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在宅ワークにより社内コミュニケーションが激減する中で、シャッフルランチに注目が集まっています。
ただしシャッフルランチの正しい意味やその目的、シャッフルランチが流行り出した背景を知らないと、ただ仲のいい人だけのランチ会になりかねません。
本記事ではシャッフルランチの意義とメリット、デメリットをわかりやすく解説します。シャッフルランチの導入を検討している経営者、人事担当者の方にぴったりの記事となっていますので、ぜひご一読ください。
目次
シャッフルランチとは?
シャッフルランチとは、社内コミュニケーションのために普段関わりがない人とも食事に行くことができる制度のことです。社内にいる多様な人と昼食をとることから、シャッフル(入れ替わりのある)ランチと言われています。
普段は交流のない社内の人とも手軽にコミュニケーションを取れる場として積極的に活用している企業もあります。
また、シャッフルランチは会社から一定の額が支給される福利厚生制度として認識されることもあり、他社との差別化が図れる制度としても注目が集まっています。
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シャッフルランチの導入が進んだのは、コロナ禍を発端とした夜の飲み会などの自粛や在宅勤務の広まりにより、社内コミュニケーションが減少したことが背景にあります。
従業員が在宅で仕事ができるようになったことで会社の生産性が向上した部分もある一方で、かつて社内であった「気軽な相談」ができなくなり、あらたな課題になっています。
また、上司が部下からの相談や悩みを聞く機会として、かつては飲み会がしばしば開かれていましたが、現在では若手の飲み会離れが進んでおり、アンフォーマルなコミュニケーションを部下と取れる機会が減りました。
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シャッフルランチを導入するメリットは以下の通りです。
- 社内コミュニケーションが円滑になる
- アイデアが浮かぶ
- モチベーションにつながる
- 福利厚生になる
- 新しいキャリアパスを発見できる
それぞれのメリットをわかりやすく解説します。
社内コミュニケーションが円滑になる
シャッフルランチでは食事をしながら交流を図るため、仕事中はなかなか話せないアンフォーマルな会話をすることもできます。
コミュニケーションを取る上で大切な「相手を知ること」ができるのは食事の場だからこそのメリットでしょう。
また、普段は話すことのできない他の部署との会話をすることで、部署間の考え方の違いを理解できます。仕事を依頼をする際には、他部署の状況も鑑みた上での依頼や相談、提案ができるようになるでしょう。
互いに相手のことを考えた仕事ができるようになるといった面で、社内コミュニケーションが円滑、活発になります。
アイデアが浮かぶ
食事中のたわいのない会話からアイデアが浮かぶこともあります。
ふとした際にアイデアが生まれることをセレンディピティといいますが、他部署間での交流では、普段とは違った視点での話を聞くことができるので、新たな発見もあり、課題に対する解決策が生まれやすいのが特徴です。
モチベーションアップにつながる
社員のモチベーションが上がらない際にもシャッフルランチは有用です。メリハリのない仕事をだらだらとしていると、社員のモチベーションは低下します。
モチベーションが低下した際にシャッフルランチを活用することで、休みと仕事とを上手に切り替えることができるため、社員のモチベーションの向上につながります。
福利厚生が使いやすい
企業に福利厚生は各種用意されていますが、使いづらいということはよくあります。
例えば福利厚生の一環として、業務後の飲み会などが例に挙げられますが、子育てに追われている主婦や遠方から職場に通っている人は利用することができません。
また、お酒が苦手で業務後の飲み会には参加したくない人もいるでしょう。
そうした方でも利用できるのがシャッフルランチのため、多くの人が福利厚生を利用しやすくなるというメリットがあります。
新しいキャリアパスが発見できる
シャッフルランチには他の部署の人以外にも、上司、時に役員なども参加することがあります。なかなか話ができない会社の役員などから話を聞けるのは滅多にない機会です。
シャッフルランチでは気軽な悩み相談もできるため、キャリアパスなどに悩んでいる場合にはアドバイスをもらえるかもしれません。
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シャッフルランチのデメリット
シャッフルランチは社員にとってだけでなく、会社にもメリットをもたらす制度ですが、以下のデメリットもあります。
- マンネリ化する可能性がある
- 費用対効果は数字に出にくい
- シャッフルランチが嫌な社員もいる
それぞれについて解説します。
マンネリ化する可能性がある
シャッフルランチを導入したもののマンネリ化することはよくあります。例えば以下の場合です。
- 参加する社員が同じ
- 毎回同じ場所
シャッフルランチで人が被ることがあるのは仕方ありませんが、全て同条件ではただのランチ会と変わらなくなってしまいます。
したがって、仲が良い相手や誘いやすい相手という理由だけで人を選ばずに、まだ交流したことのない人同士の組み合わせになるよう、企画者はメンバーを選定しましょう。
費用対効果は数字に出にくい
シャッフルランチは会社の組織風土や組織文化を改善するために活用されますが、すぐに営業成績などに反映されるわけではありません。コミュニケーションの向上は、最終的に結果として現れるものです。
したがって、費用対効果をシャッフルランチに求めるのはナンセンスです。
あくまでも社内交流や人材の定着のために活用する、というくらいの気持ちでいるのがよいでしょう。
シャッフルランチが嫌な社員もいる
皆が皆交流を望むわけではありません。
社内にはコミュニケーションが苦手で、シャッフルランチなどの会に参加したくない方もいます。そうした社員を無理やりシャッフルランチに参加させるとストレスをため込む可能性があるため留意しましょう。
ただし、中には「うまく話せるか不安」という方もいます。
話せるか不安で参加できない方には、ファシリテーターがフォローすれば参加しやすくなる方もいるため、自社の社員がどちらに該当するのか確認しましょう。
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シャッフルランチの導入手順は以下の通りです。
- 制度導入の目的を明確にする
- 運営メンバーを決定する
- 費用・頻度を決定する
- グループを決定する
それぞれわかりやすく解説します。
制度導入の目的を明確にする
まずは制度導入をなぜするのかを明確にしましょう。
例えば、自社の課題が部門間連携であるならば、シャッフルランチでは部門が違う社員同士でシャッフルランチを開催するのがよいですし、部内に不穏な雰囲気が漂っているならば、部内で上司を含めてわだかまりを解消できるようにします。
制度導入の目的を明確にすることで、この後の優先順位づけが明確になります。
運営メンバーを決定する
制度を導入する目的が明確になったら、運営メンバーを決定する必要があります。運営メンバーは、シャッフルランチを先導して開催するメンバーです。開催にあたってメンバー調整をしたり、制度を整えるのが仕事です。
運営メンバーでタスクを割り出し、協力してシャッフルランチの制度導入の準備をする必要があります。
費用・頻度を決定する
会社で使える経費には上限があるのが一般的です。運営は予算に合わせてシャッフルランチの支給額、使用頻度を決定します。
グループを決定する
実際に制度が整ったらシャッフルランチの準備をします。初めのうちは目的に合わせてグルーピングをし、シャッフルランチを開くのが一般的です。この際、運営側はファシリテーターを用意するとスムーズに進みます。
ファシリテーターとは、シャッフルランチで話題を振る人のことです。初めての交流で話が弾まない際には、ファシリテーターが互いの共通点を見つけ、会話を持ち出し場を盛りあげます。
なお、毎回グループを決定するのに多くの手間がかかる場合には、システムを導入するのもひとつです。
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組織図とは?つくる目的やメリット、わかりやすい作り方を解説シャッフルランチ導入のポイント
シャッフルランチ導入に際しては以下のポイントに注意する必要があります。
- 実施率を計測する
- 社内広報を活用する
- マンネリ化を防ぐ
それぞれについてわかりやすく解説します。
実施率を計測する
シャッフルランチが会社に導入されたかを確認する指標として、実施率を測定します。実施されていない場合には、何かしらの問題があるため、運営チームは問題を特定し改善を図ります。
ただし一般的に実施率が低い場合には、シャッフルランチが社員の耳に入っていないことが多いため、次で説明する社内広報もうまく活用しながら進める必要があります。
社内広報を活用する
シャッフルランチが実施されたのであれば、社内広報を通じて実施内容を社内に共有しましょう。社員の認知度を増やし次の参加を促します。
マンネリ化を防ぐ
メンバーの組み合わせに留意しつつも、シャッフルランチがマンネリ化しないよう注意する必要があります。
単純に無作為にメンバーを選出するのもありですが、他部署の中でも属性が似ているメンバーを選出し、盛り上がる話題を用意するのが運営側の役割です。
シャッフルランチを導入している企業
シャッフルランチを導入した企業として、以下2社が挙げられます。
- 株式会社メルカリ
- クックパッド株式会社
株式会社メルカリ
社員同士のコミュニケーションを重視するメルカリでは、2017年よりシャッフルランチを導入しています。メルカリでは他部署の人も合わせた全社員を5〜6名集めてひとつのグループにし、シャッフルランチを行っています。
ただし、当初はシャッフルランチの導入が期待通りに進まなかった課題がありました。それは経費の精算です。シャッフルランチの費用を従業員が立て替えて、その後経費処理をするのに時間と手間がかかっていたのです。
そこでメルカリでは経費精算を楽にするために、シャッフルランチをよく利用する飲食店に対し、ツケ払いを依頼。結果として依頼をしたうちの20%からつけ払いの承諾をもらえ、経費精算が楽になりました。
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クックパッド株式会社
外に食事に行くのは難しいという場合には、クックパッドの試みも参考になりそうです。
クックパッドはレシピを公開するプラットフォームを運用する会社ですが、プラットフォーム上のレシピを元に料理をし、感想を交換し合うことがシャッフルランチの話題となっています。
クックパッドの例は少し特殊ですが、シャッフルランチで外に行くのは難しい場合には、お弁当を取り社内でシャッフルランチをすることもできます。
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シャッフルランチのアプリを使用するのも可能
社内の人数が多い場合、運営チームが全てのグループを作成するのは困難です。
そのような場合は、既に出ているアプリケーションを活用することで、負担を軽減することができます。
進行に慣れてきたらこういったツールの導入を検討するのもよいでしょう。
オンラインでのシャッフルランチも
シャッフルランチといえば、オフラインで開催するのが一般的でしたが、在宅ワークの浸透やコロナ影響に伴い、オンラインでのシャッフルランチも開かれています。
オンラインのシャッフルランチではオンライン独特の会話の難しさもあり、オフラインでの開催以上に、ファシリテーターのスキルが必要とされます。
紙を用意し、お題を用意するなど試行錯誤を凝らした運営が必要です。
まとめ
本記事ではシャッフルランチの意義とメリット、デメリットをわかりやすく解説しました。
コミュニケーションの活性化は結果が見えにくく、費用対効果が出るまでに時間がかかりますし、必ずしも成果が出るとは限りません。
しかし、正しく運用することで、社員のモチベーションや協力姿勢として間接的に影響があります。
自社での導入の際は、本記事の注意点に留意し、導入を検討してみてください。
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