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人件費削減の本質とは?メリットとデメリット、失敗しないための注意点や方法を解説

突然ですが、下記のようなことを感じてはいませんか?

  • 「人件費削減をしたいけど人手不足が心配…」
  • 「コスト削減で人件費を減らすにはどうすればいいの?」
  • 「新たな事業の投資にお金を使いたい…」

経済の低迷が続くなか、新型コロナウイルスの流行により大きなダメージを受けた企業は少なくありません。そういった状況下で、コストの削減や見直しが必要になり、人件費削減を行った企業も存在します。

確かに人件費削減を行えば、資金繰りや決算内容の改善には一時的な効果が期待できます。しかし、「人件費削減」の本質を理解していなかったり、やり方を誤ってしまうと、企業の体力を削ってしまいかねません。

そこで本記事では、人件費削減の本質や適切に行う方法、注意するべきポイントなどを解説していきます。

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人件費削減の前に「人件費」とはなにか把握しよう

人件費とは、雇用により生じる「ヒト」全般に関する費用を指しており、企業活動においては重要な経費の1つです。一般的には給与や福利厚生費を指すことが多いですが、人件費削減を考える上では、これら以外にも「ヒトに関係するコスト」の総称として人件費を捉える必要があります。

一般的な人件費

一般的に「人件費」という際には下記のものが挙げられます。

人件費の種類 内容
給与手当 労働契約によって定められた基本給や時間外労働手当・休日手当など
賞与(ボーナス) 企業の業績に応じて社員に支払われるお金。必ず支払われるとは限らない
雑給 パートやアルバイトへの給与は「雑給」として処理されることもある
福利厚生費 企業が企画する各種イベント(社員旅行や忘年会など)で生じる費用や、結婚祝いや出産祝いなどの各種祝い金、社宅費用など
法定福利費 労働保険費用など、従業員に関して企業が支払うことが義務付けられている費用。他には厚生年金保険、雇用保険、介護保険、労災保険などが挙げられる

広義の人件費

一般的な人件費ではなく、広義の「ヒト」全般に関する費用として考える場合、人件費が経営に与える影響の大きさを理解できるでしょう。上記の人件費に加え、下記の項目が人件費と考えられます。

人件費の種類 内容
労務費 製品を生産するためにかかった部分の費用のこと。

製造部門の従業員に支払う賃金や給料が該当する。

また、製造に直接関わった労働者の給料である「直接労務費」と、製造に間接的に関わった労働者の給料である「間接労務費」の2種類がある。

外注費 外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際の費用のこと。

製品のパッケージデザインやインターネットサイトの構築など、外部のデザイナーに依頼した際に生じる費用などが該当する。

旅費交通費 旅費と交通費のこと。

「旅費」は一般的には出張時の宿泊費や出張手当が該当し、「交通費」は電車や新幹線、飛行機、車の高速代、タクシー代などが該当する。

採用教育費 従業員の採用や教育訓練、資格取得に必要な費用のこと。

例えば、従業員を募集するための求人広告費や研修会の参加、教育用機器の購入、各種技能取得費用が挙げられる。

業種別の平均人件費率

「人件費率」とは「人件費÷売上高」で計算でき、売上高に対して人件費が占める割合です。当然ですが、業種によって経費に占める人件費の割合は異なり、人件費率が高いほど人件費によるコストが大きく、人件費率が低ければ人件費によるコストが小さいということになります。

一般的には、原材料費や仕入原価の割合が低い業種は人件費率が高くなります。

業種 人件費率
サービス業 40%から60%ほど
飲食業 30%から40%ほど
宿泊業 およそ30%

対して、原材料費や仕入原価の割合が高い業種は人件費率が低い傾向にあります。

業種 人件費率
建設業 15%から30%
製造業 10%から50%
小売業 10%から30%
卸売業 5%から20%

このようにみてみると、全体として人件費率はおよそ20%から30%が平均となっています。

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人件費削減の本質とは?

人件費を削減するときは、ただ人員や給料を減らすことだけを考えている企業が少なくありません。しかし、ただ単に人員や給料を削減すれば、自然と業績が良くなるという安易な考えのもと、人件費削減を進めようとはしていませんか?

当然ですが、人員や給料を減らせば経費を抑えられるため、数字上の決算は黒字となり、短期的には経営状況の改善が可能となります。しかし、このような方法はあくまでも対処療法でしかなく、根本的な解決にはなりません。

それでは、人件費削減の本質とはどのようなものなのでしょうか?

それは、人件費をただカットするのではなく、上記で解説した「人件費率」を下げることを目標にする、というものです。つまり、人件費そのものは変えることなく商品やサービスの単価を上げるなどの施策を行い、利益拡大を図ることが求められます。

従業員の給料を下げてはいけない理由

なぜ、従業員の給料を減らすだけでは根本的な解決ができないのでしょうか?

確かに、パートや派遣社員、正社員の給料を減らせば少しの間は資金に余裕が生まれます。しかし、従業員の給料をカットしてしまうと、仕事へのモチベーションが下がることにより生産性も低下し、結果的に売り上げに悪影響が及んでしまいます。

利益拡大を図るための方法として「商品単価を上げる」や「業務のムダを減らす」といったことを実施することで給料を減らすことなく利益を伸ばせるのであれば、そのほうが良いはずです。

このように、単純な人件費削減をすることなく利益拡大が実現できれば、その利益を従業員に還元することで従業員のモチベーション向上につながり、生産性をあげてさらなる利益拡大を図れるでしょう。

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人件費削減を行うメリット

それでは人件費削減に伴って期待できるメリットを見ていきましょう。

  • 従業員にかかるさまざまなコストを減らせる
  • 別の用途に費用を回せる
  • 銀行評価の向上
  • 株価が上がる

それでは1つずつ解説していきます。

従業員にかかるさまざまなコストを減らせる

人件費削減によって、給与以外の経費も大きく減らすことができます。

人件費削減の策の中でも希望退職やリストラといった人員整理による場合のメリットとなりますが、従業員を削減することで、これまでその従業員にかかっていたさまざまなコストも同時に削減できるため、経費削減としては大きな効果が得られるでしょう。

例えば、従業員を減らすことで日用品や交通費、研修費用、光熱費、資格取得に必要な費用なども合わせて削減できます。さらに、従業員が減れば大きなオフィスも必要なくなるため、オフィスにかかる費用も減らせます。

別の用途に費用を回せる

上記のように従業員にかかっていた資金が浮くため、新規事業への投資や設備投資、社員教育費、外注費など、別の用途への資金繰りに転用できます。

今後大きくなることが予想される市場に投資したり、従業員への研修を行えば、生産性向上が期待でき、利益拡大を図れるでしょう。

金融機関からの評価が高まる

給料を減らしたり従業員のリストラを実施することによって、決算書内の経費が抑えられるため、数字上においては企業利益を黒字化できます。これにより、銀行が与信判断をするとき、有利な評価を得られる可能性が高まります。

ただ、このような方法は融資継続を目的とした対処療法でしかなく、利益拡大による黒字ではないことに注意しなければなりません。

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株価が上がる

人件費削減によって業務効率が向上すれば、投資家からは良い評価を与えられます。これにより買われる株式が増えるため、結果的に株価が上がることが期待できます。

とはいえ、先程も解説しましたが、人件費削減によって経営を改善しても、それは一時的なものでしかありません。会社がうまくいっていない根本的な原因、つまり利益を伸ばせていない点をどうにかしなければ、人件費削減をしても再び経営状況は悪くなってしまうでしょう。

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人件費削減に伴うデメリット

上記で見てきたように人件費削減にはいくつかのメリットがありますが、下記のようなデメリットもあるため安易な人件費削減には注意する必要があります。

  • 従業員のモチベーションが下がる
  • 企業のイメージや評判が悪化する
  • 人手不足に陥る

それでは1つずつ解説していきます。

従業員のモチベーションが下がる

従業員の給与やボーナスを減らせば、従業員のモチベーションが大きく下がることとなるでしょう。報酬が減っても変わらず同じモチベーションで働き続ける従業員もいるかもしれませんが、おそらく少数派と言えます。

さらにリストラを行えば、従業員に対する心理的なダメージがあるほか、労働意欲が失われる可能性もあります。

企業のイメージや評判が悪化する

規模が大きい企業であれば、経営者がどのような決断を下すのかについて、社会から評価されることになります。したがって、給与やボーナスの削減、リストラを行えばその情報は外部に漏れる可能性があります。

これにより、経営層が従業員をぞんざいに扱っていると評価されると、企業のブランドイメージや評判の悪化にもつながります。企業のイメージが悪くなれば、優れた人材の獲得が困難になり、取引先との信頼関係にも悪影響が及ぶ危険性もあるでしょう。

人手不足に陥る

人件費削減に伴うデメリットとして最も避けたいものが、人手不足に陥ることです。

給与やボーナスカットやリストラが行われた場合、従業員は今働いている会社よりも条件の良い会社への転職を考えるでしょう。そして、希望に叶う会社が見つかればなんのためらいもなく会社を辞めてしまいます。

これにより、給与を削減すると従業員の流出が止まらず、急速に人手不足に陥ってしまう危険性があるのです。

当然、人手が足りなければ事業活動が危うくなるため、企業の存続に関わる事態になりかねません。

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人手不足に陥ることなく人件費削減をする方法

それでは、人手不足に陥ったり企業のイメージを悪化させることなく、人件費削減をする方法を見ていきましょう。

  • 従業員の育成により生産性を上げる
  • 残業代を減らす
  • 業務のムダを減らす機器やシステムを導入する
  • 外注の活用

それでは1つずつ解説していきます。

従業員の育成により生産性を上げる

適切に人件費削減を行うには、従業員の生産性を上げることが欠かせません。

従業員の生産性を上げるための方法としては、従業員のスキル向上を目的とした教育や研修の実施が挙げられます。

研修等には一時的とはいえ上記で説明した採用教育費に当たる資金が必要となりますが、長期的に見れば生産性向上につながるでしょう。

残業代を減らす

「仕事量は適切なのに残業が減らず、残業代がかさんでしまう」というケースがあります。

このような場合は、残業を少しでも減らすための工夫が必要です。例えば、決まった時間になると自動的にオフィスの照明が落ちる仕組みを構築することで、業務の区切り時間を意識しやすくなります。

この仕組みによって従業員は退社しやすくなるうえに、消灯するまでに仕事を終わらせるように仕事を進めるため、生産性や業務効率の向上が可能です。

業務のムダを減らす機器やシステムを導入する

業務のムダを減らすことも人件費削減において重要となります。業務効率化のための新たな機器やシステムを導入することで、人件費削減につながります。

例えば、グループウェアを導入することで情報の共有化を進めれば、ただの情報共有や報告だけで終わっていた会議を無くせるため、時間の節約が可能です。また、社内システムをクラウド化すれば、保守・運用などの人的コストをカットできるため、その手間や人員を他の業務に回すことができます。

外注の活用

他業者に一部の仕事を外注することも効果的です。

自社の従業員には固定給与を支払う必要がありますが、必要なときにだけ成果報酬でアウトソーシングすることで、固定費を変動費にできます。また、自社の従業員に対しては福利厚生費や法定福利費などを支払わなければなりませんが、外注にすればそのような経費も不要です。

このようにして、自社だけですべての業務を行おうとするのではなく、必要に応じてアウトソーシングを用いることで人件費削減ができます。

人件費削減で失敗しないために注意するべきポイント

人件費削減で失敗しないためには、下記のポイントに注意する必要があります。

  • 経営ビジョン・経営計画の明確化
  • 人事制度の整備と退職条件の調整
  • 人員削減を推し進める体制を整える

それでは1つずつ解説していきます。

経営ビジョン・経営計画の明確化

人員削減を行う際は、人員削減をすることによって会社をどう変えたいのか、どこを目指しているのかといった経営ビジョンを明確化と共有が必要です。理由や目的とそれを行う必要性、そしてどういった形で実践に移すのかといったことを経営計画に落とし込んだうえで従業員に伝えることが、人員削減で失敗しないために重要となります。

人事制度の整備と退職条件の調整

人件費削減で人員削減を行う際は、能力や業績を重視した人事制度を整える必要があります。また、人員削減に応じた従業員に対しては、退職条件をより魅力のあるものにしなければなりません。

人員削減を推し進める体制を整える

人員削減をする際は、スムーズに進めるために人員削減を担当する中心的な人物が必要です。この人物は人員削減の推進をまとめ、全社的な削減を推進する役割を担うことになります。

それぞれの部署で行われる人員削減の取り組みに偏りや不公平な対応がないように管理する、重要な役割といえます。

まとめ

ここまで、人件費削減について、その概要や目的、手法などとともに、実施の際に気を付けるべきポイントなどを解説しました。

会社の業績悪化の際には、人件費の削減を検討する企業も多いでしょうが、どういった目的で行うのか、どういった方法で行うのかといったことを、会社の現在だけでなく、今後の成長も含めた中長期的な視点で考えなければ、むしろ会社全体の力をそぐことにもなりかねません。

今回の記事の内容を理解した上で、人件費そのものではなく人件費率の削減も視野に入れつつ、最適な方法を考えてみましょう。

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