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営業権とは?わかりやすく解説!のれんとの違い、計算方法

経営者

「営業権」と「のれん」って違うの?
厳密には異なりますが、現在は同じ意味で使われています。

専門家

突然ですが、あなたはこのようなことを感じていませんか?

  • 「M&Aを検討する際に出てくる、営業権ってなんだろう?」
  • 「営業権、なんとなくわかっているつもりだけど説明はできない」
  • 「のれんと営業権はどう違うんだろう?」

本記事では、そんな少しだけややこしい営業権について、わかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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営業権とは?

経営者

そもそも営業権ってなんのこと?

営業権とは、企業のノウハウやブランド、情報や人材などの、形が無く目に見えない資産のことをいいます。もう少し具体的にいえば、「将来その事業がどれだけ利益を出せるのか」を数値化したものです。

M&Aでよく聞く、「のれん」とも近いですが、少しだけ異なる概念です。

専門家

まずは、営業権の基本情報をわかりやすく解説します。

営業権の定義

営業権とは、見る人によって価値が変わる無形の資産のことです。このため、営業権を一言で言い換えれば、「目に見えない会社の価値」となります。目に見えない価値なので、基本的には貸借対照表上で数字としては表れません。したがって、経営者の中には、営業権を蔑ろにする方もいます。

しかし、営業権は、企業を売却・買収する際には必ず知っておかなければならない概念の一つです。

式で表すと、営業権は以下のようになります。

営業権=(企業価値)ー(目に見える資産全て)

M&Aでは、目に見える資産だけで見るとそこまで大きくないような会社でも、大手企業に高額で買収されることがあります。

これは、営業権が大きかったことが要因です。

経営者

企業のブランド価値とかも営業権だね。

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営業権は固定資産?繰延資産?

経営者

営業権って繰延資産じゃないの?

営業権は無形固定資産です。よく繰延資産と勘違いされますが、明確に会社計算規則の中で定義されています。

繰延資産とは、会社が支出する費用の中で、その効果が1年以上におよぶ資産のことです。

確かに、営業権も繰延資産に入ると考えられがちですが、繰延資産に該当するものは創立費・開業費・株式交付費・社債発行費・開発費などが挙げられます。

会計上は、営業権が「のれん」と表現されることが多く、実際の科目としても「のれん」が使われることが多いです。

(参考:会社計算規則 | e-gov

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のれんと営業権の違いとは

ここからは、のれんと営業権の違いをわかりやすく説明します。

営業権はのれんは厳密には違う

営業権とのれんは厳密には異なります。

営業権とは、企業価値を算定する際に考慮すべき純資産以外の、目に見えない価値だと説明しました。

では、純資産が1億円、営業権が5,000万円の企業があると仮定して考えてみましょう。

専門家

純資産と営業権を合わせると、企業の価値は1億5,000万円になります。

(営業権)5000万円 + (純資産)1億円 = 1億5000万円(企業価値)

しかし、例えばこの企業が1億3,000万円で購入された場合、のれんは3,000万円になります。

(購入された金額)1億3,000万円 ー (純資産)1億円 = 3,000万円(のれん)

つまり、「のれん」とはあくまでも買収された金額と純資産との差額なのです。

この場合、営業権は5,000万円、のれんは3,000万円となるので、この2つは異なることがわかります。

経営者

のれんは会社の帳簿上の金額と、実際の購入額との差でしかないんだね。

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営業権とのれんを混同しても問題ない

営業権とのれんは厳密には異なりますが、実務上は「営業権=のれん」と考えても問題ありません。

なぜなら、そもそも営業権を実務上で使うことはほとんどないからです。

例えば、企業価値は「目に見える資産価値+営業権」で示されますが、実際に営業権を算出することは容易ではありません

目に見えない価値だからこそ、人によって営業権の価値が異なってしまうため、算出が困難なのです。

誰かが2,000万円といったノウハウは、他の人にとっては2,000円の価値もないことだって考えられます。このため、営業権の価値を考えるよりも、実際にM&Aが起きた際の差額分をのれんと計上した方が、M&Aの取引形態としては正しいという解釈になります。

営業権の評価方法(大枠)

営業権を算出することは難しいですが、目安を出しておかなければ、M&Aをする際に相場がわからず、売り手も書い手も値段の交渉ができません。したがって、目安として、営業権の価値を算出する方法を3つ解説します。

  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ

それぞれわかりやすく解説します。

コストアプローチ

コストアプローチは営業権の算出ではほぼ使われることはありませんが、会社の価値算定方法としてよく引き合いに出されるので紹介しておきます。

コストアプローチ法では、2つの企業価値の算定方法があります。

貸借対照表の資産と負債に注目して、差額をとったものを企業の価値として判断する「簿価純資産法」と、資産も負債も時価で評価する「時価純資産法」です。

簿価純資産は、簿価の数字をみるだけなので売上債権、棚卸資産が時価評価されておらず、不良債権や不良在庫の懸念が払拭されていません。一方で、時価評価したにせよ、あくまでも帳簿上に見える資産と負債の差を算出しているだけなので、営業権が折り込まれていません。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、上場企業の企業価値を算出する際によく用いられる企業価値算定方法です。

同規模で同様の事業を営む会社の、実際のM&Aの事例を参考にすることで、実際に他のM&A案件がどれほどの相場で成約しているのかを参考にして評価する方法です。

類似の参考値としては、国税庁が発表する業種別月次平均株価を使う「類似業種比較法」と、評価対象と類似した上場会社の株価を基準として、評価対象の企業価値を算出する「類似会社比較法」の2種類があります。

実際の売買の結果を参考に算出するため、営業権も織り込んだ企業価値を算出できますが、対象の企業が非上場会社だと、比較対象が見つけるのが困難です。

専門家

インカムアプローチ

インカムアプローチは、DCF法配当還元法があります。

インカムアプローチでは、評価対象の会社が将来生み出すであろうキャッシュフローに注目します。将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いて、現在の企業価値を評価する手法です。

インカムアプローチでは、現在の営業権により生み出されるであろう将来キャッシュフローを現在価値に織り込むので、営業権を企業価値に含めているといえます。しかし、将来キャッシュフローの計算はあくまでも予想でしかなく、正確性に欠けます。したがって、必ずしも算出した企業価値が正確とはいえません。

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営業権の算定方法(詳細)

営業権を評価するための方法は他にもあります。

以下5つの方法を紹介します。

  • ①財産評価基本通達による評価
  • ②DCF法
  • ③年買法
  • ④超過収益法
  • ⑤企業価値差額法

それぞれわかりやすく解説します。

①財産評価基本通達による評価

財産評価基本通達は、国税庁からの通達で出されている相続税のための営業権の時価計算の方法です。

あまりM&Aでの計算方法として使われることはありませんが、財産評価基本通達165条と166条に記載されている計算で時価評価を出せます。参考までに計算方法を載せておきますと、以下のようになります。

平均利益金額 × 0.5 - 標準企業者報酬額 - 総資産価額 × 0.05 = 超過利益金額

超過利益金額 × 営業権の持続年数(※)に応ずる基準年利率による複利年金減価率 = 営業権の価額

(参考:財産評価基本通達 | 国税庁)

②DCF法

DCF法とは、インカムアプローチの手法の一つです。

会社が生み出す将来利益を、「フリーキャッシュフロー」と「資本コスト(WACC)」を使って現在の価値に割り引いた上で計算します。

フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたものです。一言でいえば、借入金などの返済(財務CF)前の現預金がフリーキャッシュフローということになります。

そして、資本コスト(WACC)とは、将来の安定したキャッシュフロー維持にはリスクがあるため、リスクを考慮した上での未来の価値を現在価値に置き換えることです。

つまり、将来自由に使えるであろうお金を、現在価値にプラスする考え方がDCF法です。

③年買法

年買法とは年倍法とも呼ばれており、純資産に「将来利益」を足して企業価値を算定する方法です。

将来利益とは、修正した営業利益(営業利益から特殊要因などを排除した数字)を3~5年分足し合わせたものの合計のことを指します。つまりこれが営業権です。

実際は、将来価値を現在価値に直すのであれば、割引などが必要になりますが、将来価値をそのまま付加する点など、突っ込みどころが満載なロジックではあります。

しかし、そもそも年買法はわかりやすさを重視しているので、「買い手と売り手が納得すれば問題ない」との考え方が根本にあります。

年買法は論理的に正しいかと言われると懸念点が残りますが、わかりやすい営業権の算出方法として使われます。

専門家

④超過収益法

超過収益法とは、無形固定資産を活用することで、どれほど将来利益がもたらされる可能性があるかを期待値で算出する方法です。

無形固定資産が活用されている事業から、それ以外の資産により生み出される利益(キャピタルチャージ)を算出し、その差額が無形固定資産が生み出す価値と算定されます。

この算定に使うのは、事業計画と貸借対照表の2つです。

DCF法などと同じように、将来獲得するであろう利益を現在価値に割引く点は同様です。

⑤企業価値差額法

企業価値差額法とは、既に紹介したマーケットアプローチやインカムアプローチから事業全体の価値を算出し、時価資産額との差を取ります。

この差が営業権になるとの考え方です。

計算順序が異なるだけで、超過収益法と大体同じという認識でよいでしょう。

専門家

M&Aの際に営業権の価値を高めるには

M&Aの際に営業権の価値を高める方法は以下の3点です。

  • ①自社事業をブランディングする
  • ②あいみつをとる
  • ③無形固定資産の価値を高める

それぞれ解説します。

①自社事業をブランディングする

M&Aの際に営業権の価値を高めるには、自社事業のブランディングをすることが大切です。結論として、相手企業が欲しいと思う事業を育て上げれば相場よりも高いM&Aは成立します。

このため、SWOT分析などを使い、自社のブランドをより強固にするなどの企業努力が必要です。

②あいみつをとる

M&Aで少しでも高く会社や事業を売却するためには、あいみつを利用するのも良いでしょう。

現在、M&Aの売りを検討しようと思ったら、M&Aの専門家に相談するだけでなく、銀行、M&Aマッチングサイトなど様々な手段を利用できます。「必ず一つに絞らなければならない」というわけではありませんので、同時平行で色々と試してみることをおすすめします。

ちなみにこの中で、最も簡単に始められるのがM&Aマッチングサービスです。もし利用するか迷っているのであれば、登録しておくことをおすすめします。なぜなら、登録しておくだけで思わぬ取引先が見つかる可能性があるからです。

③無形固定資産の価値を高める

無形固定資産の価値を高めるためには、ノウハウやブランド以外の無形固定資産の価値を上げる方法もあります。例えば、取引先の拡大です。自社の売上があがるだけでなく、無形固定資産になり得る取引先を拡大することはメリットでしかありません。

他にも、特許の取得、従業員のスキルの向上などが無形固定資産の価値上昇のためには欠かせすことができません。しかし、どれもすぐにできることではないので、いつか事業売却や株式譲渡によるエグジットを検討しているのであれば、早いうちから無形固定資産の価値向上に力を入れることをおすすめします。

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営業権の譲渡に関する税務

営業権の譲渡に関する税務について確認しておきましょう。

ここでは、事業譲渡により営業権を譲渡した場合について説明します。

事業を譲渡する側の税務

事業を譲渡する側は営業権も資産としてみなされるため、必ず消費税がかかります。国税庁でも、営業の譲渡をした場合は課税されるとの事例を挙げています。

あわせて、営業権を譲渡した場合には法人税が課税される場合があります。売却額から帳簿価額の差し引きが譲渡益になるので、譲渡益に対して法人税がかかります。

譲渡益の金額が大きくなると、税金のキャッシュアウトが大きくなるので注意が必要です。

税金にかかるキャッシュアウトは資金繰りにも関わりますからね。

専門家

(参考:営業の譲渡をした場合の対価の額 | 国税庁

事業を譲り受ける側の税務

買い手企業側も、事業を譲り受ける場合には、営業権に対して消費税の支払いが発生します。

あわせて、のれんについては毎年のれん償却が発生します。

会計処理上は、無形固定資産の減価償却という形で最大20年の間に償却していきます。

税務上は5年となるため、会計と税務上で期間が違うことには注意しましょう。

営業権は無償譲渡できるの?

結論を言うと、営業権は無償譲渡できますが、無償譲渡する場合でも税金がかかるケースがあります。

例えば、無償で事業譲渡をした場合には、対価として現金を受け取っているわけではありませんが、税務上は譲渡した事業の時価に対して法人税がかかります。

譲渡先が個人の場合、会社と関係があれば賞与、雇用関係にない人であれば寄付金の扱いになるのです。また、相手先が法人の場合には寄付金として扱います。

まとめ

本記事では、M&Aを検討する際には必ず知っておかなければならない営業権について説明しました。

今後、会社の売却を検討しているのであれば、営業権をどれほど高められるかで自社の売却額が変わります。

M&Aを検討する際には、専門家に相談することも大切ですが、何より経営者自身がM&Aの見識を高める必要があります。

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