「ビジネスで成功するために、まず人脈を作った方がいい」と考える人は多いようです。
確かに、新しいビジネスを起こすとき、会社で新しいことを始めるとき、社内外に関わらず、協力してくれる人は大きな支えになります。
経験豊かな先人の話に、いろいろなヒントを得ることもあるでしょう。
特に新たなマーケットに出ていくときや、知らない場所でビジネスを始めるときには、多少なりとも知見のある人の存在は心強く感じます。
成功者と言われる人の多くは、この「人脈」を上手に生かしているように見えます。
素敵な知り合いがいて、ふっと秘密を教えてくれて、ビジネスを引き揚げてくれる・・・
そんなイメージで感じている人もいるのではないでしょうか。
ところが、一念発起して人脈を作ろうと思いたち、パーティーに行ったり異文化交流会に顔を出しても、実際にはなかなかうまくいくものではありません。
見識のある人に無策で「会いたい」と申し込んでも、断られることのほうが多いでしょう。
影響力のあるインフルエンサーに一方的に連絡をしても、返事すら貰えないのが通常です。
人によっては、他人を利用するようで後ろめたさを感じる人もいるかも知れません。
人脈づくりが目的の自分に「薄っぺらさ」すら感じることもあるものです。
本記事では、人脈作りのコツについて解説していきます。
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目次
「人脈作り」は実は難しい
「人脈」としてアテにされる側の人も、この「人脈作り」に必死になるビジネスパーソンに良い印象を持っている人は、ほとんどいません。
私自身、東南アジアでビジネスをしていますが、日本から
「情報交換のためにお会いできませんか?」
「東南アジアに進出したいので、いろいろ教えてください」
という人からたくさん連絡が来ます。
この「表敬訪問」は相手が個人でも会社でも、嫌がられることが少なくありません。
当たり前ですが、誰しも一方的に無駄に時間を奪われるのは愉快ではないのです。
ある会社では「ビジネスにならない訪問お断り」としています。
「表敬訪問は有料にします」と宣言している会社もありました。
特にグローバルのマナーでは、この「フワッとした情報交換」は嫌われるようです。[1]
名刺の数やFacebookの表面上の「友達」が増えていっても、残念ながら、それがビジネスに直接役立つことも、滅多にないでしょう。
相手にとって記憶に残らない出会いであれば、極論すれば会っていないようなものなのです。
では、どうしたら何者でもない人が、効率的に人脈が作れるのでしょうか。
人脈作りに対して、「残酷すぎる成功法則」(エリック・パーカー著)には非常に面白い記述が出てきます。
私たちは仕事と私生活をはっきり区別しているつもりだ。ところが人間の脳はじつはそうではない。
[2]「残酷すぎる成功法則」エリック・バーカー[著]・竹中てる実[訳]・橘玲[監訳]より
つまり「自分のトクになる人脈を作ろう」と思えば思うほど、その魂胆は見透かされ嫌がられ、うまくいかないのです。
シリコンバレー最高のネットワーカーの「術」は実にシンプル
では、ネットワークづくりの上手い人はどう人脈を作るのかを見てみましょう。
シリコンバレー最高のネットワーカーに「人脈作り」の秘訣を聞いてみると、さらに意外な答えが返って来ます。
答えているのは、2010年のフォーチュン誌で「シリコンバレーで最高のネットワーカー」と評されたアダム・リフキンさんです。
このかたの方法は驚くほど、シンプルです。
ところがじつは、アダムは実はシャイで内向的な人間である。それから、めったにいないようないい人だ。皆からは「パンダ」というニックネームで呼ばれている。
パンダのネットワークづくりの秘訣は何かと言えば、友だちになる、ただそれだけのことだ。友だちになる。ネットワークづくりは、誰もが磨ける技であるだけではなく、じつはあなたがすでに知ってる技だったのだ。
[3]「残酷すぎる成功法則」エリック・バーカー[著]・竹中てる実[訳]・橘玲[監訳]より
つまり、人間は実のところ、仕事とプライベートを分けて考えられない。
だから、実のあるネットワークを作ろうと思うのなら、私生活でも仲良くできるような「友達になる」しかないというわけです。
東南アジアでの仕事をしていると、実に多くのビジネスがこの「友達ベース」で回っていることに気づきます。
ビジネスパートナーを選ぶ基準が「友達だから」「一緒に仕事しやすそうだから」という感じなのです。
実際にマレー系の方々と仕事していると、仕事の前にお茶を飲んで、世間話をして仲良くなってから商談に入ったりすることが、少なくありません。
友達になるには幼稚園に学んでみる
では友達になるには一体どうしたらいいのでしょうか。
「残酷すぎる成功法則」では、ロバート・フルガムの著書
「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」(河出書房新社)
を紹介しています。
幼児は実はこの人脈づくりの術を熟知していると言うのです。
ここで描かれるのは主に友情の基本原則です。
幼稚園の時どうやって友達を作ったでしょうか?
ちょっと思い出してみましょう。
「友達になる」3つの原則
1.「やあ、君はアイアンマンが好きなの? ぼくも好きなんだよ」
あなたが遊びたいと思っているおもちゃで遊んでいる男の子がいる。その子のところに行って、自己紹介をしよう。誰でも自分と似ている子を友だちに選ぶものだ。
正直なところ、この原則は、空恐ろしくなるほど大人の社会で通用する。調査結果によれば、人は、自分と似た名前の人に好感を持つという。
[4]「残酷すぎる成功法則」エリック・バーカー[著]・竹中てる実[訳]・橘玲[監訳]より
名前が似ているだけで共通点となるとは驚きです。
人は誰しも一つくらいの共通点があるでしょう。
もし見つからなければ、次のステップが有効です。
2.ほかの子の話を聴いて、励ます
幼稚園のほかの子たちと自分のどこが似ているか見つけたいなら、その子たちに質問をして、彼らの話に耳を傾けよう。
[5]「残酷すぎる成功法則」エリック・バーカー[著]・竹中てる実[訳]・橘玲[監訳]より
質問して、誰かの話を聞く。
それだけで関係が深まるのは確かに事実です。
私はインタビュアーとして多くの人に話を聞いてきましたが、面白いことにインタビューした後にぐっと相手との距離が縮まることがあります。
インタビューは「質問」の繰り返し。
それがきっかけで仲良くなることができるのです。
何人かとは親しい友達として今でも付き合っています。
これは外国人相手にも有効です。
質問し、相手のことを理解しようと努力すると、好感を持ってもらえることは少なくありません。
3.ギバーになって、おやつのトゥインキーを分けあう
[6]「残酷すぎる成功法則」エリック・バーカー[著]・竹中てる実[訳]・橘玲[監訳]より
ここも説明不要かもしれません。
子どもたちは、お互いに助けたり、何かを貸してあげたり、おやつを分けたりして、仲良くなることができます。
純粋な友達は何がなくても互いに助け合うことを知っています。
そうすることで最もより良い人間関係が作れると言うのです。
外国人の場合なら、簡単な日本語を教えて、と言われることもありますし、翻訳を頼まれるかもしれません。
こうした頼みに答えていると、だんだん信頼が増えていき、友達になることができるのです。
ただ、このときに相手が欲していないものを押し付けると、単に嫌がられることもあるので注意です。
本書には人脈作りのコツがさらにでていますが、意外にシンプルで、誰でもすぐに始められそうです。
物事の真理は決して難しいものではなく、単純なことが本質であることが多いものです。
ビジネスパーソンとしてぜひ、この原則を再確認してみてはいかがでしょうか。
参考
[1]ダイヤモンド・オンライン「言いづらいけど迷惑…偉い人の「表敬訪問」」
https://diamond.jp/articles/-/239793
[2]〜[6]「残酷すぎる成功法則」エリック・バーカー[著]・竹中てる実[訳]・橘玲[監訳]より