メジャーリーグにおいて前人未到の記録を次々と塗り替える大谷翔平選手。
その異次元のパフォーマンスを支える揺るぎない精神性や行動規範は、今やトップアスリートのみならず、第一線で戦うビジネスパーソンにとっても注目の的となっています。
大谷選手の圧倒的な成果を支える考え方と、組織マネジメント理論「識学」には、どのような共通点があるのか。
今回は、大谷選手の振る舞いやエピソードを識学的視点で分析し、一般のプレイヤー層でも取り入れられる「結果を出し続けるための思考法」について解説します。
目次
識学の土台:チームへの貢献が、結果として個人を豊かにする
ー 今年も大谷翔平選手の活躍が世界中で大きな話題となりました。
異次元のパフォーマンスを継続的に叩き出し、結果を出し続ける姿から、何かを学びたいと感じているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
識学と考え方の共通点はあるのでしょうか。
吉原:まず前提として、私は大谷選手の考え方を直接お聞きしたこともありませんし、「識学との共通点はこれですね」と断言してしまうのも、「アホか!」みたいな感じですが(笑)。
違和感を抱かれてもいけませんので、そこは慎重にお話ししたい部分ではあります。
一人のコンサルタントから見て、識学的に見れば「大谷さんはこう考えていらっしゃるのではないか」と勝手に思っているお話をさせていただきます。
ーはい、お願いします。
吉原:まず識学では、物事を「チーム戦で考えますよね」ということをよくお伝えします。
もちろん一個人として、「自分の人生を豊かにしたい」とか「自分のキャリアアップをしていきたい」といったように、「自分が、自分が」という気持ちは、どなたも持っている感覚だと思います。
ですが、現在の社会生活においては、「チームの一員として個人の物事を実現すること」を求められています。
ー チームには大きな目標があり、そこに所属する個人のやるべきことが割り振られるということですか。
吉原:そうです。
自分自身が豊かになるためにも、まずは「チームが勝つこと」を優先する。
個人を優先するのか、それともチームを優先するのか。
ー 例えば、ヒットを打って出塁すれば、翌年の評価にも値するでしょう。
ですが一方で、際どいボールを見逃して終わる、あるいはデッドボールを受けてでも出塁する、といった場面でいうと、その時、その行動が「チームにとってプラスなのか」、それとも「個人にとってプラスなのか」ということですね?
吉原:もちろんチームの戦略や戦術によって個別の事象は異なると思いますが、考え方の根本として、チームを優先するのか個人を優先するのか。
こうした大きな視点で見たとき、識学の考え方は「完全にチーム優先」なんです。
チームがいかに勝つかという方向に考え方を整えていく。
これこそが、非常に価値のあることなのです。
忘れてはいけないのは、「チームがあって、自分がいる」という土台の考え方ですね。
チームに貢献し、チームを優先しようと思えば思うほど、結果として個人としての自分自身も非常に豊かになってくる。
識学はそのような考え方を提唱している会社です。
二刀流という選択も「チームが勝つため」
吉原:大谷選手を見ていると、非常にチームのことを考えていると感じます。
大谷翔平選手がアメリカで受けているインタビューなどの内容を見聞きした際の話ですが、なぜ彼が「二刀流」を続けているのかという点についても、識学的な視点が隠されていると感じます。
もちろん、「何が何でも二刀流をやりたい」というご本人の思いもあるとは思います。
ですが、大谷選手が二刀流でプレーしているのは、「チームにとってプラスになるから」です。
だからこそ、チーム側もそれを許可し、大谷選手もそれに応えて実行している。
つまり、すべてはチームが勝つためであって、単に自我を満たすためにやっているわけではない、ということなのです。
象徴的だったのは、大谷選手が1回目の手術をされた際のことです。
当時はエンゼルスに在籍されていましたが、バッターとして素晴らしいパフォーマンスを出していたため、周囲では「もうバッターに専念してもいいのではないか」という議論も起きていました。
その際、大谷選手は非常に強い危機感を持たれていたようです。
これは私の記憶に基づく話ではありますが、ピッチャーとして復帰するタイミングで「今期ここで結果を出さなければ、二刀流のチャンスは失われるだろう」という認識を明確に持っていたと見受けられます。
そこでしっかりとピッチャーとしても結果を出したからこそ、翌年も「二刀流でいきましょう」という判断をチーム(エンゼルス)も下すことができました。
こうしたエピソードからも、チームと個人の連動は「チームに貢献するために自分は何をすべきか」という考え方を一貫して持たれているのではないかと感じます。
ー 確かに、ワールドシリーズ優勝時のインタビューでも、「チームのために何ができるか」という言葉が随所にあったように感じます。
吉原:延長戦を何十回もこなした翌日に、ピッチャーとバッターの両方で再び出場するといった場面もありましたね。
もし自分の都合だけを優先するのであれば、「いや、今回は休みます」という判断があってもおかしくありません。
こうした姿勢は大谷選手だけではありません。山本由伸選手も同様です。
山本選手が完投した翌日の様子を見て、私は泣きそうになりました。
山本選手は監督に対し、自ら「自分で行ける」と志願していたのです。
無理をすれば怪我をするリスクもあるにもかかわらず。
ー 今無理をすることが、来シーズン以降にどう作用するのかという不安もあったはずですよね。
それでも山本選手は、「チームのために献身的になる」というスタンスで物事を捉えていました。
その結果、MVPなどの素晴らしい評価に繋がっているんです。
「自分が自分が」ではなく、「チームのために何ができるか」という感覚を常に持ち合わせている。
これは日本という国の文化が土台にあるのかもしれませんが、非常に識学的な考え方に通じるところがあります。
「不必要な恐怖」という妄想を排除し、目の前のことに集中する
ー 大谷選手の振る舞いで個人的に印象に残っているのが、試合中に対戦チームのファンから野次を飛ばされても、全く動じることなく受け流していた姿です。
どのような思考によるものと考えますか。
吉原:識学では、感情的な反応によって生まれる迷いを「不必要な恐怖」と呼びます。
「周りからどう思われているだろうか」といった、自分自身の妄想によって不安を膨らませてしまう状態です。
こうした感情は、排除しようと思ってもなかなか難しいものです。
では、どうすればいいのか。それは「目の前のことに集中すること」です。
少し話はそれますが、大谷選手がロサンゼルス・ドジャースに移籍した初年度を振り返ってみてください。
3月、4月頃、通訳の方に関する非常にショッキングな出来事がありました。
あの時期は、日本のメディアですら「大谷選手も何か関わっていたのではないか」といった様々な憶測を立て、非常に厳しい視線を向けていました。
プライベートな領域までメディアに追いかけられるような、大変な状況もありました。
シーズン序盤は本当に過酷な状況だったはずです。
しかし大谷選手は、そうした周囲の騒音から離れ、「今、目の前のプレーに集中する」という姿勢を貫きました。
「不必要な恐怖を自分で妄想を膨らませない」ということを識学の視点で見ても、彼は本当に徹底されています。
気にしても仕方のない外部のノイズを無視し、目の前の結果にだけ集中した。
その結果が、50-50やワールドシリーズ優勝という最高の形に結びついたのだと思います。
「すげえな、やっぱりそうだよね!」と感嘆せざるを得ません。
識学において「結果視点」および「結果に集中すること」は非常に重要であり、私自身も日々その大切さを実感しています。
私は現在、マネジメントとして上のポジションに就いていますが、日々さまざまな「外音(ノイズ)」が入ってきます。
そうした状況下では、「自分は今、どこに集中すべきか」「何を結果視点として置くべきか」と一瞬迷ってしまうことも正直あります。
しかし、そんな時こそ「識学の通りに行くぞ」と自分を律します。
「自分は今、いつまでに何を実現するためにマネジメントをしなければならないのか」と頭を整理し、関係のないノイズを全て無視します。
「やるべきことはこれとこれだ」とタスクを絞り込んで突き進むと、自分でも驚くほどの集中力が発揮されます。
そうした姿勢で取り組むことで、結果も自ずと伸びていくものです。
結局、結果視点・結果明確、期限をもって集中するということは、大谷選手と自分を比べるのは恐縮ですが、ロジックは同じだといえます。
もしこの考え方がなければ、通訳の方の騒動があった際、メンタルはぐちゃぐちゃになっていたはずです。
しかし彼は結果的に、揺るぎない成果を出しました。
それは結果視点で行動した結果だと考えられます。
あえてタスクを圧縮し、迷う隙をなくす「二刀流の思考法」
ー 「ピカイチ」と感じる大谷翔平選手の特徴や行動は何ですか。
一般のプレイヤー層でも取り入れられそうな思考法はありますか。
吉原:大谷選手の素晴らしさは「ほぼすべて」ですが、あえて挙げるとすれば、まだ彼が怪我の影響などでピッチャーができず、バッターに専念していた時期のことです。
インタビュアーから「バッターだけに専念している今の方が、集中力が増すのではないですか?」という質問を受け、彼は「そうでもない」と答えていました。
バッターだけに専念すると、時間的な余裕がある分、かえって色々なことを考えてしまい、欲張りにもなってしまうというのです。
大谷選手によれば、二刀流としてピッチャーもやるとなると、物理的にスケジュールがぎゅっと圧縮されます。
さらに、ケアすべき事項も大幅に増えることになります。
そうなると、余計なことを考えている暇がなくなり、目の前のタスクに集中せざるを得ない環境に身を置くことになります。
大谷選手は「その環境の方が自分には合っている」とおっしゃっていました。
これを識学的に考えると、一般のプレイヤーの皆様にとっても非常に重要な示唆があります。
私たちはよく、「仕事は短距離競争の積み重ね」であるとお伝えしています。
仕事においては、例えば1週間後という期限を切り、その1週間の成果のために全力で走ることが重要です。
期限が来たら結果を確認し、また次の1週間に向けて行動変化の意思決定を行い、再び走る。
この積み重ねで仕事を捉えていくべきなのです。
しかし、多くの人はその過程で「なぜこんなことになってしまったのだろう」といった余計な妄想を広げたり、成果に直結しない悩みにとらわれたりしてしまいます。
それらは全て、結果に対する「ノイズ」でしかありません。
意思決定を繰り返し、物事をシンプルに捉え、やるべきことを即座に特定する。
まずは1週間、目の前のことに集中できる環境をどう作るかが大事です。
大谷選手の場合、識学的に見ると、巨大なキャパシティを埋めるために、二刀流という極限の環境が「目の前に集中しやすい設定」として機能しているのだと考えられます。
バッターだけでは、彼の能力に対して環境的な負荷が足りないのでしょうね(笑)。
まさに「結果への集中」を極めた姿です。
先日、ある部長職のお客様と話をしていた際、仕事であれこれと迷いが生じ、意思決定ができなくなっていました。
その方は営業部門の責任者でしたので、私はこのようにアドバイスしました。
「結局、数字を求められているんですよね?ならば、それでいいじゃないですか。
その数字を達成するために、この1週間、売上目標をクリアするために何をするか。
それだけに集中して、他のことは一切見なくていいのではないですか。
クリアするためにするべきことをやればいいんですよ」と。
今、色々と気になっていることもあるかもしれませんが、成果という視点で見れば、それらは実はどうでもいいことなのです。
ー そうですね。余計なことを考えてしまうと、不安が膨らむ「負のスパイラル」に陥ってしまいます。
吉原:まさにその通りです。
ノイズを排除し、シンプルに結果だけを見据えて動く。僕もそういう考え方で明日から頑張るぞ!(笑)
まとめ
大谷翔平選手のように圧倒的な成果を出し続けるためには、周囲のノイズや自分の妄想から生まれる「不必要な恐怖」を捨て、徹底的に「目の前の結果」に集中する仕組みが必要です。
自分のキャパシティを限界まで活用してタスクを圧縮し、迷う余地をなくす。
そして、仕事を1週間単位の「短距離競争」と捉えて走り抜ける。このシンプルな思考法こそが、個人とチームの両方を豊かにする最短ルートとなります。
時代の雰囲気に流されることなく、シンプルな意思決定と思考法を身につけるきっかけを、本記事を通して掴んでいただければ幸いです。








