リーダーを評価する場合、「リーダーシップをどのように評価すればよいのか」悩むことも多いでしょう。
なぜなら、リーダーはマネジメントなど、定量的な評価基準を設けにくい役割も担うからです。
また、リーダーとして活躍している方のなかには「なにをやればリーダーとして評価してもらえるのか?」と感じるケースも多いかもしれません。
今回は、リーダシップの能力を評価するための「3つの測定尺度」について考察します。
リーダーとして必要な3つのスキルを磨くための手順もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
リーダシップ測定尺度とは?覚えておきたいリーダーの評価項目
リーダシップ能力を評価する場合は、下記3つの測定尺度が使えます。
- PM理論の「目標達成機能」で評価する
- PM理論の「集団維持機能」で評価する
- 「コンピテンシー(Competency)特性」で評価する
※PM理論とは……社会心理学者「三隅二不二氏」によって提唱された組織論。 リーダーシップにおいては「P:目標達成機能」(Performance)と「M:集団維持機能」(Maintenance)の2軸があると定義されている。 |
測定尺度①PM理論の「目標達成機能」で評価する
リーダーシップの測定尺度として、もっとも重要なのが「目標達成機能」です。
一体感がある組織でも、目標を達成できないようでは優秀なリーダーとはいえません。
目標を達成するには、リーダー自身が明確な方向性を示し、チームメンバーに個々がやるべきことを明確に理解させなければいけません。
そして、目標を課したあとはチーム全体やメンバーの進捗を定期的に確認し、必要に応じてサポートすることも求められるでしょう。
リーダシップの評価は「達成率」で評価されるべきで、プロセスが評価されることはあってはいけません。
結果に拘るリーダーこそが評価されるべきです。
測定尺度②PM理論の「集団維持機能」で評価する
2つめ目の評価尺度は、PM理論の「集団維持機能」です。
集団維持機能とは、チーム内や他部署とのコミュニケーションを良好に保ち、目標達成の妨げとなる要素を取り除くことを意味します。
また、集団維持機能を保つうえで、リーダーに求められる取り組みには次のような業務があります。
- チーム内のコミュニケーションを深める……目標達成や課題解決のために前向きな意見が出る組織を作る
- トラブル解決……チーム内や他部署との問題が発生したとき率先して調整する
- 組織管理……コンプライアンス違反が起きないように管理する。メンバーの目標達成率を常に意識し必要に応じてサポートする
リーダーに求められるのは、目標達成機能と集団維持機能との「バランス感」です。
どちらかが欠けているようでは優秀なリーダーとはいえません。
集団維持機能が働いているかどうかは、360度評価やクロス面談(他部署責任者による面談)での評価結果が参考になります。
測定尺度③「コンピテンシー(Competency)特性」で評価する
三つ目の測定尺度は「コンピテンシー(Competency)特性」です。
「コンピテンシー特性」とは、特定の業務を遂行するために必要な知識やスキルのことで、リーダー自身のパーソナルスキルといってもいいでしょう。
もちろん実務に関するスキルも重要ですが、リーダー自身にはチーム運営に必要な「管理能力」「指導能力」「共聴力」などのスキルも必要です。
他部署や経営層と交渉したり調整したりする能力も目標達成のために必要であり、リーダーに求められるスキルといえるでしょう。
リーダーシップに必要なスキルを磨くための3つのステップ
目標達成機能や集団維持機能など、リーダーシップに必要なスキルを磨くには、次のステップを踏むといいでしょう。
- STEP1:まずは自分に課せられた目標を達成する
- STEP2:部下を結果で管理できるようにする
- STEP3:チームとして成長できる競争環境を用意する
STEP1:まずは自分に課せられた目標を達成する
リーダーとして取り組むべきビジョンと目標が決まったら、ひたすら目標達成のために取り組む姿勢が重要です。
自分に課せられた目標を達成するためには、具体的なアクションプランを策定し実行していくことが求められます。
もし目標達成ができないなら、自ら改善策を見つけ出すなど、セルフマネジメント能力も必要になってくるでしょう。
また、リーダーがメンバーをサポートするには、自分自身のメンタル管理も含めた自己管理能力が重要です。
リーダーのセルフマネジメント力を磨くには、次のようなサイクルを回すといいでしょう。
- 抽象的な目標ではなく具体的なアクションプランを策定する
- タイムマネジメント能力を鍛える(限られた時間内での生産性向上を目指す)
- 自己評価を繰り返す
- ストレス耐性を鍛えるためにプライベートも充実させる
STEP2:部下を結果で管理できるようにする
目標が決まったら、部下ひとり一人を結果で管理するようにしましょう。
チーム目標を達成するにあたって、メンバーのプロセス評価は必要ありません。
よく「達成できなくても頑張ったプロセスを評価する」という管理者がいますが、プロセスを褒められたメンバーが、今以上成長することはないでしょう。
チーム全体を成功に導くには、部下が自己評価したプロセスではなく、あくまでも結果で評価するようにしましょう。
プロセスへの介入をやめれば、リーダー自身もメンバーのプロセス管理をする必要がなくなり、目標達成に必要な仕事により多くのリソースが割けるようになります。
リーダーには、「目標達成=あるべき姿」という意識をチーム内に浸透させることが求められます。
プロセスを褒めるのではなく、目標を大きく達成できたときだけ褒めるようにすれば、チーム全体が大きく成長し、結果として部下や組織の成功にもつながるでしょう。
STEP3:チームとして成長できる競争環境を用意する
次に重要なのは、チームとして成長できる競争環境を用意することです。
組織運営には競争はつきものです。
競争環境を成長の「糧」として活用できるかどうかは、リーダーの力量が試される部分でしょう。
リーダーはメンバー個々の状況を俯瞰的に管理し、それぞれにどのようなギャップがあるのかをよく管理しておくべきです。
その「メンバー間のギャップ」を埋めることが成長につながります。
実際のところ、部下のスキルや意識には大きな差はないものです。
優秀なメンバーと人並のメンバーとの差は、「他者との競争意識をどれほど持てているか?」によって変わります。
リーダーはチームやメンバーが成長するための健全な競争環境を提供し、適切に管理するよう心がけましょう。
優れたリーダーになるための評価ツール
リーダーシップを評価するには、さまざまな評価ツールを参考にするのがおすすめです。
メンバーはもちろん、リーダー自身を評価するには、かならず「他者評価」を基準にするようにしましょう。
自己評価でリーダーの良し悪しを評価してしまうと、評価者の主観が入りますし、人事上のミスジャッジをしてしまうリスクも発生します。
ただし、360度評価などの「部下からの意見」を聞きすぎるのはNGです。
評価ツールは、あくまでも参考情報として利用し、まわりからの声に反応しすぎないように注意しましょう。
専門のアセスメントツール
他者からの客観的な評価を受けるには、専門のアセスメントツールを利用するのがおすすめです。
アセスメントツールには、専門の会社が提供している評価ツールもあれば、リーダー育成を専門にしている研修会社などが提供しているツールもあります。
公平、かつ客観的な評価をしてもらうには、専門の会社が提供するツールがおすすめです。
ちなみに識学では、より定量的にリーダーの評価ができるよう「評価制度構築サービス」も提供しています。
参考:「識学の評価制度構築」
識学では、一般的に複雑・煩雑になりがちな評価制度を極めてシンプルに設計します。評価の根拠が「結果」という認識がズレない定量的なものになることから、評価に対する疑念や反発が起こらないだけでなく、上司から何を求められているかが明確に認識出来る為、社員は日々やるべきことに全力で集中できます。そして社員が自発的に「成果」を上げ続ける環境が醸成されます。また、運用もシンプルになるので、持続可能な運用が実現できます。 |
プロジェクト管理ツール
リーダシップに必要な「コンピテンシー(Competency)特性」を評価するには、プロジェクト管理ツールを活用するといいでしょう。
プロジェクト管理ツールとは、業務上のタスクを管理したりプロジェクト全体の進捗を管理したりするツールのことです。
リーダーにはメンバー個々の管理能力を含め、プロジェクトをゴールまで導く進捗管理能力が求められます。
プロジェクト管理ツールを活用すれば進捗の遅れが一目瞭然でわかるので、リーダーとしての管理能力を客観的に判断するのに役立ちます。
【無料で試せるプロジェクト管理ツール】
参考:識学総研「タスク管理ツールの導入時に大切な9つのポイント | 無料で試せるタスク管理ツールも紹介」
多面評価ツール(360度評価)
360度評価などの多面評価ツールも、リーダシップの評価ツールとしてはおすすめです。
ただし、多面評価ツールはあくまでも参考ツールとして活用するようにしましょう。
360度評価をすると、部下や他部署など多方面からの声が聞こえてきます。
部下からの意見を聞きすぎてしまい、リーダーの信念がブレてしまうことは避けなければいけません。
部下からの厳しいコメントに過剰反応してしまい、ご機嫌伺いをしながらモチベーション管理をしてしまうと、リーダーとしては最悪の結果を招きます。
多面評価は、あくまでも自己改善のヒントとして捉えるようにしましょう。
関連記事:識学総研「管理職が人気取りに?本当は怖い360度評価」
リーダシップ測定尺度でよくある質問
リーダーシップを評価する際には、さまざまな疑問や不安がつきものです。
例えば「達成意欲が強すぎて心理的安全性がない組織はどうなの?」などの疑問は、どこの職場でもある質問かもしれません。
目標達成意識が強すぎて心理的安全性がないチームはどう評価されるべきですか?
自由な意見が出ないチームは評価できませんが、一方で「なんでも言い合えるが達成意識が甘いチーム」は避けたいところです。
目標達成への緊張感を保ちつつ、前向きな意見を言い合えるチームが理想です。
本当の心理的安全性とは「何を言っても許される」ことではありません。
リーダーには、目標に基づきメンバーがやるべきことをルール化し、「余計な心配を取り除く」ことが求められるのです。
チームが達成しないとメンバーの成長はないですし、当然ながら給与の原資となる売上もあがりません。
言いたいことが言えても「お先真っ暗」な組織では意味がないのです。
リーダシップ評価はいつ行うべきですか?
スピード感が求められる現代では、年1回の評価では遅いでしょう。
リーダシップの評価は、四半期ごとなど短期間のスパンで行うのが理想です。
リーダーを管理するマネジメント層は、年間の評価スケジュールを事前に決めておき、具体的な面談スケジュールも共有しておくようにしましょう。
今回の記事で紹介したような評価ツールも参考に、より定量的に評価するのが効果的なリーダシップ評価のコツといえます。
結果が出ないリーダーでもプロセスで評価されるべきですか?
リーダーにプロセス評価は必要ありません。
リーダーに求められるのは目標達成のみです。
プロセス評価をすると「達成をしなくても許される」という安心感が出てしまい、成長が止まります。
また、結果ではなくプロセス評価をすると、リーダー自身のプロセス改善が甘くなり成長も鈍化します。
プロセス評価は参考情報にとどめ、あくまでも目標達成率で評価するよう心がけましょう。
まとめ
リーダーシップがあるか評価するには、できるだけ定量的な評価が理想です。
目標達成率での評価を最優先とすると、リーダー自身も改善点が明確になり、より高みを目指すようになるでしょう。
自組織内での評価が難しいなら、専門のアセスメントツールを導入したり、人材育成の専門会社に評価制度の導入をアウトソーシングするなどの工夫もおすすめです。