派遣社員の離職率が高いことに悩んでいる企業担当者もいるのではないでしょうか。
派遣社員は正規雇用ではないため、採用プロセスが少なく、コストも抑えられるなどのメリットがあります。
しかし、離職率が高ければそれらの効果も薄れてしまいます。
この記事では、派遣社員の離職率が高い理由とその解決策、取り組み事例を紹介します。
派遣社員の離職率を早急に改善したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
参考記事:なぜ離職が発生するのか?その真の要因とは
目次
派遣社員の離職率が高い5つの理由
派遣社員は、待遇や業務内容を派遣先の社員と比べて見た時に差が生じやすく、それらが離職の理由につながっていることが多々あります。
派遣社員の離職率が高い理由は以下の5つです。
- 給与・待遇に対する不満
- 業務内容に関する不満
- 将来への不満
- 社内の人間関係
- 採用プロセスの問題
給与・待遇に対する不満
派遣社員は、有期雇用契約を結ぶ場合が多いでしょう。
実際に勤務が始まると、正社員と労働力が同じにもかかわらず、待遇面で不満を感じて離職してしまうケースがあります。
また、派遣社員は派遣会社から給与を受け取る場合が多く、正当な評価と成果に見合った報酬を得られない場合も多いでしょう。
派遣社員に給与・待遇に関する不満が蓄積すると、離職につながってしまいます。
業務内容に対する不満
残業の多さや休日の少なさなどは、精神的・身体的に影響を及ぼしかねません。
ライフワークバランスを重視している人にとっては、離職につながる原因となります。
また、いざ働いてみると「想像と違った」「自分には合わない」など、業務内容のミスマッチも不満につながりやすい懸念材料です。
特に、介護職や飲食業などのサービス業は、体力的に不安を抱えながら働かなければなりません。
長時間労働にならないような雰囲気づくりはもちろん、体調面やメンタル面での配慮を心がける必要があります。
将来への不安
派遣社員は非正規雇用労働者であるため、給料は不安定で長期雇用が約束されていません。
また、高齢になるにつれ体力面を考慮する必要が出てくるため、受け入れてくれる派遣先も少なくなる傾向です。
さらに、賞与や退職金が出ないなど、将来を不安視して離職につながる可能性もあります。
社内の人間関係
派遣社員がいる会社では、無意識的に正社員の方が立場が高いと考える人も多くいます。
そのため、派遣社員が正社員とのコミュニケーションがうまくとれず、孤独を感じてしまうケースがあります。
たとえば、やる気をもって取り組んでいる派遣社員に対して、やる気やプライドを削ぐような発言には注意が必要です。
採用プロセスの問題
派遣社員の選考に問題があり、入社後にギャップを感じる人は少なくありません。
たとえば、派遣会社との連携がうまくいっていなかったり、採用までの工数や日数が少なかったりすると、派遣されてくる人材が企業の情報や業務内容をあまり理解していない、企業側が派遣社員の情報を収集できない状態となってしまいます。
こういった採用プロセスは離職の要因となるでしょう。
派遣社員に対する社会の対応
派遣制度自体が問題視される時期がありましたが、2020年から同一労働同一賃金が見直され、待遇が改善されたことで離職率は年々少しずつ減少しています。
同制度は、正規雇用労働者と派遣社員・契約社員などの非正規雇用労働者との待遇差解消を目指した政策です。
非正規雇用を選択する労働者が増えている中で、政府は働き方改革の1つとして不条理な待遇差をなくし、さまざまな働き方ができる社会を目指しています。
厚生労働省の調査では、制度が施行されたことにより、労働者派遣事業者の約77%に派遣社員向けの退職金制度が設けられていることが明らかにされています。
参考:「派遣社員にも退職金」定着 事業所の77%、厚労省集計
派遣社員の離職率を改善する5つの解決策
派遣社員が職場に定着しないと業務が滞り、不足したリソース分の人的負担を抱えることになります。
以下では、具体的な5つの解決策を紹介します。
離職率の減少とともに社内の満足度アップ・優秀な人材の定着につなげましょう。
- 給与・待遇の改善
- 人間関係の改善
- キャリア支援・正規雇用への以降
- 派遣社員へのフォローアップ
- 採用プロセスの改善
参考記事:離職防止とは?注目される背景やリスク、原因や対策を解説
給与・待遇の改善
派遣社員が優秀で正社員以上の働きをしても、給与・待遇が良くない傾向にあれば、不公平さが生まれてしまいます。
そのため、企業側は派遣社員に対して、仕事量相応の待遇改善が重要です。
たとえば、昇給やボーナスの支給、残業時間削減などが挙げられます。
福利厚生の充実や有給休暇の取得義務化も有効でしょう。
人間関係の改善
人間関係を改善するためには、自社の社員が積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
派遣社員の多くが、上司や正社員とのコミュニケーションが苦手だと感じています。
たとえば、相談できる相手がいない、誰もフォローしてくれないなどの職場環境は、派遣社員にとって居心地が良くありません。
自社の社員から派遣社員への行動を促し、働きやすい環境を整えてあげましょう。
また、派遣社員と自社社員の双方に、面談やカウンセリングを実施し、現状を把握しながら改善していくのも重要です。
キャリア支援・正規雇用への移行
現在、多くの派遣事業者が派遣社員のキャリア形成に向けた取り組みを始めています。
たとえば、キャリア支援プログラムの設計やスキル・資格取得などのキャリアコースが挙げられます。
また、有期雇用の派遣形態から自社採用に移行し、正社員として雇用する機会を設けることも、派遣社員に安心感を与えるきっかけとなるでしょう。
派遣社員へのフォローアップ
派遣社員への精神的なフォローや、フォローアップ専任のスタッフを配置することで、離職率の低下につながります。
定期的なフォローができれば、業務で必要なスキルの定着度を測ることもでき、当人のスキルアップ支援も可能です。
また、フォローアップの際には、派遣社員の日々の言動にも注意しておきましょう。
ストレスや不安を抱えているときは、何かしらのサインが出ている可能性があります。
形式的にフォローするのではなく、献身的な態度で接することが重要です。
採用プロセスの改善
派遣社員を派遣会社から紹介してもらい採用するまでのプロセスを、以下の3つの観点で見直しましょう。
- 派遣される人材が未確定の場合でも、採用計画を事前に共有する
- 採用人数の絞り込みを、事業計画に応じて派遣会社と協議する
- 選考段階では、候補者の情報を綿密に把握し、派遣会社には自社情報を正確に伝えてもらう
採用プロセスの改善で、企業側と派遣社員側のミスマッチを最小限にできます。
派遣社員は自社採用でないため、すべてをコントロールすることはできませんが、上記で紹介したプロセスを怠らないようにしましょう。
派遣社員の離職率が改善された事例
派遣社員の離職率を改善するためには、他社事例を参考にすると良いでしょう。
下記では、厚生労働省が発表している派遣社員の離職率が改善された成功事例を2つ紹介します。
- キャリア支援による成功例
- 評価制度の見直しによる成功例
キャリア支援による成功例
神奈川県の会社では、業務へのモチベーションが低い派遣労働者について懸念を抱いていました。
そこで、等級と賃金を紐づけた意識改革も実施したところ、派遣社員の業務やキャリア形成への意欲向上につなげられました。
従来、将来的なキャリアイメージを具体化してもらうために、ライフプランを考える取り組みを行なってきましたが、効果はありませんでした。
現在は、派遣社員のキャリア形成へのニーズに合わせた複数のキャリアコースを設置しています。
「プロジェクト系」「技術・管理系」「技術系」などのコースを設置した、キャリアの選択肢を広げてもらうための取り組みです。
評価制度の見直しによる成功例
東京都の会社では、改正労働者派遣法に対応するための評価制度を設けましたが、当事者と現場の連携がうまくいっていませんでした。
そこで、現場の担当者が評価しやすく、かつ派遣社員にとってもわかりやすい3段階の評価制度に変更しました。
評価項目は「役割」「専門知識」「規律性」「コミュニケーション力」で、評価点に紐づいた報酬を与えています。
これにより、派遣社員が現状と将来の自分を理解しやすくなり、モチベーションを持って、また将来のキャリアに対して安心感を持って、業務にあたれるようになりました。
まとめ
派遣社員の離職率が高い原因は、待遇や業務内容、人間関係などの労働環境が挙げられます。
ほかにも、採用プロセスに問題があれば、ミスマッチが起こりやすく離職につながります。
改善するためには、派遣社員へのフォローアップや待遇の改善など、当人が働きやすいと感じられる環境を整えましょう。
また、派遣元会社との連携を徹底して、採用前から離職を防ぐための対策を講じることが重要です。