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近年、サードプレイスが注目されていますが、皆さんは「サードプレイス」と聞いて思い浮かべる場所はありますか?
例えば、スターバックスやドトールなどが浮かぶかもしれませんが、実はこういった場所は本来のサードプレイスの定義には当てはまりません。
本記事では、以下のような点を解説します。
- サードプレイスの概要や意味、定義
- サードプレイスのメリットや効果
- サードプレイスの具体例
また、「未来に繋がる」フォースプレイスも解説しますので、ぜひご一読ください。
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サードプレイスとは
経営者
サードプレイスという言葉自体は皆さん聞いたことがあるかもしれません。
しかし、厳密な意味や定義を把握できていない方も多いのではないでしょうか。サードプレイスを詳しく理解するために、まずは以下3点を解説します。
- サードプレイスの意味
- 提唱した人物
- ファースト・セカンドプレイスとの違い
サードプレイスの意味
サードプレイスは、直訳すれば「第三の場所」という意味です。転じて、ビジネスにおけるサードプレイスとは「家庭でも職場でもない過ごしやすい第三の場所」を意味します。
家庭や職場というのは、多くのストレスに晒される場所でもあります。
- 喧嘩が途絶えない
- 自分の居場所がない
- 上司に怒られる
- 結果が出ていない
- 仕事でミスをしてしまった
家庭や職場では、上記のようなストレスを感じることもあり、生活をするだけで疲れてしまうことも少なくありません。
こうしたストレスから解放され、一時的にでも自分らしくリラックスして過ごせる場がサードプレイスであり、ストレス要因が多い現代社会において、昨今重視されています。
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サードプレイスは誰が提唱したのか
サードプレイスを提唱したのは、米国の社会学者であるレイ・オルデンバーグです。オルデンバーグは、「サードプレイスーーコミュニティの核になる『とびきり居心地のよい場所」という書籍で、サードプレイスを紹介しました。
オルデンバーグは、同著でサードプレイスの定義や条件を詳しく解説しています。詳しくは後述しますが「サードプレイスの8つの定義」が元となっています。
ファーストプレイス・セカンドプレイスとの違い
オルデンバーグは、最も生活基盤に近く、生きていくために必要な生活空間がファーストプレイスであり、「家庭」としています。家庭はもちろん心安らぐ場所ですが、配偶者や子供と関わるうえで、一定の責務とストレスが生じます。
セカンドプレイスは「職場」もしくは「学校」のことです。セカンドプレイスは、ファーストプレイスのように生活する場所ではありませんが、社会的な生活を営む場所であり、人と関わり合いながら一日の大半を過ごす場所です。
一方で、人と関わり目標を達成すべき社会空間のため、時には自分を偽り生活をしなければならないこともあります。したがって、セカンドプレイスもまたストレスがかかる場所なのです。
これらを踏まえ、サードプレイスは、上記のようなストレスから逃げることができる快適な場所と定義されています。サードプレイスでは、リラックスして、自分らしく過ごすことができ、時には新しい出会いも見つかります。
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経営者
オルデンバーグは、サードプレイスの定義として8つの条件を挙げています。
- 中立な場所
- 平等な場所
- 会話が重視される場所
- 近づきやすく親しみのある場所
- 規則的な場所
- 目立たない場所
- 陽気な雰囲気がある場所
- 家から遠くない場所
上記8つの条件があって初めて、本来の「サードプレイス」の意味になるのです。それぞれの条件について詳しく解説します。
中立な場所
サードプレイスは「中立な場所」であることが条件です。誰しもが自由に出入りでき、全員が望んでその場所にいます。参加するために誰かの紹介は必要ではなく、また、誰かの要求で無理に滞在する必要もありません。
サードプレイスでは、社会的な役割を演じることなく、ありのままの自分で過ごします。もちろん、経済的、あるいは法律的な制約を受けることもありません。
平等な場所
サードプレイスは、常に「平等な場所」です。社会的地位の高低や、上司と部下というような縦の関係は存在しません。
もちろん、年齢や性別も関係なく「ありふれたひとり」であることが認められます。
会話が重視される
サードプレイスでもっとも重要視されているのは、その場にいる人同士の会話です。
会話の中身には、特別な意味合いは求められません。何かを生み出すために会話をするのではなく、その場を楽しむために会話をします。
サードプレイスでは適切な指摘や周囲を助ける知見を述べる必要もありません。むしろ、冗談やユーモアが、サードプレイスでは望まれています。
近付づきやすく親しみのある場所
サードプレイスは、近づきやすく、親しみを持てる場所です。
例えば、会社に出勤する際には心が重くなることもありますが、サードプレイスは、自然と「今日も行きたい」と思える場所でなくてはなりません。
サードプレイスでは、時として、安価あるいは無料の食べ物や飲み物が提供され、落ち着いて食事を楽しむことも可能です。
規則的な場所
サードプレイスにおける「規則的」は「常連」と言い換えられます。つまり、サードプレイスには、心地よい時間を過ごせる仲間が揃っています。
誤解しがちなのが、「常連がいるから自由な場所ではない」という主張ですが、常連たちはサードプレイスに訪れる新しい人を省くことはありません。むしろ、サードプレイスに常連がいることで「サードプレイスの良さが引き立つ」のです。
サードプレイスは場所によってそれぞれ個性を持ち合わせることが多く、その個性は、常連たちによって作り出されています。
目立たない場所にある
サードプレイスは決してきらびやかで、贅沢なところではありません。むしろ日常的な空間にひっそりと佇んでいると表現した方が正しいです。
サードプレイスは牧歌的な空間なため、目立たないのです。
陽気な雰囲気がある
サードプレイスは、常に陽気な雰囲気で満たされています。したがって、憎悪や緊張などはなく、過ごしやすい空間がそこにただあるだけです。
サードプレイスでは、陽気な談笑が発生し、誰でもリラックスして過ごすことができます。
家から遠くない
サードプレイスは自宅から徒歩圏内にあり、気軽に立ち寄ることが可能な場所です。
他に、主要道路に近いといったケースや、電車やバスの路線の近辺に位置しているのもサードプレイスの特徴です。
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経営者
サードプレイスには、さまざまなメリットと効果があります。
中でも、以下3つのメリットと効果は重要です。
- 新しい価値観の獲得
- 自分を高めることができる
- 新しいコミュニティーの構築
いずれも、ストレスが多い現代社会においては重要です。
新しい価値観の獲得
サードプレイスには、さまざまな属性を持った人が集まります。例えば、職業や年齢、性別や結婚歴、それぞれ異なったバックグラウンドの人々です。
したがってファースト(家庭)・セカンド(職場)プレイスでは出会うことのない人と交流することができます。
異なる価値観を持った人と交流することで、今までは考えたことがなかったアイデアや考え方に触れることができ、新たな価値観を獲得できるかもしれません。
新しい価値観はその後の人生をより豊かにしてくれます。こうした点からも、サードプレイスは注目されているのです。
自分を高めることができる
サードプレイスでは、自分を高めることができます。職場や学校のように、誰かから「学習、訓練しなさい」とは指導されないため、すべての行動は自分自身の判断に基づきます。
「人からやらされること」には、熱意をもって取り組むのは難しいですが、サードプレイスでは、自らの意思で、自分を高めるというモチベーションが育まれるのです。
新しいコミュニティの構築
サードプレイスでは、新しいコミュニティを構築できます。それにより所属欲求が満たされ、日常の満足度が高まります。
また、サードプレイスにはさまざまな人が訪れるため、新しい人との出会いの機会も増えます。
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メンタルコントロールとマネジメントのやり方を解説日本型のサードプレイス
経営者
サードプレイスの在り方は、海外と日本で異なる部分があります。オルデンバーグが提唱したアメリカでは当たり前だったことは、日本では当たり前ではありません。したがって、オルデンバーグの提唱したサードプレイスは、日本ではそぐわないケースも多々あります。
ここからは、「サードプレイスの概念からみたカフェの心地よさに関する研究」を参考に、日本型のサードプレイスを解説します。
参考:サードプレイスの概念からみたカフェの心地よさに関する研究 | 奈良県立大学 研究報告第8号
従来のサードプレイスはコミュニティ型
奈良県立大学の研究によれば、オルデンバーグの提唱する従来のサードプレイスは「コミュニティ型」として分類されます。具体的には、フランス・パリにあるカフェテリアなどが、コミュニティ型サードプレイスの代表格です。
欧米諸国でのカフェテリアは日本とは異なり、見知らぬ利用者同士である程度積極的なコミュニケーションが発生するのです。
日本でのサードプレイスで求められるもの
専門家
日本のサードプレイスで求められるものは、海外とは異なります。
日本においては、以下のような条件が求められます。
- リラックスできる
- 誰でも入りやすい
- 仕事や勉強ができる
- 安心感がある
- いつでも行ける
つまりオルデンバーグが提唱したように、「多くの人との出会いが得られる」ほどオープンな特性は、日本では求められていません。
むしろ誰かに邪魔されることなく、黙々と仕事や勉強に打ち込める、ある程度クローズな特性が求められます。
日本人の感覚はサードプレイスと馴染まない
そもそも、日本人の感覚はオルデンバーグが定義し海外で使われているサードプレイスには馴染みません。
なぜなら日本人は、海外ほど「見知らぬ人とのコミュニケーション」に対して積極的ではないからです。
日本人がサードプレイス(に近い場所)を持っているとしたら、「顔見知りの客やスタッフと会話を楽しめる場所」です。
その具体例としては、以下が挙げられます。
- バー
- スナック
- 居酒屋
- スポーツクラブ
「顔見知り」と会話ができるという条件であれば、日本人にも無理なくフィットします。
プライベート型サードプレイスとは
コミュニティ型に対して「プライベート型」というサードプレイスの分類も提唱されています。プライベート型サードプレイスとは「個人がそれぞれの作業を中心として過ごせる環境」のことです。
たとえば、日本における一般的なカフェは、プライベート型サードプレイスに近いと言えるでしょう。一人用のチェアとテーブルがあり、これは個人が作業に集中することを前提としています。あるいは図書館なども、プライベート型サードプレイスに近い場所です。
コミュニティ型に馴染みがない日本人にとっては、プライベート型サードプレイスを活用するのが現実的なのかもしれません。
サードプレイスの具体例
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サードプレイスのより具体的な例としては、以下が挙げられます。
- コミュニティ型:コワーキングスペース
- プライベート型:喫茶店
それぞれの例について、下記で詳しく解説します。
コミュニティ型:コワーキングスペース
コワーキングスペースは、コミュニティ型サードプレイスの代表格です。コワーキングスペースには、さまざまな立場の人が、作業場所を求めて集まり、時にはお互いに会話を交え、新しい刺激が生まれることもあります。
ある程度出入りも自由であり、本来的な意味でのサードプレイスに近いと言えます。
ただし、すべてのコワーキングスペースがコミュニティ型サードプレイスとして機能するわけではありません。コワーキングスペースはあくまでも作業を目的とした場所というコンセプトもあるため、会話やコミュニティ構築が行われているかどうかはまちまちです。
とはいえ、多くのコワーキングスペースが作業をする集中部屋と日常会話ができる部屋の2つの空間を提供しているという点では、コミュニティ型のサードプレイスに該当するといえます。
プライベート型サードプレイス:喫茶店
喫茶店は、プライベート型サードプレイスの典型です。
スターバックスやドトールなどのチェーン店は、プライベート型サードプレイスに該当します。座席は一人用、あるいはグループ用で区切られており、全くの他人との会話が生まれるような座席設計はされていません。
冒頭でスターバックスが本来のサードプレイスではないと説明したのは、上記が理由です。スターバックスはあくまでも新しく提唱された日本型のプライベート型サードプレイスであり、オルデンバーグが提唱したコミュニティ型のサードプレイスとは異なります。
サードプレイスをさらに踏み込んだフォースプレイスもある
サードプレイスのほか、フォースプレイス(第四の場所)という存在も、提唱されています。
全国でコワーキングスペース事業を展開している「勉強カフェ」は、以下のような環境をフォースプレイスと定義しています。
- モチベーションを高めて「未来」につながる
- 互いに切磋琢磨できる「仲間」につながる
- 個人の「目標達成」につながる
- 新しい価値観に触れて「人生」につながる
サードプレイスよりも、個人の未来にフォーカスをした新しい環境がフォースプレイスといえるでしょう。
フォースプレイスは、個人の成長を主眼に置いた、一歩踏み込んだ新しい環境なのです。
参考:勉強カフェ | 株式会社ブックマークス
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ワーケーションのメリットとデメリットとは?国内外の事例を交えて詳しく解説!まとめ サードプレイスについて
サードプレイスは、「家庭でも職場でもない、たいへん過ごしやすい」という特性を持つ「第三の場所」です。
サードプレイスでは、家庭や職場で課せられる役割や責務から解放されて、自分らしく、リラックスして過ごすことができ、多様な人々と出会い、新しい価値観と出会うことも可能です。
ただし、オルデンバーグが提唱した本来的な「コミュニティ型サードプレイス」は「見知らぬ人と出会う」ことが根幹となっており日本人には馴染みづらい部分があります。
そのような背景を踏まえれば、日本人には「プライベート型サードプレイス」がもっとも居心地のよい空間だといえそうです。
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