会社員として働いている人の中には、満員電車や人間関係など、ストレスフルな環境から抜け出したいと考えている人は多いのではないでしょうか。
FIREは「自由」な生活を目指すための近道になり得る新しい生活様式です。
本記事では、FIREの意味やメリットについて、徹底的に解説していきます。今よりも自由な生活を目指したい人はぜひFIREについて理解を深め、これからの働き方や生き方を考えてみてくださいね。
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FIREとは
FIREについて具体的な内容を紹介する前に、まずは基本情報を解説していきます。
- FIREの読み方とビジネスにおける意味
- FIREムーブメントの背景
- 早期退職との違い
FIREとは何か理解を深めるために、上記の基本情報を把握しておきましょう。
FIREの読み方とビジネスにおける意味
FIREは「Financial Independence, Retire Early」の略称で、読む際は炎を表す英単語同様、「ファイヤー」と発音します。ビジネスにおいては「経済的自立と早期退職」という意味です。
具体的には「生活費を押さえて支出を押さえ、資産運用で収入を得る計画的な生活のこと」で、豪勢な暮らしをせず、シンプルに過ごす傾向があります。
経済的な自立と早期退職によって自由を獲得し、余った時間でやりたいことに注力できます。したがって、自分のやりたいことで人生を楽しみたい人に注目されている生活様式です。
FIREムーブメントの背景
以前までは「正社員で仕事を定年までして、老後でやりたいことをやる」という考え方が一般的でした。
しかし、現在では少子高齢化などの影響により、国が働き方改革を進めているため、ライフワークバランスを整える生活様式が浸透し始めています。
それにより、人生の時間を仕事以外の趣味やボランティアに費やすことで幸福度を上げたいと考える人が増えたのです。
また、コロナウイルスによる経済的な不安や、投資を実践する人が増えたこともFIREが普及した影響のひとつとして考えられます。
早期退職との違い
FIREと早期退職の大きな違いは「資産の作り方」にあります。
早期退職の場合は、退職金や貯金を切り崩して生活することが基本です。一方で、FIREの場合は貯金をすると同時に投資にお金を回し、運用による利益で生活することを指します。
早期退職は資産が減っていくだけになりますが、FIREは投資や資産運用をして生まれたキャッシュフローで生きることができるので、早期退職よりも安定した生き方をすることができます。
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FIREにはさまざまな種類が存在しており、詳細に分けると以下のようになります。
- サイドFIRE
- バリスタFIRE
- リーンFIRE
- ファットFIRE
- コーストFIRE
上記の種類はそれぞれ特徴が異なり、人によって目指すべきFIREの形が違うので、しっかりと確認しておきましょう。
それでは、FIREの種類について順番に解説します。
サイドFIRE
サイドFIREは、個人的に楽しめる副業をしながら、資産運用や投資で生活することです。自分が楽しいと思える仕事だけに集中できるため、仕事に対してストレスを感じることがなくなります。
副業と資産運用の両方から収益を得ているため、経済的な余裕があるのも特徴のひとつです。
ただし、サイドFIREは副業が前提になるため、投資や資産運用だけでは支出が収入を上回り、生活に困窮する恐れもあります。
バリスタFIRE
バリスタFIREは、コーヒーショップなどのアルバイトを週に2、3回することで、最低限の生活費を賄うタイプのFIREです。
「バリスタ」という言葉が付いていますが、コーヒーショップだけでなく、自分が好きなアルバイトで生活を目指します。
サイドFIREとバリスタFIREとの違いは諸説ありますが、サイドFIREは個人事業主として働き、バリスタFIREはアルバイトとして雇用されて働くという点が異なります。
リーンFIRE
リーン(Lean)は英語で「効率的な・引き締まった」という意味の形容詞です。リーンFIREは、FIREを達成するためにミニマリスト的な節約生活をした後、FIRE達成後も節約を続けるスタイルを指しています。
つまり、支出を減らして収入を下回るようにするFIREであり、他の種類のFIREと比べても、達成後の生活がより質素なことが特徴です。
「生活に最低限必要なものがあれば十分」と考えている人はリーンFIREを目指しましょう。
ファットFIRE
ファットFIREは、リーンFIREとは真逆で「余裕のある生活」を目指したスタイルです。FIRE後もやりたいことや欲しいものにお金を使いたい場合は、ファットFIREを目指すことになります。
ファットFIREを達成するには、支出を削減することは難しいため、キャッシュフローを継続的に生み出す資産形成、事業投資などが必要です。
コーストFIRE
コースト(cooast)は「楽に進む」という意味を持った自動詞です。コーストFIREは経済的にはFIREを達成できる状態であっても、仕事にやりがいを感じて、仕事を続けている状態を指しています。
コーストFIREの状態にある人は、主に弁護士や医者などの、高給職の方が多いです。いつでもFIREで自由を得られるため、精神的に安定した状態で仕事に従事できます。
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FIREを実現するためには、以下の要素が必要です。
- 年間支出の25倍に当たる資産
- 4%での運用
- 支出を上回る不労収入
年間支出の25倍に当たる資産
FIREが可能な資産の目安として、年間支出の25倍の資金が必要になります。例えば、月の生活費が15万円で賄えている場合、180万円が年間支出であるため、4500万円あればFIREを達成可能です。
1年に必要な金額は人によって大きく異なります。そのため、支出が少ない場合は必然的にFIREに必要な資産額も少なくなるという仕組みです。
4%での運用
年間支出の25倍に当たる資産を用意できたら、4%での運用を行っていきます。4%が目安として挙げられている理由は、アメリカの米S&P株の成長率7%の基準から、3%のインフレ率を差し引いているからです。
仮に現在4500万円の資金があるとすると、その4%は180万円です。したがって、この場合には年間180万円の支出、月間15万円までの支出に抑えれば理論上は資産が減らない計算となります。
支出を上回る不労収入
支出を上回る不労収入を捻出する方法は、株式投資だけではありません。中には、不動産投資などの不労収入を基にしてFIREを達成した人もいます。
日本では、家賃収入の平均利回りが6~8%程度だと言われているため、不動産投資による家賃収入もFIREに有効な投資のひとつでしょう。
また、コンテンツ販売や印税による収入も不労収入のひとつであるため、自身に合ったものを選択し、支出を賄えるような不労収入を目指しましょう。
FIREのメリット
FIREを達成することで獲得できるメリットは以下の4つです。
- 住む場所を自由に選べる
- 節制生活が身に付く
- 仕事をするか選べる
- 時間を自由に使える
自分が目指す生活様式と、FIREのメリットが合っているのか確認しておきましょう。
それぞれのメリットについて解説していきます。
住む場所を自由に選べる
現在会社員として働いている人は、勤めている企業の近くに住んでいることが多いでしょう。しかし、FIREを達成すると今の仕事を辞めて資産運用の利益だけで生活できるため、住む場所を自由に選択できます。
FIREで自由な生活を獲得した人の中には、田舎に移住して悠々自適な生活をしている人が多いです。また、物価が安い国を生活基盤とすれば、日本にいるよりも生活費を抑えられます。
ひとつの場所に留まるのではなく、国内外のさまざまな場所で生活したいと考えている人はFIREを目指してみてください。
節制生活が身に付く
現在の職業や年収によって異なりますが、一般的なサラリーマンがFIREを達成するには、年間に必要な支出を計算し、不要な費用を徹底的に排除することが必要です。
FIREを達成する頃には、節制生活により、本当に必要な物だけで生活できるようになっているでしょう。
過度な節制は負担になるので注意が必要ですが、最低限の物だけで生活すると、健康や地球環境に配慮したライフスタイルを実現できるメリットもあります。
仕事をするか選べる
資産運用によって生活費は確保できるため、FIRE達成後も仕事をするか選択できます。ライスワークをする必要がないため、本当にやりたい仕事に集中できるでしょう。
実際にFIREを達成した人の中には「仕事をやめたけれど、仕事が生きがいのひとつだったと気づいて再開した」という人もいます。
仕事を再開したとしても生活費を心配する必要がないため、心理的なストレスが少ないことも大きなメリットです。
時間を自由に使える
FIREを実現することにより、時間を自分の好きなことに当てられます。仕事以外にも、芸術活動や奉仕活動など、人生を豊かにする方法は人それぞれです。
人生を通して実現したい夢がある人にとっては、FIREを達成することが近道になるかもしてません。
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FIREのデメリットとして挙げられるのは以下の4つです。
- キャリアを積めない
- FIRE達成後に状況が変わる可能性がある
- 年4%の不労所得を獲得するのが難しい
- 急な出費への対応が難しい
FIREには、多くのメリットだけでなく、上記のようなデメリットも存在するので、どのようなリスクがあるのか把握しておきましょう。
それぞれのデメリットについて解説していきます。
キャリアを積めない
FIRE達成後に退職すると、キャリアを積めなくなってしまいます。FIRE後にしばらくたってから再度仕事を始めたいと思っても、実力不足で仕事に就けなくなる可能性があるので注意しましょう。
特に、40代以上の転職はポテンシャルよりも能力によって判断される傾向にあります。
FIRE後も仕事をするのかある程度定めておき、スキルが陳腐化しないように自己研鑽を積んでおくことが重要です。
FIRE達成後に状況が変わる可能性がある
「FIRE達成後も世界の経済状況がずっと同じ」と考えるのは危険です。増税の影響や、昨今問題になっているウイルスなどの影響により、社会情勢が大きく変わることがあるからです。
運用している不労収入にもよりますが、社会情勢が変わると期待していた収入を得られなくなる危険があります。
FIREを実現した後も、ニュースや新聞から情報を獲得して、リスクを感じたら適切な行動を取れるようにしておきましょう。
年4%の不労所得を獲得するのが難しい
「資産の4%で運用を行う」と一言で言っても、日本にいながら4%の運用利益を作ることは難しいと言われているのが現状です。なぜなら、日本株の配当収入の平均は2%前後といわれており、4%を達成するには、米国株の運用が必要になるからです。
日本に在住していても米国株の取引は可能ですが、英語で公開される情報や、アメリカに住んでいないと分からないような、詳細な流行を掴み取るのは難しいでしょう。
株式投資だけでなく、不動産投資などの不労所得も検討して、自分に合った方法を模索することが大切です。
参考:日本企業の配当利回りはどのくらい?高配当銘柄に投資をする際の注意点 | ZUU online
急な出費への対応が難しい
FIREを達成したあとは、年間に必要な支出を運用資産から確保することになります。支出と資産運用により生まれるキャッシュフローがギリギリだと、急な出費へ対応できないので注意しましょう。
人は普通に生活をしていても病気や怪我など、思いもよらないタイミングで費用が必要なことがあります。FIREで早期リタイアするときも、ある程度は余裕のある資産を築く必要があります。
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FIREを達成するための具体的な手順は以下の通りです。
- 年間の生活費を計算する
- 資産額を導き出す
- 節約と投資をする
- 収益を生む資産を増やす
FIREを成功させるためには、漠然と目指すのではなく、詳細な手順を理解する必要があります。
手順について、順番に把握していきましょう。
①年間の生活費を計算する
FIREを目指すに当たって、まずは年間の生活費を計算しましょう。年間の生活費は、日頃どのような生活をしているのかに影響されるため、人によって大きく異なります。
現在利用しているクレジットカードの決済額や家計簿から、必要な生活費を割り出し、無駄なものがないか確認してください。
また、FIRE後にどんな生活をしたいのかによっても、年間の生活費は変わってきます。余裕のあるファットFIREを目指す場合は、より多くのお金が必要です。
②資産額を導き出す
年間の生活費を算出できたら、必要な資産額を導き出します。資産額は、年間で必要な生活費に25倍を掛けた数値です。
例えば、年間に180万円あれば生活できる場合は、4500万円の資産が必要となります。資産額を間違えて算出してしまうとFIRE後に生活が成り立たなくなるので注意してください。
③節約と投資をする
目標の資産額が計算できたら、資金を貯めるために節約と投資をしていきましょう。貯蓄だけだと効率的にお金を増やせないため、FIREの達成には投資が必要です。
早期に投資を始めれば、複利効果によってお金が増えやすいというメリットもあります。株式投資でお金を増やすには専門的な知識が必要不可欠となるため、書籍や講座によって知見を深めることがおすすめです。
④収益を生む資産を増やす
資産を効率的に増やす方法として、ブログや印税なども挙げられます。最近では、専門的な知識を販売して収益を獲得する「コンテンツ販売」も有効です。
コンテンツ販売の例としては、例えばFIREを目指す中で得た知識を人々に伝えることで、資産の増加にも繋げられるでしょう。
持っている資産から新しい資産を生めれば、雪だるま式にお金を増やすことができます。
FIRE達成後の注意点
FIREを達成した後は、以下3つのことに注意する必要があります。
- 新しいやりがいを見つける
- 年間支出を極力抑える
- 退職した翌年の住民税
FIRE達成後も自由な生活を謳歌するために、注意をしっかりと確認しておきましょう。それぞれの注意点について、具体的に解説します。
新しいやりがいを見つける
FIRE達成後は、住む場所や時間を自由に決定できる反面、人生にやりがいを見いだせなくなる人が多いといわれています。自由になった時間をただ漠然と過ごすのではなく、趣味や仕事など、とことん追求できるものを探すことが大切です。
孤独から精神的に苦痛を感じる人もいるため、FIREを実現する前に、何をやりたいのかある程度定めておきましょう。
年間支出を極力抑える
FIREを達成したからといって、散財を繰り返していると生活が破綻してしまいます。FIREを実現する前と同じように、節約を徹底して支出を減らしていきましょう。
欲しいものがあるときや、もっと経済的に豊かに生活したい場合は、サイドFIREやバリスタFIREに切り替えることがおすすめです。
退職した翌年の住民税
FIREを実現して退職する前に、翌年の住民税がいくらになるのか把握しておきましょう。住民税は、前年の所得から計算されて請求されます。
普段は給料から天引きされているため、あまり気にしていない人も多いですが、退職の翌年は収入に対して住民税の負担が大きいので注意が必要です。
また、今までは会社と折半していた国民健康保険や国民年金の支払いもあるため、どれだけ税金がかかるのか把握しておきましょう。
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FIREは、年間に必要な資金をもとに運用利益から生活費を賄うことで、会社員生活から抜け出して自由な生活をする方法です。
目標の資産額は生活様式によって異なるため、質素な生活を目指すのであれば、現在の収入が多くない人でもFIREを目指せるでしょう。
FIREには自由な生活を送れるという大きなメリットがありますが、デメリットも存在するので、リスクもあらかじめ把握することが重要です。
また、FIREを効率的に目指し、達成後に安定した生活を送るためには、FIREへの手順や達成後に注意するべきこともしっかり理解しておきましょう。
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