優秀な人材、自社が求める人材を的確に採用するには、適切な採用基準が必要不可欠です。
しかし、「自社の採用基準の決め方に問題があるのでは?」と、課題を感じている人事担当者が多いのが実態です。
成功事例を参考に採用基準の設定・見直しをすることで、効果的に希望する人材の採用につなげられます。
この記事では、採用基準を設定するポイントとあわせて、その目的や注意点を解説します。
現在の取り組みと照らし合わせながら読み進めれば、改善点が明確になり、理想とする人材が集まる採用活動が実現できます。
目次
採用基準の決め方は採用活動のコアになる
採用基準は、最適な人材を採用するだけでなく、採用後のミスマッチ防止にもつながる重要な指標です。
また、ただ自社の希望に沿って決めればいいわけではないということにも、注意が必要です。
採用活動が公正に進められるように、厚生労働省が定めた決まりを遵守したうえで、採用基準を設定しなければいけません。
具体的には、誰が選考を担当しても同じ条件で平等に採用できる、採用基準の設定が必要です。
基準が定まれば、自社にとって有望な人材を逃したり、採用後のミスマッチで早期離職したりといった問題の抑制にもつながります。
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採用基準の決め方における6つのポイント
採用基準を決める際のポイントは、下記6つです。
- 現場が必要としているスキルと必要条件を洗い出す
- 活躍中の社員のコンピテンシーを整理する
- 求める人物像を具体的に設定する
- 必須条件や優先順位を具体的に決める
- 就活・転職市場のトレンドに合わせる
- 書類選考・面接時にどこを評価ポイントにするか決める
現場が必要としているスキルと必要条件を洗い出す
まずは人材を必要としている部署のニーズを確認しましょう。
その際、以下の点を踏まえたヒアリングが、良い採用基準を作り出します。
- 管理職の要望確認
- 現場社員の要望確認
- 業務上絶対に必要なスキル
- 求められる能力
- 必要資格
- 職場に合った特性
必要条件の具体的な洗い出しは、場当たり的ではなく効率的でスムーズな採用の第一歩になります。
また、採用計画だけを独立して考えるのではなく、事業計画をベースにして、全社一丸となった戦略的な計画の立案が重要です。
活躍中の社員のコンピテンシーを整理する
コンピテンシーとは、共通項を意味します。
例えば、自社内で成果を出している社員の行動や考え方などの特性を共通項として整理すると、参考になります。
まずは対象となる社員を数名選んでヒアリングし、普段意識していることや、ルーティーンなどを把握します。
理由として、役職や業務内容によって成果の判断基準が違うため、多くの事例が集まれば共通の内容が見極められるためです。
ヒアリングで蓄積した情報を整理する上で大切なのは、成果につながる行動・思考特性にフォーカスすることです。
決して成果そのものではない点には注意しましょう。
求める人物像を具体的に設定する
コンピテンシーを整理したあとは、自社でどのような人が活躍しているのかを明確にします。
なぜなら、コンピテンシーを整理する際に、ヒアリングした情報には抽象的な内容が入っている場合があるためです。
求める人物像を具体的にイメージするため、情報の解像度を上げましょう。
ここでは、整理したコンピテンシーを元に「実在する人物」を想定して以下の内容を落とし込みます。
- どんな性格か
- どんな行動をとるのか
- どんなことを考えているのか
ここまでの情報が整理できると、自社が求める人物像の設定が完了します。
必須条件や優先順位を具体的に決める
次に必要なのは、自社で働いてもらう上で必須となる条件の明確化です。
スキルや資格など、働く上で必須となる条件と、あれば望ましい条件に分類し、順位を付けます。
ここで重要なのは、入社後に育てられる能力より、育てられない部分を重視することです。
具体的には、性格や特性といった資質の部分と、最低限持っておくべき能力などがこれに該当します。
条件が明確になれば、スムーズな選考が可能です。
就活・転職市場のトレンドに合わせる
就活や転職市場にはトレンドがあり、どのような人がどんな条件で仕事を探しているのかは、時代とともに変化し続けています。
そのため、欲しいと思う人物像がトレンドに合致していない場合、採用活動が難航する可能性があるのです。
具体的には、副業やリモートワークを含む自由な働き方が主流となる20代を採用したいと思っているのに、募集要項では真逆の「副業は原則禁止。勤務時は出社必須。」と記載している場合が挙げられます。
自社内だけで確定せずに、トレンドを汲み取った採用基準の設定が重要です。
書類選考・面接時にどこを評価ポイントにするか決める
人物像や必要条件が明確になったら、あとは書類選考時や面接時における具体的な評価項目に落とし込んでいきましょう。
評価項目を決める中で採用基準が言語化され、共有が可能になります。
多くの人の目でチェックしてもらい、合意を取るのは重要なプロセスです。
なぜなら、社内の誰も知らない採用基準を作っても、採用担当者ひとりの判断が優先されたのでは意味を持たないためです。
社内共通の評価ポイントを定め、採用基準として落とし込むまでがゴールといえます。
採用基準を設定する3つの目的
採用基準を設定する目的は、大きく分けて下記の3つです。
- 誰が選考しても同じ条件で採用できる
- 入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ
- 合否決定がスムーズになる
誰が選考しても同じ条件で採用できる
面接を含む選考作業では、担当者の主観が入る可能性があります。
例えば一人の応募者に対して二人の面接官がついた場合、面接官それぞれが異なる評価を下す可能性があります。
これではどちらの意見が正しいのかわからず、公正な採用とはいえません。
そこに採用基準があれば、判断基準の軸が明確になるため、担当者が変わっても、何人いても、客観的かつ公平な判断が可能です。
基準は、読み手によって異なる判断にならないように抽象的で曖昧な表現はせずに、丸バツや数字など、具体的に記していきましょう。
入社後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐ
採用を担当する人事部と、配属先となる現場とでは温度差が生じるケースも珍しくありません。
すると、求める人材のイメージにズレが発生してしまいます。
例えば高いスキルと輝かしい経歴だけを求めた人事部と、現実的に活躍できる能力を求めた現場とでは人材のイメージは大きなズレがある、といった具合です。
こうしたズレを防止して、採用活動における会社としての共通認識を作り上げるためにも、採用基準は大切なのです。
合否決定がスムーズになる
採用基準という軸があれば、求める人材を的確に採用できるだけでなく、選考自体も迷いが少なくなります。
結果としてスピーディーな合否判定が可能となり、チャンスを逃す可能性も低くなるのです。
採用基準の事例
採用基準の例として、下記2つを紹介します。
- 新卒採用の場合
- 中途採用の場合
経験やスキルが大きく異なる新卒と中途とでは、採用基準も別にしておくべきです。
それぞれの場合における基準を、ここで解説します。
新卒採用の場合
新卒採用の応募者を見るときは、人柄重視の基準を設定しましょう。
実務経験がない場合が多いため、性格や考え方といった人間性・人柄に重きを置いて選考を進めます。
また、会社の雰囲気や風土とマッチするかの見極めが、入社後のミスマッチを防止するために重要です。
参考記事:新卒採用とは?中途採用との違いやメリット・デメリットを解説
中途採用の場合
中途採用は即戦力を期待して採用する場合が多いため、新卒で求めている人柄にプラスして、スキルや実績、経験を重視する基準を設定しましょう。
例えば、英語が話せる、〇〇の開発経験があるといった具体的な条件が該当します。
中には将来性を重視したポテンシャル採用の場合もあるので、社会人としての基礎力を評価する基準を添えておくのも有効です。
参考記事:中途採用の目的と失敗しないために必要なポイントを紹介
採用基準の設定で気をつけたい3つの注意点
採用基準を決める際に気をつけるべき内容は、下記3つです。
- スキルだけ見ずに人柄と社風に合うかもチェックする
- 曖昧で厳しすぎる選考基準を設定しない
- 採用における厚労省の指示を踏襲する
スキルだけ見ずに人柄と社風に合うかもチェックする
書類や面接で本人から伝えられるスキルや能力だけに惚れ込んで採用を決めてしまうと、ミスマッチが起こる可能性があります。
ミスマッチを防ぐためにも、入社後の行動や働き方も含めた人柄に目を向けて、自社とのカルチャーフィットを考慮した選考を心がけましょう。
募集時や選考時には、会社の風土やカルチャー、雰囲気を明確に発信し、求職者に伝えていくことが重要です。
曖昧で厳しすぎる選考基準を設定しない
曖昧な採用基準にすれば採用担当者の主観に頼る部分が大きくなってしまいます。
反対に、具体的にし過ぎると条件が厳しくなりすぎて可能性もあります。
いずれの場合も、募集に人が集まらなかったり、募集があっても採用に至らなかったりと、採用活動が進みません。
こういった課題は、実際に募集をかけてからわかることも多くあります。
選考通過人数が少ない、入社後の離職率が高いなどの傾向が見られた場合、採用基準を見直しましょう。
採用における厚生労働省の指示を踏襲する
公正な採用選考をするように厚生労働省が「公正な採用選考の基本」を出しています。
目的は、求職者の適性や能力以外の部分で合否を判断することのないよう、等しい基準で採用を進めることです。
こうした内容を無視して選考すると、就職差別というレッテルを貼られる可能性もあるため、注意しましょう。
また、面接時の会話の中で軽く尋ねるだけでも、合否に影響したのではないかという疑念を生んでしまうかもしれません。
センシティブな内容は、選考時には配慮が求められます。
採用基準はテンプレート化して定期的に改善
作成した採用基準は、その後も定期的に改善する必要があります。
例えば、下記の兆候が見られた場合は採用基準見直しのタイミングです。
- 応募の人数が少ない
- 採用に至る人数が少ない
- 事業や業務内容に変化があった
仮にそのような兆候がなくとも、採用基準の精度を維持し高めていくために、少なくとも1年ごとの見直しをおすすめします。
PDCAサイクルのフレームを使えば、採用基準の精度が上がり、希望通りの採用ができる可能性が高められます。
まとめ
適切な採用基準を設定すると、属人的で曖昧な選考を防ぎ、欲しい人材を的確に獲得できるようになります。
そのためにも、市場のトレンドにアンテナを貼りながら、社内の状況や要求にも耳を傾ける情報網の整理が大切です。
常に効果検証による改善を繰り返していけば、精度の高い採用基準へと成長できます。
記事を通してお伝えした採用基準の決め方を、自社の採用活動に活かしてみてください。