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ダイソンのブランディング戦略とは?ダイソンが成功した要因について詳しく解説

「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」

この言葉を聞いて「あ、あのCMだな?」と思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。これこそ、ブランディングの力です。

本記事では、ダイソンのブランディング戦略についてわかりやすく解説します。

「ブランディングの実例を探している」「ダイソンについてより詳しく知りたい」

上記のようにお考えの方にぴったりの記事となっていますので、ぜひご一読ください。

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ダイソンはなぜ成功したのか

ダイソンといえば、今は掃除機のメーカーというイメージが広く普及しています。「吸引力の変わらないただひとつの掃除機」というキャッチフレーズの元、日本にも浸透したメーカーです。

そんなダイソンが日本に参入したのは実は1998年、今から20年以上前の話です。当時は紙パック式の掃除機が主流でしたが、紙パックにゴミが溜まると吸引力が落ちてしまうという課題がありました。

こうした背景から、ダイソンは紙パックを使わないデュアルサイクロン式の掃除機を開発し、日本中にダイソンのブランドを普及させました。

ダイソンはつい掃除機にのみ焦点が当てられがちなのですが、以下のような商品も開発しています。

  • ダイソン式手押し車
  • ドラム二槽式洗濯機
  • ハンドドライヤー
  • 扇風機

上記の中でも、「羽根のない扇風機」などは皆さんの記憶に新しい商品かもしれません。

同社の業績が公的な記録として残っているのは2017年までですが、当時の売上は35億ポンド(約5,100億円)で、創業を開始してから大躍進してきたことが見て取れます。

そんなダイソンの成功要因は以下3つに分類できます。

  • アナロジーとラテラルシンキング
  • 組織風土
  • ブランディング

それぞれ詳しく解説します。

アナロジーとラテラルシンキング

ダイソンのイノベーション力の実例として真っ先に挙げられるのが、デュアルサイクロン式の掃除機です。ダイソンの創業者はサー・ジェームズ・ダイソン氏。CEOでありながら自身をチーフエンジニアと名乗る、独自の「ものづくりの哲学」をもつ人物です。

ダイソン社のイノベーション力はダイソン氏に起因するところがあります。創業者のダイソン氏は、1978年のある日、紙パック式の掃除機が再利用できないことに不満を抱いたと言われています。

「掃除機がいっぱいになったので、紙パックのゴミを中身だけ捨て、再利用をしようとしたらもう吸引力はなかった。」

上記の出来事があり、ダイソン氏は掃除機の発明を始めます。デザインを学んだエンジニアとしてこの問題を解決したいと考えたのです。

この問題を解決するのに必要だったのはアナロジー思考でした。アナロジー思考とは、既に経験した分野の構造を借りて、まだ知らない分野に当てはめて考える方法です。

製材工場を訪れた際に、木くずと空気を分離するサイクロンの装置を見て、サイクロン技術を掃除機にうまく活用できるのではないかとダイソン氏は考えました。

その後ダイソン氏は5年もの月日をかけて掃除機を作り続け、のべ5127個の試作品を経てようやく成功。その後もダイソン社は羽根のない扇風機などの開発に成功しています。

ダイソン社が大切にしているのは、創業者であるダイソン氏の理念、つまり「顧客の悩みの本質を掴むこと」だと言われています。顧客がまだ気づいていない悩みを解決するのが、ダイソン社の考え方です。

こうしたまだ見えぬ課題を解決する考え方こそが、ラテラルシンキングです。

ラテラルシンキングとは、思考を水平的に広げることです。「掃除機が詰まってしまう」問題に対し、「もっとよりよい紙パックを作ること」はロジカルシンキングで思いつきますが、「そもそも紙パックはいらない」と前提を壊して自由に考える方法はラテラルシンキング的だといえます。

つまり、ダイソン社の成功要因にはアナロジーとラテラルシンキングにあったのです。

組織風土

ダイソン社では、デザインとエンジニアを統合して「デザインエンジニア」という職種を作り出して商品改善に務めるほど、エンジニア気質が高い会社です。

WIREDではそんなダイソン社には以下の定理があると説明されています。

  1. 消費者を見極めよ
  2. 売り方を説明せよ
  3. 外に出ろ
  4. 発想は柔軟に
  5. プロトタイプを作れ
  6. いいアイデアは他でも使え

上記のような定理を持つダイソン社は、マーケティングをしない会社として有名です。その理由は、ダイソン社は、顧客を直接見て、問題の本質を考えることを大切にしており、マーケティング戦略をたてることでそういった「顧客課題の本質」に気づけなくなるからです。

ダイソン氏も自身を「ビジネスマン」ではなく、「デザイナーでありエンジニア」と定義していることからも、ダイソン社が利益を出すことに固執するのではなく、まだ見ぬ顧客課題に応えることがミッションになっていることがよくわかります。

参考:WIRED | ダイソンの定理 破壊+発想(実験+冒険)=ものづくり from 『WIRED』VOL. 3

ブランディング

ダイソンはマーケティングを実施していない企業と言われますが、現在のマーケティングの視点から見つめ直してみると、思わぬうちにブランディング戦略を実施してきたといえます。

例えば以下はブランディング戦略として捉えることができます。

  • 店舗の作り
  • 商品のデザイン

店舗の作り

店舗の作りとして有名なのは、Dyson Demo フラッグシップ 表参道です。世界初のダイソン旗艦店として表参道に建てられたDyson Demo フラッグシップでは、日本の法令を遵守しながらも、本国イギリスを彷彿とさせるような店舗を作り出しました。

店舗内は映像で囲まれていますが、商品数が少なく広い空間はダイソンが高級店舗であることを彷彿とさせる作りになっており、店舗中央の床は世界からさまざまな種類のものが集められています。

顧客はダイソンの掃除機を各種の床で試用でき、店舗では「試す」という体験を楽しめます。

商品のデザイン

次に、商品のデザインですが、ダイソンは専門デザイナーを雇うのではなく、エンジニアがデザインを考えるスタイルを取っている企業です。したがって、ダイソンの商品カテゴリーを比較してみると、デザインがバラバラで統一されていません。

独自のデザインが完成するのは、まさに上記が理由です。デザインから商品を設計するのではなく、商品の機能面からデザインを構築する形を取ることで、ダイソンの独特な商品ブランディングが、結果として出来上がっています。

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ダイソンの「吸引力の変わらないただ一つの掃除」に込められた意味

「吸引力の変わらないただ一つの掃除」という言葉を耳にしたことがある人は、そのキャッチーな一言が脳裏から離れません。

「ダイソンはマーケティングをしない」と公言されているものの、このキャッチコピーはUSP(ユニークセリングプロポジション)から考えると大変優れています。

そこで、ここからは自社のブランディングを明確にするUSPについて確認していきましょう。

USPとは?

USP(ユニークセリングプロポジション)とは、他とは違ったその商品だけが持つ特徴のことです。その一文を見て、顧客がUSPを想像できるか否かが重要です。

具体的には以下の要素をUSPに組み入れることが多いです。

  • 価格
  • 品質
  • スピード
  • 保証
  • ラインアップ

例えば、USPとして挙げられる例には以下のようなものがあります。

  • ホットでフレッシュなピザを30分以内にお届けします。もし、30分以上かかったら、ピザの料金はいただきません
  • お口でとろけて、手にとけない
  • お、ねだん以上ニトリ

1つ目はドミノピザが利用していたキャッチコピーですが、USPとして必ず時間内に届けるという意志があります。ピザの到着時間がわからずに困っていた顧客は、このキャッチコピーを見ることで「ドミノピザであれば30分以内にピザを宅配してくれる」ベネフィットを感じることができます。

2つ目はM&Msのキャッチコピーです。手で溶けないチョコレートを開発して欲しいという、アメリカ兵士の思いから生まれたチョコレートは、外側が砂糖でコーディングされており、「口の中以外では溶けない」というわかりやすいベネフィットを顧客に提供しました。

3つ目はニトリのキャッチコピーです。価格以上のクオリティを提供することを伝えるニトリのキャッチコピーを見て、顧客は「コスパの良い商品を購入できる」ことを理解できます。

このように、商品ブランドを訴求するUSPは非常に魅力的なため、各企業が利用しています。

ダイソンのUSP

それではダイソンのUSPには一体どのような意味があるのでしょうか。「吸引力の変わらないただ一つの掃除」は以下のようなUSPが含まれています。

  • これからはもう紙パックが不要です
  • 吸引力の変化に困っていてももう安心、吸引力が変わりません
  • 吸引力が変わらないのは当社だけです

上記のメッセージ性がダイソンのキャッチコピーには含まれているため、ダイソンのブランディングは他社と差別化できたのです。

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3C分析からみるダイソンのブランディング

上記のようなUSPは時には独自の感性で誕生することもありますが、現在では3C分析を利用することでUSPを作成できると言われています。

ここからは、ダイソンのブランディングを3C分析で確認します。

3C分析とは?

3C分析とは、ブランディング戦略やその下位構造にあるマーケティング戦略を策定する際に利用します。3C分析とは以下3つの英語の頭文字を取ったものです。

  • Customer:顧客
  • Company:自社
  • Competitor:競合

この中で特に重要なのは、顧客と競合の分析です。自社のことは既に知っていても、他社や顧客のことを正確に把握している企業は少ないということが散見されるからです。

ダイソンのCustomerが求めているもの

ダイソンの顧客が求めているものは以下3つでした。

  • 吸引力
  • デザイン
  • 価格

したがって、上記の3つのポイントを他社とどのように差別化できるかが重要です。

ダイソンのCompetitor/Company

ダイソンの競合分析をするために、以下の2つの切り口から分析を行います。

  • 吸引力
  • デザイン性

ダイソンの競合分析をして、自社のポジションを検討した結果以下のような表が作成できました。

ダイソンは吸引力と高いデザイン性(ブランド性)で他社とは差別化されていることがわかります。また、吸引力という視点から考えて見ても、「吸引力が変わらない」という点では他社に勝っていることがわかります。

したがって、ダイソンの3C分析した際の強みは、以下2つだといえます。

  • デザイン性
  • 吸引力が変わらない点

このように訴求すべきUSPを3C分析を通して洗い出すことができます。

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注意:ダイソンの吸引力は決して高いわけではない

ダイソンのブランディングに関わるUSPは以下の通りでした。

  • これからはもう紙パックが不要です
  • 吸引力の変化に困っていてももう安心、吸引力が変わりません
  • 吸引力が変わらないのは当社だけです

ただし、注意点として押さえておくべき必要があるのは、決してダイソンの掃除機は吸引力が高いわけではないことです。

ダイソンの吸引力が変わらないことは商品の訴求ポイントになっていますが、吸引力が高いとは一言も書かれていません。これこそキャッチコピーの威力です。「吸引力が変わらない」という一言だけで、吸引力が高いと想像してしまう私たちの頭の中を、うまく利用したキャッチコピーだと言えるでしょう。

したがって、ダイソンを説明する際には吸引力が高いという表現をすると間違った解釈となってしまうので注意しましょう。

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まとめ

本記事では、ダイソンのブランディング戦略と成功の要因についてわかりやすく解説しました。

ダイソンのブランディングは非常に魅力的なため、ブランディング戦略の基本として各所で引用される傾向があります。確かにそうした勉強方法も可能なのですが、ダイソンは前提として、ブランディング戦略を考えて意図的に行っているわけではありません。

あくまでもダイソンがこだわるのは、顧客課題を解決するための商品への情熱です。したがって、結果としてブランディング戦略ができ上がったダイソンをブランディング戦略の一貫として捉えるかには議論が必要になるでしょう。

とはいえ、ダイソンは結果を出し、売上を当初より格段に伸ばしている企業です。したがって、参考にできる部分を自社に適用する視点が必要となります。

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