現在、新入社員の約3割が3年以内に離職すると言われており、データを見る限り、それはどうやら事実のようです。
このように、入社してから短期間で離職してしまう現象を「採用ミスマッチ」と言います。
採用ミスマッチは企業にとって大きな損失となるので、しっかり対策する必要があります。
本記事では採用ミスマッチの対策方法を5つ紹介していきます。ぜひ最後まで読んで、参考にしてみてください。
目次
採用ミスマッチと早期離職の現状
まずは早期離職の現状を見ていきましょう。
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)」によると、大卒就職者の就職後3年以内離職率は31.5%とのことです。
また、事業所規模が小さければ小さいほど離職率が高い傾向にあり、1,000人以上の事業所規模の3年以内離職率が25.3%なのに対し、100〜499人の場合は31.8%、5人未満の場合は55.9%となっています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成」のアンケート調査によると、企業が正確な職業情報を提供したつもりでも、入職後にミスマッチが発生した要因として、以下が多く挙げられていたようです。
- 採用選考時に若者に過大な期待を抱かせる曖昧な言動があった
- 採用担当部門が伝えた公式情報と現場での運営のズレ
- 情報の解釈の仕方が若者と企業とで異なる
- 若者が雇用契約の内容を確認しないまま入職した
- 若者の知識・経験不足に起因する根拠のない自信や思い込み
以上が、客観的データに基づく、採用ミスマッチと早期離職の現状です。
採用ミスマッチが発生する原因
採用ミスマッチが発生する原因は以下の4つです。
- 会社と入社者での認識が食い違った
- 自社が求める人物像が曖昧だった
- 面接で見極められなかった
- アフターフォローが不十分だった
それぞれ解説していきます。
会社と入社者での認識が食い違った
採用ミスマッチが発生する原因としてまず挙げられるのが、会社と入社者での認識の食い違いです。
よくあるのが「以前言っていたこととは違う」というもの。
会話でのやり取りだと記録に残らないため、お互いの認識が曖昧になることがあります。
また、企業説明会などでは、どうしても自社の良い部分ばかり強調してしまいます。
そのため入社者からすると「もっと良い職場環境だと思っていたのに……」という事態にもなりかねません。
認識の食い違いを防ぐためには、入社前のコミュニケーションに工夫する必要がありそうです。
自社が求める人物像が曖昧だった
自社が求める人物像が曖昧だったというのも、採用のミスマッチによくある原因です。
どんなに優秀な人材だったとしても、自社が求める人材でないのであれば、ミスマッチが発生してしまいます。
具体例を挙げると、新規サービス開発のためにエンジニア採用を実施するとしましょう。
それにもかかわらず、新規サービスの開発経験のないエンジニアを採用しても意味がありません。
特にありがちなのが、学歴や経歴だけを重視して採用してしまうケースです。
たしかに学歴は見栄えがいいものの、それが実務に繋がるかどうかは別の話です。
関連記事:採用基準の決め方で大切な6つのポイント|事例とともに解説
面接で見極めきれなかった
面接で求職者の人間性・スキルを見極められなかったのも、考えられる採用のミスマッチ原因の1つです。
求職者は自分自身を良く見せて面接に臨むことがほとんどでしょう。
場合によっては、実績や取り組みを多少盛ってくることも考えられます。
それらを見極めるには、面接を通して、実際の雰囲気の中で求職者の人間性を読み取るしかありません。
アフターフォローが不十分だった
実際に人材を獲得できても、その後のアフターフォローが整っていないと、早期離職を生み出してしまう恐れがあります。
新卒の場合は「社会に出ること」に対して不安を抱いているはずです。
また、中途採用の場合でも、環境の変化に戸惑うことがあります。
そのため、人材を獲得した後は、働き心地が良くなるようにアフターフォローを充実させる必要があるのです。
採用ミスマッチで生じる損失
では、採用ミスマッチではどのような損失が生じてしまうのでしょうか。以下のような損失が考えられます。
- 金銭的なコストが発生する
- ノウハウが蓄積されない
- 企業ブランドが低下する
- 人間関係のトラブルが発生する
それぞれ詳しくみていきましょう。
金銭的なコストが発生する
採用ミスマッチで早期離職が生じるということは、採用コストが無駄になるということです。
リクルートの「就職白書2020」によると、2019年度の新卒採用における1人あたり採用コストの平均は93.6万円、中途採用の場合は103.3万円とのことでした。
つまり、せっかく採用したのに早期離職されてしまっては、この約100万円を無駄にすることと等しいのです。
もちろん採用コストだけでなく、人材の受け入れ態勢の構築などでも目に見えづらい金銭的なコストが発生しています。
採用ミスマッチによる金銭的コストは、想像以上に大きいものなのです。
関連記事:採用コストを削減したい担当者必見|今すぐできるコスト削減方法とは
企業ブランドが低下する
採用ミスマッチが多くなると、早期離職率が高まるため、企業ブランドが低下する恐れがあります。
場合によっては「職場環境が悪い」というイメージが生まれ、ブラック企業と認定されかねません。
企業ブランドが低下すると、商品・サービスの売上に大きな悪影響を及ぼす可能性が出てきます。
また、ブラック企業と認定されると求職者が減少し、優秀な人材をなかなか獲得できなくなります。
また、近年は就活でも口コミを参考にすることが増えています。
実際に採用ミスマッチによって離職した人が、口コミサイトで「この企業は説明不足だった」と書けば、それが広がり、信頼を取り戻すことが極めて難しくなるでしょう。
人間関係のトラブルが発生する
採用ミスマッチが増えてしまうと、既存社員のストレスが蓄積され、人間関係のトラブルに発展する可能性があります。
従業員からすると、新人教育ばかりさせられて現場での業務に集中できなくなるわけなので、ストレスが溜まるのも当然です。
また、実際に周囲の人から離職者が出てしまうと「自分が何か悪いことをしてしまったのか……?」というように悩みを抱えてしまう従業員が出る可能性もあります。
人間関係が悪くなると、当然、仕事にも大きな支障が出ます。
それは生産性低下に繋がり、やがて企業の業績低下として現れてくるでしょう。
採用ミスマッチの対策方法
採用ミスマッチの対策方法は以下の5つです。
- ありのままの現状を伝える
- 自社が求める人材を明確にする
- 求職者に何を求めているかを事前に伝える
- 求職者の意見を聞く
- 現場の空気感を事前に知ってもらう
それぞれ解説していきます。
ありのままの現状を伝える
採用ミスマッチを防ぐためには、自社のありのままの現状を伝えることが大切です。
良い部分だけを紹介するのではなく、悪い部分も紹介します。
たしかに、悪い部分を伝えてしまうことで、求職者が入社してくれなくなるかもしれません。
しかし、採用コストの観点で見ても、採用ミスマッチを防ぐことの方が重要です。
また、自社が抱えている課題を事前に共有することで「その課題ならぜひ私にやらせてください」というように、名乗りを挙げてくれるかもしれません。
ありのままの現状を伝えましょう。
自社が求める人材を明確にする
自社が求める人材を明確にしておくことも大切です。
そうすれば「この人材は自社が求めている/いない」というように、根拠のある判断ができます。
自社が求める人材を明確にする際は、職種やスキルはもちろんのこと「何ができるか?」にも注力しましょう。
即戦力採用である中途採用では、ぜひ実施したい取り組みです。
求職者に何を求めているかを事前に伝える
ポテンシャル採用である新卒採用では、候補者に「自社があなたに何を求めているか」を事前に伝えておくのがいいでしょう。
ここで明確に「あなたには数字を出してほしい」や「営業先を開拓してほしい」というように伝えておくことで、候補者自身も心構えができます。
どのような役割を求めているかを事前に伝えておくことで、候補者側も「自分に合っているか」が判断できるようになり、採用ミスマッチを防げます。
関連記事:ポテンシャル採用とは?他の採用との違いを成功事例で解説
求職者の意見を聞く
企業側が一方的に意見を述べるのではなく、求職者の意見もちゃんと聞きましょう。
求職者側がやりたいことがあるのであれば、可能な限り、それを尊重した方がいいです。
もちろん、求職者の意見を受け入れることが難しいこともあるでしょう。
その場合は、きちんと断るべきです。これも採用ミスマッチを防ぐ方法の一つと言えます。
現場の空気感を事前に知ってもらう
現場の空気感を事前に知ってもらうために、1日体験会などを実施するといいでしょう。
求職者がやりたい職務内容を提示できても、社内や従業員の雰囲気に合わなければ、パフォーマンスが大きく落ちてしまいます。
そのため、採用プロセスの中に、1日体験会やインターンシップを組み込んで、現場の空気感を事前に知ってもらいましょう。
一般的な採用活動では回避しづらい「雰囲気のミスマッチ」を防ぐことができます。
従業員を定着させる方法
実際に人材を獲得した後、従業員を自社に定着させたい場合は以下のような方法がおすすめです。
- 親睦会やオリエンテーションを開催する
- メンターを適切に配置する
- 1on1ミーティングを高頻度で実施する
- 従業員のキャリアプランを尊重する
それぞれ詳しく解説していきます。
親睦会やオリエンテーションを開催する
内定式だけにとどまらず、親睦会やオリエンテーションを定期的に開催しましょう。
やはり従業員を定着させるには、良好な人間関係が一番です。
現場社員を含め、お酒の力も借りながら、親睦を深めるのもいいのではないでしょうか。
ただし、無理やり参加させるのはNGです。
近年は「一人になりたい」従業員も多いため、あくまでも個人の意志を尊重しながら、親睦会を開催しましょう。
メンターを適切に配置する
新卒採用でも中途採用でも、所属先が変われば、その所属先特有のルールを教育する必要があります。
その際に活用したいのがメンター制度です。
新入社員は、誰に何を聞けばいいかがわかりません。
そこで、あらかじめメンターを設けておくことで、相談相手を明確にしておきましょう。
これも、従業員を定着させる方法の一つです。
1on1ミーティングを高頻度で実施する
新入社員を定着させる方法として、1on1ミーティングが挙げられます。
新入社員の悩みや不安を、1on1ミーティングで解消させるのです。
1on1ミーティングは、高頻度で実施するのがポイントです。
具体的には1週間から2週間に1度のペースで実施するでしょう。
高頻度で実施することで、通常よりも速いスピードでPDCAサイクルを回せます。
従業員のキャリアプランを尊重する
従業員を定着させるためには、従業員の長期的なキャリアプランを尊重することが大切です。
ここでもし従業員のキャリアプランを完全否定してしまうと「ここでは自分の望みが叶えられない」ということで、退職を検討されてしまいます。
まずは、従業員が求めるキャリアプランを聞いて、それを尊重しましょう。
可能であれば、従業員のキャリアプランに則った人材配置ができればベストです。
まとめ
それでは本記事をまとめます。
- 3年以内離職率は新入社員全体の約3割
- 採用ミスマッチによる損失は想像以上に大きい
- 従業員を定着させるための施策が必要不可欠
採用ミスマッチは、想像以上に大きな損失を被ります。
コストを抑えて優秀な人材を獲得するために、そして現場社員の負担を軽減するためにも、効率的な採用活動を実施した方がいいでしょう。