ファクタリングは、売掛金を資金化する仕組みのことです。
世の中ではファクタリングについての誤った情報が出回っているため、ファクタリングと耳にすると「怪しい手法ではないのか?」と考える経営者の方は多いです。
しかし、ファクタリングは他の資金調達方法と比べると資金化までのスピードが早いため、急ぎの資金調達が必要な経営者の方にはおすすめの手法です。
本記事では、ファクタリングの仕組み、特徴、他の資金調達方法との違いをわかりやすく解説します。
資金調達の一手法として知ってはいるが、仕組みはよくわからないという経営者の方はぜひご一読ください。
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ファクタリングとは?
ファクタリングは、売掛金を資金化する方法です。売掛金をファクタリング会社に売却することで、売掛金の早期資金化を実現できます。
上記の仕組みが成り立つのは、日本の商取引が「掛け取引」を認めているからです。
会社間取引では、商品を売上げてから資金化されるまでに、時間がかかります。
例えば、商品を100万円他社に売り上げたからといって、すぐに100万円が回収できるわけではありません。「月末締め翌月払い」のように、8月に販売した商品の売上は9月の回収となるのが一般的です。
しかし、この間にも従業員への給与の支払い、仕入れ代金の支払いが発生しています。
上記のタイムラグによる資金需要「運転資金」に目をつけたのがファクタリング会社です。
ファクタリング会社は売掛金を割り引いて購入し、期日になると債権者から満額の売掛金を回収することができます。
上記の仕組みにより、ファクタリングというビジネスが成り立っています。
ファクタリングの3つの特徴
運転資金の調達に利用できるファクタリングですが、大別すると3つの特徴があります。
- ファクタリングは売掛金の資金化が目的である
- ファクタリングは借入ではない
- ファクタリングは違法ではない
それぞれについてわかりやすく解説します。
ファクタリングは売掛金の資金化が目的である
資金調達には2種類あります。
1つ目が日頃の会社運営による、支払いの期ズレを解消するための運転資金。もうひとつが会社を大きくするために必要な設備資金です。
このうち、ファクタリングが対応しているのは運転資金です。
このため、設備資金の用意のためにファクタリングを利用することはできず、あくまでも運転資金を調達するための手段として、ファクタリングを活用できることに留意しておきましょう。
ファクタリングは借入ではない
そもそもファクタリングは借入ではありません。ファクタリング会社は買掛金を企業から買い取ることで、その対価として資金を支払う取引形態を取ります。
少し専門的な言葉で説明すると、ファクタリングは売買契約に基づいた指名買いでの取引であり、金銭の貸し借りではないということです。
売買契約に基づくと、ファクタリング会社は買い取った債権を自社で管理、回収する必要があります。そして仮に債権を回収できない場合には、ファクタリング会社がその対応をすることになっています。
参考:(4) 貸金等に関する相談事例等及びアドバイス等 | 金融庁
ファクタリングは違法ではない
ファクタリング自体は違法ではありませんが、ファクタリングに見せかけた偽装取引を持ちかける業者がいるので注意が必要です。
繰り返しになりますが、ファクタリングそのものは売買取引であり、貸金行為には該当しません。このため、ファクタリング会社が貸金業への登録をしてなくても、違法性はありません。
ところが、ファクタリング業者の中には違法な手数料を取り、ウィズリコースでの契約を持ちかけるなどの業者もあります。
リコースとは、債権に問題が発生した際、債権を譲渡した者に対し賠償を申し出ることができる制度で、本来は売買取引であるファクタリングには適応されません。
仮に設定するのであれば、その取引は銀行やノンバンクなど貸金業法に基づく融資である必要があります。
このため、貸金業者としての登録がされていないのに、リコースが求められる場合、違法なファクタリング会社である可能性が高いため、弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。
参考:ファクタリングに関する注意喚起 | 金融庁
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ファクタリングは売掛金を売買する方法ですが、似たように売掛金を使って資金調達ができる方法にABLがあります。ABLとは、売掛金や棚卸資産などを担保に取り融資を行う方法です。
このため、ファクタリングは売買取引であり、ABLは貸金業法に基づいた貸付という違いが両者にはあります。
参考:ABL | 日本政策投資銀行
ファクタリングと給与ファクタリングの違い
ファクタリングが貸金業に該当しないのに対し、給与ファクタリングは貸金業に該当します。給与ファクタリングは、個人の給料などの賃金債権を担保に行う貸金です。
このため、ファクタリングは貸金業の登録がなくても合法。一方で、給与ファクタリングは貸金業の登録をしていない会社が行ったら違法。
そしてファクタリングが法人や個人事業主向けの制度であるのに対し、給与ファクタリングは会社員などを対象にした悪質な取引であることが多いと認識しておくとよいでしょう。
参考:ファクタリングに関する注意喚起 | 金融庁
ファクタリングを使うのはこんなとき
資金調達の方法としては、ファクタリング以外にも融資などを検討できます。その中であえてファクタリングを活用してメリットがあるのは以下の場合です。
- 急ぎの資金調達が必要な場合
- 銀行からの融資が難しい場合
- 売掛金の金額が大きい場合
急ぎの資金調達が必要な場合
急ぎの資金調達が必要な場合にはファクタリングを活用するのが有用です。ファクタリングは、他の資金調達方法と比べて、申請をしてから許諾が下りるまでの時間が早いというメリットがあります。
銀行からの融資が難しいとき
銀行からの資金調達が難しい場合であっても、ファクタリングであれば資金調達を実現できる可能性があります。銀行の審査基準は一般に厳しく、相応に利益が出ている場合や、十分な担保を供することができる場合でなければ審査に通らないことがよくあります。
しかし、ファクタリングで見るのは、ファクタリングに申請した企業ではなく、売掛金の債務者の信用情報です。したがって、信用力が高い債権であれば十分に買取を依頼できます。
売掛金の金額が大きい場合
売掛金の金額が大きい場合、銀行からの融資の枠では十分に運転資金を調達できない可能性があります。
一方で、ファクタリング会社は個別の債権を確認して買取を判断するため、金額が大きいものであっても、買取を依頼できる可能性があります。
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一般にファクタリングというと「買取型」を指すことが多いですが、買取型の他にも「保証型」のファクタリングが存在します。
保証型のファクタリングとは、保証料を払っておくことで、ファクタリングに問題があった際にはファクタリング会社が補填をしてくれる制度のことです。
保証型ファクタリングは膨れ上がった売掛債権のリスクヘッジにはなりますが、早期資金調達が実現するわけではないので、ファクタリングを活用する際はどちらの種類を利用するのかを確認しておくのがよいでしょう。
なお、本記事では「ファクタリング」を「買取型」の意味で説明しています。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの仕組み
ファクタリングは、ファクタリング会社、利用企業、売掛先との関係性により「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」に分けられます。
大きな違いはファクタリングを利用していることが、売掛先に通知されるか否かです。以下で詳しく解説をします。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、ファクタリング会社と利用企業との間の2社間で手続きが完結する仕組みのことです。ファクタリング会社は、売掛金を購入し、利用者に代金を支払った後、売掛金の期日になると利用者から売掛金を回収します。
この際、仮にファクタリング利用者が回収した売掛金を使い込んでしまった場合、ファクタリングは売掛金を回収することができません。したがって、2社間ファクタリングではファクタリング会社がリスクを負っています。
上記のため、2社間ファクタリングは後述する3社間ファクタリングと比べて費用が高くなるデメリットがあります。ただし、2社間での契約のため、3社間ファクタリングよりは資金化のスピードが早い傾向があります。
3社間ファクタリング
3者間ファクタリングは、2社間ファクタリングに売掛先も関わる仕組みです。利用企業は売掛先に書面で同意を得た後に、ファクタリングに申し込むことになります。
ファクタリング会社は売掛金を売掛先から直接回収できることになるため、先ほどの2社間ファクタリングよりもリスクが低いスキームになります。
ファクタリング会社にとってのリスクが小さくなるため、2社間ファクタリングよりも費用が小さくなるメリットがありますが、売掛先からファクタリングを利用する許可が必要なこと、またそれに伴い時間がかかってしまうのがデメリットです。
ファクタリングのメリット
ファクタリングを利用するメリットは以下の5つです。
- 資金調達が最短即日とはやい
- 自社ではなく売掛債権が与信対象
- 倒産リスクが移転される
- 売掛金の金額によっては1億円以上の資金調達も可能
- 個人事業主も利用できる
それぞれについてわかりやすく解説します。
資金調達が最短即日と早い
ファクタリング会社の中には、審査を即日で完了させる会社もあるため、最短即日での資金調達が可能となります。他の資金調達方法と比較すると、明らかに調達までのスピードが早くなるのがメリットです。
自社ではなく売掛債権が与信対象
自社ではなく売掛債権が与信対象になるのもファクタリングのメリットです。銀行などの融資においては、自社の財務内容が見られますが、ファクタリングで見られるのは売掛債権の内容です。
したがって、自社の財務内容に自信がなくとも十分に資金調達ができる可能性があります。
倒産リスクが移転される
ファクタリングを利用した場合、倒産リスクが移転されます。売掛債権は仮に売掛先が倒産してしまった場合には回収ができなくなるため、企業にとっては資産であると同時に、リスクの残る資産です。
ところが、ファクタリング会社に債権を買い取ってもらえば、その後売掛先が倒産した場合であっても自社が責任を負うことはありません。
このため、ファクタリングは企業のリスクヘッジ方法としても活用されることがあります。
売掛金の金額によっては1億円以上の資金調達も可能
銀行が企業の与信を判断するのに対し、ファクタリングで注目するのは売掛金です。このため、債権金額が大きい場合、自社の規模感に関係なく、売掛金に応じて資金調達を実施することができます。
個人事業主も利用できる
ファクタリングは会社によって個人事業主も利用できます。このため、法人になっていない個人事業主であっても利用できるのがファクタリングのメリットです。
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リスクヘッジの意味とは?ビジネスで必要な理由をわかりやすく解説!ファクタリングのデメリット
活用方法によってはメリットが多いファクタリングですが、もちろんデメリットもあります。ファクタリングのデメリットは以下の通りです。
- 手数料が高め
- 3社間ファクタリングだと利用が取引先にバレる
- 悪質な業者もいる
それぞれについてわかりやすく解説します。
手数料が高め
まず、ファクタリングは他の資金調達方法と比較すると手数料が高くなる傾向があります。このため、急ぎの資金調達でない場合には、まずは銀行融資など他の方法で資金調達を検討するのがよいでしょう。
3社間ファクタリングだと利用が取引先にバレる
2社間ファクタリングの場合は、ファクタリング会社と利用企業との間の取引になるためファクタリングの利用がばれる可能性は低いですが、3社間ファクタリングの場合は売掛先も含んだ契約になります。
したがって、売掛先に利用がバレることになります。
既に信頼関係が築けている場合には、ファクタリングの利用が問題にならない可能性がありますが、まだ信頼を築けていない会社の場合「ファクタリングを利用しなければならないほど資金繰りに困窮している」とネガティブに捉えられることもあるので、注意が必要です。
悪質な業者もいる
ファクタリングの仕組みは合法ですが、ファクタリングを偽装して悪質な取引に及ぶ悪質な業者は一定数存在します。
このため、ファクタリングを利用する際は、そのファクタリング会社の実態を事前に調べるなどの対策が必要です。
ファクタリングの利用までの流れ
ファクタリング会社によって、ファクタリングを利用するまでの流れは変わりますが、概ね以下の手順で取引が進みます。
- ファクタリング会社に事前相談する
- ファクタリング会社に申し込みする
- ファクタリング会社に書類を提出する
- ファクタリング会社が審査を実施する
- ファクタリング会社と契約を締結する
1.ファクタリング会社に事前相談する
ファクタリングを利用する際には、ファクタリング会社との事前相談が必要になることが多いです。事前相談の段階では、自社が保有する債権の買取が可能なのかを確認します。
2.ファクタリング会社に申し込みする
申し込み方法は利用するファクタリング会社によって異なります。ただし、一般には以下の方式が取られることが多いです。
- FAX
- ネット申し込み
- 家電申し込み
- 窓口
- 郵送
3.ファクタリング会社に書類を提出する
ファクタリング会社に申し込みをした後は、提示された書類をファクタリング会社に郵送する必要があります。
一般には以下の書類が必要とされます。
- 謄本
- 印鑑証明書
- 決算書(2期〜3期)
- 売掛金の請求書
- 通帳
3社間ファクタリングの場合は、上記に付随して売掛先からの債権譲渡承諾の書類が必要になります。
4.ファクタリング会社が審査を実施する
提出した書類をファクタリング会社が確認したのち、簡単なヒアリングが行われることがあります。具体的には、ファクタリングが必要な理由、会社の概要、売掛先の事業内容についての質問をされることが多いです。
なお、会社の信用に関わるため、ファクタリング会社の質問に対しては正直に答えるようにしましょう。
5.ファクタリング会社と契約を締結する
その後、申請した内容に問題がなければファクタリング会社と契約を締結することになります。なお、契約締結の際には、手数料が法外ではないか、ノンリコースになっているかを必ず確認するようにしましょう。
ファクタリング会社の選び方
悪質なファクタリング会社と契約をして、心身ともに疲弊しないようにするためには、ファクタリング会社を選ぶ時点で以下の2点に気をつけましょう。
- 大手ファクタリング会社を選ぶ
- 償還請求権の有無に注意する
それぞれについてわかりやすく解説します。
大手ファクタリング会社を選ぶ
ファクタリングを利用する際は、大手ファクタリング会社を選ぶのが最も安全です。上場をしている会社が親会社として付いている、ファクタリング会社の財務内容や会社情報が明記されている会社を選ぶと、後々トラブルになるケースが減ります。
償還請求権の有無に注意する
ファクタリング会社を選ぶ上で最も重要なのが「償還請求権」の有無を確認することです。繰り返しにはなりますが、償還請求権が認められた契約の場合、譲渡した債権に問題が発生した際、利用者側にその金額の補填を求められることになります。
すると、本来であればリスクヘッジになるはずだったファクタリングのメリットが消滅してしまいます。
特に依頼した業者が貸金業に登録をしていないにもかかわらず、償還請求権を求めてくる場合は違法な業者の可能性が高くなるため、注意が必要です。
まとめ
本記事では、ファクタリング会社の仕組みとメリット、デメリット、使用する際の注意点についてわかりやすく解説しました。
ファクタリングは悪質と考えられてしまうことも多いのですが、実はそうした会社は一部で、ファクタリングを正しく活用することで自社の資金繰りを安定させることができます。
正しくファクタリングを活用しましょう。
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