働き方改革が推し進められるなか、「コワーキングスペース」という言葉がこれまで以上に注目を集めています。働き方の多様化やワーク・ライフ・バランスの実現を目指してリモートワークを導入する企業が増え、オフィス以外で働くというケースも一般的になりました。
しかし、その一方で、
- 「自宅で仕事をするには家族がいて集中できない」
- 「一人だとついついサボりがちになってしまう」
- 「家には必要な設備が整っていない」
などの理由で自宅で働くことに抵抗を覚える方も少なくありません。そんな人々の支持を集め、いま注目を浴びているのがコワーキングスペースなのです。
そこで本記事では、コワーキングスペースに関する基本的な知識から、注目を浴びている理由や利用するメリット・デメリットなどを解説していきます。
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コワーキングスペースとは?
そもそもコワーキングスペースの「コワーキング(Co-Working)」とは、どのような意味なのでしょうか?
コワーキングの「コ(Co)」は「共同の、共通の」という意味があります。そこに「働く」という意味の「ワーク(Work)」を合わせた造語であるコワーキングスペースは、「共に働く場所」という意味合いがあるのです。
異なる仕事をしている人や、様々な専門性を持つ人が同じ場所で仕事をすることで、新しいアイデアが生み出されたり、お互いに刺激を与え合うことができる点が大きな特徴です。
また、コワーキングスペースから新たなコミュニティが誕生し、そこから新しいビジネスにつながる可能性も期待できます。
サンフランシスコ生まれのコワーキングスペース
コワーキングスペースはアメリカのサンフランシスコ/シリコンバレー地域にできた、Citizen Space(シチズン・スペース)がその原点と言われています。
パーティションのない、オープンかつフレンドリーな空間で、クリエイティブな仕事をしている人たちを意識して作られました。
Citizen Spaceは、当初はビジネスとして立ち上げたものではなかったといいます。創業者がいくつかの会社を経営しており、コスト削減のため、それぞれの会社の従業員が同じ場所で働ける場所をつくったのがはじまりでした。
コワーカーとは?
コワーカー(Co-Worker)とは、広い意味で捉えると「同僚」となり、狭い意味で捉えると「コワーキングスペースで働く人」となります。
では、コワーキングスペースで働く人にはどのような人がいるのでしょうか?
まず挙げられるのは、好きなところで働けるフリーランスや個人事業主、またはスタートアップの起業家などです。近年では、リモートワークをするために利用するサラリーマンや、勉強をする場所として使う学生も増加傾向にあります。
職種としては、
- エンジニア
- ライター
- デザイナー
などが多いですが、これ以外にも実に多くのコワーカーが利用しています。
コワーキングスペースの利用者が増えている背景
大都市政策研究機構による「日本のコワーキングスペースの現状と課題」によると、コワーキングスペースの施設数は、下記のような推移を見せています。
- 2019年6月:799施設
- 2020年8月:1062施設
- 2021年2月:1379施設
このように、1年で1.33倍、1年半で1.73倍も増加していることがわかっています。施設数でみると1年で263施設、1年半で580施設も増えており、急速にコワーキングスペースが普及しているのです。
このようにコワーキングスペースが近年になって急速に普及している背景には、働き方の多様化やワーク・ライフ・バランスの充実を目指したリモートワークの導入があります。
働き方改革によって、満員電車に乗ってオフィスに出勤するという働き方が変わるとともに、オフィスの在り方も変わってきているのです。
(参考:調査研究レポート(第2回) 「日本のコワーキングスペースの拡大」(速報版)丨一般社団法人大都市政策研究機構)
コワーキングスペースとシェアオフィス・レンタルオフィスとの違いは?
コワーキングスペースと似た施設に「シェアオフィス」や「レンタルオフィス」がありますが、これらはどのように異なるのでしょうか?
これらはコワーキングスペースと同様に、固定席を持たずにノートパソコンなどを使って自分の好きな席で働く「フリーアドレス形式」のワークスタイルです。
また、シェアオフィスやレンタルオフィスは「フレキシブルオフィス」と呼ばれ、一般的なオフィス契約よりも契約スタイルが多様で、費用などを最小限にすることが可能です。
コワーキングスペースとの違いとは
コワーキングスペースと「シェアオフィス」や「レンタルオフィス」の最大の違いは、オープンスペースかどうかです。
シェアオフィスとは、「Share(共有する)」とついているように、いくつかの会社や団体、個人がひとつのオフィス空間を共有して仕事をするものです。
また、レンタルオフィスは、必要なときにだけレンタルして使うオフィス空間であるため、この点に関してはどちらもコワーキングスペースと同様です。
しかし、シェアオフィスやレンタルオフィスの場合は、「オフィスとしての機能」が重視されています。たとえば、シェアオフィスでは座席の間にパーティションが置かれていたり、レンタルオフィスの場合は個室形態になっていたりします。
一方で、コワーキングスペースはその名の通り「共に働く」ことが重視されているため、開放的なカフェや図書館のようにオープンスペースになっている傾向があります。
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では、コワーキングスペースを活用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。大きく分けると5つあります。
- オフィスを低コストで確保できる
- 仕事に必要な設備を利用できる
- 生産性向上につながる
- 新たなビジネスチャンスにつなげられる
- 多様な働き方をサポートできる
それでは1つずつ解説していきます。
①オフィスを低コストで確保できる
コワーキングスペース最大のメリットは低コストでオフィスを確保できる点です。
一般的な賃貸オフィスを利用すると、どうしてもオフィスの賃貸料が固定費として大きな負担となってしまいます。加えて、インターネット回線の通信費や複合機などのリース料、光熱費、備品費、清掃などの維持管理費もかかります。
しかし、コワーキングスペースであれば、光熱費などの維持費がかからず、低リスクでオフィス運用ができます。
さらにオフィス賃貸契約であれば、通常2年契約など長期のスパンでしか契約できませんが、コワーキングスペースであれば1ヶ月単位など契約スタイルがフレキシブルに対応可能です。
②仕事に必要な設備を利用できる
新たにオフィスを構えるとなると、それにあわせて家具や器具なども必要になり、初期投資が負担になります。しかしコワーキングスペースであれば、必要な器具や設備は整っているため、契約してすぐにオフィスとして利用できます。
また、立地に優れたコワーキングスペースも多数存在するため、賃貸オフィスの契約ではハードルが高い場所でも、コワーキングスペースであれば低コストで利用できるのです。
③生産性向上につながる
一人で仕事をしているとついついサボってしまい、生産性が低下することもあります。また、「一人で静かに仕事をするほうが集中できる」と感じる方も多いかもしれませんが、静か過ぎる環境だと作業効率が落ちることが研究で明らかになっています。
人はある程度の騒音やノイズがあるほうが集中できるため、コワーキングスペースのように周囲に人がいて適度な雑音がある環境だと仕事に集中しやすく、生産性向上につながるのです。
しかし、音楽をかけてしまうと集中力が下がるため、やはり自然な環境音がある空間が良いでしょう。
また、カフェなどでもほどよい雑音がありますが、周囲に仕事をしている人がいるコワーキングスペースのほうが周囲の目を気にせずに仕事ができるので、より仕事に集中できるはずです。
(参考:勉強中の音楽は良いのか悪いのか丨理学療法士のサイト)
④新たなビジネスチャンスにつなげられる
一人で仕事をしていたり、同じ会社の人や同業の人と仕事をしていると、新しい出会いや情報が入ってこないため、なかなか新たなビジネスチャンスにつながりません。
しかし、コワーキングスペースは「共に働くこと」を重視しているため、同じスペースで仕事をしている人と自然につながりができやすくなっています。
フリーランサーや起業家など多様なバックグラウンドを持つ、これまで出会うことがなかった人々と交流する機会ができるため、新たなビジネスチャンスにつながる可能性があるのです。
また、イベントやセミナーなどが開かれることがあり、コワーキングスペースの利用者同士で新たなコミュニティが生まれることもあるでしょう。
⑤多様な働き方をサポートできる
働き方改革の推進やワーク・ライフ・バランスの実現のために、リモートワークを導入する会社が増えていますが、
- 「家では仕事をする空間がない」
- 「カフェでは周囲の目が気になる」
- 「オフィスにある設備が使えないと仕事にならない」
といった課題があります。このような課題の解決と従業員の多様な働き方を実現するための方法として、コワーキングスペースの利用が進んでいるのです。
家から近いコワーキングスペースを利用してもらうことで、従業員にとっては快適かつ効率よく働くことができてワーク・ライフ・バランスも充実するでしょう。
企業にとっても、従業員が快適に働けることで満足度が上がり、生産性やモチベーションの向上につながるため、お互いにとってメリットが大きいのです。
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テレワークでマネジメントを成功させるための4つのポイントコワーキングスペースを利用するデメリット
一方で、コワーキングスペースを利用するには下記のようなデメリットがあるため、注意しましょう。
- 集中できない可能性がある
- ワークスペースの確保や狭さ
- 情報漏えいの危険性
それでは1つずつ解説していきます。
集中できない可能性がある
コワーキングスペースは基本的にオープンスペースで周囲に仕事をする人がいるため、話し声や環境音などが耳に入ってきます。
一般的には適度な環境音は集中力を高める効果がありますが、敏感な人の場合は人や音が気になって集中できない可能性があります。
ワークスペースの確保や狭さ
コワーキングスペースはフリーアドレス形式なので、いつでも席が空いているとは限りません。人気がある施設の場合は、混雑していてすぐに席が埋まってしまう可能性もあるでしょう。
また、コワーキングスペースは一般的に作業スペースが決まっておらず、場合によってはノートパソコンを開くだけでいっぱいになってしまうほど狭いケースも少なくありません。
荷物が多かったり資料を広げて仕事をしたい場合は、不便さを感じることもあるでしょう。
情報漏えいの危険性
コワーキングスペースのみならず、シェアオフィスやリモートワークにおける課題として、情報漏えいのリスクが挙げられます。
- 通信環境のセキュリティは安全なものか
- 人為的なミスによる情報漏えいの防止はどうするか
- トイレなどで席を立つ際は機密情報をどうするのか
といった点を考慮して利用することが求められます。
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ウェビナーとは?基礎知識からメリット、失敗しないための注意点を解説コワーキングスペースで利用できる機能や設備
コワーキングスペースは施設によって利用できる機能や設備が異なりますが、下記の機能は基本的に備わっています。
- ワークスペースの利用
- Wi-Fiなどの基本的なインフラ設備
- フリードリンク
それでは1つずつ解説していきます。
ワークスペースの利用
コワーキングスペースの目的でもあるため、当然ですがワークスペースが利用できます。
フリーアドレスのワークスペースで、空いている席に自由に座って仕事をするタイプが一般的ですが、特定の席を自分専用の席として利用できるタイプも存在します。
Wi-Fiなどの基本的なインフラ設備
無料で利用できるWi-FiやFAX、電話、コピー機などが設置されていることが一般的です。ただし、なかには無料ではなく利用料金がかかる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
また、Wi-Fiの通信速度が速くサクサクと快適に使えるところもあれば、遅くて不便なところもあります。
フリードリンク
一般的に、コワーキングスペースではフリードリンクが利用できます。なかには、夕方以降にはビールが飲み放題になる施設も存在します。
まとめ
ここまでコワーキングスペースについて基本的な知識からメリット・デメリットを見てきました。
働き方改革の推進や多様な働き方の普及に伴い、活用する個人や企業が増え、昨今注目されているコワーキングスペース。使い方次第では生産性の向上や新たなビジネスチャンスの創出につなげることもできます。
ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
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