人事考課面談とは、半期に1回、または1年に1回のペースで上司が部下の話を聞く面談のことを指します。
この人事考課面談の内容を基に給与や昇進が決まるので、部下にとっては非常に大切な面談です。
しかし「どのような面談を心がければいいのか」と困っている上司は多いのではないでしょうか。
本記事では、人事考課面談を成功させるコツを紹介していきます。
目次
人事考課面談の3つの目的
人事考課面談には以下の3つの目的があります。
- 企業貢献と評価を可視化する
- 社員のモチベーションを高める
- 社員の能力・スキル向上
それぞれ解説していきます。
企業貢献と評価を可視化する
人事考課面談で社員の企業貢献や評価を可視化することが可能です。
ここでの評価を参考に、給与や昇進が決定されていきます。
なお、社員の処遇を決定する人事評価とは別のプロセスです。
社員のモチベーションを高める
人事考課面談で社員のモチベーションを高めることができます。
面談の中で上司が部下に対して仕事の大きな意義を説明し、部下の自己形成を促すからです。
ここで部下が納得してくれれば、日々のモチベーションが大きく向上するようになるでしょう。
社員の能力・スキルの向上
人事考課面談の目的としては人材育成も挙げられます。
上司が部下に対して客観的な評価を述べることができるため、自分自身の課題などを客観視できない人材には特に有効です。
部下の仕事のやり方を振り返った上で、今後の方向性を決めていくことができます。
関連記事:人材育成とは?役割や必要なスキル、課題などを事例も含めて解説!
人事考課面談の3つの評価軸
人事考課面談には3つの評価軸があります。以下の通りです。
- 成績考課
- 能力考課
- 情意考課
それぞれ詳しく見ていきましょう。
成績考課
人事考課面談では、社員がどれだけの成績を残してきたのかを評価します。
ここで重要なのは、社員ごとの目標に合わせて、客観的な数字を見ていくことです。
社員の成績に対して上司の主観的な意見を述べても意味がないので、まずは数字を見るようにしましょう。
また、結果だけでなくプロセスを見ていくことも求められる場合があります。
能力考課
人事考課面談では、社員がどれだけのスキル・能力を保有しているのかを評価します。
また、一部の能力が高くても、それが自身の業務に繋がらないのであれば意味がありません。
キャリアに見合った能力を習得できているかどうかが、人事考課面談で確認されます。
情意考課
人事考課面談では、数値的なものではなく、社員がどれだけ企業に対して貢献できたかを評価します。
仮に社員単体で結果を残すことができなかったとしても、他の社員の精神的なサポートをしていたり、雰囲気作りに貢献していたりすれば、それは企業に対して貢献したと言えるでしょう。
情意考課では社員の勤務態度や周囲への影響力を見ていきます。
ただし、情意考課は社員の平等性を欠く二面性があることを認識しておくとよいでしょう。
一般的な人事考課面談の効果的な実施手順
効果的な人事考課面談を実現するためには、以下の実施手順がおすすめです。
- 評価者・被評価者が面談準備をする
- 日程調整・面談場所の確保
- アイスブレイク
- 人事評価面談の目的を確保
- 被評価者が自己評価を伝える
- 評価結果のフィードバック
- 課題の共有・改善案の提案
- 次回の目標設定
それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
評価者・被評価者が面談準備をする
人事考課面談は評価者と被評価者の双方が準備を行います。
お互いに「何を話すのか」を明確にしておいた方がいいでしょう。
また、評価者は被評価者の質問に対して回答を準備しておくべきです。
被評価者が人事考課面談の内容に納得できないと、今後の業務で支障をきたす可能性があります。
日程調整・面談場所の確保
人事考課面談をいつどこで行うのかをしっかり確認して、日程調整及び面談場所の確保を行います。
面談時間は30分から1時間ほどを目安にして、業務時間内に済ませるようにしましょう。
また、面談場所はなるべく静かな場所で、音が漏れることのない部屋を選ぶようにしましょう。
アイスブレイク
部屋に入ってすぐに本題に入って人事考課面談を始めても緊張してしまいます。
お互いの趣味の話など、まずはアイスブレイクから始めましょう。
そうすることでお互いの意見が出やすい環境を作ることができます。
人事考課面談の目的を共有
アイスブレイクを済ませた後、評価者は被評価者に対して人事考課面談の目的を共有しておきます。
この面談の内容が給与や昇進にどれほどの影響を与えるのか、被評価者の長期的なキャリアをどれほど見据えているのか、しっかり説明しましょう。
被評価者が自己評価を伝える
目的の共有が終わったら、まずは被評価者が自己評価を評価者に伝えます。
この際、事前に自己評価シートなどを記入しておいてもらうと、スムーズに面談が進むでしょう。
最初に被評価者から自己評価を述べてもらう理由としては、評価者から評価を伝えてしまうと被評価者が萎縮したり反発的な感情を抱いたりする可能性があることが挙げられます。
まずは被評価者に自己評価を述べてもらうことで、お互いの評価の違いを説明しやすくなるでしょう。
評価結果のフィードバック
被評価者の自己評価が終わったら、今度は評価者によるフィードバックを行います。
その際は、評価項目の順番が重要です。
まずはポジティブな内容から伝えて被評価者の心理的な壁をほぐし、それからネガティブな内容、そして最後に、ネガティブなもののなかでも被評価者の自己評価と不一致な部分がある内容を伝えるのがいいでしょう。
関連記事:フィードバックとは?人材育成で失敗しない4つのポイントを解説!
課題の共有・改善案の提案
フィードバックが終わったら、評価者は被評価者に対して質問して、被評価者の課題を見つけていきます。
特に、お互いの評価が食い違っている部分を中心に話し合いましょう。そしてそれに基づいた改善案を評価者が提案します。
ちなみに、評価者が被評価者に対して質問する場合は、批判的な質問をしないようにしましょう。
被評価者が心の壁を閉ざしてしまい、意見を抽出できなくなってしまいます。
次回の目標設定
改善案を提案したら、被評価者の次回の目標を設定します。
その際は、被評価者の長期的なキャリアも参考にしましょう。
それも含めて話し合うことで、被評価者の将来的なビジョンを確立させることができ、モチベーション向上に繋げられる可能性があります。
関連記事:部下との面談で何を話す?成功のポイントや具体的な進め方を解説
人事考課面談で発生する問題点とは?
人事考課面談で発生する問題点として、以下の3つが挙げられています。
- 働き方改革に対応しづらい
- 評価者の性格や能力に左右される
- 社員と企業側に一体感が生まれない
- 制度設計に問題がある
それぞれ解説していきます。
働き方改革に対応しづらい
人事考課面談は、1on1でかつオフラインで実際に会って行うことを基本としています。
しかし近年の働き方改革やコロナ禍によってリモートワークが推進されるようになってから、リアルな場での人事考課面談がやりづらくなっているのが現状です。
そのほか、人材の流動化やフレックス制の影響もあり、人事考課面談は働き方改革に対応しづらいと言えるでしょう。
評価者の性格や能力に左右される
人事考課面談は1on1で行われる面談なので、評価者の性格や能力によって面談の質が左右されがちです。
評価者の主観が入り、公正な人事評価に繋がらない可能性があります。面談内容の均一化などの対策が必要でしょう。
社員と企業側に一体感が生まれない
人事考課面談の内容基準が企業の目標とリンクしないと、目指す方向性がバラバラになる可能性があります。
一体感を作り出すためにも、人事考課面談のためのある程度のマニュアルを作成するべきでしょう。
制度設計に問題がある
人事考課面談の制度設計に問題が発生する可能性もあります。
そもそも人事考課面談は人材育成も目的の一つです。
賞与を決めるだけの人事考課面談になってしまうと、被評価者のモチベーションも向上させられません。制度設計には注意が必要です。
関連記事:社員への人事評価制度の問題点は?導入・見直し方法を解説!
人事考課面談で使える質問フレーズ
ここでは人事考課面談で使える質問をリストアップしてみました。参考にしてみてください。
- 現状の課題は何ですか?
- どうすれば課題解決できると考えていますか?
- これからの目標は何ですか?
- なぜその目標を設定したのですか?
- 仕事にやりがいを感じていますか?
- 現状の仕事へのモチベーションはどんな感じですか?
- 他の仕事への興味はありますか?
基本的に、「はい」「いいえ」で答えられる質問は避けるべきです。
被評価者の考えを引き出すような質問を心がけましょう。
人事考課面談での目標設定ポイント
人事考課面談での目標設定におけるポイントは以下の通りです。
- 企業としての目標を周知する
- 各部署の目標を明確にする
- 個人の役割や業務内容を確認する
それぞれ解説していきます。
企業としての目標を周知する
まずは企業としての目標を社員に周知しましょう。
その上で人事考課面談を実施することで、面談内容が企業目標にリンクします。
結局のところ、企業の目標を達成させることが大切なので、これはしっかりと周知し、共通認識に知るべきです。
各部署の目標を明確にする
そして各部署の目標も明確にしましょう。
そうすることで社員は「自分達がどのような業務をどのように遂行すべきか」といった部分を自分なりに考えるようになるので、結果的に業務のパフォーマンスが向上されます。
個人の役割や業務内容を確認する
企業としての目標と各部署の目標を明確にしたら、社員一人一人の役割や業務内容を確認しましょう。
「自分に何ができるのか」「ここからどのようなキャリア成長をイメージすればいいのか」といった部分を明確にできれば、あとはその方向に向かうだけです。
人事考課面談は1on1で話し合える貴重な機会になるので、このチャンスをものにしましょう。
人事考課表の書き方
人事考課表とは上司が部下に対して書く内申書のようなものです。
書き方のポイントとしては以下が挙げられます。
- 本人にとって将来がプラスになるような表現で書く
- 成果は客観的な数字で書く
- できるだけシンプルに書く
- 本人の人生を左右するという気持ちで書く
人事考課表は基本的に前向きな表現を用いて記入するようにしましょう。将来を不安視していても仕方がありません。
改善案などをしっかり記入して、将来の成長が見込めるようにするべきです。
人事考課表の例文
参考までに、上司側における人事考課表の例文を紹介します。職種は営業職です。
『営業成績が前年比130%は賞賛に値するし、チーム内で積極的な行動を促していたことも評価に値する。
だが、一時的に消極的になるケースが見受けられ、その時に限って営業成績が低迷する難点がある。
今後は1年全体を通しての安定感が課題になるため、メンタルケアやスケジュール調整などを改善する必要があるだろう。』
このようなイメージです。
人事考課面談における自己評価のポイント
人事考課面談では、被評価者による自己評価が実施されます。
被評価者が自己評価でアピールすべきポイントは以下の通りです。
- 目標数値はプロセスも明確に
- 自己啓発
- 後輩の指導育成
- 他部署との連携
目標における数値はプロセスも明確に
目標設定における数値は、プロセスも明確にしましょう。
例えば、「来年までに営業成績を20%アップさせる」という目標を設定した場合、「6ヶ月後までに営業成績を10%アップさせる」などの、中間目標も明確にすべきです。
そうすることで目標設定が具体性を帯びるようになります。
自己啓発
仕事の成績だけでなく、自主的にどのような自己啓発をしているのかもアピールするべきでしょう。
例えば「TOEIC◯◯点以上」「資格試験の勉強中」というようなイメージです。
実際に資格を取得していると強いアピールになります。
後輩の指導育成
一定期間以上、企業に所属していれば、後輩を指導することもあるでしょう。
その際は、後輩に対してどのように指導し、その後輩がどのような成果を出したのかもアピールすべきです。
後輩の能力を引き出せる人材を、企業は求めています。
他部署との連携
他部署との連携もアピールすべきポイントです。
部署内ならともかく、他部署のメンバーなどと横断的に連携しているということは、コミュニケーション能力が高いことのアピールになります。
まとめ:人事考課面談とは?
ここまで、一般的な人事考課面談をご説明しました。
しかし、弊社識学の人事考課面談は一般的な人事考課面談と異なります。
弊社では、第三者でも明確にYES/Noが判断できる目標を設定し、上司による恣意性が入り込まない目標設定をしています。
また、経過を評価することはありません。プロセスを評価せずに、結果のみを評価するからこそ正しい評価ができるのだ、そう考えているのです。
弊社の評価制度には「不平等」が入り込む余地はありません。
詳しく知りたいという方は、ぜひ以下の資料をダウンロードしてみてください。