離職率は、企業が抱える人材の管理において非常に重要な指標であり、経営陣や人事部など企業内の人材管理担当者らにとって大切であるだけでなく、外部の人々も気にするところです。
この記事では、“離職率”が具体的に意味する内容、そしてその計算方法について解説していきます。
目次
1.離職率とは何を意味する?
離職率とは、簡単に言うと「ある一定期間内に退職した従業員の数を、計算時点の従業員数で割ったもの」です。
この計算により、企業全体の従業員がどれだけの割合で退職しているかを把握しています。
関連記事:離職率とは?計算方法や平均値、離職率の高い企業、低い企業の特徴を解説!
2.離職率を図る意義について
離職率は、企業における「人材の流動性」や「働きやすさ」を示す重要な指標です。
高い離職率は、企業の「人材育成・組織力の弱さ」を示すことがあります。
また、採用や教育訓練にかかるコストも増加するため、企業の業績にも悪影響を与えることがあります。
一方で、低い離職率は、従業員が満足しており、企業に長く勤める意欲があることを示します。
3.離職率の計算方法
離職率の計算方法は次のようになります。
離職率 = (一定期間の退職者数 / 従業員数) × 100
たとえば、ある企業が1年間で50名の従業員が退職し、その期間の平均従業員数が500名だった場合、離職率は以下のように計算できます。
離職率 = (50 / 500) × 100 = 10%
この場合、離職率は10%となります。
注意点しておきたいポイントとして、「一定期間の退職者数」の“一定期間”は、計算する人の意図によって任意の期間を定めることができます。
たとえば、「大学を卒業して就職したばかりの新卒社員が入社して3年以内にどれぐらい辞めてしまったか」について調べようとする場合には、上の計算式の中の「一定期間の退職者数」を3年とし、また分母となる「従業員数」を全従業員ではなく新卒3年目までの社員に絞ることで求めることができます。
関連記事:離職率の計算方法を具体的に解説【離職率を下げる方法も紹介】
4.離職率の目安としての平均値
厚生労働省が令和3年に発表した「令和3年雇用動向調査結果の概況」によると、「年初の常用労働者(期間の定めなく雇われた正社員や長期アルバイトのこと)の離職率は13.9%」と、およそ7〜8人に一人が離職している計算となっています。
ただし、この厚生労働省の出している目安はあくまで一般的な参考値であり、また、業界や企業規模、地域によっては異なってきます。
したがって、企業は自社の業界や規模に応じた離職率の平均値を把握し、それを参考に人材管理の改善策を考えることが重要です。
関連記事:日本企業の離職率の平均はどれくらい?【離職率を改善する方法も紹介】
5.離職率の分析と活用方法
離職率を適切に分析し活用することで、組織の人材マネジメントに役立てることができます。
離職率の分析と活用のための方法としては以下のようなものがあります。
- 部門別・職種別の離職率分析
- 入社年次別の離職率分析
- 離職理由の分析
- 離職率の時系列分析
以下、順番にご紹介します。
1.部門別・職種別の離職率分析
会社全体の離職率だけでなく、部門別や職種別にも離職率を計算し、比較分析を行います。
これにより、特定の部門や職種で離職率が高い場合、その原因を特定し、個別に対策を講じることができます。
2.入社年次別の離職率分析
入社年次別の離職率を調査し、新入社員や中途社員、ベテラン社員などの異なる年次の従業員に対して、離職の傾向や原因を把握します。
これにより、世代に合わせたフォローのためのプログラムを提供することができます。
3.離職理由の分析
退職者に対して、離職理由を調査し、そのデータを分析します。
これにより、組織内の問題点や改善すべき領域を特定し、具体的な対策を立てることができます。
4.離職率の時系列分析
過去数年間の離職率の変動を時系列分析することで、組織の人材動向や離職のトレンドを把握します。
また、組織が実施した人事施策や制度改革の効果を評価し、今後の人事の方針を策定するための参考に役立てることができます。
6.離職率を低く抑える方法
離職率を低く抑えるためには、以下のような取り組みが有効です。
- 職場環境の改善
- 研修・教育制度の充実
- コミュニケーションの強化
- 評価制度の見直し
- 福利厚生の充実
以下、それぞれについて順番に解説していきます。
1.職場環境の改善
働きやすい職場環境を整えることは、従業員のストレスを軽減し、離職率を低く抑える重要な要素です。
具体策としては、「清潔で物が散乱していない、整ったオフィス空間の提供」、「適切な照明や換気設備の整備」、「騒音対策の実施」などが挙げられます。
特にオフィス空間の工夫に関しては、従業員同士がコミュニケーションできるスペース(談話室)を設けたり、観葉植物の設置、また長時間の座り仕事による腰などへのダメージを軽減するオフィスチェアに取り替えるなど、従業員の満足度をあげるために工夫できる点が多くあります。
さらに、フレックスタイム制度やリモートワークの導入により、従業員の働き方を柔軟に対応させることも効果的です。
休憩スペースの充実や社内コミュニケーションの促進によって職場環境の改善を実現した企業も数多くあります。
2.研修・教育制度の充実
従業員のスキルアップやキャリアアップをサポートする研修や教育制度の充実は、離職率を低く抑えるために重要です。
「新入社員研修」や「階層別研修」、「スキルアップ研修」、「異部署間の交流研修」など、従業員が自分の能力を向上させる機会を提供することが求められます。
また、資格取得支援制度や社内外の専門家による勉強会の開催、eラーニングの導入など、学ぶ機会を多様化させることも大切です。
これにより、従業員の成長意欲を維持し、会社に残ることによりスキルアップできるというメリットを感じさせることができるため、離職率の低下につなげることができます。
3.コミュニケーションの強化
良好なコミュニケーションを確保することは、職場の雰囲気向上やチームワークの強化につながります。
定期的に開催されるミーティングや、部門間の情報共有を促すイベント、社内コミュニケーションツールの活用などが効果的です。
また、上司が部下との面談を重視し、フィードバックや相談に応じる機会を増やすことで、従業員の不安や悩みを解消し、離職率の低下につなげることができます。
さらに、社内イベントや懇親会の開催、社員同士の交流を促す場の提供などを通じて、職場のコミュニケーションを活性化させることも重要です。
これにより、従業員同士の連携が強化され、職場の雰囲気が向上し、離職率の低下に寄与します。
4.評価制度の見直し
公正で透明性のある評価制度を導入し、従業員の努力や成果を適切に評価することで、従業員が会社側の期待に応えて働くモチベーションを高め、離職率の低下につなげることができます。
まずは評価基準を明確化し、従業員に十分な理解を促すことが大切です。
また、目標設定のプロセスを共有し、従業員が自分の成長を実感できるようにすることも重要です。
さらに、評価結果に応じた適切な報酬を与えたり、ふさわしいポジションへ昇進させることで、従業員のモチベーションを維持し、離職率の低下につなげることができます。
5.福利厚生の充実
福利厚生を充実させることで、従業員の生活や働き方をサポートし、長期的な雇用の安定性を提供できます。
具体的には、保険制度や退職金制度の整備、育児休暇や介護休暇などの休暇制度の充実、社員寮や住宅手当などの住居支援、社内託児所の設置や子育て支援策の実施などが挙げられます。
また健康支援策として、定期的な健康診断の実施やストレスチェック、運動施設の提供やリラクゼーションルームの整備も効果的です。
これらの福利厚生の充実により、従業員が安心して働く環境を整えることができ、離職率の低下に寄与します。
まとめ
離職率は、企業の人材管理において重要な指標です。
離職率を把握した上で、業界の平均や同業他社などと比べて高い場合には、その理由を調査し、改善のための取り組みを行うことで、従業員の満足度や組織力を向上させ、業績の向上につなげることができます。
この記事で紹介した離職率の計算方法や改善策を参考に、自社の人材管理を見直し、より良い企業組織の構築を目指しましょう。