マネジメントに関する悩みは尽きないものです。
- 業績を上げるためにどう振る舞うべきか?
- 年上の部下に対して最適なアプローチ方法は?
- 部下のモチベーションを担保するためにはどうすればよいのか?
- 厳しく指導しなければならないが、嫌われたくない
現在、組織コンサルタントとして活動している私も、前職の生命保険会社では、管理職として日々部下のマネジメントに悩んでおりました。
振り返れば、成功を収めたと思えることがある一方で、数多くの失敗も重ねてきました。自身の経験を踏まえ、マネジメントにおけるヒントを皆様にご提示したいと思います。
目次
部下に説教され退職者続出
生命保険会社の営業マンは、基本的に営業所長自らが採用を実施し、育成をしていくというスタイルです。
私は所長就任後2年間で営業マンを18名から30名に増やし、その間離職者を1名も出さず、業績も右肩上がりで順調に伸ばしていきました。
一般的に生命保険会社の営業マンは離職率が高いと言われているので、離職者ゼロであることは私のひそかな自慢でした。
営業所長として3年目を迎えようとする直前、人事異動が発表され、私は50名規模の営業所の所長を任せてもらえることになりました。
やる気と期待を胸に初日を迎えたことを覚えています。
その営業所の前任者が非常に厳しく数字を求める人物だと有名であったため、私は真逆のスタンスで、優しく、初日から全員の社員との対話を始めました。
人気のあるリーダーであれば業績は拡大するのではないかと考えたからです。
忙しいから設計書を代わりに作っておいて欲しいと言われたら最優先に対応していました。
私より年齢が上で業界経験もある先輩に対しては、言えることなどないと考え、「好きなように結果を出して下さい」と自由な環境を作ることを意識しました。
その結果、何が起きたか。
日に日に数字が出なくなったのです。
終いには、年齢が上の部下から説教を受けたり、社員の退社申し出が続いたりしました。これらはすべて、私が良かれと思って行ったマネジメントのせいでした。
補佐3名を飛び越えたマネジメント
当時、在籍していた50名のうち、30名近くは入社から5年以内の社員です。
私は、この30名を育成社員と定義し、私の直下にいた補佐3名に担当させていました。
直近で入社してきた社員に至っては、自らスカウトをし、採用している社員であることから、思い入れも強く、同行から研修、対話まで時間の許す限り関わるようにしていました。
補佐3人は、リーダー経験が浅く、どちらかというとプレイングマネージャー。
管理・指導して営業を獲得させていくというよりは、一緒にお客様のところに同行し、結果を出すというスタイルでした。
こうした事情から、私はすべてを任せることが不安であり、補佐3名の部下の動きに対して口を出す回数が増えていきました。
私の目の前に補佐と新人を座らせ、お手本になるよう新人に指導を続けたのです。見て覚えることで補佐も新人も成長スピードが上がるのではないかと考えていたわけです。
ここまで読んで、皆様はイメージが付いたでしょうか?
補佐も新人も思考停止状態です。考えるということをせず、すべて私に聞きに来るようになってしまい、何のために新人を補佐に管理させているのか分からなくなってしまいました。
「これは君たちの仕事でしょ?自分で何とかしなさい」と突き返すこともしていましたが、今考えれば、このように部下を育ててしまったのは、すべて私が原因でした。
識学的に見た自分のミス
組織にとってもっとも大切なこと。それは、ルールの徹底です。
そもそも人は、過去の経験や育ってきた環境が異なるため、別々の価値観や独自のルールを持って1つのコミュニティに集まってきます。
そのままの状態では、いずれある事象に対して認識のズレが発生し、解消するためのコミュニケーションが必要になります。
そこで、識学では組織構築の一丁目一番地は、ルールの設定と徹底であるとお伝えしています。私の場合、まさにこれができなかったゆえに失敗したのでした。
優しく良いリーダーでありたい、嫌われたくないといった考えから、50人の個人の価値観やルールに合わせようと一生懸命耳を傾けていました。
そのうちに、「朝礼に出られない」「報告している時間がない」「ミーティングよりもアポイントを優先させて下さい」など個人のルールに付き合うことが増えました。
すると組織のルールが崩壊し、結果的に誰も言うことを聞かなくなってしまったのです。感情的に何とかしようとしましたが、そのせいで人間関係まで悪くなってしまいました。
また、補佐を飛ばして、新人とやり取りするということは、補佐の役割を不明確にする大きなミスでした。新人も自分を上司だと思い、補佐の言うことを聞かなくなってしまったのです。
ルールを全員で守ることから始める
自らの経験を踏まえ、私がお伝えしたいことは、リーダーは、まず、絶対に守らせたいルールを設定し、徹底するということです。
特に「これから新たなチームでリーダーをやる」「管理職に抜擢された」といった方々は、是非やってみて下さい。
例えば、
- 会社に来たら、立ち止まって全員に聞こえる声で挨拶をする
- 日報の提出は、所定の項目を入力し、18時までに提出する
- デスクの上は、何もない状態で出発、帰宅すること
など、上記は参考例ですが、どうしてもこれだけは守ってほしいというものからルールを設け、社員に守らせるようにしてみてください。
どのような理由であっても、社員はそのルールを守らなければなりません。
例えば、ルールを守らなかった社員がいたとき、
「彼は毎回守っており、今回はたまたまであろうから見逃すか」とか、「今回は、忙しかったのであろう。次回からは問題なさそうだから大目に見るか」
といったことはやってはいけません。
絶対に守らせたいルールです。ルールを破ったことを許してはいけません。
「蟻の穴から堤も崩れる」ということわざがあります。
こういった些細なことから、組織内のルールの形骸化に繋がっていきます。打ち出したルールを徹底させる。是非やってみて下さい。
組織図を作り役割を明確化しよう
そして、もう1つ。組織図を作りましょう。組織図は、組織の中で自分はどこに位置するのか、誰の指示に従い、誰から評価されるのかを認識させるために重要なものとなります。
組織図とセットで必要になるのが、役割の明確化です。組織内での自身の役割は何か、いつまでに何をする責任があるのか、これらを社員に理解させるのです。
ここまでしたら、経営者は口を出さない。
期限を迎えたら報告して来なさいというルールにして、報告を待つことがポイントになります。
経営者の干渉が増えると、部下が、自分にはこの仕事に責任がないと考えるようになってしまいます。言い訳や免責材料を与えることになりかねないわけです。
現在では、コンサルタントとして、多くのリーダーの方々にマネジメントの方法を説いている立場ではありますが、実はマネジメントにおいて、数多く失敗してきた過去があります。
今だから笑って言えますが、マネジメントを知らなかっただけです。
マネジメントにも、数学のように公式があります。一つひとつ実行していくことで勝たせることのできるリーダーになれます。マネジメントで悩んでいるのであれば、ぜひ一度識学のコンサルタントにご相談ください。