私は現在、識学の講師として活動し、管理職をしています。以前は私自身が、社会生活をしている限りハラスメントからは逃れられないと考えていましたが、ルールを設定して守らせ、部下を勝たせてチームとしても勝つということに集中して日々マネジメントをしていると、ハラスメントを意識することはなくなってきました。経営者が苦しむハラスメントに関する悩みは、ルールが解決します。
目次
ハラスメントの正体
まず、組織内で発生するハラスメントについて、知っておくべき事実を二つご紹介します。
事実①ハラスメントと認識された時点で問題となる
「ハラスメントハラスメント」をご存知でしょうか。これは、自分が少しでも不快に思ったことは何でも「ハラスメントだ」と主張する行為を指します。こういう部下がいると、上司は何をやってもハラスメントだと言われてしまうかもしれないので、部下に一切注意できなくなってしまうのです。
現状、ハラスメントと指導の間に横たわる明確な境界線はありません。一定数ハラスメントの例が出ているので、基準のようなものはできつつあると言えますが、ある言動がハラスメントに該当するか否かは、依然として個人の解釈や感情によって変わるということです。
事実②ハラスメントに該当する言動は、本来の業務とは無関係な言動
業務上の関係の枠を逸脱した言動はハラスメントに当たります。パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメントなど、その言動に応じてハラスメントの名前は変わりますが、いずれにせよ「逸脱=ハラスメント」です。
裏を返せば、業務上の関係の枠を逸脱さえしなければハラスメントには該当しないわけです。
ルールを明確に
上記の事実から、ハラスメントの原因は、「ルールの不足」もしくは「ルール違反」であると考えられます。組織内で行われていることでルールにないことが発生した場合、それが正常に機能するかどうかは、構成員の良識や協調性などに委ねられることになります。
ある個人にとっての良識は、すべての人にとって正しいわけではありません。ルール不足が多ければ多いほど、組織内で個人の見解や感情が優先される場面が増え、ずれが多発して、ハラスメントに当たる行為をしてしまう可能性が増します。それをハラスメントだと認識する人も増えていきます。ルール違反が許されている組織でも同様の状態に陥ります。
であればルールを設け、それを守らせることが必要です。加えて、そのルールは認識のずれが発生しないものでなければなりません。
それこそ、ハラスメントを防ぐために「相手を思いやること」というルールをつくってしまうようなことがあってはなりません。「思いやり」のつもりだったある人の言動が、相手にとって「ハラスメント」だと認識されてしまうという本末転倒な事態を招きかねないからです。また、そういったルールは、取り締まる側も「ハラスメント」だと言われかねず、結果的にルール違反が許される組織になってしまうのです。
つまり、認識のズレが発生しない守らせやすいルールを設定し、違反があれば感情を排して指摘することがハラスメントを防ぐのです。
そして、ルールと一緒に明確にしておかねばならないのは、社員の役割です。
ハラスメントは本来の業務と関係のない言動や情報が発生源になるのでした。したがって「本来の業務とは何か」をはっきりさせる必要があります。ぞれぞれのポジションごとに、何が求められているかを定め、それを達成することで自分たちが欲しいものを獲得できるということが決まっていれば、余計なことをせず各自が集中して業務に取り組むようになります。
部下を指導できない上司は、部下への要求をわざと曖昧にすることで、つまり部下に強い要求をしないことによって部下からハラスメントだと言われるリスクを取り除こうとしてしまいます。しかし、これによって逆に部下が逸脱した言動を取ったり、不必要な情報交換が発生したりしてしまう恐れがあります。そしてそれがハラスメントにつながってしまうのです。
ハラスメントと距離を置く
私は普段、ハラスメントを意識することはなくなっています。私のチームがハラスメントを許す状態にならないと言った方が正確でしょうか。
私の経験から言えることは、例えば「業務中の会話は敬語を使う」などのルール設定は必要ですが、「ハラスメントを意識する時間も惜しんで、仕事中は仕事に集中すること」を実行していれば、ハラスメントから逃げなくても、ハラスメントと距離を置くことは可能だということです。