リーダーシップは資質ではなく、仕事への意識である、と有名な経営学者であるP.F.ドラッカーは語りました。つまり、リーダーシップとは特定の選ばれたカリスマ経営者だけが持つものではなく、企業で働くすべての人材が、日々の業務や学びを通じて習熟できるのです。
本記事では、リーダーシップを学びたい方におすすめの本20冊を紹介します。初級者・中級者・上級者(経験者)向けの3パターンに加え、リーダーシップに行き詰ったときに参考になる本、偉大なリーダーの名著の5パターンにわけて、4冊づつ紹介します。
リーダーシップの基礎を知りたい方や本格的に学びたい方、管理職や経営職として日々試行錯誤している方にも、参考になる1冊が見つかるでしょう。
目次
リーダーシップ初心者向け〜そもそもリーダーシップとは?
リーダーシップの定義はさまざまであり、リーダーシップに対する誤解も世の中に溢れています。自分にはリーダーシップがない、と思っている人も多いのではないでしょうか。
まずは、リーダー初心者向けの本を読んで、具体的なリーダーシップのイメージを持ちましょう。
- リーダーの現場力 やる気を引き出し、人を動かす
- 自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書
- 世界一ワクワクするリーダーの教科書
- 究極のリーダーシップ
順番に解説します。
1. やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力
著者は靴修理や合鍵作成などを扱う「ミスターミニット」を全国に展開する、ミニット・アジア・パシフィック株式会社の代表取締役社長、迫俊亮。かつて同社は、社員の離職や鬱が続出するブラック企業で、業績は10年連続で右肩下がりでした。倒産寸前だった同社の社長に就任した著者でしたが、3年で業績を立て直し、V字回復を達成しました。
彼が大切にしたことは、現場重視の考え方です。本書は成功へのストーリーが具体的に描かれており、リーダーシップの発揮によって生まれる目覚ましい成果を、直に感じさせます。
2. 自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書
「上司1年生の教科書」というタイトルが示すとおり、初心者にもわかりやすくリーダーシップの本質がまとめられています。リーダーシップというと、エネルギッシュに部下を引っ張る人物をイメージする人が多いのではないでしょうか。
しかし、本書が提示するリーダーシップはむしろ真逆です。リーダーは部下に対して能動的に考える時間と機会を与え、部下の自立心を育てることを重視しています。
3. 世界一ワクワクするリーダーの教科書
本書におけるリーダーシップのポイントは、「やり方」ではなく「あり方」です。リーダーは何を言うかではなく、生き様、手本を見せることが求められます。
タイトルにもある通り、リーダーはいつもワクワクしていることも重要です。初心者のみならず、読む人のモチベーションを高めてくれる1冊です。
4. 究極のリーダーシップ〜最大の成果をあげるための10の極意
ドラッカーは「リーダーシップは才能ではないが、真摯さという資質を備えていなければならない」と述べました。そして真摯さとは、一貫してブレずに誠実であり続けることでもあります。
本書では、リーダーにおけるブレない意志と向上心の重要性が書かれています。より良い組織を作るリーダーになるための、10の極意は必見です。
リーダーシップ中級者~リーダーシップを体系的に学びたい
リーダーシップを現場で実践するためには、断片的な知識だけでは不十分です。リーダーシップの原則から、全体像を学びましょう。
リーダーシップが体系的に学べる、骨太な4冊を紹介します。
- リーダーシップの教科書
- 多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織
- 人を動かす
- 座右の書『貞観政要』中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」
5. リーダーシップの教科書
「リーダーシップの教科書」と名付けられた書籍は、世の中に多く出回っています。そのなかでも本書は、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたリーダーシップ論から、選び抜かれた10本の論文を掲載しています。
この1冊で、リーダーシップとマネジメントの違いから最新のリーダーシップ論まで、リーダーシップを習得するための原則を網羅的に学びましょう。
6. 多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織
著者のマシュー・サイドは名著『失敗の科学』で知られる、イギリスの作家・ジャーナリストです。
本書で彼が主なテーマとしたのが、衰えていく組織には個性や特徴がないこと。いくら経営者が優秀で才能に溢れていても、多様な視点を持たなければ致命的な失敗につながります。業界や企業規模に関わらず、すべてのリーダーにとって持つべき視点がわかります。
7. 人を動かす
1936年の初版が発行されて以来、多くのビジネスマンに感動を与えてきた不朽の名著です。経営者や管理職のみならず、誰もが同僚やチームメンバーと信頼関係を構築しなければ質の高い仕事はできません。
本書ではあらゆる場面で適用できる、人間関係の原則を実例を用いて解説します。読めばすぐに実践したくなる、人間関係の公式がまとめられています。
8. 座右の書『貞観政要』中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」
『貞観政要』とは中国唐代に編纂された、皇帝・太宗の言行録です。『貞観政要』を座右の書とするライフネット生命の会長・出口治明が、内容・ポイントを具体的にまとめました。
世界の指導者・リーダーに読み継がれてきた古典であり、説得力のある内容が詰まっています。古代中国や現代のビジネスにおいても、一流のリーダーは共通して同じことを実践しているのがわかります。
リーダーシップ上級者~リーダーシップを現場で発揮する方法
リーダーシップはいくら本を読んでわかったつもりになっても、現場での実践は容易ではありません。以下の4冊は実践的な内容がまとめられており、現場でリーダーシップを発揮するための具体的な方法が学べます。
- リーダーの仮面ー「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法
- 恐れのない組織ー「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす
- チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方
- 決断の本質ープロセス志向の意思決定マネジメント
9. リーダーの仮面ー「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法
著者は株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大。本書で語られるのは全国で2,500社以上が導入した、生産性が高い組織運営を実現するためのマネジメント理論「識学」です。
識学メソッドに基づいて、「ルール・位置・結果・利益・成長」というリーダーがフォーカスすべき5つのポイントを解説します。ドラッカーが「リーダーシップは資質ではなく、仕事である」と述べたように、カリスマ性や人間的魅力に頼らない、再現性のある実践理論を学べます。
10. 恐れのない組織ー「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす
日本の人事部主催の、HRアワード2021優秀賞を受賞した1冊。Googleが「心理的安全性(psychological safety)はパフォーマンスと創造性の向上に不可欠な要素である」と発表したことで、心理的安全性がビジネスで注目されるようになりました。しかし、もともと提唱したのは本書の著者であるエイミー・C・エドモンドソン氏です。
第一人者である著者の解説により、心理的安全性がスッと腑に落ちるでしょう。また、リーダーシップを発揮してメンバーが心理的安全性を感じられる、恐れのない組織を構築する方法が詳しく示されています。
11. チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方
本書では具体的なケースに倣って、誰もが現場で感じる悩みに対するソリューションを提示します。
リーダーシップを発揮すべきは、経営層や管理職だけではありません。そういった固定観念を捨て、メンバー全員がリーダーシップを学び、全員参加によるダイナミックな変革が実現すれば、素晴らしいチームとなるでしょう。
12. 決断の本質ープロセス志向の意思決定マネジメント
リーダーシップにおいて、特に重要な要素が決断です。企業や部署においてリーダーが決断を先送りにすれば、目まぐるしく変化するビジネスシーンでは、あっという間に淘汰されてしまいます。とはいっても、やみくもに決断すれば良いわけではありません。
本書ではエベレスト遭難事故やコロンビア号の爆発事故など、世界のさまざまな事例をもとに、成功するための意思決定の考え方を解き明かします。
すべての管理職、経営層向け~リーダーシップで行き詰ったら
リーダーは日々、自問自答・試行錯誤を繰り返す、孤独な存在です。以下の4冊は、行き詰った際に打開策のヒントを示し、先の見えない闇に一筋の光を与えるでしょう。
- 優しい社長が会社を潰す
- サーバントリーダーシップ
- なぜ、あなたがリーダーなのかー本物は「自分らしさ」を武器にする
- リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス
13. 優しい社長が会社を潰す
本書は識学に基づくマネジメントを導入した企業が、いかに再生を成し遂げるかを描いたビジネスノベルです。識学のなかには「上司と部下は距離を取ること」、「部下のモチベーション管理はしない」といった、これまでの常識とは異なる原則があります。もちろん反発を生むことも考えられますが、ネガティブな反応・反発の解消、組織が生まれ変わる様子を物語形式で追体験できます。
本書を通じて、変革期に会社がぶつかるであろう壁の乗り越え方を、実践的に学びましょう。
14. サーバントリーダーシップ
1977年に発行された本書は、知らず知らずの間に持っているリーダーシップに対する固定概念を、ひっくり返す可能性があります。リーダーは成果を目標に周りを引っ張るものと考えがちですが、大切なのは奉仕することというのが、本書の主張です。
『7つの習慣』の著者であるスティーブン・コヴィーは、本書に書かれた洞察は宝物と評しています。
15. なぜ、あなたがリーダーなのかー本物は「自分らしさ」を武器にする
「本物のリーダーとは」。多くの本や理論が、テーマにしている内容です。本書では「こうあるべき」というリーダーの理想像は存在せず、一人ひとりが自分らしさを武器にして本物のリーダーにならなければならない、と語っています。
理想と現実のギャップに苦しむ管理職に、啓発を与える1冊です。
16. リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス
リーダーに抜擢された30歳の女性社員が、上司や同僚に支えられながらリーダーシップを養う物語。リーダーシップは特定の誰かだけが持っている特性ではなく、学び、出会い、培うものです。
男女問わず、ストーリーに自分を重ねることで成長を感じられる構成となっています。
リーダーシップは偉大なリーダーから学ぶ
リーダーシップ初心者をはじめ、管理職として日々奮闘している立場の方まで、偉大なリーダーのストーリーからは、多くの気付きが得られるでしょう。
本項では、偉大なリーダーの成功例を追体験できるような、手本となる名著を4冊紹介します。
- 1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え
- リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力
- ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」
- 信念に生きるーネルソン・マンデラの行動哲学
17. 1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え
シリコンバレーの名だたるテック企業のCEOから、師と仰がれたビル・キャンベル。本書には彼が実践してきた成功の教えが、余すことなく書かれています。
「チームを第一にする」、「心理的安全性でメンバーの潜在力を引き出す」といった、本書で掲げる原則はリーダーシップの王道です。しかし、背後にある彼の人間的な魅力も相まって、リーダーシップの本質を考えさせられます。
18. リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力
本書の著者は、ラグビー日本代表躍進を影で支えたメンタルトレーナーの荒木香織。科学的な根拠に基づいたスキルが実例とともに紹介されており、説得力があります。
リーダーシップは誰にでも身に付けられることがよくわかり、読むだけでモチベーションが向上します。
19. ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」
高度経済成長期には世界に名を轟かせ、今なお日本を代表する優良企業のひとつであるソニーですが、2012年3月期には5,000億円を超える大赤字を抱えていました。そのような状況で、ソニー再生請負人となったのが、本書の著者である「異端社長」平井一夫です。
彼が困難に打ち勝った経営哲学が、存分に語られています。学びとなるポイントは多くありますが、特に現場社員の声を聞くことの大切さを感じます。
20. 信念に生きるーネルソン・マンデラの行動哲学
若くしてアパルトヘイトに立ち向かった、元南アフリカ共和国大統領ネルソン・マンデラも、真に偉大なリーダーのひとりです。
本書はネルソン・マンデラが書いた日記をもとに、タイム誌編集長が書き綴ったものです。民主的で自由な社会を目指し、信念と志を持ち続けたネルソン・マンデラの行動哲学は、読む人の心を揺さぶります。稀代のリーダーの思考と行動は、現代のビジネスにも通ずるものがあります。
まとめ
本記事ではリーダーとしての経験や、リーダーシップへの理解度にあわせて学べる、20冊を紹介しました。
リーダーシップを学び実践することは、周囲からの信頼につながり、仕事へのモチベーションもますます向上するでしょう。リーダーシップに関する書籍は世の中に溢れていますが、本記事が成長につながる運命の1冊と出会うきっかけになれば幸いです。