私たちは誰でも、生活のなかでストレスを感じながら生きています。
過度なストレスは精神的な疾患につながるだけでなく、身体的な疾患にもつながりかねません。そこで、ストレスを適切に管理していくことが必要になります。
この記事では、ストレスマネジメントの手法について、そのメリットや実施方法に触れながら、わかりやすく解説していきます。
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ストレスはきちんとマネジメントする時代に
私たちは誰でも生活の中でストレスを感じています。
健康問題の原因の大半はストレスです。
したがって、ストレスが体にどのような影響を与えるかを理解するとともに、効果的なストレス対処法を身につけ、ストレスを敵に回すのではなく味方につけることが非常に重要です。
ストレスとは何か?
ストレスとは、生活の変化に対する体の反応のことを言います。
人生には常に変化がつきもので、自宅から職場への通勤などの日常的な変化から、結婚、離婚、愛する人の死などの人生の大きな変化への対応まで、私たちはストレスを避けることはできません。
したがって、私たちの生活から全てのストレスを排除するのではなく、不要なストレスを排除して、残りのストレスを効果的に管理することが目標となります。
これがストレスマネジメントの目的です。
何がストレスをもたらすのか?
ストレスは、「ストレッサー(stressor)」と呼ばれるさまざまな原因によって生じます。多くの人が経験する共通のものもありますが、人によってそれぞれ異なります。
何が「ストレス」とみなされるかは、人生で遭遇する出来事に対する個人的な認識(性格特性、利用可能なリソース、習慣的な思考パターンなどの組み合わせ)によって変わります。
したがって、同じ状況であっても、ある人にとっては「ストレス」と感じられ、別の人にとっては単なる「チャレンジングな出来事」と感じられる場合があります。
簡単に言えば、ある人のストレスの引き金が、他の人にはストレスとして認識されないということです。
たとえば、自分に大きな要求があるにもかかわらず、自分でコントロールできず、選択の余地もないような状況では、ストレスを感じやすくなります。
また、自分に能力が備わっていない場合や、他人から厳しい評価を受ける可能性がある場合、失敗した場合の影響が大きい場合や予測できない場合にもストレスを感じることがあります。
多くの人は、仕事、人間関係、経済的な問題、健康問題などのほか、散らかったものや忙しいスケジュールなどの日常的なことにもストレスを感じています。
これらのストレス要因に対処するスキルを身につけることで、ストレスを軽減することが可能です。
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自分のストレス要因を知る
効果的にストレスをマネジメントするためには、自分のストレスの原因を特定し、それに対処する戦略を立てなければなりません。そのためには、自分のストレス反応の引き金となる状況、懸念、課題をリストアップするのが一つの方法です。
今、自分が直面している問題をいくつか書き出してみましょう。自分のストレスの原因が、人なのか、出来事なのか、状況なのかを認識します。
あなたのストレス要因には、自分に起こった出来事もあれば、自分の中から発生しているものもあることに気づくでしょう。
外部からのストレス
外的なストレス要因とは、自分の身の回りに起こる出来事や状況のことです。
外的ストレス要因の例としては、以下5つが挙げられます。
- 人生の大きな変化
- 環境
- 職場環境
- 社会性
- トラウマ的な出来事
人生の大きな変化
人生の大きな変化はあなたに大きなストレスを与えます。
結婚、妊娠、昇進など、ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもあります。また、大切な人の死や病気、離婚など、ネガティブな変化の場合もあります。
環境
周りの環境がストレスの原因になることがあります。
例えば、人ごみの中やラッシュアワーの渋滞の中で、ストレスを感じるかどうかを考えてみましょう。
職場環境
職場での一般的なストレス要因としては、無理な仕事量、終わりのないメール、緊急の締め切り、厳しい上司などが挙げられます。
また、自宅で仕事をしている人は、仕事のスケジュールや要求に余計なストレスを感じることがあります。あるいは、ビデオ会議が多すぎてストレスを感じる人もいるかもしれません。
社会性
新しい人との出会いはストレスになります。
初めて会う人とデートに行くことを考えただけでも緊張する人もいるでしょう。
また、家族との関係もストレスを生むことがあります。パートナーや子供と最後に喧嘩したときのことを考えてみてください。
トラウマ的な出来事
人によっては、戦争、事故、自然災害、暴行など、非常にストレスのかかる出来事を経験することがあります。
外部からのストレスへの対処法
こうした外部からのストレスに対処する方法としては、健康的な食事、運動、十分な睡眠などの生活習慣があります。これらがレジリエンス(上手に適応する力)を高めるのに役立ちます。
また、他の人に助けを求める、ユーモアを使う、アサーティブな態度をとる、問題解決や時間管理の練習をするなどの方法も有効です。
自分にとって重要な活動に集中し、参加している活動の数を減らし、新たな約束を断ることで、時間とエネルギーの使い方を考えます。
携帯電話の電源を切ったり、周りから影響を受けるシーンを減らすことでも有効的です。
内部からのストレス
すべてのストレスが外部から生じるわけではありません。
ストレス反応の多くは自己誘発的なものです。頭に浮かんで不安になる感情や考えは、内的ストレス要因として知られています。内的ストレス要因の例は以下の通りです。
- 恐怖心
- 自分でコントロールできないこと
- 信念
恐怖心
一般的なものとしては、失敗への恐れ、人前で話すことへの恐れ、飛行機への恐れなどがあります。
自分でコントロールできないこと
何が起こるかわからないことや、自分でコントロールできないことを楽しめる人は多くありません。
医療検査の結果を待っているとき、人がどのように反応するかを考えてみてください。
信念
信念とは、その人の物事に対する態度・意見・期待などのことを言います。
自分の信念がどのように経験に影響を及ぼしているかを考えることはないかもしれませんが、このような事前に設定された考えは、しばしばストレスの原因となります。
たとえば、家事を完璧にしないといけないとき、出世しなければならないとき、自分に課している期待を考えてみてください。
内部からのストレスへの対処法
内部からのストレスは、外部からのストレスと違って、自分の思考をコントロールすることができれば解決につながります。しかし、自分の恐れや態度、期待などは、長い間自分に付きまとってきたものであり、それを変えるには努力が必要となります。
内的ストレスに対処する方法としては、思考をリフレーミングしてポジティブな考え方をする、ネガティブな思考に挑戦する、リラクゼーション技術を使う、信頼できる友人やカウンセラーに相談する、などがあります。
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ここで少し、ストレスをマネジメントするうえで重要と考えられている研究についても触れておきましょう。
ストレスマネジメントの世界には、ストレスの原因をどのように考えるかによって、行動主義心理学と認知心理学という、大きく分けて2つの学派の対立があります。
- 行動主義心理学にもとづくストレスのマネジメント
- 認知心理学にもとづくストレスマネジメント
行動主義心理学にもとづくストレスのマネジメント
行動主義心理学は、人間の感情や思考はまやかしであり、人間の大きな原動力は周囲からの報酬や罰に対する反応であると考えます。
たとえば、ランニングをするたびにチョコクッキーを与えれば、チョコクッキーというご褒美を連想して、より一層ランニングをしたくなる、という考えです。
認知心理学にもとづくストレスマネジメント
認知心理学では、人が日々生きていく上での思考や感情の重要性に着目しました。
たとえば、体重を減らそうとしている人がいるとします。
この場合、食べ物や運動に対する考え方を変えて、健康的な食べ物のありがたみを知り、運動することを前向きに考えるようにする必要がある、と認知心理学者は考えます。
ストレスマネジメント研究の転換点
20世紀の半ばには、行動主義者が心理学の分野を支配していました。人間の思考や感情と呼ばれるものについて、ほとんどの心理学者はそれらを重要視していませんでした。
しかし、リチャード・ラザルス(Richard Lazarus)は「思考」と「感情」が人間の行動に大きな影響を与えることを主張しました。彼は人々のストレスレベルを研究し、出来事は良いものでも悪いものでもないが、その出来事に対する考え方が良いものであったり悪いものであったりして、それがストレスレベルに影響を与えると述べました。
たとえば、あなたが仕事に遅刻しそうなとき、コーヒーショップであなたの前に並んでいる人が注文に時間がかかっているとします。その人が時間をかけていること自体は良いことでも悪いことでもありません。
しかし、あなたはそれを「仕事に遅れるから、ストレスが溜まる」というマイナスの経験だと思っています。一方、その状況を見て、「遅刻してもいいじゃないか」と自分に言い聞かせることもできます。
遅刻したとしても、今朝、会社に行く前に一息つける時間が増えたのだから、これはいいことだ」と考えることができます。というように、ポジティブに考えることで、ストレスを感じずに済むのです。
ラザルスのストレス理論の含意: ストレスは関係に依存する
ラザルスによれば、ストレスは特定の種類の外的刺激や、生理的、行動的な特定のパターンとして定義されるのではなく、関係的な概念であるとされています。
つまり、ストレスは、特定の種類の外部刺激や、生理的、行動的な特定の反応パターンとしては定義されません。
代わりに、ストレスは個人とその環境との関係(「取引」)として捉えられます。心理的ストレスとは、人が自分自身の幸福度に関して重要であると評価している環境との関係を指します。
認知的評価とコーピング
ラザルスは、ストレッサーが直接ストレス反応やその後の疾病を引き起こすのではなく、認知的評価やコーピングといった心理的な要因によって、心身に生じる変化は異なるという、「心理学的ストレスモデル」を提唱したことで有名です。
認知的評価とは、ストレスの原因となりそうな刺激(潜在的ストレッサー)に対する個人の受け止め方、つまり主観的な評価のことを指します。
つまり、出来事に対する意味づけによって(認知的評価によって)、その後の感情やストレス反応の生じ方は異なるというわけです。
コーピングは、ストレッサーやそれによって生じるストレス反応への対処方法にあたります。
一方で、コーピング(coping)はストレッサーやそれによって生じるストレス反応への対処方法のことを指し、一般に「ストレス対処」と訳されます。
日常生活の中で私たちに負荷をもたらすと判断された外的・内的な刺激(ストレッサー)やそれによって生じるストレス反応を減らしたり、受け入れたりするために個人が行う認知的、もしくは行動的な努力のことを意味します。
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仕事や家庭でのストレスはどうしようもないと思われるかもしれません。しかし、外部や内部からのストレスを和らげ、自身自身でコントロールするためにできることはたくさんあります。
ストレスをマネジメントする
強いストレスを抱えていると、身体全体の健康が損なわれます。
ストレスは、精神的なバランスを崩すだけでなく、身体的な健康にも悪影響を及ぼすのです。また、思考力や機能性が低下し、人生を楽しむことができなくなります。
ストレスは、どうしようもないと思われるかもしれません。ストレスに感じている請求は止まらないし、1日の時間はいくらあっても足りないし、仕事や家庭での責任は常に重くのしかかってきます。しかし、あなたが思っている以上に、ストレスは簡単にコントロールできるのです。
効果的なストレスマネジメントは、ストレスが人生に与える影響を和らげ、より幸せに、より健康に、より生産的に過ごせるようにしてくれます。
最終的な目標は、仕事、人間関係、リラックス、楽しみのための時間を持ち、プレッシャーに耐え、困難に立ち向かうための回復力を備えた、バランスの取れた生活です。
しかし、ストレスマネジメントは万能ではありません。だからこそ、自分に合った方法を試してみることが大切なのです。
企業主体でストレスマネジメントを導入するメリット
現代人の多くは、1日の多くの時間を仕事に費やしています。したがって、現代人は、仕事から多くのストレスを受ける生活を送っているとも言えるでしょう。
会社で働く人々の多くがストレスを抱えていると、様々な問題が生じます。逆に言えば、企業主体でストレスマネジメントを行うことができれば、会社の人々にとって多くのメリットがあると考えることができます。
以下ストレスマネジメントを会社の中で取り入れるメリットは以下8つです。
- 従業員のモチベーションを高めることができる
- ストレス下での生産性の向上
- 困難な状況下で人々を導くことが可能になる
- 職場での紛争の可能性を減らす
- 締め切りに間に合う可能性が高くなる
- コミュニケーションプロセスの改善
- 従業員に時間的なゆとりを与えることができる
- 従業員の業績評価に役立つ
それぞれわかりやすく解説します。
1. 従業員のモチベーションを高めることができる
ストレスは、従業員の士気に影響し、職場でのパフォーマンスにも影響します。ストレスは従業員のやる気を失わせ、欠勤や離職率の上昇を招きます。
優れたストレスマネジメントスキルを用いることで、従業員の士気を高め、モチベーションを高め、仕事やパフォーマンスに集中させることができます。
2. ストレス下での生産性の向上
従業員の士気が高く、職場の人間関係が維持されていると 従業員の生産性が向上します。
優れたストレスマネジメントスキルを用いることで、最もストレスの多い状況でも、顧客からのクレームや判断ミスが発生する可能性が非常に低くなります。
3. 困難な状況下で人々を導くことが可能になる
困難な状況下において、従業員がストレスを感じると、マネージャーに指導や指示を求めます。従業員の中には、一対一で問題を話し合うことで、あなたに助けを求める人もいるでしょう。
優れたストレスマネジメントのスキルを使い、ストレスの原因となる問題を正しく特定することで、厳しい状況下でもリーダーシップを発揮することができます。
4. 職場での紛争の可能性を減らす
職場での対立は非常に一般的で、意見の違いや性格の違い、ストレスレベルの上昇などが原因で起こり、それによって人間関係を壊し、文化全体を弱めてしまいます。
しかし効果的なストレスマネジメントのスキルがあれば、そのような混乱を防ぎ、チームワークを構築し、皆の生活を楽にすることができます。
5. 締め切りに間に合う可能性が高くなる
ストレスが増大すると、従業員はストレス要因に応じて気が散ってしまいます。その結果、期待されたレベルのパフォーマンスが得られず、締め切りに間に合わなくなります。
しかし、優れたストレスマネジメントスキルがあれば、問題になる前にストレス要因を特定し、ビジネスを円滑に進めることができます。
6. コミュニケーションプロセスの改善
ストレスレベルが高くなると、コミュニケーションにも悪影響が出ます。従業員は個人間で仕事の話をせず、会社の問題や課題を話し合うために都度マネージャーを探すことになるでしょう。
しかし、効果的なストレスマネジメントスキルがあれば、問題を特定して解決することができ、コミュニケーションプロセスを強化することができます。
7. 従業員がエネルギッシュに働けるようになる
従業員が仕事に没頭し、絶えず忙しくしていると、休息やリラックスする時間が取れず、結果的にストレスが溜まってしまいます。効果的なストレスマネジメントスキルを用いて、従業員が休息や休憩をとれるようなスペースを提供しましょう。
従業員が仕事中に一息つけるようにすることで、エネルギーを取り戻し、ストレスの影響を軽減することができます。
8. 従業員の業績評価に役立つ
従業員は皆、ストレスに対する基準値が異なりますが、各ストレス要因は仕事のパフォーマンスに直接関係することがあります。
適切なストレスマネジメントを通して、従業員がチーム内でどれだけうまく機能しているかを判断することが可能になります。
ストレスチェック制度の実施方法
「労働安全衛生法」という法律が改正されたことを受けて、労働者が 50 人以上いる事業所では、2015 年 12 月から、毎年1回、ストレスチェックを全ての労働者に対して実施することが義務付けられました。
ストレスチェック制度は、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みです。
労働者が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師から助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったりします。
このストレスチェックは、ストレスに関する質問票(選択回答)に働く人が回答し、それを集計・分析することで、職場のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポートなどを調べる簡単な検査によって行われます。
ストレスチェック制度による働く人のストレス状況の改善及び働きやすい職場の実現は生産性の向上につながるものであると考えられるため、事業経営の一環として、積極的に活用を進めることが大切です。
ストレス対処の「3つのR」
ストレスは気付かない間にも蓄積していくもので、心身が疲れ切ってしまってからでは、なかなか回復は難しいものです。
日頃から、以下で紹介する「3つのR」を取り入れ、適度に休みを取って早めに対処しておくことがストレスによる疾病の予防にもつながります。
レスト(Rest):休息、休養、睡眠
オンとオフを切り替え、休息をしっかり取ることが重要です。
また、仕事中でも席を立って歩く、コーヒーを飲むなど、疲労が蓄積する前に意識して短い休憩を取ることも効果があります。
レクリエーション(Recreation):運動や旅行、ガーデニングのような趣味・娯楽や気晴らし
ストレスを発散させる趣味を持つことは大事です。
1週間に1時間程度でもレクリエーションの時間を取り入れ、好きなことに打ち込むことで日々のストレスから意識をそらせるように心掛けましょう。
リラックス(Relax):ストレッチ、瞑想や音楽、アロマセラピーなどのリラクゼーション
呼吸を落ち着かせたり、筋肉の緊張を解くなど、精神を安定させるリラクゼーション方法を取り入れましょう。
また、家族や親しい友人との団らんなど、緊張を解きほぐす時間を持つことも大切です。
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オペラント条件づけとは?顧客感動を実現したモチベーションアップからの従業員満足ストレスマネジメントを導入する方法
企業はストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど)ごとに集計・分析してもらい、その結果を踏まえて職場環境の改善を行っていく必要があります。
各集団で質問票の項目ごとの平均値を求めて比較するなどの方法で、どの集団が、どういったストレスの状況なのかを調べましょう。
企業がストレスマネジメントを導入するのは難しいと考えるかもしれません。
これらをスムーズに導入するためには、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の「4つのケア」が継続的かつ計画的に行われることが重要です。
そのためには、以下のような手段を講じることが有効です。
- セルフケア
- ラインケア
- 社内専門家の活用
- 社外の専門家の活用
それぞれわかりやすく解説します。
①セルフケア
すでに説明した「3つのR」などのように、従業員自らで自身のストレスを積極的に解消するように促していくことも企業の重要な役割です。
- ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
- ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き
- ストレスへの対処
企業主体は労働者に対して、上記に示したセルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行うなどの支援していきましょう。
②ラインケア
チームリーダーや課長といった管理監督者が行うストレスマネジメントは、「ラインケア」と呼ばれます。
ラインケアで重要なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下に早く気付くことです。
「いつもと違う」という感じをもつのは、部下がそれまでに示してきた行動様式からズレた行動をするからです。
例えば、それまで遅刻をしたことなどなかった部下が遅刻を繰り返したり、無断欠勤をする状況が続いた場合は注意が必要です。
速やかな気付きのためには、日頃から部下に関心を持って接しておき、いつもの行動様式や人間関係の持ち方について知っておくことが必要です。
③社内専門家の活用
事業場内産業保健スタッフ等は、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行うとともに、次に示す心の健康づくり計画の実施に当たり、中心的な役割を担うことになります。
- 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
- 個人の健康情報の取扱い
- 事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
- 職場復帰における支援
④社外の専門家の活用
ストレスマネジメントのために社内で活用できるリソースは多くありません。そのような場合には、積極的に外部のリソースを活用しましょう。
都道府県産業保健推進センターや地域産業保健センター、労災病院、中央労働災害防止協会、EAP(従業員支援プログラム)など、社外専門家(事業場外資源)を活用することも可能です。
- 情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用
- ネットワークの形成
- 職場復帰における支援、など
ストレスを処理するコーピング手法
ストレスを処理するためにはコーピング手法をうまく活用するのが大切です。コーピング手法には様々なものがありますが、大きく5つに分類することができます。
- 問題焦点型コーピング
- 情動焦点型コーピング
- 認知的再評価型コーピング
- 社会的支援検索型コーピング
- 気晴らし型コーピング
それぞれ説明します。
①問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングとは、ストレスの原因に対して、自分の努力や周囲の協力を得てストレスを解消しようとする対処法です。
解決できない場合には、ストレスの原因となる要因(人)を避けるような回避行動も含まれます。
状況を変えることができない場合もありますが、多くの場合、行動を起こして実際に直面している状況を変えることができます。
解決策を重視した対処法は、ストレス解消に非常に効果的で、ちょっとした変化で気持ちが大きく変わることもあります。
②情動焦点型コーピング
感情(情動)に焦点を当てた対処法は、ストレスの原因に対する考え方を変える方法です。
解決方法がない場合に、怒りや不満、悲しみなどの感情を表出する感情発散型と、誰にも話さずに心のなかに抑圧する感情抑圧型のコーピング手法もあります。
③認知的再評価型コーピング
認知的再評価型コーピングは情動焦点型コーピングの一種で、ストレスの原因に対して、見方や発想を変えたり、距離をおいたりするなど認知の仕方を変える手法です。
ポジティブシンキングとも呼ばれます。
状況は変化しないものの、楽観的に考えることで、それに対する自分の認識は変化させることができます。
これらの対処法は、起こることを自分でコントロールできない状況で、ストレス要因を脅威ではなく課題としてとらえる必要がある場合に有効です。
ストレスに対処するための感情に焦点を当てたテクニックには、他にも以下のようなものがあります。
- 自分の感情を日記に書く
- 瞑想を行い、自己理解を深める。
④社会的支援検索型コーピング
周囲にアドバイスを求めたり、信頼できる人に話すことで気持ちが楽になり、心理的安定を得られるようになります。
⑤気晴らし型コーピング
運動や趣味などのいわゆるストレス解消法により、気分転換やリフレシュを図るのが、気晴らし型コーピングです。
日々のストレス解消に、特に有効なコーピング手法になります。
まとめ ストレスマネジメントを活用しよう
ストレスというとネガティブなイメージをもたれがちですが、ストレスそのものが悪いわけではありません。
ストレスに対処する行動をストレスコーピングといいますが、ストレスに悩まない人たちは「コーピングがうまくいっている=ストレスにうまく対処している」といえるでしょう。
職場で過剰な要求やハラスメントを受けた場合、人事部に相談したり、人間関係のストレスを和らげるために紛争解決戦略を用いることもはストレスマネジメントの重要な手段です。
それでもストレスレベルが下がらない場合は、セラピストやかかりつけの医療機関に相談するのがよいでしょう。
ストレスを最小限に抑える方法を教えてくれたり、他の仕事をこなしながら健康を維持するための栄養や運動の計画を立ててくれたりといったケアを受けることができるでしょう。
対処法と適切なセルフケアによって、ストレスを健康的に管理し、長期的な問題を回避することができます。
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