長時間労働が原因で、離職者が増えたと感じている企業も多いのではないでしょうか。
離職者が増えたことで人手不足になり、さらに長時間労働が慢性化していくという悪循環を打開するためには、企業そのものの意識改革が必要です。
本記事では、長時間労働から人手不足に陥る5つの原因と具体的な解決策を5つ解説します。
長時間労働と人手不足に有効な解説策を、再現性のある形で提示しているのでぜひ参考にしてください。
目次
人手不足を引き起こす長時間労働の原因5選
長時間労働によって引き起こされる人手不足の原因は、以下の5つです。
- 業務量が多い
- 従業員の業務量が把握できていない(マネジメント不足)
- 業務の効率化ができていない
- 従業員のモチベーション低下
- 企業文化の問題
業務量が多い
従業員一人ひとりの業務量の多さは長時間労働につながり、離職率を高める原因となります。
昨今の働き方改革や36協定の推進によって、従業員一人ひとりに対しての業務量は適性に管理されるようになってきています。
しかし、いまだに長時間労働を推進している企業も少なくありません。
特に、スタートアップや小規模の企業は少ない従業員で企業全体を運営しているため、長時間労働で企業を拡大する必要があります。
このような状況は従業員の疲労やモチベーションの低下につながり、離職率を高め、結果として企業の人手不足を招いています。
従業員の業務量を把握できていない(マネジメント不足)
企業の経営陣が従業員一人ひとりの業務量を把握しておらず、業務を多く抱えている人と余裕がある人に別れているケースがあります。
これは、業務管理を現場に任せきりにしてしまい、適切な人員配置ができていないためにおこることです。
結果として、経営陣が無理難題な業務を現場の従業員に課してしまいます。
そのため、従業員は長時間労働を余儀なくされ、離職率を高め、人手不足に陥ります。
業務の効率化ができていない
従業員一人ひとりの業務が効率化できていないため、結果として長時間労働が恒常化してしまいます。
本来、効率化できていれば適性な業務量で運営できるはずであっても、無駄が多いために労働時間が増えてしまっているという状況は、多々あります。
また、長時間労働によって、従業員自ら効率的な働き方を考え、実践していく余裕を持てません。
こうした職場環境・働き方が、離職にともなう人手不足につながります。
従業員のモチベーションの低下
従業員のモチベーションの低下は企業にとって死活問題です。
すると、生産性が低下すると同時に、品質も低下し、最悪の場合には事故の発生にもつながりかねません。
商品の品質低下や事故が発生してしまうと企業イメージが悪くなり、従業員の離職につながる可能性もあるため、従業員のモチベーション低下は企業として避ける必要があります。
もちろん、生産性の低下は長時間労働の要因でもあるため、モチベーションが下がれば生産性も下がって長時間労働が生まれ、長時間労働によって疲労が溜まればモチベーションが下がり…と、悪循環になっていきます。
関連記事:離職率を改善!業績アップにもつながるモチベーション管理方法を解説
企業文化の問題
「長時間労働は美徳」という根深い企業文化により、多くの離職者を出し人手不足となった企業は多いものです。
働き方改革以前、長時間労働は当たり前で、従業員は今では違法となるような時間の残業を行なっていました。
しかし、電通の長時間労働事件の露呈後、政府による急速な労働時間の規制により、働き方改革を推し進める企業は増加しました。
反対に働き方改革を推進しない企業は「ブラック企業」と揶揄され、長時間労働により多くの離職者を出し、人手不足の結果を招いています。
長時間労働における心身への影響
長時間労働によって発生する人手不足は、従業員の心身への影響も懸念されます。
具体的な懸念点は以下の2つです。
- 自殺者を生むリスク
- 精神疾患者を生むリスク
自殺者を生むリスク
長時間労働における人手不足は業務量の増加により、従業員の心身を疲弊させ、自殺に追い込む可能性があります。
労働基準法では、時間外労働は月に約80時間以下とされています。
したがって、1日約4時間の残業が常態化している場合、従業員が疲弊し自殺してしまうリスクが高い状態です。
もし自殺者を生むような事態になれば、尊い命を死に追いやってしまうという事実はもちろん、ますます人手不足になり、企業のイメージも大きく損なわれます。
自殺者を出さないために、企業の経営陣は率先して長時間労働を無くす、具体的な施策を考える必要があります。
出典:厚生労働省:我が国における過労死等の概念および政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況
精神疾患者を生むリスク
人手不足による長時間労働によって、業務量が増え精神障害を発症し、労災認定されるケースも少なくありません。
精神障害は一度発症すると治りにくい病気のため、仕事に復帰するまでの時間が多くかかり、人手不足を招きます。
2021年の厚生労働省の発表によると、業務による過労の労災認定は276件とされており、これは過去最大の数字です。
従業員に大きな負担がかかった結果、精神疾患者を生んでしまうのは実態として明らかです。
長時間労働による人手不足の解消に向けた対策5選
長時間労働による人手不足を解消するためには、以下5つの対策が必要です。
- 36協定の上限に従った労働時間の提示
- 労働時間の見える化を行なう
- 有給休暇の取得を推進
- ストレスチェックの導入
- 業務マネジメント研修の推進
36協定の上限に従った労働時間の提示
36協定では、従業員一人当たりにつき、1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間を40時間と定めています。
長時間労働による人手不足解消に必要な施策です。
もちろん、業種により実現不可能な場合があるため、1ヶ月45時間まで延長できます。
36協定は労働基準監督署との協定のため、経営陣は従業員の労働時間を管理する必要があります。
仮に36協定から逸脱した長時間労働を従業員に課してしまった場合、企業は監査で厳しい処分を受けなくてはなりません。
逆に、36協定を結び、遵守している企業は従業員の労働時間をきちんと管理しているという、良いイメージを与えられます。
労働時間の見える化を行なう
従業員の労働時間可視化は長時間労働がどのように起こっているか把握することができます。
それにより、どこにどのような対策が必要かもわかり、労働時間の削減や人手不足の解消、業務効率化につながります。
まずは、経営陣が率先して従業員一人ひとりの労働時間を把握し、見える化する取り組みが大切です。
また、労働時間の申告というやり方では、虚偽の申告が起こる可能性もあります。
そういったパターンを防ぐためにも、経営陣が率先して労働時間の見える化を推進することが大切です。
関連記事:労働基準法における労働時間とは?把握・管理する方法や残業時間、労働時間制度を解説
有給休暇の取得を推進
企業として従業員の労働時間を管理するのは必須ですが、年次有給休暇取得の推進も同様に重要です。
労働基準法の改正により、従業員は原則最低5日の年次有給休暇の取得が義務付けられました。
日本の企業では、いまだに年次有給休暇が取りにくい風習は続いていますが、推進できれば休暇をきちんと取れる企業としての安心感が高まり、イメージも上がります。
年次有給休暇は、従業員の権利です。経営陣は、従業員が積極的に年次有給休暇を取りやすい職場環境を構築する必要があります。
ストレスチェックの導入
長時間労働による人手不足の原因は、従業員の業務に対するストレスが大半です。
過度なストレスによって従業員は心身共に疲弊してしまい、離職を招き人手不足につながります。
従業員一人ひとりのストレスは見えにくいため、個人面談やアンケートなどを用いたストレスチェックの導入がおすすめです。
たとえば、WEBを使い匿名でアンケートを取ったり、個人面談で従業員の不安や不満をヒアリングしたりするのが始めやすいでしょう。
ストレスチェックにより、企業への信頼感が増し、離職率低下と人手不足解消につながります。
関連記事:ストレスチェックを実施した結果をどう活かす?職場におけるメンタルヘルスマネジメントの注意点や改善方法など
業務マネジメント研修の推進
2017年の経済総務省のアンケートによると、長時間労働によって人手不足に陥る原因の大半として、従業員の管理不足が挙げられています。
そのため、業務マネジメント研修の推進を行なう企業は増えてきました。
具体的には従業員の適切な配置管理やメンタルケアなど、いかに従業員が働きやすい環境を整えられるかが重要です。
マネジメントスキルは経営陣一人ひとり差があるため、マネジメント研修で従業員に対する適切な管理方法を学び、各事業所で落とし込みます。
業務のマネジメントは、従業員の長時間労働を無くすだけではありません。
業務の見える化、従業員との付き合い方も知る機会となるため、離職率を下げ、人手不足解消に役立ちます。
まとめ
働き方改革、労働基準法の改正により、過度な長時間労働は違法とみなされる背景を受けて、各企業は労働時間の見直しを図っています。
しかし、一部の企業ではいまだに残る「長時間労働は美徳」という悪習によって従業員は振り回されている状況です。
長時間労働により、従業員は離職し、人手不足となるのは明白です。
人手不足を防止するために、まず経営陣が率先して従業員の長時間労働を改善する対策を講じる必要があります。
本記事を元に長時間労働の見直しを図り、人手不足を解消する手がかりを探してみてください。