理職研修を提供できるはずです。
マネジメントは3つの階層に分類できる
ハーバード大学教授のロバート・L・カッツは、マネジメントに求められるスキルを「カッツ理論」で紹介する際に、マネジメントを以下の3つの階層に分類しました。
- トップマネジメント
- ミドルマネジメント
- ロワーマネジメント
それぞれ詳しく解説していきます。
トップマネジメント
トップマネジメントは経営者層によるマネジメントです。
具体的には以下の役職が挙げられます。
- 社長
- 副社長
- 取締役
- 会長
事業計画やビジョンの決定、経営戦略立案、リソースの分配などがトップマネジメントの主な業務内容です。
関連記事:トップマネジメントとは 具体的な役割や求められる能力を解説
ミドルマネジメント
ミドルマネジメントは、経営者層と現場の間に立つ中間管理職によるマネジメントです。
具体的には以下の役職が挙げられます。
- 部長
- 課長
- 係長
- エリアマネージャー
ミドルマネジメントの主な業務内容は、企業の調整です。
経営者層と現場の意見を上手にミックスさせながら、現場に指示を出します。
また、中間管理職たちによる部門間での調整も主な業務の1つです。
関連記事:中間管理職とは?役割や必要なスキル、優れたミドルマネジメントの育成方法を解説
ロワーマネジメント
ロワーマネジメントは現場で勤務する従業員を管理する階層です。
具体的には以下の役職が挙げられます。
- 主任
- 現場責任者
- チームリーダー
ロワーマネジメントの主な業務は、現場で勤務する従業員の指導・管理です。
また、自らが最前線に立って業務を遂行する時もあります。
マネジメントは機能別にも分類できる
マネジメントは機能別に以下のようにも分類できます。
- 組織マネジメント
- 人材マネジメント
- プロジェクトマネジメント
- メンタルヘルスマネジメント
それぞれ詳しく見ていきましょう。
組織マネジメント
組織マネジメントは組織運営を主眼に置いたマネジメントです。
具体的には、以下が挙げられます。
- チームマネジメント
- リスクマネジメント
- ナレッジマネジメント
組織マネジメントで求められるのは、組織を円滑に運営することです。
組織は何人かの従業員によって構成されています。
この複数の従業員が歯車だとしたら、歯車を円滑に回すための潤滑油がマネージャーです。
また、歯車の間にゴミが挟まらないようにするのも組織マネジメントの業務内容だと言えます(リスクマネジメント)。
関連記事:組織マネジメントとは?個々の能力を引き出し生産性を上げる方法
人材マネジメント
人材マネジメントは、人材管理を目的としたマネジメントです。
具体的には以下が挙げられます。
- タレントマネジメント
- モチベーションマネジメント
- パフォーマンスマネジメント
先ほど紹介した組織マネジメントが潤滑油だとしたら、人材マネジメントは歯車の修理業者のようなものです。
歯車そのものに異常がないかどうかを確認し、異常を発見した際に適切な処理を施します。
また、パフォーマンスを最大化させるために、どのように歯車を配置したらいいかを考えるのもマネージャーの仕事です。
関連記事:組織におけるタレントマネジメントとは?人材確保と育成に役立つ方法を解説
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントは、プロジェクト管理に主眼を置いたマネジメントです。
具体的には以下が挙げられます。
- タスクマネジメント
- タイムマネジメント
- 品質管理
プロジェクトマネジメントは、プロジェクト達成までのスケジュール・タスク管理が主な業務内容です。
また、企画・計画立案から参加することも珍しくありません。
関連記事:マネージャーなら絶対身につけておくべき「タスクマネジメント」とは?
メンタルヘルスマネジメント
メンタルヘルスマネジメントは、従業員の健康管理に主眼を置いたマネジメントです。
具体的には以下が挙げられます。
- アンガーマネジメント
- ストレスマネジメント
- 健全な職場環境構築
組織は結局のところ「人の集まり」です。そして人は経営資源である前に、生き物でもあります。
組織の成果を最大化するためには、従業員の健康管理にも気を配る必要があると言えるでしょう。
「ストレスは万病の元」であり、ストレスの発生要因として、よく挙げられるのが「仕事」です。
ストレスが発生しない健全な職場環境を構築できるマネージャーが求められています。
マネジメントはアプローチでも分類できる
さらに、マネジメントはアプローチで分類可能です。
- 科学的管理法
- 人間関係論
- 総合的品質管理(TQM)
それぞれ詳しく解説していきます。
科学的管理法
科学的管理法は、経営学者であるフレデリック・テイラーによって考案されたマネジメント手法を指します。
労働時間を測定したり、報酬制度の基準を作成したりなど、客観的な要素を中心に管理することで生産性を向上させるというアプローチです。
科学的管理法が登場する20世紀始めまでは、マネージャーの経験頼りによるマネジメントが実施されていました。
しかしマネージャーの経験が非効率的であることが多く、労働者と企業がぶつかるケースが後を絶たなかったのです。
そこで登場したのが科学的管理法です。
科学的管理法は客観的な基準を元にマネジメントを実施するため、労働者が納得しやすく、マネジメントの質を安定させられるのが特徴となっています。
人間関係論
人間関係論はエルトン・メイヨーによって提唱されたマネジメント手法で、職場の人間関係を改善することで組織のパフォーマンスを高めるアプローチとなっています。
テイラーによる科学的管理法のおかげで生産性が向上するものの、当然のことながら「生産性が向上するほど従業員が疲れる」という問題が出てきます。
そこでメイヨーは「どのようにすれば疲れが取れるか」を研究するために様々な実験を実施するのです。
そしてこの実験で得られたのが「人は経済的効果よりも社会的効果を欲し、合理性よりも感情を優先する」という考えでした。
つまり、客観的な基準だけでなく、人間関係やコンディションも生産性に影響を及ぼすという結論に行き着いたのです。
人間関係論を用いた手法の典型例としては、1on1ミーティングなどの、部下とのコミュニケーションが挙げられるでしょう。
総合的品質管理(TQM)
総合的品質管理(TQM)は、品質管理を中心に据えたマネジメント手法で、1980年代のアメリカで提唱されました。
品質向上とプロセス改善に注力していることに加え、組織のメンバー全員で改善に取り組むというのが特徴となっています。
また、TQMは製造業だけでなく、サービス業における顧客満足度にも応用できます。
それぞれの階層で求められるマネジメントとは
ここでは、先ほど紹介した3つの階層ごとに求められるマネジメントを紹介していきます。
トップマネジメントの場合
トップマネジメントは他の階層に比べて、より長期的な視点に基づくマネジメントが求められると言えます。
常に未来を見据えながらビジョンを策定し、それに基づいて現実的な計画を立てる必要があるため、論理的思考力や想像力が求められると言えるでしょう。
また、ステークホルダーとの関係を構築するのもトップマネジメントの役割です。
現場の従業員とコミュニケーションを取る機会が少ない一方で、社外のステークホルダーとのコミュニケーションが多くなります。
利害調整や貸し借りなどの駆け引きが求められるので、高度な交渉力が必要です。
ミドルマネジメントの場合
ミドルマネジメントは、複数のチームを管理する必要があるため、人材マネジメントが求められます。
適切な人材配置を心がける必要があるでしょう。
また、経営者層の意見を現場に反映させる役割があるため、情報共有を促進させるための高度なコミュニケーション能力が求められます。
それに加え、現場との距離がほどよく遠いミドルマネジメントは、職場環境改善にも乗り出しやすいでしょう。
ロワーマネジメントの場合
ロワーマネジメントはプロジェクトを管理する立場にあることが多いので、プロジェクトマネジメントが求められます。
また、部下との距離が最も近い管理職なので、メンタルヘルスマネジメントやパフォーマンスマネジメントも求められると言えるでしょう。
それに加えて、実際に自らが業務に着手し、その時々で業務プロセスを改善することも可能です。
トップマネジメントとの距離が遠いため、大々的なマネジメントを実施するのは難しいですが、細かい部分での修正が容易な階層でもあります。
「神は細部に宿る」という言葉がありますが、ディティールの修正を実行できるのはロワーマネジメントだけなのです。
まとめ
それでは本記事をまとめていきます。
- マネジメントを分類して理解することのメリットは大きい
- マネジメントを分類する際は「階層」「機能」など様々な要素がある
- 階層別で求められるマネジメントは異なる
もしマネジメントに悩みを抱えているのであれば、今一度、自分のマネジメント業務を分類してみてはいかがでしょうか。
一旦整理することで、新たな解決の糸口が見つかるかもしれません。ぜひ試してみてください。