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ストレスチェックを実施した結果をどう活かす?職場におけるメンタルヘルスマネジメントの注意点や改善方法など

ストレスチェックを実施した結果をどう活かす?

仕事にはストレスがつきものであり、このストレスとどう付き合っていくのかが問題となっています。しかし、ストレスとうまく付き合えず、休職・退職をする人も少なくありません。

企業としては、こうしたメンタルヘルスを理由に休・退職する社員を減らすためにも、社員の福祉に配慮した体制を整えたいところでしょう。

本記事では、ストレスチェック後の対応や改善について解説していきます。

 

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2015年にストレスチェックが法律によって義務化

労働政策研究・研修機構の調べによると、平成25年から過去3年間だけでも、企業の約半数に休職者がいることが分かっています。[1]

この休職理由の割合は、「がん」が42.7%でトップを占めているものの、次点の「メンタルヘルス」という理由は僅差の42.3%です。[1]

このような労働者の背景を受けて、2015年12月から、50人以上の労働者のいる事業所に対し、ストレスチェックを行うことが国から義務付けられました。[2]

ストレスチェックの対象となるのは、契約期間が1年以上か、あるいは週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上の社員、パート、アルバイトすべてです。

労働者は、心身がストレスによって悪影響を受ける前に、質問紙(アンケート)によって調査を行い、希望があれば医師による面接指導を受けることができます。

実施者と本人(医師や保健師)以外には、本人の同意がなければ、ストレスチェックの結果を開示されることはありません。

 

では、ストレスチェックでは実際にどのようなことを質問されるのでしょうか。厚生労働省がストレスチェックの法制化にともない、質問紙のモデルを公開しています。

モデル質問紙では、57項目(簡易版は23項目)を「そうだ」から「ちがう」までの4件法で調査します。

そのモデル質問紙にある項目をいくつかピックアップしてみましょう。[3]

 

【あなたの仕事についてうかがいます。】
・私の部署内で意見のくい違いがある
・私の職場の雰囲気は友好的である

【最近1か月間のあなたの状態についてうかがいます】
・悲しいと感じる
・だるい
・元気いっぱいだ

【あなたの周りの方々についてうかがいます。】
・あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか?(選択肢:上司、職場の同僚、配偶者・家族・友人等)
・あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?(選択肢:同上)

質問項目は非常に簡素で、回答へのハードルは低く設定されています。誰もが簡単に答えられるようにという国の配慮がうかがえます。

 

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本当にストレスの高い人は嘘解答する可能性も

しかし、上記でご紹介したストレスチェックは、すべて質問紙上で行われます。回答する時も場所も指定されるものではありません。

質問紙調査は、実施者が直接回答者と接触する必要がなく、一度に多数の人々に実施・分析できるというメリットがあります。

しかしその反面、回答者の微妙な反応や、質問の趣旨の誤解に関して、機敏に対応することが難しくなるでしょう。[4]

例えば「だるい」「悲しいと感じる」という要因が家庭にあるのか、職場にあるのかは、この質問紙だけでは明確にすることが困難です。

しかも、質問紙法は嘘をつこうと思えば、簡単に嘘をつくことができます。本当は大きなストレスを抱えているのに、それに気が付かれたら仕事が回って来なくなるという恐れを抱えている人は、嘘解答をするかもしれません。

しかし、本来メンタルヘルスマネジメントを行わなければならない人は、このような人なのです。

そのため、会社責任者の方には、ストレスチェックを実施する前に、実施することで生じる労働者へのメリット(医師からの面接指導によってストレスが軽減する可能性)をよく伝えるようにし、嘘解答を防ぐことをおすすめします。

嘘解答によって、気が付いたときには精神病によって休職しなければならなくなっていた…という事態を防ぐためです。

また、ストレスチェックは法制化されましたが、実はストレスチェックを行わなかったことに依る直接の罰則はありません。

実施したにもかかわらず労働基準書への報告を行った場合、最大で50万円以下の罰金が課されることがありますが、事実上努力義務としての運用に留まっていると言えるでしょう。

さらに、労働者側も法的拘束力のないストレスチェックを受けるようにと指示されても、回答を拒否することもできます。

「そんなことに時間を使っている場合ではない」くらい追い詰められている従業員は、回答を拒否するかもしれないのです。

 

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経営者・管理職クラスに求められる対応は?

労働による心身のリスクを未然に防ぐことを目的として法制化されたストレスチェックですが、実施前・実施中には上記のような、回答にまつわる従業員の姿勢という問題が残ります。

しかし、さらに重要な問題は、ストレスチェックを行った後にあるのです。経営者や管理職クラスの人間は、ただストレスチェックを受けさせるだけではなく、ストレスがたまりにくいように職場環境を改善する必要があります。

なぜならば、ストレスチェックの結果、および医師による面接指導の結果は、事業者が労働基準監督署に年1回の頻度で報告しなければならないからです。

ストレスチェックの結果に問題があってもなくても、年1回、厚生労働省が取り決めた書式に記入して提出します(書式は厚労省のホームページで確認できます)[5]。

自分から医師による面接指導を希望する従業員があまりにも多ければ、経営者ひいては管理職も労基署からの指導を受けることになります。

その前に、実施可能な対策を考えておきましょう。まず、面接指導を希望するレベルの従業員は、SOSを発信している可能性があります。

勤務中の表情、食事の量、会話の量などを観察し、明らかに元来の性格的特徴のせいではなく、外的要因による変化が見られる場合は、事前にヒアリングを行いましょう。

実際、厚生労働省の調査(2017年)によると、仕事や職業生活における不安やストレスについて相談できる相手は、「家族・友人」が85.3%と最も多く、次いで「上司・同僚」が77.1%となっています。[6]

もちろん、その従業員が拒否することもあり得ます。その場合は産業医などの資源情報を提供し、上司に相談するのではない手段も明示することをおすすめします。

 

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職場メンタル不調の原因は、人間関係にアリ

メンタルヘルスマネジメントの一環としてストレスチェックを行うことが義務化され、経営者や管理職に相談する人も多いことは事実です。

しかし、働く人のストレッサー(ストレス源)の中には、確実に上司も含まれています。

そうなると、ストレスは確実にあるのに、仕事上の問題なら特に上司には相談できません。

社員のストレッサーが自分(経営者・管理職)にならないよう、ストレスチェックの項目を再確認し、何が社員のストレスになり得るのかを把握しておきましょう。

また、人間関係は同僚や後輩、先輩職員とも育まれているものです。職場集団の中は、部署や年代など、さらなる小集団に分けられます。

このようなフォーマルな中のインフォーマルな集団が、人には重要かつ決定的な意味を持っているのです。[8]

誰でも経験のあることですが、インフォーマルな集団では子どもじみた無視、いじめのようなトラブルが発生する可能性があります。

インフォーマルだからこそ見て見ぬふりをする上司も多いものですが、そのインフォーマルな小集団が、ある従業員にとっては死を意識するほどのストレスになっているのです。

こうした関係性に目をつぶらず、問題解決を得意とする社員にそれとなく介入させたり、時にはあなた自身が緩衝剤になったりすることも必要になるでしょう。

 

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まとめ ストレスチェックで見つかった問題は改善をしよう

法制化されたストレスチェックは、社員が自ら希望しないと、医師による面接指導を受けることもなく、結果も実施者である一部の社員以外にはわからないため、上司にはフィードバックされません。

ストレスチェックする者は社内で任意に決めた担当者であり、実施するのは医師や保健師といった外部機関の人間です。

ストレスチェックの結果は、医師が直接回収すること、労働安全衛生法によって人事権を持つ職員が閲覧してはいけないという規定があります。[9]

しかし、あまりにも社内に医師による面接指導を受ける者が多ければ、労基署からの指導が入ることもあります。

これは、会社のメンタルヘルスマネジメント体制のレベルの低さを国がチェックし、会社にフィードバックして環境改善を促すための方策なのです。

経営者および管理職としては、人間関係や労働環境を整え、面接指導というボーダーラインを越える前に社員のSOSに気が付くことが必要となるでしょう。

 

ところが、部下の心配ばかりしている経営者・管理職も自身のケアを怠ってはいけません。管理職の61.8%が仕事や職業生活に強い不安、悩み、ストレスをもっており、管理監督者自身のセルフケアも重要です。[9]

ストレスを受けやすい性格としては、まじめ、几帳面、仕事好き、他人との円滑な関係を保つことに気を使うなどが挙げられます。[10]

該当する人は、事業者、産業保健スタッフ等による対策も必要です。事業者は、管理監督者について、十分な権限、相応の待遇などを与えているか、労働時間が管理されているかを確認すべきです。

問題が認められれば、すみやかに、かつ適切に改善する必要があるでしょう。

 

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参照

[1] 労働政策研究・研修機構(JILPT) ~「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」調査結果~ https://www.jil.go.jp/press/documents/20130624.pdf#zoom=100
[2]厚生労働省 ストレスチェック制度に関する法令 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000181833.pdf
[3]厚生労働省  労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf
[4]高橋順一・渡辺文夫・大渕憲一 編 人間科学研究法ハンドブック 第2版 株式会社ナカニシヤ出版 2011年
[5]厚生労働省 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書  https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/24.html
[5]厚生労働省 労働者調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h29-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
[6]塚野州一 編 みるよむ生涯発達心理学―バリアフリー時代の課題と援助― 2005年 (株)北大路書房
[7]大阪商工会議所 編 メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト[第2版] 2009年 (株)中央経済社
[8]下田光造 著 躁うつ病の病前性格について 日本精神神経学雑誌 45巻 1941年
[9] 厚生労働省 ストレスチェック制度導入マニュアルhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf

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