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【わかりやすく解説】金融緩和とは?目的やデメリットについて解説!

普段からニュースや新聞から社会情勢の情報を集めている人は「金融緩和」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

金融緩和をなんとなく理解していたとしても、実際のメリットやデメリット、仕組みを理解できていない方は散見されます。

そこで本記事では「金融緩和」についてやさしく解説します。

  • 「金融緩和」の仕組みが難しいと感じている方
  • 「金融緩和」で何が起こるのか説明できない方

本記事は、上記の方におすすめです。

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まず初めに:わかりやすい金融緩和の仕組み

まず、金融緩和について詳しく理解する前に、簡単な仕組みを理解しましょう。

金融緩和は、停滞する経済の成長を促すために実施されます。

日本は1991年にバブルが崩壊。1998年には消費税の増税の影響があり、第二次世界大戦後に初めてデフレーション(物価が下落すること)に突入して以降、20年以上にわたりデフレーションが続いています。

デフレーションは物価が下がるため消費者にとって良いことだと思われる方もいるかもしれません。しかし、長期的なデフレーションは経済成長率を引き下げます

この関係性を理解するためには、1,000円の価値を考えるとよいでしょう。

参考:日本の経済成長率が「世界最低」である、バカバカしいほど“シンプルな理由 | DIAMOND ONLINE

1,000円の価値

1,000円の価値は将来も同じ1,000円とは限りません。例えば物価が上昇している時のことを考えてみましょう。物価が上昇している場合、今日100円で購入できたリンゴが10年後には1,000円になっている可能性があります。

このため、物価が上昇している際(インフレーション時)には、人々がお金を使うようになります。「高価なものを早めに買っておこう」という意思が生まれるのです。

人々がお金を使うようになれば経済は活性化し、国内での産業も活発化します。

したがって、行き過ぎのインフレーションはバブルを引き起こしますが、経済成長のためには適度なインフレーションは必要です。

金利と物価の関係

金融緩和を行う目的は金利の引き下げです。「金利=銀行からの借入」と考えるとシンプルでわかりやすいかもしれません。

金利が引き下がると何が起きるでしょうか?例えば、長年欲しかった車があった場合、金利が下がればローンを組んででも車を購入をしたくなるのではないでしょうか。

つまり、金利が下がることで消費が拡大します。消費が拡大すると、需要が増えるため物価が上昇します。すると結果として経済成長を引き起こすインフレーションが発生します。

このため、金融緩和では、経済成長を引き起こす起爆剤である物価の上昇を引き起こすために、金利の引き下げを行うのです。

その金利の引き下げ方、上げ方を難しく「金融政策」と呼んでいると頭に留めておくとわかりやすいでしょう。

それではここからもう少しだけ、金融緩和を詳細に説明していきます。

金融緩和とは

少し難しく説明すると、金融緩和とは「日本銀行が景気を回復させるために行う政策のひとつ」です。金利を下げることで、消費や投資による経済活動を促すことを目的としています。

例えば、金融緩和は景気が悪くなった際に行われ、金利を下げることで民間銀行からお金を借りる会社や人を増やし、市場の金回りを活性化させることで景気浮揚を促します

具体的な取り組みとして、以下2つが有名な金融緩和政策として挙げられます。

  • 量的・質的金融緩和
  • マイナス金利付き量的・質的金融緩和

それぞれわかりやすく解説します。

量的・質的金融緩和

日本では、2013年4月に「量的・質的金融緩和」が導入されました。

量的・質的金融緩和とは、銀行が市場にある国債や投資信託などを買い戻すこと(買いオペレーション)で、市場にお金を増やす政策です。

日銀が世の中に直接お金を供給することを「マネタリーベース」といいますが、デフレ脱却のために打ち出したのが本政策でした。

その後しばらく経っても「量的・質的金融緩和」では効果が出なかったため、さらに一歩進んだ金融政策が取られました。

マイナス金利付き量的・質的金融緩和

「量的・質的金融緩和」政策ではデフレ脱却ができなかったため、2016年1月に導入されたのが「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」です。

マイナス金利付き量的・質的金融緩和とは、量的・質的金融緩和に「マイナス金利」が追加されたものです。

銀行は、利用者から集めた預金を全て銀行内に保有しているわけではありません。銀行は保有している預金の一部を日本銀行にも預け入れています。

その預け入れの金利をマイナスにしたのが本政策でした。

マイナス金利が付与されると、銀行はお金を日銀に預けると目減りしてしまうため、なるべく貸付などでお金を市場に流すようになりました

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は上記の効果を狙い、開始されました。

金融緩和の対義語

金融緩和と反対の意味を持った言葉として挙げられるのは以下の2つです。

  • 金融引き締め
  • テーパリング

金融緩和の仕組みを理解するためには、対義語について把握する必要があります。ここでは、対義語の意味を理解し、金融緩和への理解を深めましょう。

金融引き締め

金融引き締めは、中央銀行がインフレや景気の加熱を抑制するために行う政策です。金利や預金準備率を引き上げ、市場に供給される通貨を減らします

金融引き締めは金融緩和によって景気浮揚が起こった際に、過度なインフレーションを抑えるために行われます。

※預金準備率とは、対象金融機関に対し、日銀に預け入れる利率(金額)を増やすこと。預金準備率を高めることで、市場に出回る通貨を減らすことができる。

テーパリング:量的金融緩和政策の段階的な縮小

テーパリングは「日本銀行が行ってきた量的金融緩和政策を段階的に縮小させること」です。

テーパリングの語源は、英語の「Tapering」から来ており「徐々に先が細くなる」という意味になります。したがって、徐々に金融引き締めを行う政策がテーパリングです。

量的金融緩和政策を行うと、日本銀行から民間銀行へお金が渡り、低金利でお金を借りられることから、企業や個人が融資を受けるようになります。

結果的に経済が回り、景気回復が見込めますが、市場にお金が普及しすぎると、景気が加熱気味になるため、テーパリングによって市場の資金量を抑える必要があるのです。

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金融緩和政策の目的

金融緩和政策を実行する目的は、以下の2つです。

  • 2%の物価安定の目標
  • 長短定期の金利操作

金融緩和について理解するには、なぜ金融緩和が必要なのか理解を深めることが重要です。それぞれの目的について確認しましょう。

2%の物価安定の目標

日本銀行法において「日本銀行は金融政策によって物価の安定を図り、国民経済を健全な発展へと導くこと」が定められています。経済活動や国民経済の発展継続的な発展には、物価の安定上昇が必要不可欠です。

物価が変動すると、所得配分や資源配分に歪みが発生するため、日本銀行は、2013年の1月に「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定めました。

なお、2021年10月の消費者物価指数は0.1%と目標数値には程遠い状況が続いています。

参考:日本銀行法|e-GOV

長短期の金利操作

日本銀行が下げる金利には、以下の2種類があります。

  • 長期金利:償還期間が1年以上
  • 短期金利:償還期間が1年未満

※償還期間は「借りたお金を全て返すまでの期間」のこと。

企業や個人がローンを組んで大きな決断をする際は、長期金利を利用することが多くなります。したがって、長期金利を利用してもらった方が、経済へのポジティブな影響は大きいです。

日本銀行は金融緩和を通して「長期金利を0%、短期金利を0.1%」に操作し、借入をしやすい状況を維持しようと努めています。

参考:2%の「物価安定の目標」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」|日本銀行

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金融緩和による3つのメリットと仕組み

金融緩和によるメリットは以下の3つです。

  1. 低い金利
  2. 円安
  3. 景気回復

金融緩和によって、実際に社会へどのような利益が生まれるのか把握しておきましょう。

金融緩和のメリットを順番に解説していきます。

①借入がしやすくなる

金融緩和政策が行われると、長期固定金利などのレートが下がるため、借入にかかる金利が小さくなります。金利が低くなることで、企業が借入をし、設備投資や新たな事業へお金を使うようになるため、市場で消費が盛んになります

②輸出が増える

金融緩和が行われると、金利が大きく下がるため、他国の貨幣に比べると円を保有するメリットが小さくなります

そのため、円をドルなどの金利が高い通貨に変える人が増えるため、ドルの需要が高まりドル高円安が進みます。

円安になることで、相対的に海外からは日本の商品がお買い得の状況になるため、日本の輸出品が伸びます。

このように、金融緩和により輸出が伸びるというメリットがあります。

③景気が回復する

金融緩和により金利が低くなると、お金を借りる人が増えるため、市場に出回るお金が増えます消費が拡大するにつれ結果として景気が回復します。

金融緩和のデメリット

金融緩和のデメリットは以下の3つが挙げられます。

  • 量的緩和を終わらせるタイミングが難しい
  • 想定以上のインフレが起こる
  • 銀行の経営状況が悪化する

金融緩和は景気の回復を図るために、有効な政策ですが、リスクも存在します。

デメリットについても、しっかりと把握しておきましょう。

量的緩和を終わらせるタイミングが困難

量的金融緩和は、物価上昇率が目標に達するまで続けますが、終了のタイミングを見極めるのが困難だといわれています。

量的緩和を終わらせるタイミングが遅すぎると、効果が見込めなかったり、過度なインフレが起こる可能性があります。

想定以上のインフレが起こる

金融緩和政策を行うと、想定以上のインフレが発生する可能性があります。

例えば、ベネズエラなど、ハイパーインフレーションと呼ばれる過度なインフレにより経済が破綻した国は少なくありません。

低金利になると、特に不動産価格がバブル状態になることが多いため、注意が必要です。

銀行の経営状況が悪化する

金融緩和政策では、民間銀行による金利を下げて、設備や事業に投資したい企業や、住宅ローンを組みたい個人へお金を貸しやすくします。

しかし、金利が0に近くになるということは、民間銀行の利益が減るということでもあるため、銀行の経営状況を悪化させる要因になることがあるのです。

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コロナ禍で実施された金融緩和政策

コロナウイルスは、日本経済に大きな打撃を与え、さらなる金融緩和政策を余儀なくさせました。

コロナウイルスによって実施された金融緩和政策は以下の3つです。

  • 金利0%での貸付
  • 国債の買い入れ
  • ETFやJ-REITの買い入れ

コロナ禍で実施された金融緩和政策について、ひとつずつ解説していきます。

金利0%での貸付

企業等の資金繰りをサポートするために「新型コロナウイルス感染症特別貸付」などで資金提供を開始しました。

コロナ影響を受け売上が激減した飲食店などを国を挙げてサポートすることを決定した結果生まれたのが本制度です。

【参考:わが国の経済・物価情勢と金融政策|日本銀行

国債の買い入れ

日本銀行は、国債を買い入れることで、市場に出回るお金の量も増やしています

例えば、2020年7月には償還までの期間が3〜5年以下の国債をこれまでの最大4500億円程度から、最大5000億円程度へ増額しました。

このほか、償還までの期間が5〜10年以下の国債は、これまでの最大5500億円程度から最大6000億円程度へ拡大させています。

このように国債を買い入れ増やすことで、金融緩和を進めています。

【参考:わが国の経済・物価情勢と金融政策|日本銀行

ETFやJ-REITの買い入れ

日銀は、ETFやJ-REITを買い入れることで、物価の安定的な上昇を狙っています。

ETFなどの買い入れにより、投資家の不安が解消され、投資への購買意欲が高まると、同時に株価の上昇が期待できます。

株価の上昇が起こると、企業は株式の発行を通じた資金調達が容易になり、新規事業や設備投資に乗り気になります。企業の利益が増えれば、従業員への給料が増加し、消費も進むため、物価の安定的な上昇が期待できるのです。

【参考:わが国の経済・物価情勢と金融政策|日本銀行

世界で実施された金融緩和政策

日本だけでなく、世界でも景気の回復を図るために金融緩和政策が用いられています。

世界でどのような金融緩和政策が行われているのか知ることで、国際的な知見だけでなく、日本で起きている出来事への理解が深まるでしょう。

代表的な例として、アメリカとユーロ圏での金融緩和政策を紹介します。

ユーロ圏

ユーロ圏では、2019年に、コロナウイルスの影響による経済悪化を防止するために、マイナス金利政策(ファシリティー金利をマイナス0.5%へ)を決定しました。

預金ファシリティー金利は「ユーロ圏の民間銀行が、中央銀行へ過剰となった資金を預け入れる際の金利」です。

預金ファシリティーをマイナスとしたことで、ユーロ圏の民間銀行は、資金を中央銀行への預け入れではなく、会社の貸付などに活用するようになりました。

景気対策として、マイナス金利政策が行われた事例です。

参考:ECB はマイナス金利の深掘りを決定 | みずほ銀行

アメリカ

アメリカにおいては、2008年に起こった「リーマン・ショック」の影響で、金融市場の混乱を鎮静化するために、合計3回の金融緩和が行われました。

2008年から行われた金融緩和は、2014年にストップしましたが、コロナウイルスが感染拡大したことで、2020年3月から「ゼロ 金利政策」が実施されるようになりました。

ゼロ金利政策は「民間銀行が中央銀行から借入を行う際の利子を0に近くする政策」のことです。

民間銀行が中央銀行からお金を借りやすくなれば、企業などへの融資もしやすくなるため、市場に資金が集まるようになります。

アメリカにおけるゼロ金利政策は、2022年まで行われる予定です。

参考:FRB 量的緩和終了を前倒し 2022年にゼロ金利政策解除 | FNNプライムオンライン

金融緩和の今後の見通しと株価への影響

金融緩和はしばらく続く見通しです。2021年7月16日に大規模金融緩和の維持が発表され、日本銀行は「今後も必要であれば躊躇なく追加の金融緩和政策を行っていく」とも発表しています。

コロナウイルスの影響が大きかった2020年3月に比べると、日本経済は回復へと向かっていますが、景気のV字回復にはまだ時間が必要です。

また、2013年の5月にアメリカの中央銀行である「FRB」が突然発表した、テーパリングによる株価の下落から、金融緩和の株価への影響も懸念されています。

しかし、今回のコロナ禍では、テーパリングの情報が小出しにされているため株価は大きく変動しないでしょう。

参考:日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定 | NHK

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まとめ

金融緩和は、景気の悪化から抜け出すために、中央銀行によって行われる金融政策のひとつです。金融緩和を行うことにより、民間銀行からの金利を減らし、お金を貸す機会を増やすことで、市場に出回るお金を増やせます。

市場にお金が出回ることで、お金の価値が低下し、最終的には適度なインフレーションで物価の安定を図ることが目的です。

しかし、金融緩和には、ハイパーインフレーションによる経済の混乱や銀行の経営状況の悪化など、リスクもあります。今後も大規模な金融緩和が行われていくため、日々のニュースや新聞から動向をチェックしていきましょう。

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