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「嫌われる勇気」を仕事で活かす方法を徹底解説!『他者への貢献』とは?

「嫌われる勇気」を仕事で活かす方法

「嫌われる勇気」は、心理学の大家、アルフレッド・アドラー(1870~1937)の考えを分かりやすく解説した本のタイトルです[1]。

この「嫌われる勇気」を著したのは、哲学者で日本アドラー心理学会顧問の岸見一郎氏らです。

この本は2013年の発売以来ビジネス書として支持され、2021年現在でもベストセラーランキングで上位に位置します[2]

「嫌われる勇気」という言葉だけを抜き取ると、人にどう思われようと気にせず、正しく効率的で生産性が上がる道を突き進めばよい、という教えのように思えますが、職場でそのような行動を取ればコミュニケーションが壊れてしまいます。

もちろん本書もそのようなことをアドバイスしていません。

アドラーが考える「嫌われる勇気」の本質を理解すれば、ビジネスシーンで欠かせない良好なコミュニケーション力を身につけることができるでしょう。

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「嫌われる勇気」では、すべての悩みは対人関係の悩みとされる

アドラーは「人の悩みはすべて対人関係の悩み」と断言します。

これをビジネス用語に翻訳すると「仕事の悩みはすべてコミュニケーションの悩み」となるでしょうか。

職場でのストレスの多くが同僚や上司や取引先とのコミュニケーション問題に起因していることは、ほとんどのビジネスパーソンが認めるところでしょう。

したがって「人の悩みはすべて対人関係の悩み」というアドラーの見解には、事実性が含まれているといえそうです。

ということは、「人の悩みはすべて対人関係の悩み」というアドラーが、この悩みを解決する方法を用意していたら、それは仕事のストレスを解消する方法に応用できるはずです。

「あの人の期待を満たすために生きてはいけない」

アドラーは「あの人の期待を満たすために生きてはいけない」と助言します。

つまりこういうことです。

課題:人の悩みはすべて対人関係の悩み
問い:その悩みを解決するにはどうしたらよいか
解決策:あの人の期待を満たすために生きなければよい

これもビジネス用語に翻訳してみましょう。

課題:仕事の悩みはすべてコミュニケーションの悩み
問い:仕事のストレスを解消するにはどうしたらよいか
解決策:上司や取引先の期待を満たすために働かなければよい

これは極論に聞こえるかもしれません。上司や取引先の期待に応えなければ仕事が与えられなくなり、閑職に追いやられ、そのうち会社に居づらくなってしまいます。

それではビジネスの課題の解決にはなりません。

しかし、「上司や取引先のために働かないこと」は、「自分のために働くこと」と考えてみたらどうでしょうか。

労働の質や量が同じでも、働く目的が異なるだけで仕事上のストレスはかなり減りそうです。

ということは、仮に「ビジネスの課題の解決」になっていなくても「ストレス問題の解決」にはなりそうです。

そうだとしたら、「上司や取引先の期待を満たすために働かなければよい」というアドバイスは無視できません。

なぜなら職場のストレスは社会問題になっていて、働く人のストレスを解消することは政府の重大政策でもあるからです[3][4]。

ストレス問題の解決につながる方法を簡単に手放すわけにはいきません。

そしてアドラーのほかの考え方を応用すれば十分「ビジネスの課題の解決」につながります。

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「嫌われる勇気」によれば悩むことは健全。

アドラー心理学を解説した「嫌われる勇気」の著者、岸見氏は、ビジネスパーソンが仕事やキャリアや人間関係に悩むことは健全なことだ、と説きます[5]。

岸見氏は、悩みを持つことをよしとしない世間の風潮のほうに問題があるとみます。

しかし悩むことは苦しく、メンタルを傷つけます。それでもなぜ、ビジネス上の悩みが健全なのでしょうか。

それは幸せを増やす方向に動くモチベーションになるからです。つまり「悩み→つらい→現状を変えたい→現状を変える→幸せが増える」となるのです。

岸見氏は、仕事に悩み「会社を辞めたい」と考えている人に、周囲が「我慢が足りない」などとアドバイスすることを正しいこととはみなしていません。

なぜなら自分の人生は自分が決めるべきで、人生に大きな影響を及ぼす職業も自分で決めるべきであると考えるからです。

アドラー心理学は「人が幸せに生きること」を探求しています。そして岸見氏は、自分の人生を自分で決めることこそ幸せをつかむ方法であると考えるのです。

他人が否定しようと、人から嫌われようと、幸せになるには自分で物事を決めていく必要があるのです。

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「すべての仕事は他者のためになっている」と考える

では、あるビジネスパーソンが「他人が否定しようと、人から嫌われようと、幸せになるために自分で決める」行動をビジネスシーンで取ったとき、軋轢は生まれないのでしょうか。

軋轢を生まない方法があります。

それは、『すべての仕事は他者に貢献している』ことに気がつくことです。

導きの星

アドラーは、他者のために貢献することこそ「導きの星」であると述べています[5]。この場合の星は、常に北を示している北極星のことです。

つまり旅人が北極星を道しるべにすれば迷わないように、ビジネスパーソンは他者への貢献度だけを考えて仕事をすれば迷わないのです。

岸見氏は、人は働くために生きているわけではない、と説きます。これは働く人なら誰しも直感的に肯定できるのではないでしょうか。

人が働くのは、幸せに生きるためです。

では人はどのようなときに幸せを感じるでしょうか。

それは人の役に立ったときです。他人が自分の貢献度を評価してくれたら、自分は自分の存在を強力に肯定することができます。

深夜のコンビニ店員は客を朝まで待たせなかったことに気がつくべき

岸見氏は、『すべての仕事は他者に貢献している』コンビニ店員の仕事は、レジを打つことと商品を並べることがメーンになります。

これはやりがいを感じることが難しそうな仕事といえそうです。

ことの事例として、一見すると単純作業にしか思えない深夜のコンビニ店員の仕事を紹介します。

深夜となると来店客も少なく、さらにやりがいを感じにくくなります。

しかし、原稿用紙を使っている作家が夜中に執筆活動をしていたところ、ボールペンのインクが切れてしまったとします。

作家は頭に浮かんだ内容を早く原稿用紙に落とし込みたいのに、それができません。

作家の家の近くにコンビニがあれば、夜中でもボールペンを買うことができます。

ボールペンを買った作家はコンビニ店員に対し、「文房具店が開店する朝まで待たずに済んだ」「思索を止めずに済んだ」と感謝します。

そして深夜のコンビニ店員が、「作家の執筆を停滞させなかった」ことに気がつくことができれば、仕事にやりがいを感じられます。

つまりコンビニ店員は仕事を通じて幸せを手にしたことになります。

このように、どのような仕事であっても、誰かに貢献し、幸せにしているのです。

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アドラー心理学からビジネス・コミュニケーションを考えてみる

岸見氏は、上司と部下の間のよくないコミュニケーションとして、次のような事例を紹介します。

『上司が、実績に乏しい部下に「君は本気を出せばできるはずだ」と叱咤激励することは、よくないコミュニケーションである』

まず上司の立場になって考えてみましょう。この上司は部下の潜在能力を信じています。

パフォーマンスが発揮できていないのはその潜在能力を活用していないからだ、と考えています。

では、部下が本気を出して仕事に取り組み、それでも成果が出なかったらどうなるでしょうか。上司は落胆するか、部下を叱責するでしょう。

次に部下の立場になって考えてみます。

部下はわざと手を抜いているかもしれません。なぜならこの部下は、本気を出さなければ常に「可能性の世界」に居続けることができるからです。

本気を出すということは、「可能性の世界」から出ることであり、そこには厳しい「実力の世界」が広がっているわけです。

それなら上司から「本気を出せ」といわれても、のらりくらりとごまかして、これまでとおり「可能性の世界」に浸っていたほうが快適なはずです。

これは部下のキャリア形成にとってよくない状況といえます。

したがって、

『上司が、実績に乏しい部下に「君は本気を出せばできるはずだ」と叱咤激励することは、よくないコミュニケーションである』

といえます。

では上司と部下の理想のコミュニケーションとは、どのような形なのでしょうか。

上司は部下に「他者に貢献していること」を教えることです。アドラーの教えに従えば、乏しい実績しか出せていない人にも、必ず「導きの星」があるはずです。部下にその星の存在に気付かせることが上司の役割です。

部下は「働くために生きる」仕事をするのではなく、「幸せのために働く」ことを心がけるべきでしょう。

そうすれば「可能性の世界」にとどまり続けることの無意味さに気がつくでしょう。

そして「実力の世界」で仕事をすることこそ、幸せにつながることに気がつくはずです。

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アドラー心理学の問題点

アドラー心理学の考え方を組織に適用するのは有効となる場面もある一方、逆効果となってしまうケースもあります。

ここからは、アドラー心理学の問題点を紹介します。

放任主義と混同する可能性がある

アドラー心理学には「課題の分離」という概念があります。

アドラーは、あらゆる対人関係のトラブルは「他者の課題に介入すること」もしくは「自分の課題に他者を介入させること」により起こると説明しました。

例えば、オフィス内で部下が悩んでいても「部下が自分で考えて克服するべきだ」と、上司が問題解決を放棄する可能性が考えられます。

しかし、部下の能力と課題とのバランスに無理がないように設定することは、組織の責任です。

どのような際でも「当人の課題」と、問題を解消せず放っておくのではなく、背景にある問題の本質に対して適切に目を向け、必要に応じて解決策を考えなければなりません。

変化を好まない人には向かない

アドラー心理学は、「自己決定性」や「目的論」などを提唱しており、そのなかで物事をどのようにとらえるか、どのように行動するのかを自分自身が決めるものであると説いています。

人にはリスクや失敗を恐れて非合理的な選択をとるという、現状維持バイアスがあります。

例えば、「自分はうまくいっている」「現状トラブルはない」と考えており、バイアスが強い場合は、変化を良しとするアドラー心理学に対して、反発的な立場をとってしまうでしょう。

変化の速い時代に、そのように反発する考え方の従業員がいると、企業の成長を止めてしまう可能性があります。

そのため、従業員に対して現状維持バイアスを認知してもらったり、物事を数字で客観的に見てもらったりするようにしましょう。

逆にモチベーションを下げてしまう可能性がある

アドラー心理学の考え方は、ときに効力を発揮しますが、いつどのような時でも使えるような考え方ではありません。

部下が元々持っている考え方とアドラー心理学が対立するような場合、逆に意欲を削いでしまう可能性がある点に注意する必要があります。

例えば「自己決定性」では、「自分の人生をどのように歩むかは自分が決められる」と説いています。

そうはいっても、組織では経営者から伝えられる目標を達成できたのかが、評価の基準になるのは事実です。

アドラーの主張と実態とが乖離していると無力感を持ってしまう可能性があるため、すべてにおいて無理に思想を当てはめないことも必要であると、認識しておくとよいでしょう。

まとめ 嫌われる勇気で他者への貢献を

アドラー心理学によると、幸せになるためには、生き方を自分で決めなければなりません。そのためには、ときに「嫌われる勇気」が必要になるかもしれません。

しかし「他者に貢献する」働き方を心がけていれば、「嫌われる勇気」を実行しても他者に嫌われることはないでしょう。

「生き方を自分で決める」行為も、「嫌われる勇気」を発動することも、「他者への貢献」によって自分勝手な行動にはならないのです。

上司の指示に従うことにストレスを感じたら、「生き方を自分で決める」「嫌われる勇気」「他者への貢献」の3つを考えて行動すればいいのです。

そうすれば他者から嫌われることはなく、良好なコミュニケーションを築くことできるのです。

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参照

[1]嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えhttps://www.amazon.co.jp/%E5%AB%8C%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%8B%87%E6%B0%97%E2%80%95%E2%80%95%E2%80%95%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%95%93%E7%99%BA%E3%81%AE%E6%BA%90%E6%B5%81%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%95%99%E3%81%88-%E5%B2%B8%E8%A6%8B-%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4478025819
[2]ビジネス・経済 の 売れ筋ランキングhttps://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/books/466282
[3]ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
[4]内閣府仕事と生活の調和推進室http://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/017/index.html
[5]『嫌われる勇気』著者が教える、「人生の悩み」との向き合い方https://next.rikunabi.com/journal/20180105_p/

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