変化の激しい現代の市場環境において、業績を最大化し、競争力を保つためには、明確かつ挑戦的な目標設定が必要です。
これを達成するための1つの方法として、OKR (Objectives and Key Results) というフレームワークがあります。
OKRは日本ではまだ広く知られていませんが、株式会社メルカリなどの新興企業が導入して成功をおさめており、徐々に注目されるようになってきました。
この記事では、OKRの基本的な概念を解説するとともに、KPIとの違い、さらにOKRを導入する際のメリットと注意点についても詳しく解説します。
OKRを効果的に活用し、組織全体の成功につなげていきましょう。
目次
OKRとは?
OKRのO、すなわち”Objectives”(目標)は、組織が達成を目指す具体的な目標を表します。
これは大胆で野心的なものであるべきであり、社員にとって良い緊張感を感じられるような高めの(ただし十分な努力とリソースを投じれば現実的に達成可能な範囲の)目標を設定するのが望ましいです。
一方、KR、すなわち”Key Results”(主要成果)は、その目標が達成されたときに得られる結果について具体的に示す指標です。
KRは定量的かつ測定可能である必要があります。
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KPIとの違いは?
KPI(Key Performance Indicator)は「重要業績評価指標」とも言われ、企業や組織の目標達成度合いを測定するための指標です。
KPIは、主に現状のパフォーマンスのモニタリングと改善のために使用されます。
一方、OKRは目標設定と達成のフレームワークです。
KPIが「現状をどう評価するか」にフォーカスした測定のための指標として使われる一方で、OKRは「これから何を達成するべきか」を明らかにし、社員のモチベーションを高める働きがあります。
つまり、OKRとKPIはどちらか一方しか使えないというものではなく、共に使用することも可能ということです。
この二つを併用すれば、組織のパフォーマンスの改善とともに、大胆な目標に向けて進む道筋を示せるようなります。
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OKRを導入するメリット
OKRを導入する具体的なメリットとしては以下の4つが挙げられます。
- 目標の明確化
- モチベーションの向上
- 異部門間の目標統一
- チームワークの向上
以下、それぞれについて説明していきます。
1.目標の明確化
OKRは組織全体だけでなく、各個人やチームレベルでも明確な目標設定が可能です。
これらの目標は、大胆でありながらも達成可能なもので、その達成を測定するための具体的な指標を伴います。
これにより、社員は自分の仕事が組織全体の目標にどのように貢献するのかを明確に理解できます。
また、何を達成するべきかが明確になることで、仕事の優先順位を付けやすくなり、結果的に生産性向上にもつながるのです。
2.モチベーションの向上
OKRでは、部署・チームと連動した個人単位の目標も設定します。
社員一人ひとりが、自身の目標を達成するための方法を自分自身で考え、自由に行動する余地が与えられます。
これにより、社員は自分の仕事を自分事として捉え、高いモチベーションを持って目標に邁進することが可能です。
関連記事:企業に長期的に恩恵をもたらす「モチベーションマネジメント」とは?
3.異部門間の目標統一
OKRフレームワークは、全社の目標を明確にし、各部門や個々の従業員がその目標に向けて連携できるよう促します。
これにより、異なる部門やチームがそれぞれ自身の部署の都合だけを考え、別の方向に進むことを防げるのです。
全社が一致団結して同じ方向に進むことが可能になります。
部門間の対立は組織の生産性や効率性を妨げる主なマイナス要因の一つとして、多くの経営者やビジネスマンを悩ませる問題です。
OKRは、このような“組織のタコツボ化”の問題を解決し、組織の目標達成と発展に貢献します。
4.チームワークの向上
OKRは、目標と進捗状況を公開し共有することで、組織全体の透明性を確保します。
これにより、従業員は自分の目標達成状況はもちろん、他のチームや部門の目標・進捗状況の把握が可能です。
さらに、他のチームの目標や挑戦を理解することで、相互の協力関係や助け合いを促し、チームワークを高めます。
また、進捗状況を全体でシェアすることで、従業員が自身の貢献や努力を皆に知らしめ、自身の仕事に誇りを感じるようにもなるでしょう。
シェアされた個人の成果を組織全体で称え合うことで、組織全体で共有の文化が育まれ、従業員の満足度やエンゲージメントを向上させる効果を期待できます。
関連記事:チームワークを強化するマネジメントは可能?リーダーがやるべきことを解説
OKR導入の注意点
OKR導入には確かに多くのメリットが存在しますが、一方で、適切に導入・管理されない場合には予想外の問題を発生させる可能性もあります。
以下が、OKR導入時に注意すべき主要なポイントです。
- 適切な難易度の目標設定
- 丁寧なフィードバックとレビュー
- 組織全体によるコミットメント
- 量より質を重視する
以下、それぞれの注意点について詳しく解説していきます。
1.適切な難易度の目標設定
OKRの目標設定は、大胆かつ挑戦的であることを求めることで、社員の努力を最大限に引き出すことができます。
しかし、あまりにも現実離れした過大な目標は、かえって社員のモチベーションを低下させたり、ストレスを増大させる可能性があります。
そのため、目標設定は挑戦的でありながらも、リソース、能力、時間枠などを考慮した現実的なものでなければなりません。
この「現実的に考えて目標設定する」という原則を守らず、とにかく大きな目標を設定することが横行すれば、OKRは効力を発揮しません。
むしろ、組織の中で“精神論”がはびこり、現実的な判断を重んじない癖がついてしまうなどの弊害につながります。
目標設定の過程では、適切な判断力を備えた上席やマネージャーなど、全ての関係者が参加し、フィードバックを提供することを推奨します。
2.丁寧なフィードバックとレビュー
OKRは定期的なフィードバックとレビューによってこそ効果が生まれます。
目標を設定後も放置せずに追跡し、定期的に進捗状況をチェックし、必要な調整を行いましょう。
ただし、このフィードバックとレビューのプロセスが不適切だと、従業員の混乱やモチベーション低下を招く可能性があります。
評価者の見方が偏っていると台無しになってしまうので、建設的かつ公正にレビューする能力のある評価者を任命するべきです。
関連記事:部下への正しいフィードバック方法とは?手順やポイント、注意点を解説
3.組織全体によるコミットメント
OKRを成功させるためには、組織全体のコミットメントが必要です。
OKRは、上層部だけでなく、中間管理職やフロントラインの従業員まで全員が参加し、その理念とフレームワークを理解し、従うことが求められます。
OKRの理念が末端まで浸透していないと、現場の社員たちは「また上層部が形だけの制度を導入してきたよ」というふうに軽く受け止めてしまうでしょう。
そうなれば、真剣味の欠けた取り組みになりかねません。
したがって、OKRの導入と管理は、全体的な組織文化の変革を必要とする場合があります。
4.量より質を重視する
OKRでは、多くの目標を設定するよりも、より少数の重要な目標に集中することが推奨されます。
「二兎を追うものは一兎をも得ず」という諺がある通り、目標の数を増やすと、従業員の注意が散漫となり、重要な目標から目を逸らす可能性があるからです。
そのため、重要度の高い目標に焦点を絞り、それに集中することが求められます。
また、目標間の優先順位もはっきりと決めておくことが重要です。
まとめ
OKR(Objectives and Key Results)は、組織の野心的な目標(Objectives)とその達成を測る具体的指標(Key Results)を設定するフレームワークです。
KPIが「現状のパフォーマンスのモニタリングと改善」に重きを置くのとは対照的ですが、これらの二つの指標を併用することもできます。
OKR導入のメリットとして、目標の明確化、モチベーション向上、異部門間の目標統一、チームワークの向上が挙げられます。
正しく活用することで、組織全体の目標達成に向けて、従業員が一丸となって取り組めるでしょう。