岸田内閣の支持率は2021年10月の発足時に50%前後あり、菅内閣の30%と比べ、高いスタートを切りました。コロナ禍でも乱気流のように上下することなく、50%前後で安定して推移。しかし今年の8月に下降し始め、11月現在30%近くまで下がっています。
リーダーとしては不安な状況でしょう。
なぜ、菅内閣の支持率が下がっているのでしょうか。その理由は、リーダーとしての舵取りそのものにあると私は考えています。
目次
権限と権力と権威
首相は日本で一番権力があると言えるかもしれません。権力の「権」とは「地位」を意味します。
リーダーはチームの最終的な意思決定者です。つまり意思決定の「権」の地位に就く人ですね。
「権」の付く言葉というと他に「権威」や「権限」が頭に浮かぶでしょう。
権威とはオーソライズされた主従関係により発生している従わせる力、権限とは組織においてルールの規定に基づき職権を行いうる範囲もしくは能力、そして権力とは他人を押さえつける力です。
権威とは
権威が成立するためのオーソライズのプロセスには、主従関係において利害が一致することが不可欠です。
プリミティブな利害関係の一致のさせ方にバイオレンスがあります。危害を加えないことを保証し、利害関係として従わせるのです。会社でのこれをやると「パワハラ」になりますよね。
もう一つ方法があります。それは、役割を決め対価を与えることです。
現代的な社会において企業はこれにより成立しています。従う側には一定の主を選択する権利が存在します。
権限と権力 権力者とは
現代社会において権力というのは、社会の構造上責任を伴った権限を持つ者が結果的に権限行使している際に発生している現象です。
なぜなら、利害関係のない奴隷のような服従関係は、職業選択の自由が許される範囲においては合法的には存在しないからです。責任を伴う権限なき権力が行使された場合は人権侵害により罰せられることになります。
したがって、企業で働いている人が誰かの権力を恐れたり、利用しようとしたりするとうまくいかなくなります。
現代的な社会構造においてそれらはルール違反であることが多く、ルールの範囲内でしか発生しない権限と合致しないため、秩序を破壊する要因としていずれは淘汰されるからです。
リーダーは決める人
リーダーは権限に基づき意思決定をし、その範囲において人に指示を出せます。岸田首相は、総理大臣という責任を果たすために決める権限を持つわけです。
岸田内閣の支持率が一時安定していた理由を私は「決めなかった」ことにあると考えています。
コロナ禍で多くの意思決定を行った第二次安倍内閣最終期と、菅内閣は厳しい状況下でも多くの意思決定を日本の未来のために行いました。
民主主義は原則多数決ですから、決めても一定数反対する人はいます。ましてや1億人以上の国民がいる日本においては、半分の賛成を得ても多くの反対者が出てくるでしょう。
不確定要素の多い危機時の意思決定というのは、決定プロセスの短縮と実施の早さが求められます。そのため、大概は多数の反対者を納得させる時間はないのです。
企業でいえば、イノベーティブな判断は賛成多数の意見にはないと言われています。
ソニーのウォークマンは技術者や営業の反対を押し切った当時の社長の英断でした。iPhoneも販売前の市場調査があまりに悪くマーケティングはじめ多くのネガティブな反対意見が出ましたが、ジョブス氏の決断で市場に出されました。
そもそも多くの人がよいと言っていることをやっているのが現状なので、そうでないものを出さなければ現状打破はできないのです。
企業であれば反対多数でも押し通せます。それで利害関係が合わない人は服従を強制されない、つまり辞めればよいだけですから。
しかし、民主主義国家ではそうはいきません。反対意見の人間にもバーターで今の利益を与え、賛成多数まで持ち込まないと実行できない難しさがあります。その上でも決めれば反対勢力は声をあげ、今はそれをインターネットで拡散し、あたかも多数派を装い対抗してきます。
だから、決める人は嫌われるのです。
それでも、決めたことでそれに従った側が利益を得られればそれは支持につながります。とはいえ、選挙は定期的に来ますから、首相の決断が近視眼的になってもおかしくはありません。
私は、岸田内閣は故安倍元総理の葬儀をするという決断をしたことで、今まで決めないでいたから下がらなかった支持率が下がったというだけだと考えています。
リーダーは決めることで嫌われることを臆せず、意思決定する責任があり、決めても結果が伴わなければそれに対しての責任を問われるのです。そういった存在だからこそ決める権限があるのだと言えます。
重要なのは判断基準です。
岸田内閣の決める基準が、私には「支持率を下げないこと」や「選挙で勝つこと」だと感じてしまいます。岸田総理が見るべきは「日本の未来」です。それを念頭に置けば、一時的な支持率の低下は別に大した問題ではないと思えます。
リーダーは自分を信じて部下に強制する
事業会社の社長のなかにも、社員や部下に嫌われたくないと考える人がいるでしょう。そう考えるのは仕方がないです。言うことを聞かなくなるので指示が通らず仕事がうまくいかなくなりますしね。
しかし、そういうときこそ、部下や組織の未来の成長を信じて、今部下にとって不利益なことでも必要と判断すれば英断し「やりなさい」と強制してみましょう。
そのくらいで利益相反するくらいの利益しか与えられていないのであれば、リーダーは務まりません。
未来に確実に結果を出せばよいのですから、自分を信じて、決めて、強制してみること。駄目ならやり直せば問題ありません。現代社会にはそれが許される仕組みがあります。
ただし、権力に目がくらんでルール違反をした人にはそのチャンスは与えられないので注意してください。