子供の夏休みなどの長期休業日を分散化する「キッズウィーク」という取り組みが、多くの自治体で始まっています。
キッズウィークがあることで、親と子どもが同時にまとまった休暇を取ることができ、休日を一緒に過ごすことができるようになったり、地域の行事に参加しやすくなります。
本記事では、キッズウィークのメリットに加え、実際に導入している自治体の例を紹介します。
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目次
キッズウィークとは
キッズウィークとは、夏休みなどの子供の長期休暇を分散化させる、自治体ごとの取り組みのことです。
例えば、夏休みのうちの2日間を地域の休日とすることで、子供が家族と過ごせる時間が増え、家族全員で地域のイベントに参加しやすくなります。
2017年7月からスタートした「大人と子供が向き合い休み方改革を進めるための『キッズウィーク』総合推進会議」によって、キッズウィーク実現に向けた話し合いがなされ、導入自治体が増えつつあるのが現状です。
子供の休みを分散化させるだけでなく、親である大人も休暇を取得しやすい環境を作るための「働き方改革」の一環としても、キッズウィークは有効とされており、実施されています。
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キッズウィークが導入された理由
キッズウィークが導入された理由としては、次の3点が挙げられます。
- 働き方改革による有給休暇の取得促進
- 家庭や地域での教育力の向上
- 観光需要の分散化
働き方改革による有給休暇の取得促進
キッズウィークが導入された最も大きな背景は、政府が進める「働き方改革」です。
政府は働き方改革によって有給休暇の取得を促していますが、実際には有給休暇の取得はそれほど進んでいません。
厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査の概況」によると、労働者1人平均年次有給休暇取得率は56.6%であり、まだまだ有給取得が浸透しているとは言い難い水準です。
こうした状況であっても、キッズウィークによって子供の休暇を分散化させれば、親も子供に合わせて分散して休暇をとるきっかけになるため、有給休暇を取得しやすくなります。
家庭や地域での教育力の向上
キッズウィークが導入されれば、子供は夏休みなどのハイシーズンだけでなくオフシーズンも休みやすくなります。
子供が家庭でゆっくりと過ごしたり、地域行事に参加できたりと、家庭や地域で学ぶ機会を促進することに繋がります。
観光需要の分散化
キッズウィークにより休みが分散化されることによって、観光需要もその時期が分散化されます。
ハイシーズンだけでなくオフシーズンも観光地は一定の需要を期待することができ、観光振興も期待できます。
また、観光地の混雑時期が分散化されるため、コロナ禍において感染症対策として提唱された「分散型旅行」にも寄与するでしょう。
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キッズウィークのメリット
ここからは、キッズウィークのメリットを解説していきます。
- 柔軟に休暇を取得できる
- 観光などの遠出をしやすくなる
- 地域社会との接点が増える
柔軟に休暇を取得できる
キッズウィークを導入する目的の1つが有給休暇取得の促進です。
子供の休みが長期間連続していると、それに合わせて親も連続休暇を取得することは簡単ではありません。
しかし、子供の休日を分散させることによって、親も子供に合わせて休暇を取得しやすくなります。
キッズウィークの導入によって、より柔軟に休暇を取得できることが期待できます。
観光など遠出がしやすくなる
キッズウィーク導入によって休みをオフシーズンにずらすと、観光地の混雑を避けることができ、宿泊料金や航空料金を抑えて遊びに行くことができるでしょう。
休暇の都合だけでなく、経済的な理由からも家族での観光目的の遠出がしやすくなるのです。
また、観光地もハイシーズンだけでなくオフシーズンの集客も期待できるので、観光振興にも繋がります。
地域社会との接点が増える
自治体によっては、キッズウィークを地域の重要なお祭りやイベントの日に設定しているところも少なくありません。
地域にとって重要な行事の日が休日となることによって、自ずと子供も地域のイベントに参加しやすくなり、地域社会との接点が増えるようになります。
キッズウィークを導入することによって、これまではあまり接点がなかった地域の行事やイベントにも親子で参加しやすくなり、地域社会との繋がりを強めることができます。
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キッズウィークのデメリット
キッズウィークにはさまざまなメリットがある一方で、次のデメリットには留意が必要です。
- サービス業従業者の負担が増加する
- 非正規雇用者は収入減になる可能性も
サービス業従事者の負担が増加する
キッズウィークによって休みが分散化すると、サービス業は恒常的に業務が繁忙になる可能性があります。
そしてキッズウィークによって休みになる子供の親がサービス業従事者であった場合には、親は休みを取得するのが困難になる可能性があります。
キッズウィーク導入はサービス業従事者の労働量の負担増につながるだけでなく、親の仕事によっては休むことができない親と休むことができる親に二極化してしまう点がデメリットです。
また、子供がいる従業員は休みを取りやすくなりますが、子供がいない従業員は休みを取りにくくなることも予想されます。同じ勤務先でも子供の有無によって従業員間で不公平感が生じるのもデメリットでしょう。
つまり、サービス業従事者で子供がいない人は、キッズウィーク導入によって休み取得困難になる可能性があるのです。
非正規雇用者は収入減になる可能性も
キッズウィーク導入によって、子供の休日に合わせて親が休みを取らなければならないとすると、正社員と比較して有給休暇日数の少ない非正規社員は、有給休暇が不足してしまう可能性があります。
有給休暇が足りなくなり、勤務日数を削って休暇を取れば収入が減少します。
キッズウィーク導入によって正社員は休みが増える一方、非正規雇用は収入が減少する可能性があるため、収入と休暇取得の調整が難しくなる点はデメリットと言えるでしょう。
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キッズウィークを導入した自治体
実際にキッズウィークを導入した5つの自治体の事例を見ていきましょう。
- 埼玉県秩父市
- 神奈川県川崎市
- 三重期鈴鹿市
- 佐賀県武雄市
- 熊本県人吉市
先述したように、自治体によっては地域の重要な行事の日を休みにしたり、3連休を4連休に拡大するなどさまざまな取り組みを行っています。
実際のキッズウィークの取り組みと、期待できる効果について詳しく見ていきましょう。
埼玉県秩父市の事例
埼玉県秩父市は、7月20日の「川瀬祭」と12月3日の「秩父祭」を「伝統文化に親しむ日」として平成30年度より市内小中学校および幼稚園を休業日としています。
これは、平成24年に「秩父祭の屋台行事と神楽」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことに起因しています。
「伝統文化に親しむ日」の目的は、子供とその親が川瀬祭と秩父夜祭に参加することです。川瀬祭と秩父夜祭に参加することで、地域の歴史や文化を学び、地域愛を育てることが期待されています。
神奈川県川崎市の事例
川崎市では10月の体育の日を含む3連休後、プラス1日を休日として4連休にするキッズウィークを行い、「かわさき家庭と地域の日」としています。
「かわさき家庭と地域の日」では、地域活動を行っている団体や市内公共施設等と連携し、体験学習の促進などの取り組みを行っています。
「かわさき家庭と地域の日」に子供が体験学習を行い、地域社会との連携を深めることもキッズウィークの目的の1つです。
三重県鈴鹿市の事例
鈴鹿市は夏休みの1日を10月の「体育の日」を含めた3連休の前日へ振り替えることで4連休とするキッズウィークを導入しています。
夏休みに授業日を1日設け、10月を4連休とすることによって親の有給休暇取得促進につながり、子供は家族と過ごす時間が増えるなどの効果が期待されています。
佐賀県武雄市の事例
佐賀県武雄市は「たけおキッズウィーク」と命名し、夏休みの1日を10月に移し、10月に4連休を作る形をとっています。
「たけおキッズウィーク」の期間中は、「家族DE職場体験バスツアー」や「こども図書館1周年記念イベント」などを行ったほか、市内観光施設や店舗で使用できる割引券も配布するなど、子供と大人の両方が地域行事へ参加できるように工夫しています。
また、放課後児童クラブを朝から解放したり、公民館をキッズルームにするなどして、休暇を取得できない親の子供に向けた取り組みも行っています。
熊本県人吉市の事例
熊本県人吉市では、10日9日を「家族の時間の日」として、人吉市内のすべての小・中学校を休業日とし、体育の日と組み合わせて連休とする取り組みを平成24年度から行っています。
10日9日は人吉地方最大の秋祭り「おくんち祭り」の開催日です。
この日を休みとすることによって、休暇の分散化による有給休暇促進だけでなく、子供が「おくんち祭り」に参加することが期待でき、子供と地域社会の結びつきを強めることも目的のひとつとなっています。
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まとめ
ここまでキッズウィークのメリットや導入事例を見てきました。
キッズウィークは全国レベルで見ればまだまだ導入している地域は少ないですが、ライフワークバランスが重要視される昨今では、より広がりを見せることが予想されています。
既に導入している地域の例を参考にしながら、企業としても有給を取得しやすくしたり、地域と共同でイベントを開催したりするなど、積極的にキッズウィークを活用すると良いでしょう。