バイオテクノロジー、AI、ロボティクスなど指数関数的に発展する技術は驚くほどに成長し、今や半導体集積回路(LSI)の長期的傾向から見出された「ムーアの法則」を彷彿とさせる勢いで、私達の生活を豊かにしてきました。
工場では単純作業のオートメーション化、高度で職人的な作業でもロボットが技能を伝承するシステムまで登場し、オートメーションの限界値が次々に更新されていく時代です。
そんな中、現在注目を集めているのが自動運転技術の市場参入です。2020年には国内で改正道路交通法の施行によって自動運転レベル3が解禁され、私達の動的運転タスクがより限定されるようになりました。
そこで、本記事では自動運転レベル3の概要や自動運転レベルの定義、自動車メーカー各社の取り組みなど包括的に分かりやすく解説していきます。
- 自動運転レベル3をもっと知りたい人ビジネスマン
- 自動運転レベル3の車体価格や高速道路運転の可否が気になる人
上記の方におすすめの記事となっていますので、ぜひご一読ください。
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自動運転レベル3とは
自動運転車で使用される「レベル」とは、車を自動化するための技術レベルを指します。後ほど解説しますが、技術レベルは0〜6段階に分かれており、アメリカの自動運転技術協会(SAE)が元々定義したものです。
自動運転レベル3とは、システムが決められた条件下で自動運転が可能になることです。自動運転の継続が困難な場合は、ドライバーが運転に戻る必要があります。
自動運転レベル3はいつ解禁されたのか
自動運転レベル3は2020年4月から国内で解禁されています。また、同年6月にも国連の自動車基準調和世界フォーラムで国際基準が成立し、世界的に自動運転が広まりつつあります。
アメリカは各州の権限のもと実用化されていますが、速度制限等の様々な条件を統一する必要があり、連邦法の動向に注目が集まっている状況ですります。
自動運転レベル3でできること
自動運転レベル2との大きな差は、運転の主体が「人」から「システム」に移行することです。自動運転レベル3では、ドライバーは運転以外の行為が可能となり、ハンドルから手を離しDVDを鑑賞することも可能です。
ただし、自動運転レベル3ではシステム作動領域は限定的で、責任もドライバーにあります。
政府が定めた自動運転の定義
SAEが定義した自動運転レベルは、日本でも内閣府による官民ITS構想のロードマップにおける自動運転レベルの定義として使われています。
自動運転レベルの定義は以下の通りです。
自動運転レベル1【運転支援者】
システムが縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行し、操縦の主体は運転者。
自動運転レベル2【運転支援者】
システムが縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを限定領域において実行し、操縦の主体は運転者。
自動運転レベル3【条件付自動運転車】
システムが全ての動的運転タスクを限定領域において実行します。また、作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に適切に応答し、操縦の主体はシステム。しかし、作動継続が困難な場合は運転者となるります。
自動運転レベル4【自動運転車】
システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行し、操縦の主体はシステム。
自動運転レベル5【完全自走運転者】
システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行し、操縦の主体はシステム。
参考:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部|官民ITS構想・ロードマップ
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そのため、高速道路での自動運転の実装は2025年が目途と考えられます。
参考:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部|官民ITS構想・ロードマップ
自動運転レベル3の実用化に向けた各社の動向
2025年を目途に自動運転が本格化する中、自動車メーカー各社は様々な商品を開発しています。そこで以下では、国内を代表する自動車メーカーと海外自動車メーカーの動向について解説します。
トヨタ
トヨタは高度運転支援技術機能「Advanced Drive」を搭載したレクサスと燃料電池車の発売を2021年4月から開始しています。とはいえ、しかし、発売した車はいずれも自動運転レベル2であり、自動運転レベル3の量産車はまだ行っていません。
しかし、東京2020オリンピック・パラリンピックで使用された「e-palette」は低速自動運転車になっています。e-paletteは、主に移動や物流、物販などの多目的に活用できるモビリティーサービスを目指した専用次世代EVのコンセプトカーです。
日産
日産が現在提供している「プロパイロット2.0」機能は自動運転レベル2相当で、次の「プロパイロット3.0」の自動運転を実装した商品の開発が進行中。進んでおり、トヨタ同様に2021同様2021年の動向が期待されます。
また、日産は自動運転タクシーとも呼べるEasy Rideの実証実験をDeNAなどと進めており、自動運転の市販車ではなく自動運転を活用したサービスに注力している印象があります。
ホンダ
ホンダは、2021年3月から自動運転レベル3の機能を搭載した「LEGEND」を販売しています。ホンダのレベル3に相当する技術を「Honda SENSING Elite」といい、高速道路渋滞時などの一定条件下でシステムが運転の主導者となって操作します。
アウディ
実はアウディは、自動運転レベル3搭載可能な量産車「Audi A8」を2017年に発売しています。自動運転機能である「Audi AI トラフィックジャムパイロット」は、時速60キロ以下の高速道路の限られた環境下で、自動運転が可能です。
しかし当時はまだ、法整備ができていなかったため、A8のレベル3技術は搭載されませんでした。そのため、ホンダLEGENDが自動運転レベル3搭載車として「世界初」を手にすることとなりました。
BMW
BMWは、被害軽減ブレーキなどを備えた5シリーズ、7シリーズに搭載し、2019年にはハンズフリー機能も実装しています。
また、自動運転レベル3技術を搭載した「iNEXT」を2021年に量産化する計画で進められています。当初のiNEXTは、ハンドルを交代してコクピット空間が広がるレベル4を想定した仕様になっています。
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様々な分野で頭角を表しているアメリカ企業の中でも自動運転開発においては、アルファベットの子会社であるWaymoが先陣を切って自動運転タクシーの実用化を果たしました。それ以降、世界各社が自動運転開発に向けて積極的に身を乗り出しています。
Waymoの取り組み
Waymoは2018年12月に「Waymo One」の自動運転タクシーの有料商用サービスを行いました。当初はセーフティードライバーが同乗していましたが、2019年にはドライバー不在の無人自動運転サービスを開始しています。
アリゾナ州から始まったWaymo Oneは、現在サンフランシスコやニューヨークなどでも実証を開始しているほか、ます。
また、物流分野へも介入し、自動運転トラック「Waymo Via」の実用化にも取り組んでいます。
テスラの取り組み
電気自動車でアメリカを席巻したテスラは、自動運転でにはWaymoに遅れを取っている状況です。テスラは2021年7月に「完全自動運転(Full Self-Driving)」ソフトウェアのアップデートをベーステスターに配布しました。
しかし、依然としてドライバーへの危険が懸念され、本格的な実用化はまだ先のようです。
自動運転の法整備
2020年4月に施行された道路交通法の改正は、自動運転実現に向けたものです。以前の道路交通法では、人が運転することを前提に安全運転が義務付けられており、自動運転システムでの走行を配慮した規定がありませんでした。
道路交通法の改正の主なポイントは以下の3つです。
- 自動運行装置による素行も「運転」と定義
- 自動運行装置を使う運転者の義務
- 作動状態記録装置による記録の義務付け
自動運転装置による走行も「運転」と定義
自動運行装置とは、自動運転システムを指します。これまで運転者が行っていた、認知、予測、判断、操作の全てを自動運転システムが行い、その作動状態を記録する機能を備えたものです。自動運行装置での走行が「運転」と決められたことで、公道も走行でき、自動運転レベル3の自動車が公道でも走行ができるようになりました。乗れるようになりました。
自動運行装置を使う運転者の義務
自動運転中に、車種毎に定められているシステム条件から外れ警報が鳴る場合は、直ちに運転者は手動運転を再開しなければなりません。したがって、直ちに手動運転に戻れないとされる、仮眠や飲酒などは認められていません。
また、自動運転中に事故や違反があ合った場合は、運転者も責任を取る必要がある場合があります。
作動状態記録装置による記録の義務付け
自動運転車を保有するものは、自動運転装置の作動状態を記録し保管しておくことが義務付けられています。これは道路交通法違反に該当する動きがみられた場合に、自動運転装置が作動していたかどうかを確認するためです。
また、警察官から記録の提出を求められた場合は、速やかに記録を提出しなければなりません。
参考:政府広報オンライン
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ホンダ「LEGEND」
ホンダ「LEGEND」Hybrid EXの希望小売価格は約725万円です。LEGENDはホンダが生産販売する高級セダンの一つで、世界初の量産型の自動運転レベル3搭載の自動車になります。
高速道路や自動車専用道路において、一定の条件を満たした場合に運転者でなくシステムが運転操作を行うハンズオフ機能だけでなく、運転者がシステムからの操作要求を無視し続けた場合、車線を変更しながら減速し停車する機能も搭載しています。
なお、LEGEND Hybrid EXはリース専用の販売となっており、特定の販売店のみで扱われるほか、100台の限定生産となっています。
参考:HONDA
Waymo「pacifica」
アルファベットの子会社であるWaymoが提供する「pacifica」の希望小売価格は39,995ドル(日本円で約455万円)からです。なお、この価格は2018モデルのミニバンとなっています。
※2021年12月時点
pacificaは、WaymoとFCA(フィアット・クライスラー)との共同開発であり、配車サービスを展開しています。配車サービスでは専用のアプリを通じて、無人の自動運転タクシーを呼ぶことができます。
無人タクシーは24時間呼び出すことができせ、目的地までの時間や距離に応じて、あらかじめアプリで料金が表示されます。
参考:THE VERGE
トヨタ「e-palette」
トヨタは2018年1月に、自動車会社から人々の移動を支えるモビリティ・カンパニーへの変革を宣言するとともに、e-palette conceptを発表しました。
そして、2020年東京オリンピック・パラリンピックで選手村内を巡回するバスとして大会関係者や選手の移動をサポートしました。
ボディサイズは全長5,255mm、全幅2,065mm、全高2,760mmで、定員は20名、最高速度は19km/hとなっています。
現在e-paletteは販売されていませんが、発売に向けた動きが着々と進んでいると考えられます。
参考:自動運転LAB
まとめ
現段階では自動運転レベル3を搭載した車は非常に少ないですが、将来的には首都圏から派生して全国へ普及していくでしょう。
自動運転が普及した世界線では、物流業界や配送サービス業界のゲームチェンジが行われます。
現段階では、自動運転に関する社会の期待はやや過剰になっている節はありますが、その期待に応えるシステム開発に向けて自動車メーカー各社がしのぎを削っている状態です。
この記事を通じて、自動運転レベル3の概要や自動車メーカー各社の取り組みを把握し、今後も期待される自動運転の動向をチェックしていきましょう。
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