マーチャンダイジングとは、商品の販売をする際に行う戦略的な活動のことです。
商品設計から価格設定まで業務の幅は多岐に渡りますが、適切なマーチャンダイジングによって、消費者の購買意欲を高め、売上の向上が期待できます。
本記事では、マーチャンダイジングの重要性や目的、マーケティングの違いを解説し、さらに顧客データを活用した新しいデジタルマーチャンダイジングについても紹介します。
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マーチャンダイジングとは?
マーチャンダイジングとは、商品設計や販売方法の決定、価格の設定など、商品を戦略的に販売するための活動のことです。
マーチャンダイジングを行うことで適切な商品を適切に顧客へと届けられるようになります。
マーチャンダイジングについて以下3つの切り口から深堀りします。
- マーチャンダイジングの意味
- マーチャンダイジングの内容
- マーチャンダイジングの重要性
それぞれわかりやすく解説します。
マーチャンダイジングの意味
マーチャンダイジングは英語で「merchandising」と記載し、直訳すると以下の2つの意味になります。
- 商品化計画
- 販売促進
「商品化計画」とは、適正な値段で、適正な数量を、適正な時期に、適正な場所で、適切な商品を提供するための計画のことを指し、5つの「Right(=適切)」でファイブライト(5R)と呼ぶこともあります。
マーチャンダイジングの内容
マーチャンダイジングを実践する職務をマーチャンダイザー(MD)と呼びますが、具体的には以下の業務を遂行しています。
- ニーズ調査
- 商品の開発
- 価格の設定
- 生産計画の策定
- 価格の見直し
今どんな商品が市場で流行っているのか、顧客は何を求めているのかの市場調査から、実際にどうすれば商品が売れるのか、価格はいくらで設定するのかを決定します。
したがって、ひとくちにマーチャンダイジングといってもその業務範囲は幅広く、さまざまな知識が必要になります。
マーチャンダイジングの重要性
マーチャンダイジングは商品を販売するための重要な役割を担っており、顧客がどのようなニーズを持っていて、どのような商品を必要としているのかを、適切に把握することが求められます。
以下では、マーチャンダイジングで重要視される「5R」について紹介します。
商品:The Right Product
まずは正しい商品を販売することがマーチャンダイジングで求められます。
その商品は果たしてペルソナに対して適切なのか、他にもっとよい商品はないのかを分析するのもこのフェーズです。
そもそも誰を消費者と対象づけるのかを検討するのもここです。
数量:The Right Goods
商品を適切な数量仕入れることも大事な適正です。
例えば、顧客が求めている商品が売り切れになってしまっている場合、企業にとっては機会損失になります。
逆に顧客が求めていない商品を不用意に大量仕入れしてしまった場合には、不良在庫として企業の資金繰りに悪い影響を与えてしまう可能性もあります。
したがって、適切な数量を仕入れる能力がマーチャンダイジングで求められています。
時期:The Right Time
適切な時期に商品を販売することも重要です。
これは商品化計画に当たる部分ですが、商品を販売するには適切な時期があります。
例えば、アパレルであれば冬物アウターを秋ごろに前倒しで販売する必要があるかもしれません。
過去データやトレンドに基づき商品を販売する必要があります。
場所:The Right Place
商品の仕入れ先をどこにするのか、そしてどこで販売するかも注意が必要です。
また、小売においては陳列方法などもこのカテゴリに含まれます。
価格:The Right Price
商品を適正価格で販売することも大切です。
どれほど質のよい商品であっても、顧客に適正料金だと認識されなければ商品は売れません。
また、商品によっては価格弾力性が高く、少し値下げをするだけで商品が売れることもあるかもしれません。
マーチャンダイジングの目的とは?
マーチャンダイジングはライバルの多い流通業界で主に行われていますが、大きな目的は競争力の強化と商品力の向上です。
具体的には、以下の項目が挙げられます。
- 購買意欲を高める
- ビジュアルマーチャンダイジングを行う
- 商品の宣伝をするため
- 次の商品への展開のため
マーチャンダイジングの目的を詳しく解説します。
購買意欲を高める
マーチャンダイジングには、顧客の購買意欲を高める目的があります。
例えば、思わず手に取りたくなるような魅力的な商品を企画したり、購入を検討したくなる価格設定をしたり、見やすい売り場を作ったりなどです。
マーチャンダイジングで大切なのは、商品に魅力を感じてもらうだけでなく購入したいと思ってもらうことです。
そのため、購入につながる導線作りもマーチャンダイジングには不可欠な要素といえます。
ビジュアルマーチャンダイジングを行う
顧客の視覚に訴えるビジュアルマーチャンダイジングも重要です。
ビジュアルマーチャンダイジングは昨今、特に重要視されている手法です。
商品を顧客の視覚に訴え興味を引くことは、商品を購入してもらうための第一歩といえるでしょう。
また、顧客を店舗に集客する目的もあります。
ビジュアルマーチャンダイジングでは、ブランドコンセプトを表現したり、顧客の滞在時間を伸ばす導線を作ったり、顧客が目的の商品を直感的に見つけやすく陳列やディスプレイをしたりすることが大切です。
商品の宣伝をするため
マーチャンダイジングには、商品そのものの認知度を高める宣伝の目的もあります。
商品を購入してもらうためには、まず商品が存在していることを知ってもらう必要があります。
そのときには購入につながらなかったとしても、顧客に認知されていることで近い将来、購入に結びつく可能性が生まれます。
まずはマーチャンダイジングによって商品を宣伝して認知度を高めましょう。
次の商品への展開のため
マーチャンダイジングを通して得られた顧客層や売れている商品、時期などの情報は、次の商品開発に有益な情報といえます。
販売情報を分析すれば顧客のニーズや興味がわかるため、分析結果を開発や企画にフィードバックすることで、次の商品設計や価格設定、売り場作りに活かせるでしょう。
マーチャンダイジングでさらなる商品力の向上が期待できます。
マーチャンダイジングの手法は?
顧客の購買意欲を引き出すマーチャンダイジングを実践して適切な商品を顧客に届けるためには、ポイントを押さえておく必要があります。
マーチャンダイジングを行う場合に特に重要な下記の5つについて、詳しく解説します。
- ニーズやターゲットの調査
- 店舗コンセプトを作る
- 売り場づくり
- 商品開発・価格設定
- 売り方や見せ方
ニーズやターゲットの調査
マーチャンダイジングで最初に行うべきことは、ニーズやターゲットの調査です。
具体的な調査項目は以下です。
- 周辺の店舗情報
- 周辺で見られる人の年齢や性別などの属性
- 曜日別・時間別の人の流れ
店舗周辺の状況を正しく把握してターゲット層を見極めることで、顧客ニーズの解像度が上がります。
店舗コンセプトを作る
次に、店舗周辺の情報をもとに店舗コンセプトを設計します。
ターゲット層にマッチするような外観や店内の雰囲気、商品ディスプレイなどを作りましょう。
ポップやプライスカード、ショップカードなどもコンセプトをもとに統一感のあるものを作成するのがポイントです。
売り場づくり
店舗売り場は、店舗コンセプトをベースに行います。
加えて、気を付けたいポイントを押さえておきましょう。
<売り場づくりのポイント>
- 顧客の視点や導線を考慮した見やすい商品陳列を行う
- 店舗の雰囲気に合った陳列棚を使用する
- 商品のサイズや数量にふさわしい陳列棚を選ぶ
- 見やすく清潔感のある陳列を行う
- 商品や店舗の雰囲気に合った照明を工夫する
- 特に注目してほしい商品はスポットライトを活用するなど目立たせる
- 内装の雰囲気に合った壁や床の色を選ぶ
- 商品を見つけてもらいやすいディスプレイを行う
商品開発・価格設定
次に、商品開発と価格設定を行います。
商品開発は顧客ニーズを、商品価格は原価を考慮して決めるのはもちろん、類似している商品や周辺の店舗の販売価格なども踏まえて検討します。
売れやすい価格を設定することが大切です。
売り方や見せ方
最後は、売り方や見せ方を決定します。
どんなに素晴らしい商品でも顧客の購買意欲を引き出せなければ売れないため、顧客に買いたいと思ってもらえるような売り方や見せ方が大切です。
特に、アパレルやジュエリー、雑貨などは顧客の興味をどれだけ引けるかがポイントになります。
具体的には以下のような方法があります。
- 商品にわかりやすいポップを設置する
- マネキンや季節感を意識したディスプレイを行う
- 試用可能なサンプルを置く
- 店舗のBGMにもこだわる
- 顧客の気を引く声掛けをする
- 割引率を目立つように書くなどお得感が伝わるようにする
- 他のアイテムや他のブランドなどとコラボして付加価値をつける
- 商品の使用例を展示する
- 口コミを紹介する
マーチャンダイジングとマーケティングの違い
ここまでマーチャンダイジングを説明しましたが、マーケティングとの違いがわからないという声も多く挙がります。
他にも、バイヤーとの違いが曖昧になることもあるでしょう。
以下では、そういった疑問に関してわかりやすく解説します。
- マーケティングとマーチャンダイジングの違い
- バイヤーとマーチャンダイジングとの違い
マーケティングとマーチャンダイジングの違い
マーチャンダイジングが小売業や流通業で利用されることに対し、マーケティングではどの業種でも使われる言葉です。
したがって、マーケティングはマーチャンダイジングよりも広い概念だと説明できます。
マーケティングとは、商品が売れる仕組みを作り出すことです。
例えば、そもそも誰に商品を売るのかを決めるターゲティング、商品のベネフィット、商品の差別化をはかるのはマーケティングの範囲です。
他に以下の内容がマーケティングには含まれます。
- どのチャネルで商品販売をするのか
- 営業をつけるか
- 広告は使うのか
- 顧客の購買決定要因は何なのか
- 顧客のLTVを向上させるにはどうすればいいか
マーチャンダイジングの前提となる「小売で販売するか否か」を商品販売戦略の入り口で決定するのもマーケティング戦略の範疇になります。
バイヤーとマーチャンダイジングとの違い
マーチャンダイジングに似た仕事としてバイヤーがあります。
バイヤーの業務は以下の通りです。
- トレンド分析
- 顧客のニーズ把握
- 仕入価格の交渉
バイヤーはマーチャンダイジングと比較すると、仕入面に特化した業種です。
そのため、マーチャンダイザーよりも更に詳しい業界トレンドや「安くていいものを仕入れる」能力が必要になります。
一方で、マーチャンダイジングは販売促進の工程までがその業務範囲になります。したがって、マーチャンダイジングの方が業務範囲が広くなります。
ただし、全ての会社でマーチャンダイジングとバイヤーが分かれているかというとそうではありません。
中には、マーチャンダイジングがバイヤーとして活動している会社もあります。したがって実務上は切り離されていない場合も多いと考えてよいでしょう。
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マーチャンダイジングの仕事の具体例をもう少し掘り下げて業界毎にみてみましょう。
- アパレルにおけるマーチャンダイジング
- ネットショッピングにおけるマーチャンダイジング
それぞれの例を確認します。
アパレルにおけるマーチャンダイジング
アパレルにおけるマーチャンダイジングの職務は以下の4つに分別されます。
- 市場調査
- 企画
- 生産
- 販売
まずは、市場調査を実施することから始まります。
例えば、今季はどのような服が流行っているのか、SNSのトレンドの傾向なども含め調査します。
この他、具体的にどういった色が来季に流行るのかを見抜くのも、市場調査の時点で実施することです。
その後の企画では以下について詳しく検討します。
- 予算
- 素材
- 色
- 商品販売のプロモーション
企画が通ればデザイナーとの調整から、その後実際に販売をし、商品の売れ行きを確認するところまでがアパレルのマーチャンダイジングとしての仕事内容になります。
したがって、マーチャンダイジングは各部の調整役も担っているといえるでしょう。
ネットショッピングにおけるマーチャンダイジング
小売企業がネットショッピングを実施している場合には、マーチャンダイジングの業務はもう少し広がるケースがあります。
既存の商品をネットで販売するのであれば、価格設定や仕入れ経路の設定は不要になりますが、中には「新規商材をネットで販売したい」企業もあります。
その場合、MD担当が価格の設定などの業務を請負います。
その後、サイト上での販売方法・商品の見せ方をEC担当と打ち合わせ、細かいペルソナの設定までを実施します。
商品が販売された後の振り返りもMD担当の仕事です。
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マーチャンダイジングでは、「実際に人々を見て、過去の実績を分析し、商品の価格・トレンドを担当者の目で見抜く」といった伝統的な手法を取る企業がいまだに多いのが実情です。
デジタルが普及していなかった時代はこのようなマーチャンダイジングでよかったのかもしれませんが、今後は担当者の目利きだけでは不十分となり、今まで以上にビックデータを活用したマーチャンダイジング手法を確立する必要があります。
特に、アパレル業界では未だに顧客のデータと商品データが紐づいていないケースがあり、過去の顧客データを活用できていないケースが散見されます。
ネットショップがAIを活用したマーチャンダイジングの方法を確立しているなか、目利きだけのマーチャンダイジングを利用しているようでは、過剰在庫が生まれます。
事実、コロナ下で苦しんでいる企業にさらに追い討ちをかけるのは不良在庫による運転資金の増加です。
今後はますますビックデータを活用したデジタルマーチャンダイジングが普及することでしょう。
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