新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発表されてから、自宅やワーキングスペースで業務をするテレワークが一般的になりました。しかし、近年になりテレワークを廃止する企業も見られます。
本記事ではテレワークを廃止する理由や継続・廃止する際のポイントなどを解説します。
目次
テレワークは廃止傾向にある
公益財団法人日本生産性本部の発表によれば、テレワークは減少傾向にあることが分かります。2020年5月にはテレワークを実施している企業はアンケート対象企業のうち31.5%でした。しかし、2023年1月の調査では16.8%まで下がっています。(※1)
また、東京都が発表したテレワークの実施状況をみても、減少傾向にあることが分かります。東京都の調査では2023年4月の都内企業(従業員30人以上)におけるテレワーク実施率は46.7%と、前月よりも4.9ポイント減少しました。このようなデータからも、テレワークを廃止する企業は増加傾向にあるといえるでしょう。(※)
(※1)参考:公益財団法人日本生産性本部.「第12回働く人の意識に関する調査」.P16
(※2)参考:東京都.「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!4月の調査結果」
テレワークを廃止する理由
テレワークを廃止する理由として挙げられるのが次の5つです。
● コロナ禍にともなう一時的な措置だったから
● 社員のコミュニケーション不足を解消したいから
● 社員のモチベーションを維持したいから
● 社員の平等性を保ちたいから
● 生産性低下の懸念があるから
それぞれの理由について解説していきます。
コロナ禍にともなう一時的な措置だったから
テレワークを廃止する理由の1つ目は、コロナ禍にともなう一時的な措置だったからです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響でテレワークは一気に促進され広まったものの、緊急事態宣言が解除された上に、2023年5月8日以降は新型コロナウイルスが5類感染症に移行されたことで、テレワークを廃止して従来の働き方に戻す企業も現れています。
社員のコミュニケーション不足を解消したいから
2つ目は、社員のコミュニケーション不足を解消したいからです。テレワークは社員がそれぞれの自宅や任意の場所で勤務する働き方です。従来の働き方のように、いつでも顔を合せられるわけではないため、社員同士のやり取りは電話やメール、オンライン会議などに留まっていました。
ビジネスを円滑に進めるためには、社員同士の柔軟なコミュニケーションは欠かせません。そのため、テレワークを廃止して社員のコミュニケーションを促進させようとしています。
社員のモチベーションを維持したいから
3つ目は、社員のモチベーションを維持したいからです。テレワークによって社員と企業との距離が物理的に離れてしまいます。企業との距離を社員が感じれば感じるほど、一人ひとりのモチベーションが低下する可能性もあります。
社員の平等性を保ちたいから
4つ目は、社員の平等性を保ちたいからです。テレワークはすべての職種で導入できるわけではありません。例えば、営業や事務などの職種はテレワークを導入できる一方、接客や製造などはテレワークには不向きな職種です。職種によってテレワークに向き不向きがあるため、社員の平等性を欠いてしまいます。そのため、社員の平等性を保つためにもテレワークを廃止する企業が現れています。
生産性低下の懸念があるから
5つ目は、生産性低下の懸念があるからです。厚生労働省の調査によればテレワークの課題として、仕事とプライベートの区別がつかないと回答した人は40.4%でした。(※)仕事とプライベートの区別がつかなくなってしまうことで、生産性の低下がすると考えられています。
また、テレワークではチームメンバーの状況が把握できず、チームマネジメントの面にも影響を及ぼしかねません。そのため、個人だけでなく組織全体でも生産性が低下する傾向にあります。
テレワークを廃止した際の影響
テレワークを廃止することで、社員のモチベーション維持や平等性の確保、生産性低下の防止などの効果があります。しかし、テレワークを廃止することで次のような影響も考えられるでしょう。
● 離職率が上昇してしまう可能性がある
● ワークライフバランスを崩してしまう可能性がある
離職率が上昇してしまう可能性がある
テレワークでモチベーションの低下を感じてしまう社員がいる一方、テレワークの継続を希望する社員も一定数います。
公益財団法人日本生産性本部の調査によれば、2023年1月時点で「テレワークを継続したい」と答えた人は45.4%、「どちらかとそう思う」と答えた人は39.5%もいます。(※)
このようにテレワークを希望する社員は、自社がテレワークを廃止することで離職する可能性があるでしょう。
※参考:公益財団法人日本生産性本部.「第12回働く人の意識に関する調査」.P18
ワークライフバランスを崩してしまう可能性がある
テレワークは仕事と生活の調和を図る、ワークライフバランスを維持する効果が期待できます。テレワークであれば通勤の時間がないため、通勤にあてていた時間をプライベートの時間に当てることが可能です。また、通勤で感じるストレスから解放されます。
しかし、テレワークを廃止して従来の働き方に戻すことで、ワークライフバランスが崩れてしまう可能性があります。
テレワークを継続する場合のポイント
テレワークを継続することで、社員の離職を防ぐ、ワークライフバランスを維持することが可能です。しかしテレワークを廃止したい理由も無視できません。企業がテレワークを継続する場合、次のようなポイントを押さえておきましょう。
● システムやコミュニケーションツールを見直す
● 出社とテレワークを組み合わせた働き方を実施する
システムやコミュニケーションツールを見直す
テレワークを継続するには、システムやコミュニケーションツールを見直すことが大切です。例えば、メールで連絡を取り合っていた場合、よりスピーディにやり取りが可能なチャットツールの導入がおすすめです。
また、Web上に仮想のオフィスを構築できるバーチャルオフィスも注目を集めています。オフィスに出勤する感覚があるので、自宅にいてもオンとオフを切り替えたり、上司や同僚と気軽な雑談や相談ができるのも特徴です。
出社とテレワークを組み合わせた働き方を実施する
テレワークの継続には、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークも効果的です。ハイブリッドワークでは、社員の事情に応じて出社かテレワークかを選択可能なため、それぞれの状況に応じた多様な働き方を提供できます。
ワークライフバランスを崩すこともないので、テレワークを継続したい社員にも受け入れられやすいでしょう。
テレワークを廃止する場合のポイント
テレワークを継続する会社に対して、テレワークを廃止する会社もあります。テレワークを廃止する際のポイントは次のとおりです。
● 出社によるメリットを設ける
● オフィス環境を改善する
出社によるメリットを設ける
テレワークを廃止する場合は、出社することによるメリットを設けましょう。
例えば社員の出社を促すために、出社するごとにアプリにポイントが貯まるサービスを導入するといった方法が挙げられます。自社独自のポイント制度を設けることでも出社によるメリットを打ち出せます。
オフィス環境を改善する
社員に出社した際の働きやすさを提供するために、オフィス環境を改善しましょう。例えば、社員が気分転換できるリフレッシュスペースを設ける、固定席を設けないフリーアドレス制を導入する、複数のワークスペースを設けるといった方法が挙げられます。
テレワークを廃止するなら出社したくなるようなオフィスを目指そう
社員のコミュニケーション不足を解消する、社員のモチベーションを維持するなどといった理由から、テレワークを廃止している企業も増えてきています。しかしテレワークの廃止によって、離職率の増加やワークライフバランスの低下を招く恐れもあります。
そのため、テレワークを継続するのであればコミュニケーションツールの見直し、ハイブリッドワークの導入などの検討が必要です。一方、テレワークを廃止するのであれば、出社するメリットを感じられる制度の検討やオフィス環境の改善を心掛けてみてください。
本記事でご紹介したポイントを参考に、テレワークを継続したい社員と廃止したい企業の要望を上手くすり合わせできる形を目指していきましょう。