飲食店の中でも居酒屋は利益率が高いと考えられています。したがって、独立して飲食事業を営みたいと考えている場合、居酒屋は魅力的な選択肢の1つです。
立地や集客、コンセプトによっては大きな儲けを出すことも夢ではありません。
そんな居酒屋の開業や経営について、具体的にどういったことに気をつければいいのかを解説します。必要な資格や届け出、開業準備などについて把握することで、開業までのイメージがより明確になるでしょう。また、居酒屋経営者の平均年収についての情報もまとめているのでご参考になさってください。
<<あわせて読みたい>>
メタバースとは?メタバースの語源や意味、具体例をわかりやすく解説!
DXとは?なぜDXと略すの?デジタルトランスフォーメーションの意味や定義をわかりやすく解説
目次
居酒屋経営の魅力と将来性
居酒屋を開業・経営する場合、経営者は多忙を極めます。
店主として、人材募集や集客、仕入れに至るまで全て自分でこなさなければならず、店舗で起きること全てに責任を負うことになります。したがって居酒屋を経営する際は、様々なリスクを背負う覚悟が必要なため、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、居酒屋の経営にはやりがいや魅力もあります。居酒屋のやりがいや魅力とともに、居酒屋経営の現状や将来性についてお伝えします。
やりがいと魅力
居酒屋の経営者は、店舗のコンセプトや運営方針の決定やメニュー開発、内装やデザインの手配を行う必要があります。さらに食器や備品の発注や食材の仕入れ、人材の募集まですべて経営者がこなさなければなりません。
居酒屋の経営者の仕事はとても多いですが、その分やりがいも大きくなります。なぜなら、自分の責任において店舗を切り盛りし、すべての決定権を持つからです。事業をゼロから立ち上げることは、大きな魅力とやりがいをもたらします。
居酒屋経営の現状と将来性
「外食産業全体が衰退している」とする見解や、「外食産業は安泰だ」とする見解など、飲食業界全体の将来性には様々な見解があります。しかし、飲食産業全体の将来性を悲観する必要はありません。なぜなら、飲食産業が存在しない社会は考えづらく、飲食産業はどのような形であれ生き残っていくと考えられるからです。
さらに、居酒屋は粗利が大きく、飲食産業のなかでも利益率の大きな商売であるため、経営やマネジメントによっては大きく利益を上げられる事業だと言えます。
居酒屋経営者の平均年収はどれくらい?
居酒屋を経営すると、実際にどれくらい儲かるのでしょうか? 居酒屋経営は人生をかけたチャレンジです。それに値するだけの報酬が得られるのかどうかわかれば、現在の収入と比較して将来の生活をイメージしやすくなります。
平均年収
残念ながら居酒屋だけを抽出した統計はありませんが、飲食店経営者の平均年収の統計があるためこちらを参考にしましょう。経済専門誌が実施した調査によれば、飲食店経営者の平均年収は560~627万円でした。
しかし、居酒屋経営はそのコンセプトやマネジメントによって年収が大きく変わり、居酒屋経営者の年収は300~2700万円とされています。
たとえば、複数店舗を経営している経営者は、年収1000万円を超えることも珍しくありません。一方、1店舗だけの場合はサラリーマンと同等か、それ以下のケースもあります。
どんな人が稼いでいるのか
居酒屋で利益を上げる人の特徴は、基礎的なマネジメント能力があることです。マネジメント能力があれば、複数の店舗を経営することもできます。
また、経営者にとって税金や経費の知識は必要不可欠です。したがって、数字に強い経営者は売り上げや利益をしっかりと把握して対策を打てるため、大きく利益を上げられます。
居酒屋を経営するメリット・デメリット
居酒屋を経営するメリットとデメリットを解説していきます。
居酒屋を経営するメリット
居酒屋の経営は他の飲食店経営に比べて、下記のような多くのメリットがあります。
- 利益率が高い
- 売り上げの多くが現金回収できる
- 小規模店舗で採算が見込める
- 価格競争になりにくい
- メニューによる差別化ができる
- リピート客による経営の安定化
売り上げの多くが現金回収できると資金がショートしにくくなるため、大きなメリットと言えます。
居酒屋を経営するデメリット
一方で、居酒屋経営にはデメリットも存在します。
どんな商売にも言えますが、顧客獲得がうまくいかなければ商売は成り立ちません。居酒屋経営で顧客を獲得するためには、立地が重要なポイントになります。したがって、居酒屋経営の成否は立地によるところが大きいという点がデメリットです。
さらに、長時間労働や食中毒のリスクが常に付きまとうこと、酔っ払った客への対応もデメリットになります。
居酒屋を経営する2つの方法
居酒屋を経営するためには、まず開業しなければなりません。その方法は主に2つの方法があります。
1つは自分でゼロから自分で開業する方法で、もう1つがフランチャイズです。フランチャイズとは個人や法人が本部企業と契約し、店舗経営をするビジネスを指しています。
それでは、自分で居酒屋を開業する方法とフランチャイズ、それぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
自力で居酒屋を開業する
自分の力で居酒屋を開業するメリットとデメリットを解説します。
メリット
自力で居酒屋を開業するメリットは、自分の好きなように設計できることです。自分の思い描いた店舗が繁盛し、多くのお客様に受け入れられるのは商売の醍醐味でしょう。
他にも、フランチャイズで発生するようなロイヤリティが存在しない点もメリットです。
デメリット
自力で開業するデメリットは、開店前に膨大な準備作業が必要なことです。
店舗の取得から各種届け出、店内の改装、仕入れ先の決定、人材の募集などありとあらゆる作業をすべて自分でこなす必要があります。
また、フランチャイズのように味を一定に保つことが難しいため、顧客にどのように評価されるのかも未知数です。
フランチャイズで居酒屋を開業する
簡単に言うと、フランチャイズで居酒屋を開業するメリット・デメリットは個人で開業するメリット・デメリットの真逆です。
それでは、フランチャイズのメリット・デメリットを解説していきます。
メリット
フランチャイズで開業するメリットは、開業前の準備でフランチャイズ本部のサポートが受けられる点です。さらに、メニューを自分で開発する必要もありませんし、社員教育でもかなりの部分で本部から支援があります。したがって、開店準備は個人に比べて非常に容易です。
また、ネームバリューもフランチャイズの名称が使えるため心配ありません。コンセプトもパッケージ化されたフランチャイズ本部の運営システムを導入することになります。
デメリット
フランチャイズのデメリットは、メニューや店舗作りで独自性を出せないことです。
また、本部に支払うロイヤリティなどの費用も発生し、その金額はフランチャイズ本部によって決定されます。
このように、安定している代わりに自由度が少ないのがフランチャイズのデメリットです。
居酒屋を開業するための資金や資格、手続きは?
居酒屋を開業するためには資金や資格が必要です。さらに、様々な手続きも必要となります。
居酒屋開業に必要な資格
居酒屋を開業するには、食品衛生責任者の資格が必須です。
さらに、30人以上の席数を考えている場合、防火管理者の資格も必要になります。しかし、調理師免許は居酒屋経営には必要ありません。
食品衛生責任者は必須
食品衛生責任者の資格がなければ、居酒屋の経営どころか開業もできません。食品衛生責任者は飲食店の各店舗に、必ず1名ずつ配置するように法律で定められています。ちなみに、食品衛生責任者は講習を受けるだけで取得でき、その講習は各地で開かれているので、早めに講習を受けておきましょう。
食品衛生責任者の講習会が免除されるケースとは
食品衛生責任者の講習を免除されるケースもあります。下記の資格を所持している場合は、免除されますのでチェックしておきましょう。
- 栄養士
- 調理師
- 製菓衛生師
- と畜場法に規定する衛生管理責任者
- と畜場法に規定する作業衛生責任者
- 食鳥処理衛生管理者
- 船舶料理士
- 食品衛生管理者、もしくは食品衛生監視員となることができる資格を有する者
これらの資格を持っていれば、食品衛生責任者の講習を受ける必要はありません。詳しく知りたい場合は店舗予定地を管轄する保健所に問い合わせるとよいでしょう。
30人以上収容できるなら防火管理者も必要
収容人数が30人以上の飲食店では防火管理者を置かなければなりません。
防火管理者には甲種防火管理者と乙種防火管理者の2種類があり、前者は2日間、後者は1日間の講習を受けることで資格を得られます。どちらの資格を取得する必要があるかは、延べ床面積で決定されるため、確認しておきましょう。
詳しくは店舗予定地近隣の防災協会に問い合わせてみてください。
居酒屋開業の主な費用
飲食店を開業するには開業にかかる費用以外にも、運転資金を6ヶ月分用意することが一般的です。開店にどれくらいの費用がかかるのか整理して検討しましょう。
物件取得
物件取得費用は家賃だけでなく、契約時に支払う保証金や仲介手数料、礼金、前払い家賃などが必要です。住宅を借りる場合とは異なり、居酒屋の物件には必ず保証金が設定されています。
保証金は家賃の半年分から1年分であることが大半なため、高額な資金が必要です。居酒屋経営では、立地や清潔感などが何より重要になります。開業を急ぐより、満足のいく物件を探すことが重要なポイントです。
内装・外装・設備・備品購入など
物件を確保した後は内装や外装、設備、備品を用意していきましょう。これらのなかには厨房機器や看板施工、内装設計の費用も含まれています。また、居酒屋のコンセプトはさまざまですので、店舗によって必要とする設備も変わります。居抜き物件を利用するケースでも、設備が古すぎないかチェックしましょう。
人材募集
人材募集にかかるお金といえば求人広告費用です。しかし、それ以外にユニフォームや交通費など細かな費用がかかってきます。時給の計算についてもシビアに行うようにしましょう。飲食店は近年、エリアによっては時給が高騰しているため、最低賃金で計算していると人材確保がままならないケースがあります。
他にも研修にかかる時間や費用、離職率などを計算に入れておかなければなりません。
その他費用
その他にも、居酒屋の開業にはさまざまな費用がかかります。最終的には最初に計画した費用の3割増しになると考えておきましょう。居酒屋では店の規模によって簡易な金庫で代用できますが、セキュリティを考えればレジの導入も検討することをおすすめします。
他にも、新規オープンを近隣に知らせるためのチラシや販促費用、ホームページの作成費用なども計算に入れておいたほうがいいでしょう。資金不足で廃業とならないよう、余裕を持って準備しましょう。
居酒屋開業のための手続き
居酒屋をはじめとした飲食店の開業には、飲食店営業許可が必要となり、保健所に提出して許可を受けます。
厨房や食器棚、空調、トイレなどさまざまな規定があり、保健所で事前相談してから申請に移るのが一般的です。
自治体によって異なりますが、申請には手数料が必要で、おおよそ1万5000円から3万円かかります。
申請は郵送では受け付けておらず保健所に出向く必要があり、申請後、保健所職員による店舗検査が行われ、営業許可が下りる流れです。スムーズに終わらせるのであれば、店舗の工事が終わる2週間前に申請しておくことをおすすめします。
居酒屋を開業するための流れ
居酒屋の開業前にどのようなことをやっておけばいいのか整理しておきましょう。
コンセプトを固める
居酒屋を開業するためにはまず、店舗のコンセプトを固めます。コンセプトとは誰にどのような商品やサービスを提供するかという、店舗の経営戦略そのものです。
「仕事帰りに軽く1人で立ち寄れる」「グループで気兼ねなく飲める」など具体的なコンセプトを決めましょう。具体的に決めることで、立地や内装も自然とイメージしやすくなります。
資金調達
居酒屋を開業するために必要な金額としては物件取得費用、内装や設備費用などすべて合わせて1000万円ほど用意しておくのがベターです。開業資金を調達する方法は「自己資金」や「金融機関からの融資」、「各種補助金」が考えられます。
したがって、自己資金でまかなえない場合は、銀行の融資に頼ることになります。また、各種補助金を受け取れるのは開業してからで、開業前には受け取れないので注意しましょう。
メニュー考案
居酒屋が繁盛するかどうかはメニューに大きく左右されます。コンセプトに合ったメニューを開発して、適切な価格で提供しましょう。どのようなターゲットに提供するのかをイメージしながらメニュー作りを進めたり、競合店舗や近隣のメニューも参考にすることをおすすめします。
また、お客様はメニュー表を通してメニューを決めるため、メニューだけでなく、メニュー表も重要です。
宣伝広告
店舗の宣伝広告は新規顧客獲得にとって非常に重要です。ホームページやSNS運用を通して集客するとともに、地域紙への広告出稿やチラシの配布、ポスティングなどで知名度の浸透を図りましょう。クーポンの配布なども効果的な手法です。
店舗運営の練習を兼ねてプレオープンを行うのもよいでしょう。プレオープンでは飲食店に精通している人や、的確な意見をしてくれる人を招くことで、運営に関する助言や口コミが期待できます。
スタッフの採用
スタッフの採用には数ヶ月の期間を要します。
アルバイトは1ヶ月前、正社員は3ヶ月前を目安に募集しましょう。必要なスタッフの人数は店舗によって異なります。小さな居酒屋の場合は調理スタッフ、配膳スタッフだけで対応可能ですが、大きな店舗であればそれに見合った数のスタッフが必要です。
居酒屋の経営を成功させるポイントとコツ
居酒屋を成功させるポイントは下記の4つです。
- コンセプト
- 立地
- 集客
- 接客
それでは1つずつ解説していきます。
居酒屋の基本となるコンセプト
居酒屋の土台になるのがコンセプトです。
「どんな客層をターゲットにするか」と「どのような料理を提供するか」という2つが基本的な方向性を決定します。5W1Hを応用してコンセプトを考えると組み立てやすくなるはずです。安くて多いメニューで回転率を重視するのか、それとも品質の高さと高価格帯で勝負するのかなど、さまざまなコンセプトが考えられます。
集客の要である立地
立地は居酒屋の開業に最も重要なポイントで、立地場所はコンセプトとマッチしている必要があります。
繁華街や人通りの多い場所は集客が容易ですが、家賃が高額になりがちです。さらに、競合店も多くなります。
工夫が必要な集客
居酒屋でどのように集客するかの見通しも立てておきましょう。新規のお客様が来なければリピート客がいつまでもできません。
集客には宣伝や広告、公式サイト以外でも、メニューやキャンペーンを工夫することも1つの手です。目玉や名物となるメニューがあれば、それだけで口コミが広まる可能性があります。
明るくハキハキとした接客
居酒屋ではメニューや店の雰囲気以上にスタッフの接客が重要で、「接客は居酒屋の顔」とすら言えます。店舗のコンセプトにもよりますが、明るくハキハキとした接客が望ましいでしょう。したがって、スタッフの教育は居酒屋経営者にとって重要な仕事になります。
居酒屋経営で陥りがちな失敗
居酒屋経営でやりがちな失敗が下記の3つです。
- 共感できない店舗作りやコンセプト
- 計画性のない資金計画
- 集客に工夫がない
それでは1つずつ解説していきます。
共感できない店舗作りやコンセプト
もっとも多い失敗の1つとして、共感できない店舗作りやコンセプト作りが挙げられます。「自分の理想のお店を作りたい」という経営者の思いが強すぎるせいで、ターゲットにする客層に適した商品やサービスが提供できなくなるのです。
このような失敗をしないためには周りの意見を聞いたり、客層となるターゲットを明確にしておく必要があります。
計画性のない資金計画
居酒屋の開業に多額の費用が必要になります。数百万円で開業できるケースもありますが、多くの場合では1000万円かそれ以上かかるため、開業する際に綿密な資金計画を立てておきましょう。
適切な資金計画を立てておかないと、想定より予算がオーバーしてしまい資金がショートする事態になりかねません。
集客に工夫がない
居酒屋経営を安定させるためには、効果的な集客が必要不可欠です。ホームページやSNSの運用、ポスターやチラシ、クーポンの配布などさまざまな工夫をしましょう。
まとめ
居酒屋を開業するには自分の力で開業するか、フランチャイズで開業するかという2つの選択肢があります。自力での開業はやりがいがありますが、ある程度のリスクを負う覚悟が必要です。一方、フランチャイズでは安定して運営できる可能性が高くなりますが、自由な経営は難しくなります。
居酒屋の開業や経営では様々なポイントに気をつけなければならないため、経営のための勉強や、実際の経営者に話を聞くなど、事前にできることはしておくことがおすすめです。