生産性を高めるための施策として、注目されているのが「ワークエンゲージメント」です。
従業員のワークエンゲージメントを高められれば、生産性向上だけでなく、様々なメリットを享受できます。
本記事では、ワークエンゲージメントの効果・メリット、測定方法、高め方を紹介していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
ワークエンゲージメントとは何?
ワークエンゲージメントとは、従業員の精神的な健康度や働いているときに感じる充実度、心理的状態を示す概念です。
ユトレヒト大学のシャウフェリ教授が提唱した概念で、主に下記の3つの要素を満たした心理状態を指しています。
- 熱意
- 没頭
- 活力
ワークエンゲージメントによって従業員の健康や生産性が大きく左右されるため、近年では日本でも注目を集めています。2019年に厚生労働省に公表した「令和元年版労働経済の分析」でも、「働きがい」として言及されており、
“「働きがい」の向上により、定着率や離職率に加え、働く方のストレス・疲労感、労働生産性、顧客満足度等が改善する可能性あり。”
としています。
(引用:令和元年版 労働経済の分析丨厚生労働省)
ワークエンゲージメントの3つの要素
ワークエンゲージメントは3つの要素で成り立っています。
熱意:仕事にやりがいを感じる
「熱意」とは、仕事に誇りを持って積極的に取り組み、仕事に対して意味を見出して、やりがいを感じている状態のことです。従業員に熱意があれば、チャレンジ精神や意欲が増すため、新たな製品やサービスの開発につながり、熱心に努力をするようになるでしょう。
没頭:仕事にのめり込む
「没頭」とは仕事にのめり込んでいる状態で、幸福感を感じて時間が速くすぎるような感覚になり、仕事を終えても常に仕事のことを考えてしまう状態を指しています。従業員が仕事に没頭していれば生産性が上がり、業務上のミスの削減も期待できるでしょう。
活力:いきいきと仕事をしている
「活力」とは、いきいきと仕事をしている状態で、心理的にも回復力があり、難しい課題にも対しても積極的に取り組むことができる状態を示しています。従業員に活力があれば、ストレス下でも前向きに仕事を楽しむことができるでしょう。
ワークエンゲージメントに関連する概念
ワークエンゲージメント以外の、従業員の精神的な側面を表す概念を解説していきます。
ワーカホリズム(ワーカホリック):ネガティブな過剰労働
「ワーカホリズム」とは、従業員の活動水準が高いものの、ネガティブな感覚を持ちながら働いている状態を指しています。活動水準が高いという点ではワークエンゲージメントと同様ですが、ワーカホリズムの場合は「働かなければならない」といったような強迫観念にかられている点が異なります。
バーンアウト(燃え尽き症候群):没頭しすぎによる意欲・関心の低下
「バーンアウト」とは、仕事に没頭しすぎることで疲弊し、仕事への意欲や興味関心が失われた状態を指しており、「燃え尽き症候群」とも呼ばれています。ワークエンゲージメントとは真逆であり、バーンアウトすると活動水準が低くなり、「熱意・没頭・活力」が無くなってしまいます。
ワークエンゲージメントによる効果・メリットとは
ワークエンゲージメントを高めるメリットは、大きく分けて5つあります。
生産性の向上
ワークエンゲージメントが高ければ、従業員が仕事に対して高いモチベーションを持って積極的に仕事に取り組むため、組織やチームの生産性向上が期待できます。 前述した「令和元年版 労働経済の分析」でも、ワークエンゲージメントが上がるほど労働生産性も上がることを示唆するデータが示されています。
顧客満足度の向上
顧客対応や接客をする際に、従業員のワークエンゲージメントが高ければ、顧客満足度の向上が期待できます。モチベーション高く熱意をもって仕事をする従業員の姿をみれば、顧客の企業への信頼感も高まるでしょう。
離職率の低下
ワークエンゲージメントを高めることで離職率の低下につなげられます。実際、「令和元年版 労働経済の分析」では、「1on1ミーティング」などワークエンゲージメントを高める取り組みによって働きがいを向上させることで、離職率を大幅に下げることができた事例が紹介されています。
メンタルヘルスの改善
ワークエンゲージメントを高めることで、メンタルヘルスが改善される可能性があります。
ワークエンゲージメントの高い従業員は、与えられた仕事や業務を「自分ごと」に捉えるようになるので「やらされている感」が薄まっていきます。
主体的に仕事を進めるようになることから、ストレスを感じづらくなり、結果的にメンタルヘルスが改善されるのです。
また、メンタルヘルスが改善されて、睡眠や食事が改善されるようになれば、身体的にも健康になれます。
健康経営を心がけていきたいのであれば、ワークエンゲージメントを高めるように努めるといいでしょう。
イノベーションの促進
ワークエンゲージメントを高めることで、社内イノベーションが促進されます。
エンゲージメントの高い従業員は、主体的に仕事に取り組むようになるので、新しいアイデアや改善策を提案するようになっていきます。
また、社内業務における矛盾を発見したり、ビジネスモデルそのものに対して主体的に考えたりするようになるため、社内環境を根本的に変えられるようになります。
特に、DXを進めて組織構造を変えていきたい場合は、従業員のワークエンゲージメントを高めて、社内イノベーションを誘発させるようにするといいでしょう。
ワークエンゲージメントの測定方法とは?
ワークエンゲージメントを測る方法は大きく分けて下記の3つが挙げられます。
MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)
MBI-GSは、ワークエンゲージメントそのものを測定するのではなく、バーンアウトを測定します。したがって、測定した数値が低いほどワークエンゲージメントが高くなり、結果が高ければワークエンゲージメントが低いということになります。
OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)
OLBIはMBI-GSと同様にバーンアウトを測定します。
しかしMBI-GSとは質問項目が異なり、「疲弊」「離脱」というネガティブな2つの因子で構成されています。
UWES(Utrecht Work Engagement Scales)
UWESではMBI-GSとOLBIとは異なり、ワークエンゲージメント自体を測ります。
「熱意・没頭・活力」を、17項目の質問に落とし込み、その回答によって測定されます。
識学式:ワークエンゲージメントの高める方法
結論から言うと、ワークエンゲージメントを高めるのに最も良い方法は、上司が部下に対して、明確な目標を設定し、報酬に反映させることです。
まず前提として、「ワークエンゲージメント」という言葉を識学の観点から考えると、それは大きく2つの要素によって構成されると考えられます。
1つ目は、目標を達成することで感じる、達成感や自己肯定感、有能感などです。これを「内質的動機」と呼ぶことにしましょう。
もう1つは、上司や会社から評価されることで得られる、金銭報酬や役職などです。これは「物質的動機」と呼ぶことにしましょう。
そして、ポイントは、これらの2つは独立して存在するものではなく、連動しているということです。
すなわち、目標を達成して「内質的動機」を強く感じている人は、「自分はもっと多くの報酬をもらえるはずだ」、「より高い役職を与えられるのではないか」などと思いやすいということです。
しかし、それが思い通りにならなかったらどうでしょうか?
当然、その人は評価や査定に不満を持つようになり、最悪の場合、離職につながってしまいます。
よって、「内質的動機」と「物質的動機」は、連動させなければいけません。
つまり、上司は、部下に対して明確な目標を設定し、その達成度によってのみ、評価や査定を行う。このような評価制度を会社全体で運用する必要があるのです。
まとめ
本記事ではワークエンゲージメントについて解説しました。
従業員のワークエンゲージメントを高めることは、企業に大きなメリットをもたらします。
ただしワークエンゲージメントは、上司が一方的に押し付けるものではありません。従業員のモチベーションを誘発する「仕組み」を構築する必要があります。
その方法の1つが「内質的動機」と「物質的動機」の連動化です。
結果と報酬を結びつけることで、従業員は仕事を「自分ごと」だと捉えるようになります。
ワークエンゲージメントを高めるには、何よりも「仕組み」が大切です。ぜひ実践してみましょう。