コロナとDXの時代 フリーランス・オンデマンド型人材を上手に活用する方法とメリットとは

投稿日:2021/05/10

人手不足もあり、フリーランスやクラウドソーシングなどでのオンデマンド型の人材を活用する企業は少なくありません。
リモートワークの浸透でクラウドソーシングやオンデマンド型人材の活用の壁は下がりました。毎日出社する社員でなくとも、戦力として活用できるのです。

DXの時代ではフリーランスのITエンジニアなども上手に活用したいところです。
しかしフリーランス活用が進んでいるアメリカでも、専門性が評価される一方で社内の「抵抗勢力」も存在する場合があるといいます。

こうした壁を乗り越えるために必要となるのは、どのようなことでしょうか。

 

フリーランスには「ベテラン層」も多い

 

内閣府の推定によると、日本ではフリーランス(=自身で事業等を営み、従業員を雇用せず実店舗を持たない、かつ農林漁業従事者ではない人)として働く人が462万人います[1]。
このうち、本業フリーランスは214万人、副業フリーランスは248万人とされています。

フリーランスというと、「自由を求める若者が…」といったイメージもあるかもしれません。
しかし内閣府の調査によると、フリーランスの年齢構成は7割以上が40歳以上という結果が出ています(図1)。

図1 フリーランスの年齢構成

(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai9/sankou.pdf p2

実際はある程度の経験を積み、一定の分野に特化して強みを発揮している人が多いと考えられます。

また、そのうちの約4割が資本金1000万円以下の中小企業との取引経験があり、自身の売上の過半を占めているという人は4割にのぼります(図2)。

図2 フリーランスの資本金1000万円以下の企業との取引状況

(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai7/siryou1.pdf p15

また、本業としてフリーランスで働いている人は、企業からの委託で収入を得ている人が多くみられます。企業も、ピンポイントの人材を活用している様子がうかがえます(図3)。

図3 フリーランスの属性分布


(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai9/sankou.pdf p12

人件費の面だけでなく、
「必要なプロジェクトにだけ専門性をもって参加してもらう」
「必要な作業だけやってもらう」
ことができるのもフリーランスの魅力です。

アメリカでは、クラウドソーシングなどでのフリーランス活用がますます増えています。
フォーチュン500のほぼすべての企業が、クラウドソーシングなどの人材プラットフォームを利用しています[2]。
特定分野での外部の支援が必要と考えている企業は多いのです。

また、アメリカでは大卒以上の女性の3分の2以上は、柔軟な働き方があればドロップアウトせずに済んだといいます[3]。
こうした優秀な女性が、オンラインなどでフリーランスとしてキャリア継続の道を模索しています。

ジェンダー平等の進まない日本では、こうした女性はもっと多いかもしれません。
しかもコロナ禍の現在にあって、リモートで専門性をもって働いてもらえるというメリットもあります。

 

日本でも積極利用の事例

 

経済産業省が公表しているフリーランス活用事例には、以下のようなものがあります[4]。

ひとつはみずほ証券です。
新規プロジェクトの発足に際して、国際管理会計、国際税務に専門性を持ち、金融機関で似たようなプロジェクトの経験を持つ人を早急に必要としていたという理由で、雇用関係によらない働き手を導入しました。

結果、短期間で人材確保ができたほか、社外の客観的な視点からプロセスの見直しなども可能になりました。

自社でこうした専門家を育成するには膨大な時間がかかりますが、フリーランスなどを利用することでピンポイントの人材を確保したという例です。

また、パイオニアでは新規事業として「美容・化粧」を掲げたものの、男性従業員が多い企業のため女性目線のマーケティングが難しいという理由でフリーランスを利用しています。

その他、イラストやデザインの技術を持つ人材を都合の良いタイミングで確保できたり、現実問題としての人手不足を補うため、といった背景からのフリーランス活用が多いようです。

特に専門性を要する仕事では、自身のスキルだけで生計を成り立たせるほどの能力がある人の参入は魅力的です。専門性の高い人をオンデマンドで参加させることができるのです。

 

社内に生まれる抵抗勢力と「インフォーマルパワー」

 

一方で、フリーランスの導入は、社内に抵抗勢力を作ってしまう可能性もあります。あるいは、社員が脅威を抱いてしまう、不安になってしまうことがあります。

NASAも新しいアイデア創出のためにクラウドソーシングを利用している団体のひとつですが、当初はそのような事態が起きたといいます[5]。

自分たちの職を奪われてしまうのではないか、という不安からエンジニアの職人としてのアイデンティティが揺らぎ始めたと言います。
また、上層部のリーダーたちも抵抗勢力となりました。
このようなことは、どこの企業でも起きうることと考えられます。

こうした事態を避けるために、社員それぞれが「インフォーマルパワー」を検証する、という方法があります。
ミシガン大学のシッチ准教授によると、フリーランスの導入や同業他社との協業も少なくない現代では、肩書きに関係ない人間関係、意識の持ち方を構築できるかどうかが重要になっていくと言います。

その「インフォーマルパワー」を自己評価することで、自分がどれだけのことをできるのか、できないのかを客観的に把握するのです。そうすることで、できないことを外部から補うことへの抵抗が減るとも考えられます。

なおインフォーマルパワーとは、価値を生み出し、事を成し遂げるために必要なもので、それを自己評価する方法をシッチ准教授は以下のように紹介しています。

 ステップ①:自分の仕事をまっとうするために必要な10人の名前を書き出す(社内外を問わない)
 ステップ②:書き出した10人のそれぞれについて、どの程度頼りにしているか、なくてはならない存在かについて1点から10点の点数をつける
 ステップ③:同じことを逆の視点から行う。相手の立場に立って、自分が頼りにされている度合いを想像して点数をつける。

<引用「肩書きに頼らず組織を動かす方法」ハーバード・ビジネス・レビュー 2021年4月号 p90>

点数をつけるにあたっては、業務だけでなく精神的な面や情報提供なども考慮するのが重要だといいます。

そして、ステップ①で書き出した人物が身内だけであればあるほど人脈が狭く、業務や肩書きを超えて信頼される価値を生み出す力に乏しい可能性があります。
また、ステップ②と③のスコアを比較したとき、対等なギブ・アンド・テイクになっているかどうかも大切です。
一方的な関係ばかりでは、長期にわたって維持することが難しくなってしまうからです。
そして、与える価値や受け取る価値が特定の人に偏りすぎている場合、その関係がなくなると自分は何もできなくなってしまうということでもあります。

このインフォーマルパワーを高める方法としてシッチ教授が挙げているのが、仕事の幅を広げることや組織内での「水平移動」です。
肩書きにとらわれず「価値のやりとり」を重視すべきということでもあります。

また、与える価値や受け取る価値を持つ人の幅を広げていくことも重要でしょう。
多様な人たちに触れなければ、そもそも自分には何ができて、何ができないのかを客観的に掴むことが難しくなってしまいます。

身内だけでなく、外から価値を取り込むことで、人に与えられる価値も大きくなるということでもあります。フリーランスはこれを体現している人たちとも言えます。組織外から価値を受け取ることで、社員のインフォーマルパワーは強化されるということでもあります。

 

業務の細分化で人員構成を効率的に

 

なお、ハーバード・ビジネス・レビューの論文では、フリーランス導入の効果を上げ、社内の抵抗勢力を納得させるためには、業務の細分化が必要だとしています[6]。

確かに、「このようなことをやる、このプロジェクトにおいて、こうした作業や知識が必要なので外部から補う」という具体的な説明は、社員を安心させる要素になるでしょう。

また国内では、事業者から業務委託を受ける形のフリーランスの4割がトラブルを経験したことがあると回答しています[7]。
契約が具体性に欠けるために起きたものが最も多くなっています(図5)。
そのためにも細分化は必要と言えます。

図5 フリーランスの取引先とのトラブルの内容


(出所:「フリーランス実態調査」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai7/siryou1.pdf p19

また業務の細分化は、今いる社員の目的意識を高めることにも役立つでしょう。

「褒められたい」という意識が強いZ世代がこれから労働力の中心になっていく時代にあって、「何を褒めるのか」が上司にとってもわかりやすくなり、また働く側としても明確な目標を持ちやすくなります。

かつ、客観的評価を下しやすくなるという意味合いでも、このような組織のあり方もひとつの方法と言えます。
プロフェッショナルとの触れ合いで見識を広めることは、合理的な社員教育の一環にもなるでしょう。

参考
[1]「フリーランスに関する参考資料」中小企業庁
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kihonmondai/seidsekkei/download/002_02-2.pdf p2
[2]、[3]、[5]、[6]「オンデマンド型の人材プラットフォームをどう活用するか」ハーバード・ビジネス・レビュー 2021年3月号 p101、p104、107、p108
[4]「フリーランス等活用企業事例集」経済産業省
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/employment/pdf/003_04_00.pdf p2
[7]「フリーランス実態調査」内閣官房
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai7/siryou1.pdf p17

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