変化の激しい現代社会では、常に先手を取り続けて、あらかじめ有利な体勢で変化に備えておくことが大切です。
このように、率先して物事を始めることを「イニシアチブ」と言います。
ただし「イニシアチブ」は、シーンやフレーズによって意味が異なるため、混乱することも多いようです。
そこで本記事では「イニシアチブ」の意味について解説していきます。
それにあわせて、イニシアチブを取る方法を紹介するので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
イニシアチブの「意味」とは?
イニシアチブは、先に動き出したり有利な立場に立ったりするなど「主導権」を意味する言葉です。
例えば「イニシアチブを取る」や「イニシアチブを握る」というように使われることが多いです。
語源を深掘りしていくと、ラテン語で「始める」という意味を持つ「initiare」という単語から派生しており、イニシアチブの「主導権」と強い繋がりがあることがわかります。
関連語としては「initially(初めは)」などが挙げられます。
ビジネスでは一般的に”主導権”や”実行力”を指す
イニシアチブは、ビジネスシーンでは「主導権」や「実行力」を指す言葉として用いられることが多いようです。
例えば「イニシアチブを取る」は、物事を複数人で実施する際に、全体の動きをリードして主導権を握ることを指します。
また「イニシアチブを発揮する」は、そのまま「主導権を発揮する」というように言い換えが可能です。
英語では”initiative”と表記する
イニシアチブは、英語表記では「initiative」と表記され、以下の日本語に訳すことができます。
- 自発力
- 率先
- 構想・戦略
- 主導権
- 発案権
- 直接請求権
- 新たな取り組み
- 先手
このように「initiative」には「何かを始める」という意味合いが強い単語となっています。
また「own initiative」というフレーズでは「自分のペースで」という意味になるそうです。
“イニシアティブ”と”イニシアチブ”の違いは?
イニシアチブに似た言葉として「イニシアティブ」があります。
これは単純に発音が異なるだけで、どちらも同じ「initiative」なので、意味は同じです。
とは言え、同じ意味だとしても表記揺れには要注意です。書類を作成する際は、イニシアチブかイニシアティブのどちらかに統一するようにしましょう。
ビジネスシーン以外で”イニシアチブ”が使用されることも
イニシアチブは、ビジネスシーン以外にも政治やスポーツのシーンで用いられます。
ここでは、政治とスポーツのシーンにおけるイニシアチブを紹介していきます。
シーン①:政治におけるイニシアチブ
政治においてイニシアチブは「発案権」や「直接請求権」という意味で用いられることが多いです。
発案権は法案を議会に提出する権利で、直接請求権は住民が意思を地方公共団体に表明する権利のことを指します。
たしかに、どちらも「始まり」や「実行力」のニュアンスを感じさせられます。
また、政府機関では「構想」や「政策」という意味でも用いられることが多いようです。
シーン②:スポーツにおけるイニシアチブ
スポーツにおいてイニシアチブは「優勢」や「先手」という意味で用いられることが多いです。
例えば、サッカーで積極的にボールを取りにいく強気な姿勢に対して「積極的にイニシアチブを取りにいっている」というように表現されます。
たしかに、点数は拮抗していても、プレーの内容を見ると、片方のチームが主導権を握っているケースをよく見かけます。
組織における「イニシアチブ」
目標を指し示し、環境さえ整えれば良いのかというと、そうではありません。
たとえチームメンバーに「環境は整えたから、あとは頑張ってくれ」と言っても、メンバーが動いてくれないことが考えられます。
ではどのようにすれば良いのでしょうか。「LEADERSHIP ON THE LINE WITH A NEW PREFACE[2]」で紹介されている事例を紹介します。
イスラエルのある化学工場で従業員が死亡する爆発事故が起きました。当時のCEOは事故原因を調査し、問題点を洗い出して、二度と事故が起こらないよう措置しました。
CEOとしては遜色のない仕事をしてのけたのですが、従業員はなかなか工場に戻りたがりませんでした。戻ったとしても恐る恐る作業をし、効率は上がりません。そこでCEOが自らラインで作業を行い始めたところ、従業員が工場に戻り始め、生産性も向上しました。
CEOと従業員は異なる目線で現状を見ていたために、自分には安全に見えても、従業員はそう思っていなかったことに気がつきました。そこで、自分から率先して行動することで、従業員の不安が根拠のないものであることを示したのです。
イニシアチブの発揮には、周囲の人を動かすための行動を率先して行い、組織を動かすことが不可欠です。
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「イニシアチブ」の使い方
イニシアチブは前項で解説したとおり、主に「先導・率先・主導権」の意味で使われます。
また「イニシアチブをとる」「イニシアチブを握る」と表現することもあれば「〇〇イニシアチブ」といった使い方をする場合もあります。
受け手に正しい意味合いで伝わるように、イニシアチブという言葉の適切な使い方を確認しましょう。
イニシアチブの使い方の例
先導・率先の意味として使う場合には、主体の行動や性格を表すことがほとんどです。
一方で、主導権の意味で使う際には「権力の行使」の意味合いが含まれるので注意が必要です。
先導・率先の意味で使う場合の例
- 彼のイニシアチブな行動は素晴らしい
- このプロジェクトは貴社のイニシアチブで進めてください
主導権の意味で使う場合の例
- リーダーとしてイニシアチブを握るべきだ
- 彼のイニシアチブの発揮により、プロジェクトは成功した
主導権の意味で使う際には、リーダーや上司・部下といった具体的な役職を用いて権利関係を示すと、意図が伝わりやすくなります。
イニシアチブを「とる」と「握る」の違い
イニシアチブという言葉を使う際「イニシアチブをとる」「イニシアチブを握る」と、主に2つの表現方法があります。
両方使い方としては正しいのですが、ニュアンスが少し変わるため、使う際には注意しましょう。
「イニシアチブを握る」と表現すると主導権の意味が強まり、少なからず圧力的な要素が加わります。
「イニシアチブをとる」という表現にも主導権の意味合いはありますが、先導や率先など他の意味も含み、少し柔らかい印象となります。
主導権の意味で使う場合には「イニシアチブを発揮する」といった表現もあるでしょう。この場合は「主導権を適切に活用する」というポジティブなニュアンスになります。
部下の主導権の活用を評価する場合や、状況の報告の際などには「イニシアチブを握る」よりも、こちらの表現が適しています。
その他の使い方
「〇〇のイニシアチブで〜」や「〇〇イニシアチブ」といった、使われ方をするケースもあるでしょう。その場合は、先導・率先の他に「計画」の意味ももちます。
たとえば取引先名をつけて「A社イニシアチブ」とするなら、A社に関する計画やプロジェクト、案件を指すということです。
ただし「戦略的イニシアチブ」という表現の場合は、例外的に経営戦略や成長目標などを意味することもあります。
(例文)
- 来週からはA社イニシアチブの推進に注力しましょう。
- 我々の戦略的イニシアチブは、雇用の創出による地域活性化です。
「イニシアチブ」を取るメリットとは?
イニシアチブを取るメリットは以下の2つです。
- 競争優位性を確保できる
- スムーズに意思決定できる
それぞれ詳しく解説していきます。
メリット①:競争優位性を確保できる
イニシアチブを取るメリットとして、競争優位性の確保が挙げられます。
例えば、世界的な半導体メーカーであるNVIDIAは、自社でのみ開発できる半導体のニーズが大きいため、IT企業との価格交渉でイニシアチブを取ることに成功しています。
このように、市場全体でイニシアチブを取ることができれば、価格交渉や研究開発を有利に進めることができます。
メリット②:スムーズに意思決定できる
イニシアチブを取るメリットとして、スムーズに意思決定できることが挙げられます。
例えば、会議、商談、アイデア出しなどで、こう着状態に陥ってしまい、会話が進まなくなるケースがあります。
一方で、あらかじめイニシアチブを取れていれば、自分のペースで会話を進められるようになるので、結果的に会議や商談がスムーズにいきます。
ビジネスにおける「イニシアチブ」を取る方法
ビジネスでイニシアチブを取る方法は以下の5つです。
- 積極的に自分の意見を伝える
- 目標を明確にする
- 素早く決断する
- 常に課題を探す
- リスクを恐れない
それぞれ詳しく解説していきます。
方法①:積極的に自分の意見を伝える
ビジネスでイニシアチブを取る方法として、積極的に自分の意見を伝えることが挙げられます。
どれだけ良い意見を持っていても、それを相手に伝えなければ意味がありません。
間違いを恐れずに、自分の意見を積極的に伝える必要があります。
方法②:目標を明確にする
ビジネスでイニシアチブを取る方法として、目標を明確にすることが挙げられます。
あらかじめ、目標を明確にしておけば、選択肢が迫ったときに迷うことなく判断できるようになります。
それが結果として「速さ」に繋がり、イニシアチブを取るのに役立ちます。
方法③:素早く決断する
イニシアチブを取るには、素早い決断が欠かせません。
どんなに重要な選択肢でも、その場で決断できるほどのスピードがなければ、先手を取ることはできないでしょう。
目安は「10秒」です。あらゆる選択肢に対して「10秒」で決断できるようにしておきましょう。
方法④:常に課題を探す
イニシアチブを取る方法として、常に課題を探すことが挙げられます。
周囲を見渡して課題を発見し、それに対する解決案を模索することがアイデアにつながるからです。
先手を取りたいのであれば、常に課題を探す癖を身に付けましょう。
方法⑤:リスクを恐れない
ビジネスでイニシアチブを取る方法として、リスクを恐れないことが挙げられます。
人々は、なぜ迷うのか。それは失敗したときのリスクを恐れているからです。
逆に言えば、リスクを恐れなければ、人より一歩先に進むことができると言えます。
誰よりも先に1歩踏み出すファーストペンギンになりましょう。
「イニシアチブ」を取る人にはどんな特徴がある?
イニシアチブを取る人の特徴は以下の7つです。
- リーダーシップがある
- 常に先手を打つ
- 自己管理能力が高い
- 学習意欲が強い
- 自信がある
- 傾聴力がある
- 柔軟性が高い
それぞれ詳しく解説していきます。
特徴①:リーダーシップがある
イニシアチブを取れる人の特徴として、リーダーシップが挙げられます。
やはり、リーダーシップのある人は、率先してアクションを起こすため、イニシアチブを取りやすいです。
また、リーダーには責任があるため「自分の手で仕事を進めたい」と考える人が多いのかもしれません。
特徴②:常に先手を打つ
常に先手を打つ人も、イニシアチブを取りやすいです。
実際、常に先手を取り続けることができれば、その場の主導権を握れます。
逆に、後手に回ってしまうと、いつまで経っても「対策」しかできなくなります。
ビジネスを有利に進めるためにも、先手を取り続けることを意識しましょう。
特徴③:自己管理能力が高い
イニシアチブを取れる人の特徴として、自己管理能力が高いことが挙げられます。
イニシアチブを取るには、意思決定のスピードと正確な工数見積もりが欠かせません。これを実現するには、タイムマネジメントとパフォーマンスの維持が必要不可欠です。
いつも寝不足でタスクを溜めがちな人が、イニシアチブを取るのは難しいでしょう。
特徴④:学習意欲が強い
イニシアチブを取れる人の特徴として、学習意欲が強いことが挙げられます。
その典型例がIT業界です。IT業界でイニシアチブを取るには、最先端の技術を常に学び続ける必要があります。
学習意欲の強さとイニシアチブを取れるかどうかは、強い関連性があると考えられます。
特徴⑤:自信がある
イニシアチブを取れる人の多くは、自信に満ち溢れています。
なぜなら自信がなければ、迅速な意思決定ができないからです。
自信があれば、自分の意思決定や判断に対して強気になれるため、イニシアチブを取りやすくなります。
特徴⑥:傾聴力がある
イニシアチブを取れる人は傾聴力があります。傾聴は、円滑に会話を進めるのに必要不可欠なスキルです。
上手に会話を進めることができれば、結果として「場」を支配できるようになります。
ただ、自分の意見を押し通すだけではなく、相手の意見にもしっかり耳を傾けて、円滑にコミュニケーションを進めることが重要です。
特徴⑦:柔軟性が高い
イニシアチブを取れる人の特徴として、柔軟性が高いことが挙げられます。
変化に対して保守的になってしまうと、先手を打つことはできません。
柔軟性を高めて、あらゆる変化に対応できれば、新しいアプローチに対しても前向きに検討できるようになります。
まとめ
本記事ではイニシアチブについて解説してきました。ビジネスシーンで「イニシアチブ」は、よく用いられる単語です。
資料作成や会議の際に、自由に使いまわせるといいでしょう。
また、ビジネスにおいてイニシアチブを取りにいくことは、非常に大切なことです。
イニシアチブを取るには、リスクを恐れずに、常に1歩前に出て、スピーディーに意思決定をこなしていく必要があります。
イニシアチブを取りにいって、企業の成長と、自分自身のキャリアプランを実現させましょう。