フィードバックは人材育成に欠かせない手法の1つで、相手の行動を評価し、良い点や課題点を伝えることで改善を促すことです。しかし、
- 「フィードバックってなに?」
- 「どのようにフィードバックをすれば部下に伝わるのか?」
- 「部下にネガティブなことを伝える際に気を付けるべきことは?」
このようなことを感じてはいませんか?
本記事では、フィードバックについて基本的な知識から、効果的な方法、失敗しないための注意点を解説していきます。
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フィードバックとは?
フィードバックとは、目標達成に向けた取り組みを評価し、行動や意識の改善をして軌道修正を行うことを指します。企業においては一般的に1on1ミーティングや人事評価、プロジェクトの振り返りを行うタイミングで、上司から部下へとフィードバックをすることが多いです。
したがって、上司は部下の仕事ぶりをよく観察し、何をどのように改善するべきか、または継続するべき良い点はどこかなどを的確に評価し、第三者視点で伝えることが求められます。その結果、部下の成長やモチベーションの向上を促し、一方で部下も、伝えられたことをもとにさらなる業務の改善や意識の向上が可能です。
フィードバックは「餌を与える」という意味のfeedと「返す」という意味のbackからなる言葉で、「反応や評価」という意味を指していますが、もともとは「フィードバック制御」という工学の世界で用いられていた工学用語です。フィードバック制御でも「目標と実際の値を比較し、目標を目指して軌道修正していく」という意味で用いられていました。
フィードバックを行うときは、相手の人格や失敗を責めるのではなく、この言葉の成り立ちと同様に、行動が招いた結果を正確に伝えることが重要です。ただ相手の失敗を責め立てるだけでは、相手の成長につながらず、モチベーションが低下するかもしれません。このため、しっかりと誰にでも納得できるかたちで根拠を示し、どうすれば良くなるかを教える必要があります。
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昨今、フィードバックが重要視されてきていますが、その背景にはいくつかの理由があります。
上司と部下のギャップの解消
上司と部下の間では、頻繁にコミュニケーションを交わしていなければお互いの思い込みによるギャップが生じてしまいます。例えば、上司がやっておいてほしいと考えていることと、部下がやっておくべきだと考えていることにギャップがあればトラブルの原因になります。
また、上司が「部下はこれくらいならできるだろう」と思っていることと、部下が実際に「できると思っていること」にもギャップがある場合も少なくありません。したがって、1on1などを頻繁に行うことで、お互いの考えや認識をよく理解し合うことが重要です。
働き方や価値観の多様化
現代は雇用形態や価値観の多様化が進んでおり、同じ組織に属していても異なる働き方をしていたり、全く違う考え方をしているケースが増えてきています。そのなかで、お互いに協力して組織の目標を達成するためには、お互いがどのような価値観を持っているのかなどを認知することが必要です。
フィードバックと混同されがちな言葉の違い「フィードフォワード」
フィードバックと混同されがちな言葉に「フィードフォワード」があります。他にもいくつかよく似ている言葉があるのでその違いを解説していきます。
フィードフォワードとは?
フィードバックは過去の行動や事実をもとに評価・改善をしていきますが、フィードフォワードでは現在達成を目指している目標に対して、自分がするべきことやできることを探っていきます。
つまり、フィードバックが「過去」を起点とした話し合いであることに対し、フィードフォワードは「将来」や「未来」を起点とした話し合いということです。
フィードフォワードを行うことで現在進行中の仕事を改善することが可能になるため、目標の達成率や完成物のクオリティの向上が期待できます。
一方でフィードバックでは、プロジェクトや仕事が終わった後に評価をするため、次の仕事の完成度を高めることにつながります。どちらも目的が異なるため、「どちらのほうが良いか」などは特にありません。
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企業においてフィードバックが行われることによって、どのような効果があるのでしょうか? ここではその目的や重要性を解説していきます。
人材育成
多くの企業ではフィードバックを人材育成の方法の1つとして導入しており、仕事の改善点を客観的に伝えることで、課題が多い従業員のケアが可能になります。
基本的には上司と部下が一対一で行いますが、部下にとっては上司が自分と向き合う時間をとって話し合ってくれるため、それ自体に大きな意味があります。また、そのような機会を定期的につくることも、部下の安心感や意識の変化につながるはずです。
そして、上司が部下の仕事における悩みを聞いたり改善できるポイントを伝えることで、部下の成長につながっていきます。これにより部下は上司のことを信用するようになり、安心して仕事に取り組めるようになるのです。
エンゲージメントや意欲を高める
フィードバックをすることによって、従業員のエンゲージメントや仕事に対する意欲を高めることもできます。上司が自分にどのように動いてほしいのかや、自身の課題に気づくことができるため、仕事で悩まずに意思決定をしていけるようになります。
また、自身の仕事ぶりがきちんと評価されることで、上司が自分のことを見てくれていると感じ、仕事へのやる気をあげられるでしょう。したがって、フィードバックは曖昧にせず具体的に伝えることで、会社やチームに対する部下のエンゲージメントを高められます。
効率的な目標達成を目指す
一般的には一対一で行われますが、事業部門やチームへフィードバックを行うこともあります。部門やチームに対して客観的な課題を伝えることで、個人では把握しきれないチームや部門だからこそ生じる構造的な課題に気づくことができます。
これにより、構造的な課題を解消することで大幅に品質や生産性を向上させることができるため、より効率的な目標達成が可能になるでしょう。
人事考課のためのフィードバック面談
人事評価や人事考課のためにフィードバック面談をすることもあります。フィードバック面談では、人事評価で出た結果を部下と上司で共有していきます。部下が自身に下された評価に対して納得することや、部下の課題や強みを明確にし今後はどのようにしていくのかを相談することが目的です。
このように、フィードバック面談は人材を育てるためにも欠かせません。部下に対して第三者視点で評価をすることで、部下に自身の強みや弱みを理解してもらったうえで強みを伸ばし、弱みを改善していくことができます。
しかし、ここで気をつけなければならないことは評価の伝え方です。部下への評価をただ一方的に伝えるだけでは、部下のモチベーションが下がる恐れがあります。自身の評価を聞くことはデリケートなことでもあるため、上司は部下に対して1人ずつ時間をとって面談をしていく必要があるでしょう。その結果、部下は自分がどのような評価をされているのかをしっかりと受け入れることができるはずです。
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フィードバックは大きく分けて「ポジティブ」と「ネガティブ」の2つの種類に分けられます。
どちらも使い方やシチュエーションに応じて適切に使う必要があるため、ここではそれぞれについて解説していきます。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは「ポジティブ」とついているように、評価する相手の良い点にフォーカスして評価し、肯定的で前向きなフィードバックをすることです。ポジティブフィードバックをする際は「部下の良い点を伸ばしたい」「部下のモチベーションを高めたい」という気持ちを持つことが大切です。
基本的にフィードバックを行う際はポジティブフィードバックを中心に使っていくのが良いでしょう。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは相手の「悪い点」にフォーカスして評価し、どのように改善するべきかを伝えることです。「もっと成長してほしい」や「自身の課題に気づいてほしい」という気持ちをもって、フィードバックを行いましょう。
しかし、自身のダメな部分や課題を指摘される部下にとっては、精神的なダメージとなることがあるため、細心の注意を払うべきです。ただ相手の悪い点を指摘して「これじゃダメだよ」と一方的に伝えるだけでは、部下から「この人は自分でストレスを発散しているのかもしれない」と思われかねません。
したがって、自分が「部下の成長のために指摘をしている」ということを、伝えておくことが重要になります。
適切なフィードバックをするフレームワーク【2種類】
上記で見てきたように、フィードバックには大きく分けて2種類あり、的確に使わなければ逆効果になる可能性もあります。したがって、ここでは適切にフィードバックができる下記のフレームワークについて解説していきます。
- サンドイッチ型
- SBI型
それでは1つずつ解説していきます。
サンドイッチ型
まず1つ目の方法は、最初にポジティブな評価をし、次にネガティブな評価をしたあとで、最後にまたポジティブな評価で締めくくる「サンドイッチ型」です。
相手の悪い点や改善点を伝えると、相手が自信を失ったりモチベーションの低下につながる恐れがあります。例えば、部下が仕事でうまくいっても上司は普段からその点に触れることはなく、たまにフィードバックをすると思いきや、部下の悪い点や改善点だけを伝えているとしたら、その部下のやる気はなくなるでしょう。
そうではなく、まずはじめに部下の良い点やうまくいっている点についてほめて、その次に本当に改善してほしい点を伝えることで、部下は自分のことを見てくれていると感じて課題を改善しようと心がけます。さらに最後にも褒めて締めくくることで会話の印象が悪いまま終わらせることがないため、モチベーションの低下も避けられます。
「さっきのプレゼンは話すテンポや構成もとても良かったですね。ただ、もっと簡潔にするとさらに良くなるでしょう。それにしても今日のプレゼンは学べる点が多かったので、資料作成のコツなど、他の部下にもポイントを教えてあげてくださいね」
SBI型
SBI型では下記の順に従ってフィードバックをしていく手法になります。
- 相手がおかれた状況(Situation)
- 相手がした行動(Behavior)
- 行動による影響(Impact)
この3つの単語の頭文字をとってSBIと呼ばれています。まず、相手が置かれた立場から説明し、次に行動について、そして最後にその結果という順にフィードバックをしていくことで、相手が「自分に何を伝えたいのか」を理解しやすいという特徴があります。
状況「さっきの会議であなたがした発言についてです」
行動「会議がまとまらずに空気が悪くなっていたときに、あなたが発言をしましたよね」
影響「そのおかげで、無駄な会議にならずに済んでとても感謝しています」
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フィードバックをする際には下記の3点に注意する必要があります。
- 伝える際は具体的に
- 後回しにしない
- 信頼関係の構築が先
それでは1つずつ解説していきます。
伝える際は具体的に
フィードバックをする際は可能な限り具体的にしましょう。例えば、上司があなたに対して「ああいう感じの行動は良くないよ」といったように曖昧なフィードバックをしてきたら、どう感じるでしょうか? 何が良くなくて、どう改善していけばいいのかがわかりませんよね。
したがって、フィードバックをする際は相手が理解できるように具体的に伝える必要があります。
後回しにしない
フィードバックは後回しにしてはいけません。なぜなら、人は後になってから「あの行動は改善するべきだ」と言われても、その行動について詳細には覚えていないためフィードバックの効果が薄れるからです。
したがって、相手がその行動をしてからできるだけすぐに、その行動の良い点や改善点を伝えるようにしましょう。記憶や感情が新鮮なうちに伝えることで、より意識的に改善できるようになります。
信頼関係の構築が先
フィードバックをする前に、相手と自分の間に信頼関係が構築できているかを確認しましょう。信頼関係がないままにフィードバックをしても、「この人は何を言っているんだろう」とどこか他人事になり、フィードバックの内容が相手にうまく浸透しないため効果が薄れてしまいます。
そのためにもまず、フィードバックをするよりも先に信頼関係の構築をしなければなりません。部下が自分のことを信用していれば、「この人は自分のために伝えてくれている」と感じられるため、前向きに捉えることができます。
上手に伝えてこそフィードバックが生きる
ここまで、フィードバックの役割や実施の際のコツをお伝えしました。フィードバックは人事考課や目標達成、人材育成やエンゲージメントの向上など、従業員自身にも、会社にとっても非常に有効なものです。しかし、そのメリットを享受するためには、伝え方や信頼関係の構築といった土台をしっかり作っておくことも欠かせません。
この記事を読んで、ぜひ正しいフィードバックを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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