2019/10/25

リーダーシップはタレント性に帰り着く

マネジメントやリーダーシップというものは、誰しも悩むところです。同時に科学的な解明がされておらず、属人性が高いとみなされています。つまり、「人による」としか言えないのです。一方、海外では十分にマネジメントが研究され、科学的なメソッドに落とし込まれています。

「人による」と「科学」の間。
今回は、リーダーシップはタレント性であるという話と、科学的なマネジメント技法について、みていきます。

 

ライバル企業に転職すると言った部長の話

 

いきなり体験談で恐縮ですが、所属していた会社で尊敬できる部長がいました。300人の部下を抱え、グループ企業総勢1万人の管理職のなかから部下の推薦で「ベスト部長賞」に選ばれる、優れた部長です。

ある日の飲み会のこと。部長は酔っ払って「もう会社は辞める!そしてライバル企業に転職する!」とクダを巻いたのです。何か会社の方針に賛同できかねるところがあったのかもしれません。

すると、その場にいた部下が全員、「僕もついていきます!」といったのです。課長や主任も含めて、全員が「(ライバル社に)ついていきます!」と。もちろん、お酒の上での話ですし、実際には部長は転職をせず、現在は経営陣に迎え入れられているようです。しかし、私はこのときの光景が非常に印象深く残っていました。

 

タレント性に帰着する

 

もしかしたら、マネジメントとはタレント性に帰り着くのかもしれないー。

そう思ったのが、このときの学びです。
ついていきたい、そう思える人、それはその人が生来持つタレント性から生まれます。幼い頃から、「今日は野球をしよう」「今日は遠出するから自転車で集合!」「今日はあのビルを探検しよう」と、リーダーシップを発揮し、周りの人が自然についていく子供はいたのではないでしょうか。そのように、リーダーシップは後天的に取得するというよりは生まれついてのもので生来的な要素が大きいのではないか、そう考えるのです。

 

シリコンバレーのマネジメント

 

一方で、リーダーシップやマネジメント、および人事管理については、米国での研究が進んでいます。属人性を排除し、できる限り再現性のある形で、現場を管理するーそんなメソッドの分析が進んでいるのです。

とくにシリコンバレーでは、仕事のスピードが非常に早いとされます。たとえば、日本の雇用や働き方について研究しているロッシェル・カップさんの著書『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』では、アメリカの新しいマネジメント方法として、『タレント・マネジメント』があるとされます。従来型の人事管理に比べて戦略的・科学的で、

「生産性とエンゲージメントの高い従業員を引き寄せて、育成、動機づけし、会社に定着させる」

とあります。

「1人1人をユニークな個人として扱い、強みを把握し、モチベーションを上げて真剣に仕事に取り組んでもらって、会社で長く働き続けてもらう」

ことを目的としています。そのためにできることとして

「絶え間ないチャレンジとキャリア開発」
「フラットな組織」
「従業員の意識の継続チェック」

をカップさんはシリコンバレー的マネジメントの特徴として挙げているのです。

さらに、シリコンバレーのリーダーが目指しているところとして、

「目的や目標を設定するための項目を定義し、絞り込みし、提案を期待する」
「まず仮説を立ててやってみて、振り返り、学習するプロセスを実行する」

とあります。これらを用いて、科学的にマネジメントを実施するのです。[1]

 

感情を用いての他者との交渉実験

 

また、他者との交渉や管理においての技法としてアンガー・マネジメントがあります。感情的になることは一般的にビジネスの世界ではタブーです。しかし、ネガティブな感情を押し殺して仕事していても、ある日ポキっと折れてしまいます。私自身も実際、抱えすぎてある日折れてしまったことがありますし、これをお読みのみなさんも周りで見かけることがあるのではないでしょうか。

では、どうやって仕事における負の感情と付き合っていくのか。
その一つに、ヘブライ大学のマヤ・タミール教授の実験と考察があります。

その実験では、「交渉において、怒りを持ったビジネスパーソンはより多くの金銭を獲得した」「ゲームにおいて興奮したプレイヤーは、より多くの敵を殺した」というものです。これは一見すると、興奮状態にあるのですから当たり前のように思えます。

しかし、この実験には続きがあり、「冷静さを自覚したプレイヤーもより多くの金銭を獲得した」のです。つまり、怒りを持っていようと、冷静であろうと、その感情を“自覚”して交渉に臨むことが、もっとも大きな利益を得ることとなったわけです。

これは、ポジティブ感情であろうとネガティブ感情であろうと、あるいはフラットであろうと、その感情を自覚しながら、自分の感情を客観視して交渉に当たる際にもっとも利益が得られるという結論となります。大切なのは、感情を自覚することなのです。

 

研究が示すこと

 

ビジネスにおいて感情的になることは、偉大なリーダーであっても十分起こり得ることです。あのソフトバンクの孫正義社長やユニクロの柳井正社長であっても、仕事において感情的になり、部下を叱り飛ばしたエピソードは限りありません。それでも、彼らには人望があるのです。

他者である部下をマネジメントするのは、ときに強い感情を引き起こします。部下が思う通りに動いてくれない場合や、自分を苛立たせる行動、職場のモラルを逸脱した特殊な違反など、部下自身のさまざまな未熟さによって、自分のネガティブな感情が引き起こされることがあるでしょう。

どんなときも冷静に対処していては、いつか自分の心が折れてしまいますので、適度に感情を使って、しかも「ネガティブ感情を自覚」して、指示することもときには大切だと研究は示しています。

 

まとめ

 

リーダーシップやマネジメントというものは、「人による」と「科学」の間なのかもしれません。人間と人間が関わるわけですから、すべてを科学で覆い尽くすこともできないのです。ただし、科学的な根拠を持たず、やたら怒りを爆発させたり、ヒステリックになったりしていては、職場の周りを不幸にしてしまいます。よって、怒るにしても、怒っていることを自覚しながら、と研究は告げます。

今回は、個人的な体験と、アメリカ・シリコンバレーのマネジメント、そしてイスラエルのヘブライ大学の研究をベースにみてきました。職場のリーダーで自分自身と社会を知ろうとしない人はいません。果たしてマネジメントは属人性なのか科学なのか。どちらともいいきれないですし、揺れているのが本当のところではないでしょうか。

こうした努力を重ねることこそが、マネージャーの最大の成長であり、また同時に自分を含めた世界を深く知っていく醍醐味なのではないでしょうか。

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筆者:名もなきライター

参照
[1]『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(ロッシェル・カップ)
[2]Expectations influence how emotions shape behavior.
https://psycnet.apa.org/record/2017-29279-001