ボトルネックを解消したくても、原因が特定できなかったり、解消方法を詳しく知らなかったりと、なかなか解決できずにお悩みの方もいるのではないでしょうか。
業務の工程に問題があるにもかかわらず放置してしまっていると、リソースに対する本来の成果を得られないまま時間ばかりが経ってしまいます。
その結果、人件費をはじめとするリソースの無駄遣いになってしまう可能性があるでしょう。
この記事ではボトルネックの意味や原因、解消のためのステップを紹介します。
ボトルネックを解消する方法を社内に共有し、生産能力の高い企業を目指しましょう。
目次
ボトルネックとはどのような意味?
ボトルネックとは、業務のなかで停滞や生産性が低下する要因となっている箇所を指し、言葉を省略して「ネック」と呼ばれることもあります。
ボトルネックの具体例としては、製造業における部品の供給遅れや、リモートワーク下でのアナログ文化が挙げられるでしょう。
素晴らしい企画を思いついても、業務の妨げになっている要因、つまりボトルネックを解消しないままプロジェクトを進めていては業務に無駄が出てしまい、達成へのスピードが停滞してしまいます。
しかし、これを突き止めて改善すると、目標を効率よく達成することが可能です。
ボトルネックの由来
ボトルネックとは英語の「bottleneck」に由来しています。
そもそもボトルネックとは、瓶の最も細い首の部分を指す言葉です。こちらの部分があるため、瓶を逆さまにしても液体が一気に出ない構造になっています。
アウトプットを大量にしたいと思っても流れる量は限定されているため、そのことが転じてビジネスでも「全体のプロセスのなかで最も処理速度が遅くなる部分」として使われるようになりました。
ボトルネックの主な原因
ボトルネックを解消するためには、主な原因を知ることが重要です。
ボトルネックの主な原因は以下のとおりです。
- 作業が属人化している
- 労働力が不足している
- 業務がアナログである
順に解説します。
原因1.作業が属人化している
企業のなかで特定の従業員しかできない作業があると、その従業員が休暇をとっていたり業務を抱えていてすぐに作業ができなかったりする際、業務が滞ってしまいます。
専門性が必要とされる仕事や他者に共有されていない業務があることは、ボトルネックを生む原因となります。
チームや部署などの小単位で業務を共有し、マニュアルを整備すると、ボトルネックとなる原因をある程度避けられるでしょう。
原因2.労働力が不足している
業務量に対して適切な人員が当てられていないと、処理しきれないまま停滞する業務が生まれてしまいます。
例えば顧客対応をする企業であれば、仕事のレスポンスが悪いことでクレームとなり、本来不必要であったクレーム対応の業務が発生してしまうときがあるでしょう。
業務過多の環境で退職する従業員や休む従業員が多くなってしまい、さらなるボトルネックをまねいてしまうケースもあります。
原因3.業務がアナログである
承認にハンコが必要だったり、資料を紙に印刷しなければならなかったりと、企業ではアナログな業務を多く抱えている場合があります。
すると待ち時間が出てしまい、テレワーク時に進められなかったり外出先で作業できなかったりと、業務がスムーズに進みづらくなってしまうのです。
さほど時間をかけなくてもよいところに都度時間がかかってしまい、結果としてボトルネックとなります。
ボトルネック解消のためのTOC(制約理論)の流れ
ボトルネックを解消するための手法としてTOC(Theory of Constraints)理論(制約理論)があります。
TOC理論とはイスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット氏が提唱した理論で「業務やシステム全体のパフォーマンスは一番の弱点である制約条件によって決まるため、その部分を改善し続ければパフォーマンスは上がる」という考え方です。
TOCでは、ビジネスの過程におけるボトルネックに注目し、5段階で改善を目指します。順に見ていきましょう。
1.ボトルネックを特定する
ボトルネックを解消するためには、全体の業務のなかでボトルネックとなっている工程を特定しなければなりません。
一連の流れを把握し、各工程の作業や進捗、良い点や悪い点を書き出して「見える化」しましょう。
その際、以下のような「3M」と呼ばれるボトルネックを生み出す要素から考えると、早期の特定につながります。
- ムダ……不要な手順を続けていないか
- ムラ……個人のさじ加減に任されており、業務にばらつきがないか
- ムリ……人材やシステムなどのリソースが不足していないか
ボトルネックが正確に把握できてはじめて、あとの工程が活きるため、解像度を上げて要因を突き止めましょう。
2.ボトルネックの解消方法を検討する
ボトルネックを特定したら、次はアプローチする方法を検討します。
新たな設備の導入や人員の増加などのようなコストを生む方法ではなく、既存の設備や人員のまま工程をどのように構成しなおせばボトルネックが解消するのかを検討しましょう。
なぜなら、設備の導入には数百万円〜数千万円のコストがかかり、生産性の向上に対するコストパフォーマンスのバランスが取れない可能性があるからです。
例えば不要な作業があれば省いてしまい、エラーが発生しないかを一定期間観察しましょう。
ある工程にスキルの高い従業員が集まってしまっている場合には、各工程における作業員のスキルがバランスよくなるように配置を変更することも大切です。
3.他の工程をボトルネックに従属させる
ボトルネックとなるプロセスを特定し、ボトルネック単体での解決が難しいとわかった際には、ボトルネック以外のリソースや工程をボトルネックに従属させる方法が効果的です。
例えば生産ラインで特定の工程での業務量過多がボトルネックとなっている場合、すべての工程でボトルネックに合わせて生産量を減らします。
このことにより、過剰な在庫や次の工程への待ち時間を削減できるでしょう。
プロジェクトや作業工程のなかには、なかなか改善しづらいボトルネックが存在するケースがあります。
ボトルネックの改善に工数をかけるより、他を調整することで改善に向かうのであれば、そちらのほうが効率的です。
4.ボトルネックへの解消方法を強化する
ステップ2、3で新たな資金や設備投資をせず、現状でできる対策を検討・実施したあと、さらに改善の余地がある場合は、その改善方法を考えます。
ここでは、必要に応じて生産性向上のための人材育成や設備などへの投資をすることも検討しましょう。
例えば特定の従業員のスキル不足がボトルネックとなっているのであれば、教育の機会を設けたり、人材を増やしてカバーしたりするといった方法が考えられます。
また、工程の順番が生産能力の低下をまねいていると考えられる場合は、順番を入れ替えることもできるでしょう。
こうしてボトルネックの生産能力を上げられると、全体の生産能力も底上げできます。
5.経過を観察し新たなボトルネックに対応する
ステップ1〜4でボトルネックが改善されると、また新しいボトルネックが生まれます。
どのように改善されたのかを判断しながら、またボトルネックを特定し、1〜4を繰り返し行いましょう。
ボトルネックの発見と改善のサイクルを繰り返すと、ボトルネックが移動するたびにフローが大幅に改善し、プロジェクトの効率性や生産性の引き上げにつながります。
改善を繰り返すと、ボトルネックが人員や設備能力の不足といった内容から、市場の需要や運用上場といった内容に変わっていくはずです。
どのような部分がボトルネックになっているのかを特定しづらいケースも多々あるものですが、ボトルネックの改善には完璧な終わりがないという点を考慮し、TOCを続けていきましょう。
ボトルネックの解消に役立つツール
ボトルネックを効率よく解消するためには、意識するべき考え方や行うべきアクションがあります。
ここからはボトルネックを解消する際に役立つ考え方を紹介します。
ODSCを決める
ODSCとは、Objective(目的)、Deliverable(成果物)、Success Criteria(成功基準)の頭文字をとった単語です。
これらを再確認しながら目的や実行手段、成功基準を明確化すると企業が最終的に目指すゴールを確認できます。
ボトルネックを解消する前にまずはODSCを確認しておくことで、本来の企業の目標に立ち返り、本当にボトルネックの解消が得策なのかを検討できます。
もしも現在の工程が最終目標に効率的につながっていない場合、ボトルネックの解消ではなく、新たな手段をとることが先です。
このように、まずはODSCを確認し、目標に立ち返ることで効率的な目標達成につなげましょう。
工程表で全体像を把握する
ボトルネックを特定し、解消するためには、プロジェクトや生産を完遂するまでにどのようなタスクがあるのかを把握する必要があります。
そのため、ガントチャートをはじめとする工程を管理するための工程表を作成し、全体像を把握するようにしましょう。
工程表には以下のような内容を記載します。
- 工程ごとに必要な原料
- 時間
- オペレーション内容
工程表は共有フォルダや管理ツールなどで一元管理し、全員が同じものを確認できる環境を作ることが大切です。
工程表からあらかじめボトルネックとなりうるところを想定していれば、ボトルネック以外の工程も調整して全体の効率性を高められるはずです。
従業員のスキルマップを作成する
プロジェクトを効率よく行うには、目標達成のために必要なスキルがチーム内に揃っているのかを把握しておくことが重要です。
しかし、スキルは無形であるため把握しづらく、評価の仕方が人によって異なっている企業もあるかもしれません。
そのような状況を回避するため、従業員のスキルマップを作成し、社内の状況を見える化しましょう。
それにより、業務の割り振りや人材育成などを通してボトルネック解消につながります。
例えば業務知識が乏しい従業員がいれば、通信教育や書籍補助で自主学習をサポートしたり、適切な量の業務を与えて成長を促したりできるでしょう。
業務に属人性がある場合は、他の従業員に資格の取得を促してスキルを獲得させ、一部の工程を依頼することもできるでしょう。
このようにスキルマップを作成すると、人材面にフォーカスしてボトルネック解消の糸口が見つかると期待できます。
まとめ
企業として利益を最大化しようと目標を立てていても、ボトルネックがありスムーズに活動できなければ効率よく業務を進められなくなってしまいます。
するとリソースに対して適切に成果を上げられなかったり、業務が停滞して在庫が増えてしまったりと従業員のモチベーションが下がってしまう可能性があります。
そのような事態を避けるため、TOC理論を使ってボトルネックを解消し、リソースを最大限に活かして企業の発展を目指しましょう。