変形労働時間制度とは、労働時間を柔軟に調整する制度です。
繁閑差がある企業が導入することによって、残業手当の最適化につながります。
本記事では、変形労働時間制度の概要やメリット・デメリット、種類、注意点などを解説していきます。
目次
変形労働時間制とは
変形労働時間制とは、労働時間を月単位もしくは年単位で計算する制度です。
通常、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働は時間外労働となり、企業は1時間あたりの賃金額の1.25倍の残業手当を支払う必要があります。
しかし、変形時間労働制では1日の労働時間を柔軟に設定して、月単位・年単位で労働時間を決められます。
繁閑に合わせて残業代を最適化できる
これにより、仕事が少ない閑散期には早めに切り上げたり、仕事が多い繁忙期には仕事を多めにしたりすることが可能です。
結果的に総労働時間が短くなることで、業務の偏りを減らし、長時間労働の是正や残業の削減につながります。
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変形時間労働制の種類とは
変形労働時間制は、どの範囲の期間で計算するかによって、大まかに2つの種類に分けられます。
それでは詳しく見ていきましょう。
1ヶ月単位の精算
1ヶ月単位で精算する場合は、下記のように1ヶ月ごとの労働時間を計算して就業時間を決めます。
日数 | 時間 |
28日 | 160.0時間 |
29日 | 165.7時間 |
30日 | 171.4時間 |
31日 | 177.1時間 |
例えば1ヶ月が28日のケースでは、1ヶ月あたり160時間が法定労働時間となります。
したがってこの時間を超過しなければ、残業代を支払う必要はありません。
つまり、月末だけ忙しければ月末以外の労働時間を7時間として、最後の1週間だけ労働時間を10時間とすることも可能です。
この場合でも、160時間を超えていなければ残業代は発生しません。
1ヶ月単位の精算であれはま労働基準監督署への提出も不要なため、多くの企業が採用しており、導入しやすいといえるでしょう。
1年単位の精算
一方で、繁忙期が月をまたぐケースでは、1年単位の変形労働時間制が必要となる場合があります。
この場合は1ヶ月以上1年未満で労働時間を設定し、シーズンごとに繁閑差がある業態に最適です。
1年が365日の場合は、1年間の法定労働時間は2085.7時間となります。
また、1ヶ月単位とは異なり、導入するには下記の条件が必要です。
- 労使協定の締結
- 労働基準監督署への提出
変形労働時間制のメリット・デメリットとは
ここでは、変形労働時間制を導入する企業側・従業員側のメリット・デメリットを見ていきましょう。
企業側のメリット
残業代や残業時間を削減・最適化が図れることが企業にとっての一番のメリットです。
繁忙期と閑散期に合わせて適切に労働時間を調整できるため、無駄な残業代を払う必要がありません。
また、仕事が少ない時期は従業員に早く帰らせて体力を温存させ、忙しい時期に体調を万全な状態にすることで、繁忙期の過重労働による体調不良を避けられるでしょう。
企業側のデメリット
一方で、企業側のデメリットとしては手間がかかる点が挙げられます。
まず、変形労働時間制では週や月によって勤務時間が異なるため、勤怠管理が複雑化します。
さらに、労使協定の締結や就業規則の整備など、導入に必要な手続きや制度設計にも手間がかかります。
従業員側のメリット
従業員にとっては、メリハリをつけて働ける点がメリットといえます。
仕事が少なければ無理に仕事をする必要はありませんし、その期間は長期休暇をとったり、家族と過ごす時間や趣味の時間を増やせるでしょう。
これによりワーク・ライフ・バランスの改善につながります。
関連記事:労働時間の短縮は、本当に働き方改革になるのか?日本の労働時間が長くなってしまう要因
従業員側のデメリット
一方、従業員はあらかじめ労働時間の配分を決めなければならず、急な用事や個人的な事情による業務変更が難しくなることがデメリットです。
これにより、柔軟な対応が難しくなるでしょう。
また、繁忙期は忙しく残業が増えるにもかかわらず残業代が出ないケースもあるため、不満の声があがる可能性があります。
変形労働時間制に似ている制度とは
変形労働時間制のように、柔軟な働き方を目指す労働時間制度があるため見ていきましょう。
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、従業員自身が日々の労働時間の長さや労働時間の配分を決められる制度です。
従業員一人ひとりの事情や生活に合わせた、柔軟な労働時間配分を可能にします。
裁量労働制
裁量労働制とは、労働時間と成果や業績が直結しない職種において適用される制度です。
実際の労働時間とは無関係に、事前に決めた時間が労働時間と見なされます。
関連記事:裁量労働制とは?メリット・デメリットや仕組み、対象となる業務を解説
固定労働時間制
固定時間制とは、1日8時間、週40時間の法定労働時間を守り、就業規則で定めた始業時間・終業時間・休憩時間などを守る働き方です。
日本において最も古典的な働き方ですが、現在において固定労働時間制を採用している企業は26.4%しか存在しません。
(参考:令和2年就労条件総合調査より丨厚生労働省)
まとめ
変形労働時間制は、月初、月中、月末で大きく繁忙のタイミングがずれる企業に有用です。
もし繁閑差により、無駄な時間・経費が生じてしまっているとお感じになった場合、導入を検討してみてはいかがでしょうか?