ビジネスを進めていく上では、さまざまな課題や問題に対処しなければなりません。そのためには、抱えている課題や問題の本質を見極める必要があります。
しかし、このような課題や問題の本質をすぐに見極めるのは難しいかもしれません。だからといって時間をかけてしまうと、ビジネスを進めていけず企業の衰退につながってしまいます。
このような際に役立つのが、フレームワークです。フレームワークを活用することで、課題や問題の解決をスムーズに行える可能性があります。
本記事では、フレーム―ワークについてメリットや具体例、活用する際の注意点などを解説します。
目次
フレームワークとは?
フレームワークとは、ビジネスの施策や課題解決などを考える際に役立つ、思考の枠組みです。一言でフレームワークといっても、いくつものパターンや手法があります。
例えば、論理的な考えに役立つフレームワークや、市場の分析に役立つフレームワークなどがあります。状況や目的に合っていないフレームワークを行っても、正しい分析が行えなかったり本来求めていた答えとは異なる結果になったりしりかねません。
そのため、正しくフレームワークを選択することが大切です。
なぜフレームワークを活用すると良いのか?
フレームワークを活用することで、抱えている課題の本質に迫りやすくなります。一部の人を除き、一般的には多くの人がビジネスに必要な思考を最初から持っている訳ではありません。
このように、ビジネスに必要な思考を持っていない人であっても、フレームワークを活用することで課題の本質が分かりやすくなり、課題解決につなげられます。
フレームワークを活用することのメリット
フレームワークを活用することで得られるメリットは次のとおりです。
- 業務効率が向上する
- 課題を迅速に発見できる
- 論理的な思考ができる
- もれなどのミスを回避できる
ここでは、フレームワークを活用することで得られるメリットについて解説していきます。
業務効率が向上する
1つ目のメリットは業務効率の向上です。フレームワークは、課題の解決や思考を整理しやすくするなどの役割を担っています。そのため、状況に応じた適切なフレームワークを活用することで、課題解決や思考整理にかかる時間を短縮することが可能です。
工数が削減されれば、結果的に業務の効率化につながります。
課題を迅速に発見できる
2つ目のメリットは課題を迅速に発見できる点です。フレームワークは、課題の本質を見つけやすくなるのが特徴です。そのため、フレームワークを用いることで、それまでは見えていなかった課題を迅速に発見できます。
さらに、フレームワークを使って客観的に自社の状況を分析することで、それまで気付かなかった自社製品の改善点を発見できるかもしれません。フレームワークによって課題が発見できれば、その分スピーディに課題の解決策を講じられます。
改善点と顧客ニーズが合致すれば、製品やサービスの売上アップも期待できるでしょう。
論理的な思考ができる
3つ目のメリットは論理的な思考ができる点です。フレームワークを活用すれば、論理的な思考のトレーニングにもつながります。
論理的な思考(ロジカルシンキング)を身につけることは、問題を解決する能力や自分の意見をアウトプットする力が鍛えられるので、ビジネスパーソンにとって大きなメリットがあるといえます。
プレゼン力やコミュニケーション能力を高めたい方にもおすすめの方法です。
もれなどのミスを回避できる
4つ目のメリットは、もれなどのミスを回避できる点です。フレームワークには確認すべき項目が定められています。
そのため項目に沿って確認していけば、情報の漏れや重複といったミスを回避することが可能です。分析の方法が統一されているので、誰がやっても正確に情報を整理できます。
フレームワークを活用することのデメリット
フレームワークはメリットがいくつもある一方で、デメリットも存在しています。デメリットは次のとおりです。
- 学習コストの発生
- フレームワークに依存しやすくなる
- フレームワークを選定する必要性
フレームワークにはさまざまな機能や特徴があるため、それらを理解するには学習時間が必要となります。フレームワークを取り入れるにしても、プロジェクトなどの納期がせまっている中で時間の確保が難しい場合は、学習時間を考慮する必要があるでしょう。
また、フレームワークはあらかじめ項目が定められています。フレームワークに依存するあまり思考が固まってしまい、柔軟性のある考えやオリジナリティのある考えが浮かびづらくなる可能性があります。
このようなデメリットを解消するために、フレームワークの本質的な理解を行い、柔軟に対応できるようにしましょう。さらに、フレームワークの種類を把握して、状況に応じたフレームワークを選定できるようにしておくことが大切です。
ビジネスシーンでよく使われるフレームワーク10選
ビジネスシーンでよく使われるフレームワークは、次の3つの目的で異なります。
- 論理的思考を促進する
- 市場分析がスムーズになる
- 新規事業開発に活用する
それぞれの目的に応じたフレームワークは以下のとおりです。
目的 | フレームワーク |
論理的思考を促進する | ● ロジックツリー
● MECE ● ピラミッドストラクチャー |
市場分析をスムーズにする | ● 3C分析
● SWOT分析 ● 4P分析 ● パーセプションマップ |
新規事業開発に活用する | ● リーンキャンバス
● ビジネスモデルキャンバス ● バリュープロポジションキャンバス |
フレームワークを活用する際は目的に応じたフレームワークを選ぶようにしましょう。
論理的思考を促進するフレームワーク
論理的思考を促進するフレームワークは次の3つです。
- ロジックツリー
- MECE
- ピラミッドストラクチャー
ビジネスにおいてコミュニケーションを円滑に進めるためには、論理的思考が重要です。論理的思考は、コミュニケーションの円滑化やスムーズな業務進行に役立ちます。
反対に論理的に思考できない場合、業務の工数がかかり過ぎて作業の遅延が発生したり、認識に齟齬が出てしまいミスにつながったりするリスクが起きかねません。
そのため、ロジックツリーやMECE、ピラミッドストラクチャーといったフレームワークを活用して、論理的思考を促進しましょう。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、抱えている問題を木の幹に、課題の要素を葉っぱに見立ててどんどんと広げていき、解決に適したな答えを導き出すというフレームワークです。
例えば、売上を上げるという課題に対しては、客数を増やす・客単価を上げるという要素が挙げられるでしょう。次に、客数を増やす、客単価を上げるという、それぞれを構成する要素を洗い出していきます。
ロジックツリーは問題や課題の全体像を把握しやすくなるため、問題や課題の本質がどこにあるのか、どのようなアクションを優先的に取り組むべきかなども考えやすくなるでしょう。
MECE
MECE(ミーシー)とは、もれなく・重複なくという意味を持つフレームワークです。俯瞰的に全体を見ながら課題を細分化していくので、もれや重複をなくすことが可能です。正確な判断につなげられる方法として、次の2つのアプローチがあります。
- トップダウンアプローチ:全体の要素を目的・課題に沿った切り口で分ける
- ボトムアップアプローチ:要素を洗い出した上で、グループ化して全体を捉える
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは結論を頂点にして、根拠を要素ごとに細かく挙げていき、ピラミッドのように積み重ねていくフレームワークのことです。
ピラミッドストラクチャーの特徴は、相手に論点や目的を伝えやすくなるという点です。根拠を要素ごとに分類するため、結論と根拠がどのような関係性にあるかを構造的に伝えられます。
ピラミッドストラクチャーもロジックツリーも論理的に考えるためのフレームワークです。ピラミッドストラクチャーの場合、結論を頂点に持ってくるため、自分の主張や正当性を伝える際に役立ちます。
一方、初めに課題や問題を設定するロジックツリーは、課題や問題を論理的に解決する際に役立ちます。
市場分析がスムーズになるフレームワーク
市場分析をスムーズに進めるためのフレームワークは次のとおりです。
- 3C分析
- SWOT分析
- 4P分析
- パーセプションマップ
ビジネスにおいて、市場をさまざまなデータによって分析する市場分析は、重要な工程です。市場分析を実施することで、市場(顧客)のニーズを把握できる上に、競合他社の分析も可能になります。
市場のニーズを把握せず、競合他社の分析も怠ってしまうと、事業を展開する際にさまざまなリスクが発生しかねません。
リスクが発生してから後手の対応になると、事態の収束に人的・時間的コストを費やしてしまうため、3C分析やSWOT分析などのフレームワークを活用して、定期的に市場分析を実施しましょう。
3C分析
3C分析とは、次の3つの関係を基に現状を分析するフレームワークです。
- 自社(Company)
- 顧客(Customer)
- 競合(Competitor)
一般的に、市場を分析する際は自社でコントロール可能な内部要因と、コントロールできない外部要因からそれぞれの要因を分析します。3C分析においては顧客、競合が外部要因、自社がコントロール可能な内部要因として扱います。
自社、顧客、競合で分析すべきことはそれぞれ次のとおりです。
- 自社:自社の強みと弱み、自社が受けている評価
- 顧客:どのような人が顧客なのか、顧客のニーズはどのようなものか
- 競合:競合の状況とシェア、競合はどのような評価を得ているか、競合他社の強みと弱み
SWOT分析
SWOT分析とは次の4つの要素から経営戦略や現状を分析するフレームワークです。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weakness)
- 機会(Opportunity)
- 脅威(Threat)
SWOT分析も3C分析と同じく内部環境と外部環境を分析します。SWOT分析における内部環境は、強み(Strength)、弱み(Weakness)、外部要因は機会(Opportunity)、脅威(Threat)です。
4つの要素の詳細は次のとおりです。
要素 | 詳細 |
強み(Strength) | 技術や経験など自社の強みを分析する |
弱み(Weakness) | 競合他社よりも弱い部分を洗い出す |
機会(Opportunity) | 自社のビジネスチャンスとなる要因や変化に対しての競合他社の動向などを分析する |
脅威(Threat) | 自社の強みを消すような環境の変化や他社の動向などを分析する |
4P分析
4P分析は次の4つの要素から、物やサービスをどのように効率的に提供するかの分析に役立つフレームワークです。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
それぞれの要素の検討すべきポイントは、次のようになります。
要素 | 検討すべきポイント |
製品(Product) | 品質や機能性、ブランドのイメージなどを検討する |
価格(Price) | 割引や支払い方法などを検討する |
流通(Place) | 流通の範囲や販売する場所などを検討する |
プロモーション(Promotion) | 広告や宣伝の仕方を検討する |
4P分析によって戦略を立案する際は、各項目のバランスに注意しましょう。例えば製品面と価格面との整合性がとれていない場合、利益率が低く戦略が破綻してしまうかもしれません。
パーセプションマップ
パーセプションマップとは、知覚マップという名でも知られているフレームワークです。パーセプションマップでは顧客が認識している企業やブランド、サービスへのイメージを2つの軸で表します。
自社の製品だけでなく、競合他社の製品も並べて比較することで、自社の位置づけを明確にすることが可能です。
パーセプションマップは、顧客目線からのイメージを視覚化するフレームワークのため、顧客がどのようなイメージを抱いているかを把握する必要があります。具体的には、顧客へのアンケートやインタビューといった方法をとることが多いです。
なお、パーセプションマップと似たフレームワークとしてポジショニングマップが挙げられますが、両者には違いがあります。
パーセプションマップは顧客が抱くイメージを視覚化するのに対して、ポジショニングマップは企業の視点から自社の市場での立ち位置を視覚化します。
新規事業開発に活用できるフレームワーク
新規事業開発に活用できるフレームワークは次のとおりです。
- リーンキャンバス
- ビジネスモデルキャンバス
- バリュープロポジションキャンバス
どのような事業であっても衰退していく可能性があるため、新規事業の開発は企業にとって重要です。そのため、リーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスなどのフレームワークを活用して、新規事業開発につなげましょう。
リーンキャンバス
リーンキャンバスとはビジネスの全体像を一つのシートで表したフレームワークです。リーンキャンバスを構成する要素は次のとおりです。
- 顧客セグメント
- 優位性
- チャネル
- 独自の価値提案
- ソリューション
- 主要指標
- 課題
- 収益の流れ
- コスト構造
リーンキャンバスを構成する9つの要素は、企業が抱える課題と解決に結びついています。そのため、9つの要素を記載することで、事業計画が明確になります。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルを構造的に捉えるフレームワークです。リーンキャンバスと同じく9つの要素で構成されています。
ビジネスモデルキャンバスを構成する要素は、次のとおりです。
- 顧客セグメント
- 価値提案
- チャネル
- 顧客との関係
- 収益の流れ
- リソース
- 主要活動
- パートナー
- コスト構造
リーンキャンバスと異なり、ビジネスモデルキャンバスは顧客と自社との関係も含まれているため、顧客に対してどのような価値を提供できるか、どのように収益を上げるかなどを把握することが可能です。
バリュープロポジションキャンバス
バリュープロポジションキャンバスは、顧客にとっての商品やサービスの価値を示すフレームワークです。バリュープロポジションキャンバスはプロダクト、顧客という2つのセグメントで、それぞれ3つの要素で成り立っています。
セグメント | 要素 |
プロダクト | ● Products&Services:自社の製品、サービスで提供している要素
● Gain Creators:顧客の利益を生む具体的な解決策 ● Pain Relievers:顧客の課題の解決策 |
顧客 | ● Gains:顧客が望む結果や恩恵など
● Customer Job:顧客が達成しようとしていること ● Pains:顧客が抱えている問題や課題達成のためのハードル |
これらの構成要素に対して自社や顧客の状況を記載していきます。自社の利益と顧客の願望が一致していれば、顧客のニーズに即した商品、サービスを提供できているといえるでしょう。
フレームワークの中でも新規事業開発に活用できるフレームワークであるバリュープロポジションキャンバスについては、こちらでも詳しく解説しています。
フレームワークを使用する際のポイントや注意点
フレームワークを使用する際は次のようなポイントや注意点を把握しておきましょう。
- 目的に応じたフレームワークを使用する
- 時間制限を設けてチャンスロスを防ぐ
- 分析→仮説立て→改善のサイクルを回す
目的に応じたフレームワークを使用する
上述したようにフレームワークは論理的思考や市場分析、新規事業開発など、さまざまなシーンで活用できます。
しかし、目的に沿っていないフレームワークを使用してしまうと、十分な効果が得られないかもしれません。そのため、注意してフレームワークを選択するようにしましょう。
例えば、同じ市場分析が目的であっても3C分析とSWOT分析では分析できる結果が異なります。3C分析は外部環境の影響は考慮されませんが、SWOT分析では外部環境の影響も考慮した分析が可能です。
時間制限を設けてチャンスロスを防ぐ
フレームワークは論理的思考や分析に役立つ手法ですが、時間制限を設けるようにしましょう。時間制限を設けずにフレームワークで分析をしていると、チャンスロスにつながりかねません。
フレームワークの分析や検討に時間をかけすぎていると、アクションに移るまでに時間がかかってしまいます。マーケティングや営業、販売などは分析に時間をかけている間に市場が変化してしまうかもしれません。
そのため、フレームワークで分析する際は、時間制限を設けるようにしましょう。
分析→仮説立て→改善のサイクルを回す
フレームワークをより効果的に扱うのであれば、分析、仮説を立ててアクションを起こすだけではなく、サイクルを回していくことが大切です。
分析、仮説立て、改善のサイクルを回すことで、どんどん分析やアクションの確度が高められていき、施策をブラッシュアップしていけるでしょう。
フレームワークを活用して業務を効率的に進めよう
フレームワークは、ビジネスの施策や課題解決などを考える際に効果的な思考の枠組みです。フレームワークを活用することで、業務効率が向上する、課題を迅速に発見できる、もれなどのミスを回避できるといったメリットにつながります。
ビジネスシーンで用いられるフレームワークは大きく、論理的思考を促進するため、市場分析をスムーズにするため、新規事業開発に活用するためといった目的別に分かれます。フレームワークを活用する際は目的に応じたフレームワークを選ぶようにしてください。
また、市場の変化にスピーディに対応してチャンスロスをしないために時間制限を設ける、分析・仮説・改善のサイクルを回すということが大切です。フレームワークを正しく活用して自分や企業の成長につなげましょう。