「生産性」は業務を効率的に遂行する上で、よく耳にする言葉です。
特にシステムやソフトウェア開発では多くの人間・組織が関わるため、生産性が強く求められます。
しかし、言葉は知っていても、定義やその指標、どういった計算方法で導き出すのかは分からないという方もいるでしょう。
本記事では、
- 生産性の定義
- 生産性が求められる背景
- システム開発における生産性の計算方法
などを解説します。
関連記事:【簡単に】生産性とは?意味と定義、計算方法までをわかりやすく解説!
目次
生産性とは「時間内に出した成果量」のこと
そもそも、有形無形を問わず何かを生産する場合は、原材料やエネルギー、設備を操作する人など、投入する資源が必要になります。
生産性とは、投入した資源に対して得られる生産物との相対的な割合のことを示します。
計算式で表すと下記の通りです。
生産性=生産物÷投入した資源
つまり、生産性とは投入された資源がどれだけ効率的に使用されたかを割合で表したものです。
生産性の種類
生産性は大きく下記2つに分類されます。
- 物的生産性:産出物の重量や個数などで測る
- 付加価値生産性:生産物が生み出す価値(金額)で測る
物的生産性は、同一の製品を作っただけ売れると仮定し、いかに少ない投入資源で大量に生産できるかに着目した指標です。
生産量に着目しているため、価格の区別はなく、生産現場における純粋な効率を図る際に用いられます。
付加価値生産性は、生産物が生み出した金額ベースの価値「付加価値」に着目した指標です。
売上高から原材料費や機械の動力費などを除いて計算されます。
Webサービスでは、基本的に同じ製品を繰り返し生産することはあまりないため、付加価値生産性で測ることが一般的です。
関連記事:【計算式あり】付加価値生産性とは?目安と高め方も解説!
システム開発で「生産性」が求められる背景
IT市場は、AIや5Gの普及、IoT分野の発展など多角的な要因から急成長を見せています。
農業や漁業などの一次産業でもITツールを使用することが多くなり、需要が増加し続ける一方、その需要増に対応しきれず、IT業界は人材不足に悩まされているのが現状です。
経済産業省が公表したデータを用いた「IT 人材需給に関する調査」では、2030年時点で最大80万人規模の人材不足が生じる懸念があると試算されています。
大規模な人材不足が予想されているため、少ない人員でも効率的に業務を遂行できるように「生産性」が求められているのです。
生産性の計算方法
実際にIT業界の組織において物的生産性と付加価値生産性をどう算出するのか見ていきましょう。
それぞれ下記のような計算式で求められます。
- 物的生産性=生産量/チームメンバー数
- 付加価値生産性=付加価値額/チームメンバー数
例えば、10人のチームで20個のプログラムを完成させ、2,000万円の利益が出たとします。
その場合、それぞれの生産性は下記のようになります。
- 2個/1人(物的生産性)=20個(生産量)/10人(チームメンバー数)
- 200万円/1人(付加価値生産性)=2,000万円(付加価値)/10人(チームメンバー数)
売上や顧客数、ユーザー数なども付加価値と捉えることもできるため、自社で追求したい数字を代入し、計算してみましょう。
システム開発の生産性がわかりやすくなる「3階層」
生産性を向上させる場合には、より少ない人数で多くのタスクをこなしていく必要があります。
ただ、システム開発において、打ち出した施策が売上やユーザー数にどのように影響するかは分かりにくいものです。
そのため、システム開発においては下記3つの階層に分けると評価しやすくなります。
- 1階層:タスク、業務量の生産性
- 2階層:価値の生産性
- 3階層:実現価値の生産性
関連記事:生産性向上の本質とは?メリットや施策、注意するべきポイントを解説
1階層:タスク、業務量の生産性
1階層目では、仕事の重要性や売上への貢献度は一旦考えず、制限された時間の中でどの程度の作業量を行えたかを評価します。
作業量が多いからといって生産性が高いということではありませんが、作業効率の良し悪しを判断することはできます。
現場の情報であるため、基本的にエンジニアが確認する層です。
2階層:価値の生産性
2階層目では、行った施策がどの程度開発システムの価値へ影響するのかを評価します。
ただし、実行した施策がどの程度の影響を与えたのかはすぐに評価できないため、期待値が高い施策を重点的に確認し、本当に生産性向上に繋がったのか、コストパフォーマンスは良いのかなどを確認しましょう。
3階層:実現価値の生産性
3階層目では、2階層目で行った施策がどの程度の「価値」を生み出したのかを評価します。
施策の「最終判断」をする層です。
ただし、現場チームやマーケティングなど開発に関わる多くの部署が生み出した結果のため、リアルタイムな評価には向かない部分には注意しましょう。
開発生産性が高い組織の特徴
開発生産性が高い組織は下記2点のような特徴があります。
- 定量的な判断ができる
- 組織全体で改善に取り組める
1つずつ詳しく解説します。
関連記事:生産性向上を実現する方法とは?必要性や向上しない企業の共通点を解説
定量的な判断ができる
定量的とは、物事を数値や数量で表すことです。
生産性を向上させるためには、感情や感覚的なもので判断しても意味がありません。
システム開発の際、CPUやメモリなどのパフォーマンスを数値で見るのと同様に、誰がみても客観的に判断できるよう、現状を定量化して把握することが重要です。
チームを指揮するリーダーが数値化して施策を打ち出すだけでは、メンバーはノルマのように感じて、「やらされている仕事」になります。
リーダーだけでなく、一人ひとりが定量的な判断をできるようにしておく必要があります。
組織全体で改善に取り組める
システムのリリースには、現場のエンジニアだけでなく、企画やデザインなどで多くのメンバーが関わっています。
そのため、発注側との契約締結後は、人員や時間などのリソースをできるだけ小さくし、生産性、利益率を向上させなければなりません。
メイン業務であるシステム開発だけでなく、企画やデザインでも省略できる業務はないか、コスト削減できる部分はないか、組織全体で改善に取り組むことで、より生産性を高められます。
生産性を向上させるための2つのポイント
生産性を向上させるため、下記2点のポイントを意識しましょう。
- 業務を可視化する
- 社員のレベルアップ
社内で完結させられるポイントのため、ぜひ試してみましょう。
業務を可視化する
システム開発はいくつかの作業工程に分かれているため「可視化できている」と考える方もいますが、より明確化することで効果的になります。
すべての業務を文字やイラストに起こし可視化することで、より把握しやすくなるでしょう。
頭で把握しているだけでは分からなかった課題や問題点も、可視化によって改めて見つかる可能性があります。
大まかな流れだけでなく、作業が完了するまでの一つ一つの工程を細かに書き出しておきましょう。
定量化して工程にどの程度時間がかかるのかを把握しておくことがポイントです。
社員のレベルアップ
IT業界は日進月歩で成長しており、最新の情報や技術であっても数年後には使用されなくなるケースも珍しくありません。
そのため、個人が持つ情報や知識の差によって生産性が大きく変化します。
メンバー間のレベルの差を無くすために、社内で研修会や勉強会を開催したり、社外で行われているセミナーへ参加しやすいように補助金を出したりと、個人のレベルアップに必要な支援を行いましょう。
まとめ
開発生産性を向上させられれば、効率的に業務を進められるだけでなく、業績を大幅に向上させられる可能性があります。
しかし、組織全体で行わなければ、どこかでしわ寄せが起こり、業務の滞りやメンバーの離脱に至る可能性もあります。
経営者やリーダーが率先して組織をまとめ、全体で生産性を向上させましょう。