サスティナブルな社会の実現に向けて:サスティナブル経営の実践

持続可能性を考慮した経営、すなわちサスティナブル経営とは、企業経営の姿勢であると同時に、それを支えるマネジメントシステムの問題でもあり、21世紀の変わりゆく環境・社会の中で、どのような業種・業態の企業においても導入すべきものです。

 

20世紀の企業は、国際的なオペレーション、サプライチェーン、情報技術、洗練されたマーケティング、戦略、財務、会計など、絶えず進化してきました。

 

今日では、世界中の組織が二酸化炭素排出量を削減し、気候変動や環境リスクを最小限に抑え、回復力を高め、持続可能性を事業に組み込もうとしています。

 

もちろん、サスティナブル経営では組織の活動の「なか」にサスティナビリティという考え方を組み込まれなければなりません。事業活動とは関係のないところで寄付活動を行なったとしても、それはサスティナブル経営とは言えないのです。

本記事では、サスティナブル経営の実践について解説していきます。

 

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サスティナブル経営とはどのような経営か?

サスティナブル経営の前提

 サスティナブル経営においては、まず資源が有限であることを前提とします。企業が事業活動のために利用できる資源は永久に使い続けることはできないので、サスティナブル経営では、現在のニーズを満たしながらも、次の世代の資源を損なわないように事業活動を行わなければなりません。

 

 したがって、企業が資源を利用する際には、長期的な目標と、その目標を達成した場合の結果を考慮した経営を行う必要があります。

 

サスティナブル経営の考え方

 ビジネスにおいて、「サスティナブルである」ということは「持続可能である」ということを意味しています。より具体的に言えば、サスティナブル経営では、企業が行うビジネスが、環境、コミュニティ、または社会全体にできるだけ悪影響を与えないようにしなければなりません。

 

 ビジネスにおけるサスティナビリティ(持続可能性)は、一般的に以下の2つの主要カテゴリに対応しています。

 

・ビジネスが環境に与える影響

・ビジネスが社会に与える影響

 

 サスティナブル経営の目標は、事業活動を通じてこれらの分野の少なくとも1つにプラスの影響を与えることです。

 

 企業がサスティナビリティについて責任を負わない場合、逆のことが起こり、環境悪化、不平等、社会的不公正などの問題につながる可能性があります。

サスティナブル経営の本質

 サスティナブル経営とは、簡単に言えば、組織が生態系、社会、経済的環境の中でどのように活動しているかを考慮して、長期的な価値を創造するためのビジネスアプローチです。また、それによって企業活動をサスティナブルにすることが目的です。

 

社会や環境に対する企業の責任への期待が高まり、透明性が求められるにつれ、多くの企業がサスティナビリティに関する行動の必要性を認識するようになっています。

 

 いまや企業の経営者は、自身の経営手腕やコミュニケーション能力、善意だけではもはや不十分なのです。

 

では、世界的有名企業はどのようにサスティナビリティへ取り組んでいるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

 

サスティナブル経営の具体的な取り組み

 これらの企業はいずれも、透明性を確保し、社会的に重要な問題に対処することで、持続可能性への強いコミットメントを表明しています。

 

 ・スポーツ用品メーカーであるナイキは廃棄物の削減とフットプリントの最小化に注力しており、アディダスはより環境に配慮したサプライチェーンを構築して、染色やレジ袋の廃止など具体的な問題に取り組んでいます。

 

・ユニリーバは特に有機パーム油とその廃棄物や資源の全体的なフットプリントに取り組みんでいます。

 

・Walmart、IKEA、H&Mは、廃棄物の削減、資源生産性の向上、材料使用の最適化を目的としたサプライチェーン全体のコラボレーションを主導し、より持続可能な小売業への変革を目指しています。また、新興市場のサプライヤーとの間で、現地の労働条件に対処するための措置を講じています。

 

・ペプシとコカ・コーラは、ウォーター・スチュワードシップに重点を置き、水の補充に関する目標を設定するなど、意欲的な取り組みを行っています。

 

・バイオファーマであるバイオジェンとノボノルディスクは、エネルギー効率、廃棄物の削減、その他の環境対策に取り組んでいます。

 

・BMWやトヨタのような自動車メーカーは、エネルギー効率や汚染物質の削減に大きく貢献しており、テスラは業界全体のフットプリントに挑戦しているアウトサイダーです。

 

・金融サービスでは、オーストラリアのANZやWestpacのような銀行が、サスティナビリティに配慮した活動を行い、ビジネスプロセスや文化にサスティナビリティを組み込むことで、地域社会に貢献しています。

 

 サスティナブル経営では、企業の意思決定を行う際に、環境、経済、社会のさまざまな要因を考慮しなければなりません。短期的な利益を得るために将来的な利益を犠牲にしないよう、事業活動の影響を自らできちんと監視することは必要不可欠です。

なぜ持続可能性が重要なのか?

 サスティナブル経営は地球規模の課題を解決するだけでなく、ビジネスの成功にもつながるものです。

 

 現在、多くの投資家は企業の倫理的影響や持続可能性の実践状況を分析するために、ESG(環境(environmment)・社会(society)・ガバナンス(governance))指標を用いています。

 

 たとえば、投資家は、企業のカーボンフットプリント、水の使用量、地域開発への取り組み、役員の多様性などの要素に注目して投資を行うことがあります。

 

水の使用量が他の企業よりも多い企業は、それだけ環境に負荷をかけていることになるので、サスティナブル経営を実践しているとは言えません。投資家によっては、「そうした企業には投資をしない」とすることもありえます。

 

サスティナブルなビジネスを展開するためには

 サスティナブルなビジネスとは、環境に配慮した製品の開発、社会的な取り組み、その他の持続可能な戦略などを通じて、環境に与える潜在的な悪影響を最小限に抑えることを意味します。ビジネスをサスティナブルなものに変えるためには、いくつかの方法があります。

 

 ここでは、より持続可能なビジネス戦略を構築するためのいくつかのステップをご紹介します。

サスティナブルなビジネスの実現

 多くの企業にとって、持続可能なビジネスを行うことが最優先事項ではないとしても、環境を守りたくないと考える企業はありません。

 

 しかし、持続可能なビジネスモデルを自社のビジネスの中核に据えることによって、実際に目に見える利益やメリットが得られない限り、すぐに現在行っているビジネスから転換することはできないでしょう。

 

 そうであっても、サスティナビリティと真摯に向き合うことは、現代の企業にとってはもはや避けられないことです。

1. サスティナビリティに関する問題点の把握と目標の設定

 

 企業の経営者にとって最大の課題の一つは、潜在層を含む顧客が、自社のサスティナブルなビジネスに対して好意的な反応を示し、それが自社のビジネスの利益、ブランド価値、競争上の優位性にどのようにプラスの影響を与えるかといった、「サスティナブルなビジネスの効果」を十分に説明できるかどうかにかかっています。

 

 変化を起こすための最初のステップは、自分のチーム、会社、業界、顧客にとってのサスティナビリティとは何かを考えることから始めなければなりません。

 

 このプロセスでは、次のような質問を自分自身にしてみることから始めましょう。

 

・どのくらいの廃棄物を生み出しているか?

・採用活動は、多様な求職者を惹きつけているだろうか?

・製品は、特定の人々を助けることを目的としているか?

・会社は、地域社会にどのような影響を与えているか?

 

 このような質問に答えることで、自社のサスティナビリティに対する具体的な目標を確立することができます。

2. サスティナビリティに関するミッションの確立

 サスティナビリティに関する具体的な目標を確立できたら、次は会社のミッションを設定します。より持続可能なビジネスになるためには、明確なミッション・ステートメントが掲げなければなりません。

 

 ミッション・ステートメントは、企業が「何をすべきか」を明確に示すことが重要であり、組織の価値観や目的を効果的に捉え、なぜそのような活動を行うのかを示す指針です。

 

言い換えれば、ミッション・ステートメントは、企業のビジネスに対する5つのW(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ)を定義するものでなければなりません。

ミッション確立のために重要なこと

 たとえば、「私たちは持続可能なビジネスをします」というメッセージ(ミッションステートメント)を出しても、従業員や地域コミュニティ、消費者に対して、意味のあるメッセージとはなりません。

 

 経営者が正面から取り組まなければならないのは、組織が直面しているサスティナビリティ関連の「具体的な課題」を特定することです。

 

 これには、組織の無数の社会的および環境的な影響が含まれています。そして、これらを定量化して、自社の各ビジネス部門が容易に理解できるように、財務、業務、またはその他の指標に変換する方法を見つけることが必要です。

サスティナビリティミッションの具体例

 たとえば、サスティナブルな企業として地域社会に知られることは、消費者の製品やサービスへの嗜好が高まるという、目には見えないメリットがあります。

 

企業全体でサスティナブルを実践するには、製品やサービスを最初から最後まで生産するために必要なプロセスを考えたり、組織内でサスティナビリティについて考えるような研修プログラムを実施して、すべての従業員が自社のサスティナブルビジネスへの取り組みに参加することを促さなければなりません。

 

 また、廃棄物の削減や再生可能エネルギーの利用など、サスティナビリティに関する定量的な成果を生み出す方法も考えなければなりません。

3. サスティナビリティ戦略を練る

 強力なミッション・ステートメントを作成したら、次はサスティナブルなビジネスの戦略に基づいて組織を再編成する準備をする必要があります。

 

 サスティナブルなビジネス戦略を構築するためには、企業の収益性を確保することも重要です。ビジネスを継続できなければ、サスティナブルという目的を達成することはできません。

 

 たとえば、あなたの会社では、従業員がいない時でも夜間に電気や暖房をつけっぱなしにしていませんか?

 

もし、最後にオフィスにいる人が電源を切ったとしたら、あるいはタイマーや人感センサーを使って最後の人が帰った後に自動的に電源を切ったとしたら、コストとエネルギー資源の両方で、どれほどの節約ができるか想像してみてください。

 

消費者はサスティナブルな商品を求めている?

 

 「サスティナブル」に対する消費者の意識はどうでしょうか?ユニリーバの調査によると、33%の消費者が「社会的または環境的に良いことをしている」ブランドからの購入を希望しており、持続可能な商品の市場には未開拓の機会があると考えられます。

 

 社会的価値や社内的価値を高めながら、業務効率を上げることができる、業界特有の戦略がいくつかあります。強力なサスティナビリティ戦略を構築するための努力は、長期的には企業と環境の両方に役立つものです。

4. 戦略の実行と結果の評価

 ビジネスを通じて社会に良いことをしたいというモチベーションを語るのは経営者の重要な課題の一つですが、公の場で姿勢を示し、数値化できる結果を約束し、実際にそれを達成することが必要です。

 

 たとえば、女性役員比率を50%にするというミッションを掲げるのであれば、それを公の場できちんと示し、この取組みに経営者自らコミットして、その結果を定量的に提示できなければなりません。

サスティナブルな経営を成功に導く7つのヒント

 サスティナブル経営を実行するのに1つの正しい方法はありません。最善の方法は、各企業のビジョンと利害関係者との関係によって異なります。ここでは、サスティナブルなビジネスを成功に導くために役立ついくつかのティップスを紹介します。

1.事業戦略とサスティナビリティの整合性を図る

 経営陣は、会社の事業戦略とサスティナビリティへの取り組みが整合していることを確認する必要があります。サスティナブル経営を実行していると主張する企業であっても、ここに相違が見られることがありますが、この相違はサスティナビリティへの取り組みを脆弱にしてしまいます。

 

 例えば具体的な成功例としては、ハイブリッドエンジンの革新でよく知られているトヨタは、それによって希土類鉱物への依存を減らすことに成功しています。本来、これらの鉱物はハイブリッドエンジンや電気エンジンの開発に必要なものでした。しかし、トヨタは代替モーター技術を開発することにより、輸入依存とオペレーショナルリスクを減らすと同時に、価格が上昇した場合の財務リスクを減らすことにも成功しました。

2. コンプライアンスを第一に、次に競争上の優位性を

 何よりもまず、企業はコンプライアンスの遵守に取り組む必要があります。コンプライアンスは、廃棄物管理、汚染、エネルギー効率、人権、労働責任の規制に関連することもあり、コンプライアンスを遵守しているかどうかに投資家から強い関心を抱いています。

 最近のBCG / MITデータ[https://sloanreview.mit.edu/projects/corporate-sustainability-at-a-crossroads/]は、投資家がコンプライアンスリスクをますます避けていることを示すとともに、投資家の44%が、サスティナビリティに関するパフォーマンスが低い企業から売却すると答えています。

3. 積極的な対応

 ナイキ、コカ・コーラ、Telenor、IKEA、Siemens、ネスレなど、今日の持続可能性をリードする企業の多くは、サスティナビリティを脅かす危機的状況を乗り越えることで大きく成長しました。

 たとえば、ナイキは90年代を通じて、インドネシアのような場所での虐待的な労働慣行に対するボイコットと国民の怒りに直面しましたが、この流れを好転させることで、現在はサスティナビリティ経営のリーダー企業となっています。

 

2005年には、契約している工場の完全なリストと、工場の状況と支払いを明らかにした詳細な108ページにも及ぶレポートを公開することにより、透明性を確立するパイオニアになりました。また、特に南アジアの工場での広範な問題も認めました。

 

社会や環境への影響を認識することにより、これらの企業はすべて、より積極的なサスティナビリティ戦略を新たに開発しました。

4. サスティナビリティ目標の定量化

 すべての企業は、サスティナビリティへの取り組みに対するメリットを定量化することに苦労しています。コンプライアンスに関して取り組んでいるか否かという簡単な問題ですが、その効果がどの程度企業の収益性に貢献しているかを定量的に測定することは非常に困難な課題です。しかし、競争において優位な分野に関しては、企業はサスティナビリティの取組みを収益性に関連付ける必要があります。

5. 透明性を高める

 企業の透明性はサスティナビリティの実践を評価および改善するための前提条件です。これは、オープンな環境がサスティナビリティに関するパフォーマンスを向上させるという考えに基づいています。企業が透明性を達成する具体的な方法として、高いレベルの情報開示、明快さ・正確さに基づいて構築された、すべての主要な利害関係者とのオープンなコミュニケーションから始まります。

6.取締役会のサスティナビリティへの関与

MIT / BCGによる調査[https://sloanreview.mit.edu/projects/corporate-sustainability-at-a-crossroads/]では、回答者の86%が、取締役会がサスティナビリティの取組みに積極的かつ強力な役割を果たすべきであるとしています。しかし、取締役会が実質的に関与してサスティナビリティに取り組んでいると報告しているのは42%のみです。取締役会は、NGO、政府、国際機関などの主要な利害関係者とのコラボレーションにおいて重要な役割を果たします。

 

7. 組織全体を幅広く関与させる

 サスティナビリティの取組みに経営者から従業員まで幅広く組織全体を関与させている事例として挙げられるのが、Salesforce.comです。Salesforce.comでは「1/1/1」慈善プログラムを通じて、各従業員が環境組織や地域を支援するイニシアチブに関与しています。もう1つの良い例としては、ネスプレッソです。同社は、ネスプレッソで行われるすべての決定において持続可能性を考慮することとしています。

おわりに

 企業経営者にとって、サスティナビリティという考えを事業のなかに取り入れるのは単純ではないかもしれません。しかし、21世紀を生き抜いていく企業にとっては、サスティナブルな事業展開は必要不可欠です。サスティナビリティのアイデアを取り入れる企業は、より良い世界のために貢献し、長期的に高い利益を得ることができる企業と言えるでしょう。

 

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