ファシリティマネジメントとは?定義から考え方、資格まで解説

ファシリティマネジメント画像

はじめに

ファシリティマネジメントとは、施設・設備を適切に管理していくための経営管理方式のことです。

会社が所有している施設や設備が老朽化しているのにも関わらず、何も手を打たないでいると、事業継続できなくなる事態になるかもしれません。

そこでこの記事では、

  • ファシリティマネジメントの定義と目的
  • ファシリティマネジメントの考え方
  • FM標準業務サイクル
  • ファシリティマネジメントの市場規模と改善例
  • ファシリティマネジメントを行うための資格

について解説します。

この記事を読めば、ファシリティマネジメントの定義から考え方、活用の仕方まで理解し、経営に活かすことができます。

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ファシリティマネジメント(FM)の定義とは?

ファシリティマネジメント(FM:Facility Management)とは、「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」のことです。

ファシリティ(Facility)は直訳すると「設備、施設」であり、ビジネス用語としては建物や生産機器などの「固定資産の総称」を指します。

またマネジメント(Management)は直訳すると「経営、管理」であり、ビジネス用語としては「経営管理」「組織運営」といった意味になります。

つまり、ファシリティマネジメントは「設備や施設の使い方を見直すことで、経営活動を円滑に進める管理方式」ということになるのです。

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ファシリティマネジメントは経営基盤の一つ

ファシリティマネジメントは、事業を支える経営基盤の一つでもあります。なぜなら、事業を行うためには建物・設備などを所有するのが一般的だからです。

【事業を支える経営基盤】

  1. ファシリティマネジメント
  2. 人事
  3. 財務
  4. ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)

いくら優秀な人材や財源が確保できていたとしても、職場環境が劣悪であれば従業員の不安が溜まってしまい、退職者が続出する事態になります。言い換えるならファシリティマネジメントは、事業という家を支える4本柱の内の一つであり、企業経営においては切っても切れない要素になのです。

ファシリティマネジメントの対象

ファシリティマネジメントの対象には、以下のものがあります。

【ファシリティマネジメントが指す施設】

  • オフィス
  • 工場
  • 店舗
  • 病院
  • 地方自治体施設
  • 研究・生産・物流施設
  • 教育・文化施設
  • 情報管理施設

会社に存在するファシリティを最初に把握することが、とても重要です。主に企業が所有している土地・建物・設備がそれに当たりますので、自社に何があるかピックアップしてみましょう。

ファシリティマネジメントの目的

事業内容や方針によって異なる点もありますが、ファシリティマネジメントの目的は、以下の4つが挙げられます。

【ファシリティマネジメントの目的】

  1. 固定資産(土地・建物・生産設備など)を最大限に活用する
  2. 投資コストを最小化する
  3. 将来に発生が予想される変化やニーズに対応する
  4. 環境や社会貢献できる運営を目指す

ファシリティマネジメントを通してこれらの目的を満たすことは、事業に関わるヒト・モノ・カネの適切な管理・活用、そして企業の競争力強化にもつながります。

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目的1 固定資産(土地・建物・生産設備など)を最大限に活用する

固定資産を最大限に活用する事例を具体的に見てみましょう。

例えば、ある電気機器メーカーでは、生産中止になった商品の古い図面が山積みになっている書庫がありました。古くなった図面を誰も見ないこともあり、管理されずに放置されている状態です。そのため、図面を全てプリンターでスキャンして破棄することで、管理しやすくしました。

その結果、新商品への活用ができる図面が見つかったり、図面がなくなった書庫を社員の仮眠スペースにできたりなど、古い図面でいっぱいだった書庫が有効活用できる形に生まれ変わりました。

これが、ファシリティマネジメントによる固定資産の最大活用ということです。

目的2 投資コストを最小化する

投資コストを最小化する具体例を、今度は見てみましょう。

古い生産設備から全自動で生産してくれる産業用ロボットに置き換えた場合、生産設備を動かすための従業員が不要になります。従業員の数が減れば、それだけ人件費を抑えることができます。

また従業員が不要になることで、人が居たスペースも空きますので、その分だけ設備の増強や、材料や部品置き場を確保することもできます。

つまりファシリティマネジメントを行えば、生産設備などのLCC(ライフサイクルコスト:製品や建物が作られてから役割を終えるまでの期間)を効率化させ、投資コストを最小化することも可能になるのです。

目的3 将来に発生が予想される変化やニーズに対応する

将来的な変化に対応するためにも、ファシリティマネジメントは役に立ちます。

例えば、IT化が遅れている企業がIT導入を検討しているとします。IT化をするためにはパソコンを導入したり、ネット環境を構築したりするだけでは十分ではありません。なぜなら、それを扱える人材が企業内に不足している場合が多いからです。

もしファシリティマネジメントで、上記のような問題点が浮き彫りにできれば、次のような解決策を用意することができます。

【ファシリティマネジメントによる問題】

  • IT導入に合わせてITが扱える人材を採用する
  • 従業員がITを扱えるレベルまで教育できるプログラムを用意する など

つまり、ファシリティマネジメントは施設や機能の変化そのものだけでなく、それに向けて必要となる別の要素にも対応できるのです。

目的4 環境や社会貢献できる運営を目指す

ファシリティマネジメントは、環境や社会貢献できる運営にも役立ちます。

例えば、工場から排出される有害ガスを少なくするために最新設備を導入することで、周辺環境への被害を少なくできます。

他にも、排出される産業廃棄物をできるだけ少なくするために、生産ラインの見直しや、材料の切り替えなども有効です。

上記以外にも、その企業にしかできない環境や社会貢献があるはずです。ぜひ自社で、ファシリティマネジメントから何ができるか考えてみましょう。

ファシリティマネジメントは3つのレベルに分けて考える

ファシリティマネジメントを行う場合、以下の3つのレベルに分けて考えていくのが一般的です。

【ファシリティマネジメントの3つのレベル】

  1. 経営
  2. 管理
  3. 日常業務

上記のレベルは、1を頂点とするトップダウン式のピラミッド構造であり、1の「経営」から決めていくとうまく行きます。

レベル1 経営

企業を運営していくには、経営は切っても切り離せない要素です。

そのため、ファシリティマネジメントにおいても、最初にどのような方針で経営を行っていくかを決める必要があります。

なぜなら、ここの「レベル1 経営」が全ファシリティのスタートからゴールまでの最適解を求める段階だからです。

「どの施設をどうに改善するか?」といったファシリティマネジメント後のイメージをここで固めます。またどれくらいの予算で、施設などの改修をするのかもここで決めていきます。

つまり、「レベル1 経営」はファシリティマネジメントにおける全体像を決める計画段階にあり、非常に重要です。

レベル2 管理

「レベル1 経営」で決めたことを、今度は「レベル2 管理」で具体的にどのように低コスト化・効率化していくかを決めていきます。

例えば、古くなった病院を改築するなら、以下のことを行います。

【「レベル2 管理」の具体例】

  • どのような資材で改築するか?
  • どこの業者に依頼して改築するか?
  • ○○科の設備はそのままにするか? それとも最新設備と入れ替えるか?

「レベル2 管理」は、施設・設備の最適化にむけて実際に行動に移す段階でもあるので、設備を入れ替えた後にどんな効果やコスト削減が達成できたかも、ここで評価しておきましょう。

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レベル3 日常業務

ファシリティマネジメントで施設・設備などを改善した後は、どのように日常業務で管理していくかを考えていく段階が、この「レベル3 日常業務」になります。

なぜなら、新しく導入した設備や建物の管理がおろそかになってしまうと、すぐさま使えない状態になる可能性が高いからです。

例えば、古い病院をファシリティマネジメントで改善した場合、「レベル3 日常業務」で以下のことを行います。

【「レベル3 日常業務」の具体例】

  • 医者や看護師、病院スタッフに向けて新設備の扱いをレクチャーする
  • 改築した建物を維持するために、修繕や清掃計画を日常業務に落とし込む

「レベル3 日常業務」を行っていくことで、建物や設備のLCC(ライフサイクルコスト)を高めることが期待できます。

ファシリティマネジメントの実践方法「FM標準業務サイクル」

FM標準業務サイクルとは、ファシリティマネジメントをPDCAサイクル(Plan(計画)→Do(実行)→Check(測定・評価)→Action(対策・改善)の順番で仮説と検証を繰り返していくマネジメント手法)に、当てはめていく方法です。

元々PDCAサイクルは品質管理を目的として開発された手法なので、ファシリティマネジメントにも応用できます。

【FM標準業務サイクル】

  1. Plan:FM計画
  2. Do:プロジェクト管理
  3. Check:評価
  4. Act:改善

FM標準業務サイクルに当てはめてファシリティマネジメントを行えば、効果を実感しやすいというメリットがあります。

サイクル1 Plan:FM計画

「Plan:FM計画」とは、施設・設備の現状を把握し、どんな形で実現するかを思い描く段階です。また、経営戦略と合致しているかどうかも、ここでしっかりと確認する必要があります。

なぜなら、施設の建て替えを計画しているのに、経営悪化が原因で予算の確保ができなければ、計画倒れとなってしまうからです。

そのため、FM計画を練る場合は、計画が実現可能かここで精査しましょう。また、FM計画の期間設定は、組織毎に定義されている「中期」に合わせて決めることが望ましいとされており、具体的には3~5年の間で計画することが多いようです。

サイクル2 Do:プロジェクト管理

「Do:プロジェクト管理」とは、プロジェクトが問題なく達成できるように調整や管理をしていく段階です。

ここでのプロジェクトとは、下記のものを指します。

【プロジェクトの例】

  • オフィス構築
  • オフィス移転
  • 施設・設備などの固定資産の売却
  • 改修工事

プロジェクト管理で重要になってくるのが、メンバー間でのプロジェクト目的の「共有」です。プロジェクトに参加しているメンバーには、外部から参加している専門家、改修工事に携わる現場関係者など様々です。

そのため、人数が多ければ多いほど、時間の経過とともにそれぞれの立場から考え方に差が生じやすくなります。

メンバー全員に同じゴールに向かって行動してもらうために、この段階で全員の意識を統一・管理していくことが重要です。

サイクル3 Check:評価

「Check:評価」とは、「Plan:FM計画」で計画した内容が「Do:プロジェクト管理」によって、どれだけ達成できたかを評価する段階になります。

例えば、「衣服生産ラインの入れ替え」という場合を考えてみましょう。

この場合、生産ラインの入れ替えの前後で、以下の項目がどれだけ改善されたかを評価していきます。

【評価項目】

  • 生産能力は、どれだけ向上したか?
  • 生産コストは、どれだけ下がったか?
  • 従業員の意識調査

ここで大事なのは、最後の「従業員の意識調査」です。生産ラインの刷新で生産能力が向上したとしても、従業員が「以前より使いにくい」と感じるようでは、ファシリティマネジメントが成功しているとは言えません。

最悪、退職者の増加につながる可能性もあるため、実際にそれを利用する従業員の声にしっかりと耳を傾けましょう

サイクル4 Act:改善

Act:改善とは、「Check:評価」で評価した内容を、次のFM標準業務サイクルに活かすために改善点を見つける段階です。

例えば、「Check:評価」の段階で衣服の生産ラインの入れ替えによって、予想よりも生産能力が向上しなかったとします。その場合、以下の改善すべき点を考える必要があります。

【改善すべき点】

  • 生産ラインの比較・検討が足りなかった
  • 導入コストや維持コストが高すぎた
  • 生産ラインが従業員にとって、扱いにくいものだった

上記以外にも、改善すべき点は事例によって様々です。しかし、共通しているのは次のFM標準業務サイクルにつなげるために何が必要なのかを、はっきりさせることです。

ここの改善案の検討が不十分だと、次のFM標準業務サイクルでも失敗になる恐れがあります。

ファシリティマネジメントの市場規模

ファシリティマネジメントの市場規模は、以下の通りです。

【ファシリティマネジメントの市場規模】

範囲ファシリティマネジメントの市場規模
国内約6.7兆円
中国とASEAN約24兆円

【他業界の市場規模】

業界市場規模
広告業界約6.4兆円
百貨店業界約5.9兆円

上記からファシリティマネジメントの市場規模は、国内の広告業界や百貨店業界の市場規模と同等であることが分かります。

またファシリティマネジメントの市場規模の内、最も伸び率が堅調なのが「ビルメンテナンス市場」です。

【ビルメンテナンスの市場規模】

年度市場規模前回からの伸び率
2011年度3.5兆円
2016年度3.9兆円11%
2018年度4.4兆円13%

上記よりビルメンテナンス市場の「前回からの伸び率」が上昇傾向であるため、これからはファシリティマネジメント市場のメインになることが予想されます。

ファシリティマネジメントの資格

ファシリティマネジメントを行うには、必ずしも資格は必要ありません。しかし、実施の際は資格を持った方がいる方が望ましいと言えます。

現在、ファシリティマネジメントの資格は、「認定ファシリティマネジャー(CFMJ)」の一つだけとなります。

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)は、誰でも受験できますが、合格後に資格登録する必要があります登録資格は、ファシリティマネジメントの実務経験が最低でも3年以上(四年制大学卒の場合)必要です。

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)で証明できる知識・能力

認定ファシリティマネジャーを合格した際に証明できる知識と能力は、下記の3つになります。

【証明できる知識・能力】

 

  1. FMの統括マネジメントならびにFMの戦略・中長期実行計画、それに基づく不動産取得、賃貸借、建設等のプロジェクト管理、そして運営維持と評価の流れに沿ったFM業務に関する知識・能力
  2. FMのための社会性、人間性、企業性、施設、情報等の関連知識
  3. FMを支える利用者の満足度等の調査・分析、品質分析・評価、ファシリティコスト・投資等の財務分析・評価、需給対応・施設利用度等の分析・評価、そして企画立案やプレゼンテーション等の技術

つまり、資格を取得すれば、ファシリティマネジメントを過不足なく行うことができます。

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)を取得するまでの流れ

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)を取得するまでの流れは、以下の通りです。

【資格取得までの流れ】

  1. 受験申込
  2. 「学科試験」と「論述試験」を受験
  3. 合否

2021年度の試験は、以下の流れで実施されました。

願書申込期間4月上旬~6月中旬頃まで
試験日程■学科試験

2021年5月29日(土)~2021年6月6日(日)の9日間

■論述試験

2021年7月3日(土) 午後2回一斉開催

受験地札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、金沢、広島、高松、福岡
受験料22,000円(消費税込)
合格発表2021年9月1日

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)の試験内容

 

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)は、「学科試験」と「論述試験」の二つがあります。詳細は、以下の通りです。

試験内容合格基準
学科試験CBT形式 3教科 40問 120分得点70%以上(280/400点満点)
論述試験(※学科試験の合格者のみ受験可能)CBT形式 800文字程度 90分非公開

試験は最寄りのパソコンセンターへ赴き、CBT(Computer Based Testing)形式と呼ばれるパソコン入力方式で行います。

合格率は、直近10年で平均「44%」となります。

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)の合格後に登録資格が必要

資格合格後には、「認定ファシリティマネージャー資格の登録手続き」が必要です。新規登録期間は、合格日から5年目の年度末までとなります。

また登録には実務経験期間が必要であり、学歴によって差がありますので、注意してください。

【登録に必要な学歴と実務経験期間】

学歴実務経験期間
4年制大学卒3年以上
3年制短期大学卒4年以上
2年制短期大学、専門学校卒5年以上
高卒7年以上
上記以外10年以上

実務経験は、下記の内、全てか一部を経験したことを証明する必要があります。

【実務経験として証明が必要な業務】

  • 統括マネジメント
  • FM戦略
  • 中長期実行計画
  • ワークプレイスづくり
  • 施設賃貸借
  • 不動産取得
  • 建物建設
  • 大規模改修
  • 維持保全
  • 運用管理
  • サービスの提供・計画・実施

ファシリティマネジメントで固定資産の費用対効果を高めよう

会社経営を円滑に進めて行くには、施設や設備を適切に管理するファシリティマネジメントが必要不可欠です。

施設や設備は固定資産ですが、気づかないうちに老朽化したり、陳腐化していたりなどで、経営を圧迫する原因にもなります。時代に合わせた企業経営を続けていくには、ファシリティマネジメントで固定資産の費用対効果を高める努力が重要です。

長年、会社経営が続いているようでしたら、問題が表面化する前に対策を取っていきましょう。

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