人手不足が喫緊の課題となっている現代社会では、採用においては即戦力不足や採用のミスマッチ、内定辞退者が出た場合の対応など、多くの解決すべき問題があります。
このような問題を解決できる採用手法として、通年採用が注目を集めています。
本記事では、通年採用の概要やメリット・デメリット、導入する際のポイントや効果的な運用方法などを解説していきます。
目次
通年採用とは
通年採用とは、企業が年間を通じて新卒・中途を問わず、必要性に応じて自由に採用活動を行うことです。
もともとは外資系企業で一般的だった採用方法ですが、日本では従来、「新規一括採用」が主流でした。
この日本の採用ルールは経団連が作ったルールであり、学生の本分である学業が就職活動で疎かにならないようにすることを目的としたものです。
通年採用が注目を集める理由
近年は留学生や帰国子女が増えてきたため、学校の卒業時期にもバラつきがあり、採用時期が多様化し新卒採用の難易度が上がってきたことから、日本でも通年採用が注目を集めるようになっています。
また、人手不足による採用競争の激化も通年採用が行われるようになった理由の1つです。
少子高齢化が進んでいるため、人材確保が多くの企業にとって課題になっているなか、新卒一括採用だけでは人材の確保が困難となっているのが、通年採用が好まれるようになった要因の一つです。
通年採用の現状とは
日本における通年採用の現状を見ていきましょう。
就職白書によると、通年採用を実施・検討している企業は下記のように増加傾向にあることがわかります。
- 2020年卒 17.5%
- 2021年卒 25.1%
- 2022年卒 27.0%
すでに4社に1社以上は通年採用を行っているのです。
とはいえ、通年採用がどのようなものかイメージすることが難しい企業も少なくありません。
そこでここからは、一括採用との違いやメリット・デメリットを見ていきましょう。
(参考:就職白書2021丨みらい研究所)
通年採用と一括採用との違いとは
通年採用と一括採用には下記のような違いがあります。
項目 | 通年採用 | 一括採用 |
特徴 | 1年を通し、必要に応じて採用活動を行う | 企業が同時期に新卒学生を採用する |
採用時期 | 通年 | 3~7月の5ヶ月ほど |
採用対象者 | 第二新卒や既卒、中途など幅広く対象に含まれる | 新卒予定者のみ |
内定辞退への対応 | 内定辞退者が出ても年間を通して採用活動を行っているのでカバーしやすい | 内定辞退者が出ると予定採用数に届かない可能性があるので、内定者のフォローが求められる |
海外大学生や留学生の採用 | 対応しやすい | 対応が難しい |
通年採用を行う企業側のメリット・デメリットとは
通年採用を行う企業側のメリット・デメリットを見ていきましょう。
通年採用の企業側のメリット
通年採用を行う企業側のメリットとしては下記のようなものが挙げられます。
- 望み通りの人材を採用しやすい
- 必要なときに必要な人材を採用できる
- 内定辞退者への対応がしやすい
- 選考に時間をかけられる
- ゆとりをもって準備ができる
通年採用の場合、年間を通して採用活動を行うため、選考に時間をかけて自社に最適な人材を採用することができます。
また、留学生や既卒者など多様な人材にアプローチできるため、多様な人材と出会えることも利点です。
一括採用の場合、内定辞退者が出ると予定採用数に達しないことがあるため、内定者フォローが求められます。
しかし通年採用であれば、必要な人数を必要なときに採用できるので、内定辞退者が出てもすぐにカバーが可能なのです。
通年採用の企業側のデメリット
通年採用を行う企業側のデメリットとしては下記のようなものが挙げられます。
- 担当者の負担や採用コストが増える
- 教育や研修コストが増える
- 企業規模によって求職者の質に差がでる可能性がある
- 求職者にとって優先順位が下がる
年間を通して採用活動を行うことになるため、一括採用と比較して採用時期が長引きます。
これにより採用担当者の負担や採用コストが増大してしまうため、注意しなければなりません。
また、通年採用は学生から「いつでも応募できる」と捉えられるため、締切がある一括採用よりも優先順位が下がってしまいます。
通年採用によって知名度が高い大企業にばかり優秀な人材が集まり、知名度の低い中小企業には優秀な人材が集まりにくくなる可能性も無視できないでしょう。
これにより、企業規模や知名度によって求職者の質に差が生まれるかもしれません。
通年採用で失敗しないためのポイント
通年採用で失敗しないためのポイントとしては、採用体制を見直すことが挙げられます。
通年採用では教育・研修コストが高くなることや、求職者へのアピールが難しくなるというデメリットがあります。
そのため、研修をマニュアル化したり、求人広告の活用など、採用手法を見直すことが重要です。
また、一括採用では期限が設けられていることで志望度が高い求職者が集まりやすいため、通年採用でも採用活動を強化する時期を設けて、求職者に合わせた採用活動を実施することが求められます。
まとめ:採用のありかたは少しずつ変わり始めている
かつて、新卒一斉採用が一般的だった採用形態は、終身雇用制が崩れてからは変わり続けています。
これに伴い、少子高齢化などの社会問題、フリーランスの増加による業務委託の一般化と、働き方は多様化しています。
働き方が多様化するにつれ、採用のありかたも今後多様化することでしょう。
今後は、通年採用のみならず、3日、4日出社の正社員などの採用なども一般化する可能性があります。
周囲の変化に応じて、採用のありかたを変えていく必要性は、今まで以上に求められそうです。