近年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って普及したリモートワークや、働き方改革の推進によって、働き方が大きく変化しています。
等級制度を含めた人事制度も、このような変化に対応することが求められています。
等級制度は人事制度において重要な役割を担う制度であるとともに、いくつか種類があるため、その違いをきちんと理解しておくことが大切です。
また、それを踏まえて、変化する状況において自社に最適なものを導入しなければなりません。
そこで本記事では役割等級制度について、
- 概要やその他の等級制度との違い
- メリット・デメリット
- 事例
- 導入・運用方法
を解説していきます。
目次
役割等級制度とは
役割等級制度とは、企業が掲げる目標を達成することを目的に、従業員が担う役割を明確にして、その役割の大きさによって等級や序列を定める制度です。
難しい仕事や重要な業務で成果をあげることで、相応の報酬や評価を得られるため「ミッショングレード制」と呼ばれることもあります。
ただ明確な定義はなく、それぞれの企業によって定義が異なっている点に注意が必要です。
等級制度とは
そもそも等級制度とは、従業員をいくつかの軸や基準をもとに評価し、責任や権限、処遇に反映させる制度のことです。
等級制度によって従業員は「会社が求めている人材」がどのようなものかを把握することができます。
等級制度において序列化する基準となるのは、主に下記の3つです。
- 能力:職能等級制度
- 職務:職務等級制度
- 役割:役割等級制度
それでは、役割等級制度とそれぞれの制度との違いを見ていきましょう。
関連記事:中小企業が導入するべき人事評価制度とは?活用ポイントを解説
役割等級制度と職能等級制度との違いとは
職能等級制度とは、「業務によって技術やスキルが高まっていく」という考え方を前提とした等級制度です。
したがって、勤続年数が長いほど業務経験がある=能力が高いと判断されるので、年功序列制度や終身雇用制度に基づいている等級制度だといえます。
メリットとしては、
- 長期的に人材を確保できる
- 組織改編をしやすい
といったものがありますが、一方でデメリットとしては、
- 優秀な若手のモチベーションが下がる
- 評価基準が不明瞭
などが挙げられます。
対して、役割等級制度は勤続年数や年齢を問わず役割を与えるため、年功序列的な性質は弱くなっています。
したがって、自分よりも年齢が低い上司や、年上の部下ができることが少なくありません。
役割等級制度と職務等級制度との違いとは
職務等級制度とは、職務の重要性や難易度の高さに基づいて等級を決める制度です。
欧米で一般的に用いられており、職務の内容を詳しく書いた「ジョブ・ディスクリプション」によって職務内容や必要なスキル、労働時間などを厳格に定めたうえで人材を採用します。
職務内容などが明確に定義付けられているため、従業員はその範囲内の業務を行い、範囲内の責任を負います。
一方で役割等級制度の場合は、職務等級制度よりも職務内容の自由度が高く、柔軟に定義されます。
また、役割を果たすためにどのような行動をするべきかを定義することが可能です。
役割等級制度のメリットとは
ここからは役割等級制度のメリットを見ていきましょう。
従業員のモチベーションが上がる
役割等級制度では、従業員の勤続年数によって能力を評価する職能等級制度とは異なり、与えた役割に対する成果を評価するため、従業員は合理的に評価されていると感じることができます。
これにより従業員のモチベーションが上げられる点がメリットです。
このような合理的な評価は、従業員のモチベーションだけでなく、エンゲージメントや定着率の向上にも期待できます。
関連記事:社員のモチベーションを高めるには? 理論をもとにした具体的な方法を解説
従業員が自主的に行動する
2つ目のメリットは、従業員の自主性を高めることができる点です。
役割等級制度によって、従業員は「会社が自分に何を求めているのか」を把握しやすくなるため、やるべき業務がはっきりして、自主的な行動を促せるようになるでしょう。
人材育成がしやすい
3つ目のメリットは、企業が求める人材を育成しやすいことです。
経営目標に基づいた役割定義をするため、企業にとって必要な人材を育てやすくなります。
また、役割定義によってはゼネラリストやスペシャリストの育成も可能です。
関連記事:人材育成計画の作成方法とは?理想の人材が育つ計画の立て方やポイントを解説
役割等級制度のデメリットとは
一方で下記のようなデメリットもあるため、運用する際は注意しなければなりません。
運用の難易度が高い
1つ目のデメリットは、運用の難易度が高いことです。
それぞれの等級の役割は経営目標に基づいて決めなければならないので、企業理念や経営戦略、企業風土などさまざまな要素を考慮する必要があります。
例えば、各従業員の緻密な連携が強みとなっているのか、または個人プレーが多くそれぞれのやり方に任せる社風なのかによっても、役割定義が変化します。
一部の従業員が不満を抱く
2つ目のデメリットは、一部の従業員が不満を抱く可能性があることです。
役割等級制度は成果を重視する制度なので、成果によっては降格や給与の減額などもありえます。
これにより、勤続年数が長いベテランの従業員でもその対象となり得るため、そのような従業員にとっては役割等級制度が受け入れられないといったこともあるでしょう。
まとめ:役割等級制度は正しく運用しよう
弊社識学は「マネジメントコンサルティング」会社です。
弊社では、正しい等級制度の運用ができるよう、無料でご相談いただける「無料相談」をご用意しています。
組織図・社員の給与でお悩みの際はぜひ弊社までご相談ください。