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副業を認めるとイノベーションが生まれるのか。また、企業が副業を認める際の基準とは。

副業を認めるとイノベーションが生まれるのか

世の中では働き方改革が声高に叫ばれ、「企業は副業を認めるべきである」という記事が出るなど、働く環境が大きく変わろうとしています。これはかけ声だけに留まらず、企業の成長にも関わるとされています。特に、イノベーションを生むには副業を認めるべきだという言説も出てくるようになってきました。

しかし、本当に副業を認めればイノベーションが生まれるのでしょうか。そもそもイノベーションとはどのようなものなのでしょうか。

イノベーションには

  • 「漸進的イノベーション」
  • 「画期的イノベーション」
  • 「破壊的イノベーション」

の3種類があると言われています[1]。

「漸進的イノベーション」は普段のカイゼン活動なども含まれ、少しずつ性能が上がっていくものを指します。例えば、パソコンやスマートフォンの性能が新機種発売のタイミングで少しずつ上がっているのがそうです。

「画期的イノベーション」は、性能が飛躍的に向上するものを指しています。

これは新技術を導入することによって達成されているケースが多く見られていて、スマートフォンの通信速度が3Gから4Gに変わったことによって、大きく性能が向上したものなどが例でしょう。

これらに対して「破壊的イノベーション」は、人々のライフスタイルを変えるほどのインパクトを持ち、それまでの市場を破壊してしまうものを指します。

これの実例は、人々が屋外で音楽を楽しめるようになったソニーの「ウォークマン」や、携帯電話を再発明したAppleの「iPhone」があります。

そして、多くの企業は

「画期的イノベーション」や「破壊的イノベーション」が生まれることを狙っています。日本国内で「イノベーション」と言われたときには「破壊的イノベーション」を念頭に置いている人が多いことがわかっています[2]

ではこれらのイノベーションが生まれやすい土壌というのは、どういう状態なのでしょうか。

豊田健一氏[3]によると、様々なバックグラウンドを持った人々が交流し、意見を交換することで、視野が広がることが重要だとされています。

しかし、実際には閉鎖的になりがちな企業内で視野を広げることは難しく、兼業・副業を介したオープン・イノベーションが重要であるという提言[4][5]も中小企業庁から出されています。

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副業が企業にもたらすメリット

では、副業は本当に企業にメリットをもたらすのでしょうか。メリットとデメリットについて考えてみましょう。参考にするのは2017年3月に中小企業庁が公開した「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言 ~パラレルキャリア・ジャパンを目指して~」[4]です。

提言では企業のメリットとしては大きく3つあるとされています。それらは「人材育成」「優秀な人材の獲得・流出防止」「新たな知識・顧客・経営資源の獲得」です。

「人材育成」については、従業員が社内では得られない知識・スキルを獲得できる、さらには社外でも通用する知識・スキルを習得し、研鑽に努めるようになるや、場合によっては経営者視点を醸成できるとされています。

「優秀な人材の獲得・流出防止」では、優秀な社員の流出防止や、現在のプロジェクトに必要なスキルを持った社外の専門家を、スポット的に雇用可能となるなどがあります。

そして「新たな知識・顧客・経営資源の獲得」では、従業員が他の企業で働くことにより、それまでには得られなかった知見とともに、新たな市場を開拓できる可能性があるとしています。

確かに、社内の限られた環境にいたのでは得ることのできないアイデアや人脈が生まれることは大きく期待できるでしょう。実際に、本業の仕事とは関係しない、例えば趣味を副業として仕事をした場合、本業では繋がることにできない人々と繋がることができるはずだからです。つまり本業では得られなかった人脈を作ることができるわけです。

一方、デメリットもあります。

まず「本業への支障」が真っ先に考えられます。長時間労働になってしまうことによる健康被害や生産性の低下、また長時間労働にはならない場合でも本業に支障が出ないかどうかを評価するのは難しいものがあります。

メリットでは「優秀な人材の獲得・流出防止」を挙げていましたが、実際には副業の方が気に入ってしまった社員が退職してしまうという「人材流出等」もあるでしょう。

さらには「情報漏洩等、様々なリスク管理」があります。業務上の秘密漏洩や企業の信用毀損が発生する可能性もありますし、副業先が本業との競業に関係にある企業の場合、損害発生等のリスクが高まる可能性もあります。

もちろん就業規則の改正や、兼業・副業先との通算労働時間管理、社会保険料や割増賃金等の負担調整などの事務コストも発生するでしょう。要は、これらのメリット・デメリットを勘案した上で、メリットが上回るようでなければ、企業は副業を解禁しにくいわけです。

とはいえ労働人口減少に伴い、働き方も変わっていくだろうと考えられています[6][7]。企業もその形を変えて行かざるをえない未来があるとされています。デメリットにばかり目を向けるのではなく、いかにしてメリットを享受するのかを考えるようにした方が良いでしょう。

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副業を認める際の基準

ではもし副業を認めようとする場合、どのような点に注意するべきなのでしょうか。大抵の企業では、就業規則で副業や兼業を禁止しています[7]

また、届け出制で副業を認めている場合もありますが、そこにはしっかりとした基準を設けるべきだと考えます。

先にも述べましたが、デメリットがメリットを上回ってしまうようでは意味がありません。できる限りデメリットを最小化し、メリットを最大化するような基準が望ましいのです。筆者が考えるのは次のような基準です。

まず、本業での損害発生リスクを抑えるために、同業他社の仕事を請け負うような副業は一定の制限をするべきだと考えます。

これはデメリット項目「情報漏洩等、様々なリスク管理」への対策です。もちろん他社から得られる知見もあるでしょうが、逆に同業でしか通用しないようなスキルだとしたら、業種や職種によってはあまり副業を解禁するメリットがありません。

次に本業への職務専念をしっかりとさせるために、ノルマとは言いませんが、一定期間内での成果をしっかりと従業員と同意する必要があると考えます。

例えば、株式会社ガイアックスは一定の成果を出した人にだけ副業を認めています[9]

毎月の目標を上司とともに立て、それをしっかりとクリアできたかどうか。営業であれば売上ノルマでしょうし、プログラマであれば完成させたプログラムのコーディング量といった形です。

もちろん過大な成果を求めてしまうのは問題ですが、一定の成果を出せているのであれば、それ以上の時間については自由裁量を認めてしまいましょう。

そうすることで、成果を出すところまでは職務に専念し、副業の時間を確保しようとする従業員と、それができない従業員との判別もできる様になります。できる従業員はそのまま副業を認めれば良いですし、できない従業員にはなんらかの指導を行えばよいわけです。場合によってはその従業員に対し、「時間管理ができていない」という理由で副業を禁止するという手段も執りやすくなります。

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副業でイノベーションを促進できるか?

では、本当に副業を認めればイノベーション、特に「破壊的イノベーション」を起こすことはできるのでしょうか。

イノベーションとは「多様性から」とも言われています。つまり、多様なナレッジ、スキル、経験を持った人々が集まってアイデアを出し合うことで、イノベーションが生まれるというわけです。

筆者も経験がありますが、まったく異なる業界の人と話をしていた際に、新しいアイデアが生まれることは、よくあります。

とはいえ、営業などで普段から外部の人と接触している人ならともかく、社内での作業がほとんどの人では、そういう刺激を受けにくいのは事実でしょう。

ですから副業を含む多様な働き方により、イノベーションの可能性も高まるという説明には、一定の説得力があることは事実だと思います。

しかし、副業さえ認めればイノベーションが生まれるという考え方は危険です。

そもそも副業によって、本業では得られない知見を持ってもらわないといけません。単なる内職では困るのです。いかに多くの「異なったバックグラウンドからの知見」を集められるか、が副業でイノベーションを生むための鍵となるでしょう。

またイノベーティブな製品やサービスを開発する場合、そのプロジェクトの成功要件は、以下の4点が必要であるとされています[8]

1)プロジェクトマネージャーのイノベーションの元になった「感情的な知」と粘り強い姿勢

2)その個人を排除しない組織

3)プロジェクトマネージャーの「ストーリー」の理解者や協力者

4)プロジェクトマネージャーを理解しサポートする経営者

実際にiPhoneを例に取ると、スティーブ・ジョブズという経営者が1)から4)を満たしていたことがよくわかります。

「副業がイノベーションの一助たりうる」のは事実ですが、本筋から言えば様々なバックグラウンドからの知見を集め、それを自由に発揮できるような組織作りをしてこそ、イノベーションは生まれると考えるべきでしょう。

参照

[1] 日本のイノベーションのジレンマ 玉田俊平太著 翔泳社、2015年
[2] 「イノベーション」に対する認識の日米独比較  米谷悠 科学技術政策研究所調査資料―208、2013年3月
[3] 「副業」が企業にもたらすメリット・デメリットとは  豊田健一(「月刊総務」編集長)、ダイヤモンド・オンライン、2018年3月29日(http://diamond.jp/articles/-/165093
[4] 兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言 ~パラレルキャリア・ジャパンを目指して~  中小企業庁 経営支援部 創業・新事業促進課 経済産業政策局 産業人材政策室、2017年3月
[5] 兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集  中小企業庁 経営支援部 創業・新事業促進課 経済産業政策局 産業人材政策室、2017年5月
[6] 「働き方の未来 2035」~一人ひとりが輝くために~  厚生労働省「働き方の未来 2035:一人ひとりが輝くために」懇談会、2016年8月
[7] イノベーション促す働き方 兼業・副業解禁の行方” 日本経済新聞 電子版、2016年10月2日(https://www.nikkei.com/article/DGXLZO07898350R01C16A0SHA000/
[8] イノベーションプロジェクトのプロジェクトマネジメント(<特集>成功するプロジェクトのための仕組みと組織活動)  吉田憲正、プロジェクトマネジメント学会誌 2012 年 14 巻 6 号 p. 11-16
[9] 株式会社ガイアックス -Our culture (https://www.gaiax.co.jp/about/culture/)

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